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2021.12.22 京都の本屋が手掛けるまちづくり。みんなが幸せを感じる場所って、こういうこと!

エシカル情報まちづくり

京都・西陣のそばに2021年11月末にオープンした新施設「堀川新文化ビルヂング」。お隣の堀川団地には堀川商店街があり、その歴史は前身の堀川京極商店街も含めると80年以上。戦前から西陣の人々の台所、社交の場としてにぎわっていた場所です。
「ここは地元の人のための場所。でっかい花を咲かせるというよりは、根付かせたいんです」そう語るのは、この施設を企画した大垣守可さん。“本当の豊かさは、日々の暮らしの延長線上にある”という考えから、書店を入口にギャラリー、カフェ、印刷工房という楽しい構成に。ふらり立ち寄って刺激を受けられる、新しいコンセプトが話題の本屋さんの試みをレポートします。

堀川

 

堀川

 

堀川

堀川丸太町を北に、堀川商店街のすぐ北にある「堀川新文化ビルジング」。施設の目の前は堀川通、堀川が見渡せます。

「アートと交流」をテーマに商店街の再生を目指す

少子化による人口減少や後継者不足、郊外の大型店との競争などさまざまな課題を抱える商店街。全国的にみると、その空き店舗率は平均13.7%(※1)と増加しています。商店街という響きに、もはやノスタルジックな印象を持つ人もいるのではないでしょうか。

ここ堀川商店街は京都市の中心部、堀川通沿いにあります。昔ながらの八百屋や精肉店、シャッターがおりたままの店もあれば、おしゃれなカフェや話題のチョコレート店も。数分散策するだけで、歴史も新しさもともに感じさせてくれる商店街です。

堀川

商店街の店の上、2階3階は住居になっていて全国初のゲタ履き住宅(1階が商店になっている集合住宅)として昭和25年の建設当初は脚光を浴びたそう。この集合住宅が堀川団地。堀川通沿いおよそ600mにわたって連なっています。

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商店街含め、地元民の暮らしを支え、愛されてきたこの団地。築後60年を過ぎ老朽化や耐震性の問題から「再生」が話題にあがるようになりました。

全国の戦災復興市街地住宅のモデルとして名を馳せた建築学上の価値、そして西陣の伝統的なものづくりの文化や精神。これらを次世代に伝えていくため、再生にあたりテーマとなったのは「アートと交流」でした。人々の交流、ふれあいが繰り広げられる場所として多世代・多様な人々が充実した生活を送れるまちづくりを想定し、京都府が堀川団地再生事業(※2)を立ち上げたのです。

※1 中小企業庁平成30年度商店街実態調査 より。
※2 堀川団地は、昭和25年から昭和28年にかけて建設された日本初の鉄筋コンクリート造の店舗付き集合住宅。建設後、勤労者のための貴重な公的住宅として、また周辺住民の生活を支える貴重な商店街としての役割を果たすとともに、戦後の市街地復興のモデルとして全国から注目されたという歴史も。築60年を経過した現在、耐震性能などの諸課題に対応し、再生を図るために、さまざまな検討が行われ、事業が実施されています。(京都府ホームページより)

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「本が作れる本屋」。始まりは一冊の本との出合い

「堀川新文化ビルジング」は、堀川団地再生事業の一環として京都市を中心に展開する大垣書店が開業した施設です。1階が書店と印刷工房とカフェ、2階はギャラリーになっています。
コンセプトは「本が作れる本屋」。その発想の原点となったのは、一冊の本だったといいます。

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その一冊とは・・・?
堀川新文化ビルヂングの企画者、大垣書店の大垣守可さんに伺いました。

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「ウィリアム・モリスの『理想の書物』 です。工場で大量生産された粗悪な商品が世にあふれかえっていた産業革命時代。手工芸、手仕事で作られた美しいものが身のまわりにないと人間は満たされないのではないかーーという芸術論です。最も重要な芸術は美しい家、その次に重要なのは美しい書物だと。それを、そのままこの施設でやったらどうだろう。本が作れる本屋をやってみよう、面白いのではないか・・・と、自分のなかのいろいろな想いがつながりました」

