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ホテルで廃棄されるリネンを再利用。スウェーデン発アップサイクルエコバッグ

ストックホルム在住のコーディネーター 大迫美樹さんが、北欧発のエシカルトピックスをレポート。環境保護のために世界の緊急課題となっているプラスチックゴミ問題。日本でも大きな問題として日々取り上げられ、レジ袋の有料化が導入。それをきっかけにマイバッグを持ち歩く人も増えているのではないでしょうか。毎日持ち歩くマイバッグにも、せっかくなら環境に負荷がかからないものを選びたいと思いませんか。今回はスウェーデンからホテルの廃棄リネンをアップサイクルした、よりサステナブルなエコバッグをご紹介します。

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後世のために今、私たちができること

プラスチックに依存した生活を見直す人が全世界で増加中の昨今。1970年代には一部でレジ袋有料化が開始されていた環境先進国スウェーデンでは、2020年にはレジ袋に税金がかけられました。レジ袋1枚が約90円前後と、以前の倍の金額となったことからマイバッグ持参が一気に浸透し、以降、エコバッグの持ち歩きが常識化しつつあります。そんななか、最近ではより環境に優しい素材のエコバッグに、今まで以上に関心が集まっています。

新しい取り組みとして注目を浴びる「Reused Remade」は、スウェーデンや欧州のホテルから廃棄されたベッドリネンを再利用してエコバッグを作っています。

2016年にPia Walter(ピア・ヴァルテル)さんとJosephine Alhanko(ヨセフィン・アルハンコ)さんによって設立され、現在ではスウェーデンのさまざまな有名企業とコラボレーションが後をたたないほどの人気ぶり。

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〈左〉ピア・ヴァルテルさん、〈右〉ヨセフィン・アルハンコさん。

「きっかけは、2050年には海のプラスチックゴミの量が魚を超えると知ったこと」と話すのは創業者の二人。プラスチック製のバッグが私たちの環境、特に海に与えるダメージと影響がとても大きいとわかったとき、ビニール袋に代わる、よりサステナブルな袋が必要だと感じたのだとか。

また、二人には子供とペットがいるといいます。「子供たちが将来もきれいな海で泳いだり、美味しい魚を食べたり、素晴らしい自然を体験し楽しむことができるようにするには何をするべきか考えていました」。
子どもの未来を考え、環境のためにできることを模索していたところにホテルの廃棄リネンを偶然見つけ、アップサイクルをするアイデアが浮かんだのだそう。

ホテルのベッドリネンは、小さなシミやほつれを理由に世界中でたくさん廃棄されているのだとか。しかし、それらは通常お客さまが快適に過ごすために肌ざわりもよく、高品質。高温で繰り返し洗浄するため非常に耐久性があり、耐摩擦性にも優れていることから、重いものを入れたり何度も使用するエコバッグへの再利用には最適なのです。

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一枚ずつ丁寧に、パキスタンの工場でエコバッグ作りが進められています。

アップサイクルにこだわる理由

エコバッグというと一般的にはコットン製が環境に優しいと人気。というのも、コットンの原料が自然由来の製品だから。しかしコットンの生産には、広大な土地や大量の水を使うことから環境破壊にもつながることが最近では指摘されるようになってきました。

スウェーデンの衣料品消費による環境汚染の8割は、生産段階に起因しているといわれています。だからこそバージンテキスタイルを使用せずにリユースすることで、温室効果ガスの排出量を抑え、生産に必要な土地と水を削減。環境負荷を最小限に抑えた方法でエコバッグを作ることができるのだそう。

Reused Remadeのエコバッグは、公正な賃金、良好な労働条件をそろえた信頼のおけるリトアニアとパキスタンの工場で生産。地球の汚染を最小限に抑えるために、バッグは染色せず、プリントには水性インキを使用。生地の裁断にプリント、縫製までのすべての工程を手作業で行っています。

廃棄リネンは、国内外のランドリーサービス会社と協力をして徹底的に洗浄されますが、まれに薄いシミがテキスタイルに残ることも。Reused Remadeではそれを“ビューティ・スポット”と呼び、汚れとしてではなく、バッグの個性として受け取ってほしいといいます。そのシミは、テキスタイルがエコバッグになる前の人生の軌跡であると理解すると、それも美しいものと感じられるようになりませんか。

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一人ひとりの賢い選択が、明るい未来へとつながる

彼女たちの取り組みの反響はとても大きく、この国を代表する企業からのオファーがたたないのだそう。例えばスウェーデンの国営酒屋「Systembolaget」や老舗デパート「Nordiska Kompaniet」、大手スーパー「Hemköp」、老舗の有名インテリアショップ「Svenskt Tenn」まで、彼女たちと一緒にエコバッグを作り販売しているのです。

「自分一人で地球は救えないけれど、すべての人が個々で心がければそこに小さな違いが生まれ、それが大きな結果をもたらします」と語るピアさんとヨセフィンさん。人間は地球なしには存在できないため、私たちが惑星を借りていることを自覚し、一人ひとりが慎重に、地球に責任のある暮らし方をすべきだとピアさんとヨセフィンさんは訴えます。

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今後は、ホテルのベッドリネンは世界で規格も素材も共通なため、グローバルな活躍を目指しているそう。

「資源のリサイクル、再利用のアイデアが、将来の世代のために今できるベストな解決法の1つだと信じています」

サステナブルな次のステップに、環境に優しいアップサイクルしたエコバッグを選択してみませんか。地球の未来を明るいものにするために、一歩先行く取り組みに貢献し、環境を思いやる心を持って行動することが不可欠な時期にきているのかもしれません。


Reused Remade
https://reusedremade.com


Profile
大迫美樹(おおさこみき)
コーディネーター・ライター。東京都出身。大学を卒業後、アパレル会社や広告制作会社勤務を経て、2007年スウェーデンのストックホルムへ移住。現在はフリーランスで雑誌や書籍、広告、日本企業の仕事を中心にコーディネート全般、執筆に携わる。
Instagram @mikikosmic

 


TEXT = Miki Osako(kokemomo)

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