ちなみに、ウィリアム・モリスは19世紀イギリスの詩人であり、思想家、デザイナーとしても知られた人物。近代デザインの創始者といわれ、インテリア製品や美しい書籍を発表しました。植物をモチーフにしたテキスタイルやファブリックは人気が高く、今も根強いファンがいるほど。

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オープンを記念して限定復刊した『理想の書物』。品切れになっていたものを、版元の筑摩書房に大垣さん自らかけあって復刊してもらったそう。大垣書店堀川新文化ビルヂング店とオンラインのみで取り扱っています。


先の、商店街だけでなく書店の店舗数も年々減少傾向にありいわゆる街の本屋さんを見かける機会も少なくなっている昨今。本の流通や利益率の課題、本屋が自立して収益をあげていくにはどうしたらいいかと大垣さん自身ずっと課題感を持っていたのだそう。“新しい本屋”が一冊の本をきっかけに生まれたというところも、本屋さんならではのひらめきです。

「でっかい印刷機があって、その横に本棚。以前から、挑戦的で、この世の中にはない本屋をやろうと考えていました。本を“作って売ること”に重点を置こうと思って。あまりにも挑戦的なのでなかなか方法が見つからず、スタートラインから出発できないまま、コロナもあって・・・4年ぐらい過ぎてしまいました」


大きな印刷機を設置するかわりに・・・

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大きな印刷機から一転、大垣さんの構想は違う形で実現されました。1階の書店内に、アートや自費出版の相談に応じる印刷工房を併設したのです。ついに、「本が作れる本屋」としての一歩を踏み出すことが叶いました。

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印刷工房「昌幸堂(しょうこうどう)」が、「アートブックを作りたい」「本を作って販売したい」というリクエストを受ける窓口となり、紙や製本、そしてもちろん印刷までの相談に応えてくれます。

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こちらの工房は、京都二条で創業60年の印刷会社「修美社」がバックアップしています。印刷のプロがサポートし、一冊を一緒に作ってくれるので安心。すでに、プロのアーティストから、絵本作家の夢を叶えたいという主婦、撮りためた写真をまとめて写真集にしたいという学生さんなど、さまざまな相談が寄せられているそう。

「1月には『紙詣(かみもうで)』と題した紙と印刷のフリーマーケット・ワークショップイベントを開催予定です。ぜひ、気軽にお立ち寄りください」と昌幸堂スタッフ陸(ルウ)さん。


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地元住民との交流を深めるプレ事業に、まる3年

「本屋さんができてうれしい」「長く続けて」待望のオープン日には地元の方から応援の声をたくさんいただいたとうれしそうに語る大垣さん。初日の来場者は想定の5倍以上、さらに新聞や雑誌など連日の取材があり、その注目度と話題性を持ち出すと、以外にも彼の反応はシビアです。

30年後、その先と、地に足がついた話へと展開しました。

「オープンしたては打ち上げ花火みたいなもので。この施設は30年以上続けるという覚悟でやっていて、建物自体でいうとそれ以上は持ちます。長く続ける=派手なことをやろうというわけではないんです。地元の人のためにやる、地元の人に支えてもらう、その循環ができるかが肝なので。
普通の本屋さん以外の要素もいろいろあるけれど、そういうものも含めて地元の風景になじめば長く続くのかなと思っています。でっかい花を咲かせるというよりも根付かせるほうにエネルギーは相当使っていると思いますよ」

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大垣書店の社是は『地域に必要とされる書店でありつづけよう』。子供から年配の方まで手に取ってもらえるよう幅広くスタンダードな本をとり揃えています。 紙モノ雑貨も取り扱い予定だそう。

実は、この施設を建てる前から「本が作れる本屋さん」のプレ事業を始めていたのだとか。それが、活版印刷機で名刺や小冊子などが制作できる試験店舗「堀川AC Lab(エーシーラボ)」。大垣さん自身が、堀川商店街の店頭にたち続けて3年以上地域住民との交流を深めてきたのです。

「試験店舗のおかげもあって、『大垣さん!』って声をかけてもらえるようにまでなりました(笑)。ここからもっと仲間というか、一体になっていけるようにしたいですね。地域の暮らしの邪魔はしたくないので、良い距離感は保ちつつ」

地域の人のためを考えたこの取り組み。うまく折り合うために、どのようにコミュニケーションを取っていけばいいのか。そこはやはり施設うんぬんだけでなく、気持ちの部分が大きいように見受けられます。


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プロもアマも、小さい子もお年寄りも、誰もが立ち寄れるギャラリー

2階にはギャラリー・イベントスペース 「NEUTRAL (ニュートラル)」 とレンタルオフィス事業を展開しています。アート&クラフトを中心に、 展示会やイベントを多数開催していくそう。 地域の人と一緒に作る催事や参加できるワークショップも。気軽に足を運べて、 文化に触れられる空間です。

「いわゆる本屋さんって、ちっちゃい子からご年配の方まで年齢層から職業、趣味の垣根がない。お客さんを選ばない場所ですよね。誰にでも、ちょっとずつ欲しいものがあるというか。このギャラリーもそういう風にしようと思って、中立という意味の『NEUTRAL(ニュートラル)』と名付けたんです」

そんな大垣さんの言葉どおり、取材時も、2階のギャラリーは小さな子供連れ家族や年配のご夫婦、中高生のグループなど多様な顔触れでにぎわっていました。ギャラリーというと、アートに興味のある人がわざわざ目的を持って足を運び、シーンと静かな空間で作品に浸るというイメージがありますが・・・この空間にはもっと自由な空気が流れているよう。

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ギャラリー前のテラススペースは憩いの場所にも。「赤ちゃんを抱っこしたお母さんがひなたぼっこしたり、先日は放課後の学生がゲームしていましたよ(笑)」と大垣さん。


「ここはなんでもやりますというスタンスです。特に専門性を打ち出さず、いろいろやることで頑張って真ん中にいます。『NEUTRAL』というギャラリー名はそういう意思表示でもあるんです。プロもアマもどちらもOK。作家さんはもちろん、地元の絵画教室の個展でもいいし、子供の作品展も企画してみたいです」

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1階のカフェ&バー「Slow Page(スローページ)」。自家焙煎のこだわりコーヒーを本のお供に。地域の人の集いの場。モーニングからフード、アルコールも取り扱い23時まで営業しています。

散歩ついでに入った本屋をきっかけに、ギャラリーで心地よい刺激を受け、カフェでひと休み。思いがけず膨らんだイメージをカタチにしてみようかと、本作りの相談を印刷工房に持ち掛ける。そんな興味と発想がリンクして、創造と感動を大きく育ててくれる。ーーこんな場所が近所にあると楽しいだろうな・・・と、地元のみなさんがうらやましくなるほど、暮らしが豊かになりそうな施設です。


新しさのなかに、歴史の温もりも

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京都の伝統工芸品、京友禅の染め作業で使われていた板を2階のフローリングや棚に再利用。よく見ると所々にシミや傷があり、それがまた新品には出しえない風合いを生み出しています。

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役割を終えた古材を床板として生まれ変わらせる。良いものやそのストーリーを世代や歴史をこえて新しい時代につないでいく。 そんな想いが床板一枚にも込められているよう。

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施設建築前に伐採された、隣家のイチョウの木の丸太をベンチやカフェテーブルに再利用。 樹齢80年ほど、10~20mの大木だったイチョウはシンボルツリーとして堀川商店街を見守っていたものの、台風で倒木の危険性があるなどの理由で持ち主の方はやむを得ず伐採されたそう。

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人の目に、手に触れる場所に置くことでイチョウと地域住民とのふれあいは途絶えることなく続いていきます。

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堀川商店街の新しい顔となった「堀川新文化ビルヂング」。地域の人々が繰り返し足を運び、大切な時間を過ごす場所として、商店街の歴史に新たな展開をもたらし、ともに育まれていく“未来”を感じました。文化やアートとの触れ合い、地元への愛着、コミュニティのつながりは、これからの時代のウェルビーイングに欠かせないもの。商店街活性化のための取り組みは、持続可能な地域づくりの長期的なビジョンとしてもぜひ参考にしたいものです。


堀川新文化ビルジング
https://horikawa-shinbunkabldg.jp/

京都「昌幸堂」
https://shokodokyoto.com/


TEXT = 山下優子
PHOTO = 山下優子

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