マイノリティ・マジョリティとは? 多様な社会の理解を深めるために
2024年現在、日本の総人口は1億2千万人を超えており、誰しもが自分以外の誰かと関わりながら生きています。
そんな大人数のコミュニティで生きるためには、自分の考えだけでなく、周りの考えを柔軟に受け入れることが大切です。
今回は「多様性」の考え方が進む現代において、さまざまな場面で目の当たりにするマイノリティ・マジョリティについて考えてみましょう。
よく見られるマイノリティの種類や具体例を挙げながら、社会に与える影響や問題点に着目してご紹介します。
Contents
マイノリティ・マジョリティとは?
マイノリティ(minority)とは、ある事象において少数派となる考え方やその人々を指す言葉です。
元となったマイナー(minor)という単語には「それほど重要ではない」という意味がありますが、マイノリティの場合は重要かそうでないかといった意味は含まれず、単に数が少ないという意味を持ちます。
例えば、自分と相手の2人が話していて意見が対立した場合、どちらかがマイノリティとなることはありません。
しかし10人のうち1人が異なる意見を唱えた場合、それはマイノリティといって良いでしょう。
一方、マイノリティの対義語として挙げられるのがマジョリティ(majority)です。
こちらも元となったメジャー(major)には「重要」という意味がありますが、マジョリティの場合は単に「多数派」という意味になります。
人気アイドルグループの楽曲名にも使われた単語であるため、耳なじみのある方も多いのではないでしょうか。
マイノリティとマジョリティについて話し合うとき、しばしば「マイノリティ=差別の対象」と捉えられる場合があります。
本来の言語にそのような意味がないにもかかわらず、どうしてこのような考えが生まれてしまうのでしょうか。
続いての見出しでは、マイノリティの具体的な例を挙げながら、社会におけるマイノリティの立ち位置についてご紹介します。
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マイノリティの種類
一言でマイノリティといってもその種類はさまざまです。
あるコミュニティにおいて多数派だった人も、別のコミュニティに行けば少数派になることがあり、自分がマジョリティ・マイノリティのどちらに属するのかは場所・時間・人数などによって変わります。
これからご紹介するマイノリティの数々は、一部では批判の的となることもあり、社会問題として問題視されています。
自分の属する方だけでなく、周りの意見も柔軟に取り入れ、広い視野をもって問題に取り組むことが大切です。
性的マイノリティ
性的マイノリティ、別名「セクシャルマイノリティ」は、マジョリティ・マイノリティに関する問題の中でもひときわ議題に上がりがちです。
これは相手が性的マイノリティであることが分かりやすく、「自分とは違う」といった意識が芽生え、差別の対象となりやすいことが原因といえます。
近年、性的マイノリティに属する人々は、「LGBTQIA+」と表されることが増えてきました。
- L:レズビアン|女性を恋愛対象とする女性のこと
- G:ゲイ|男性を恋愛対象とする男性のこと
- B:バイ|男女どちらも恋愛対象となる人のこと
- T:トランスジェンダー|身体の性別と反対の性自認を元に恋愛をする人のこと
- Q:クエスチョン/クィア|性自認や性的嗜好が定まっていない人のこと
- I:インターセックス|性的な特徴を持つ部位が一般的な男女の状態に当てはまらない人のこと
- A:アセクシュアル|誰にも恋愛感情を持たない人のこと
上記7つの分類に当てはまらないさまざまな性自認・性的嗜好を含める意味でも、最後に「+」マークをつけて表記されているのを多く見かけます。
中には身体の性別は男性・性自認は女性・なおかつレズビアンであるという、一見して男性が女性に恋をしているのと見分けのつきにくいケースも見られます。
また、男性と女性のどちらにも当てはまらない存在「Xジェンダー」なども増えつつあります。
全方向に愛情を持ち、性別を問わず恋愛ができる「パンセクシュアル」も、近年話題に上がることが多いでしょう。
男性は女性を、女性は男性を愛するのが「マジョリティ」とするならば、これらの性的マイノリティはまだまだ少数です。
しかしLGBTQIA+全体で考えると、人口の約1割程度が当てはまるといわれています。
社会的マイノリティ
社会的マイノリティに当てはまるケースは多種多様であり、誰が該当すると一概にはいえません。
端的にいえば、社会の大きな圧力の中で少数派に押しやられ、発言の権利が失われたり、差別の対象となったりすることが多いといえます。
社会的マイノリティの例として挙げられるのは、ホームレスや貧困層などの経済弱者、身体的・精神的を問わず障害を持つ人たち、女性などです。
特に古い時代は女性への差別がはなはだしく、仕事をする権利が奪われていたり、政治的発言権がなかったりすることも珍しくありませんでした。
こういった社会的マイノリティの考え方をなくし、性別・経済状態・身体的特徴に関わらず同じ生活ができるように配慮していくことが大切です。
エスニックマイノリティ
エスニックマイノリティは、日本語に訳すと「少数民族」となります。
私たちが暮らす日本においては耳なじみの薄い方も多いのではないでしょうか。
世界には190ほどの国がありますが、民族に分けるとその数は数千に上るといわれています。
これらの中には継承する人がいないためになくなりかけている民族もあれば、他民族との結婚を重ねて消滅した民族もあり、その数は常に変動を続けているといって良いでしょう。
日本の場合で考えてみると、大きく分けて3つの民族が存在します。
北海道を中心とするアイヌ民族、本土を中心とする本土人、さらには沖縄を中心とする琉球民族です。
これらのうち、もっとも数が多いのは本土人です。つまり日本においては、アイヌ民族と琉球民族がエスニックマイノリティに当てはまるといえるでしょう。
日本を出て世界に目を向けてみると、日本人は「アジア人」として一括りにされ、黄色人種として差別の対象になることがあります。
肌の色での差別は2020年代に入っても未だなくならず、私たちにとっても決して例外ではありません。
気が付かないうちに差別・偏見を持っていないか、一人ひとりが改めて問題に目を向けて考えてみることが大切です。
宗教的マイノリティ
近年、若い世代を中心に宗教への興味が薄れ、無宗教を掲げる人も増えてきました。
今も日本全体を見れば仏教がもっとも多く、日本ならではの神道が続きます。キリスト教など世界的に多くの信者がいる宗教も、日本の中ではわずか数パーセントしかおらず、宗教的マイノリティに当てはまるでしょう。
無宗教である人も含め、宗教的マイノリティが時として争いを生むケースもあります。
世界ではイスラーム過激派が猛威を振るったことをきっかけに、一般的なイスラム教徒が差別の対象となり、身体的・精神的に傷を負った事件もありました。
宗教的マイノリティでは、「相手のことを良く知らない」「何を考えているか分からない」といった理解の不足から差別や偏見が起こります。
日本国内では関心の薄い問題であるとはいえ、世界的に見れば大きな問題の一つといえるでしょう。
カースト制度
インドで行われているカースト制度について、教科書などで見聞きしたことのある方も多いのではないでしょうか。
カースト制度では国民を以下の5階級に分け、それぞれが異なる扱いを受けています。
- バラモン:司祭
- クシャトリア:王族
- ヴァイシャ:庶民
- シュードラ:隷属民
- ダリット:不可触民
現在インド憲法ではカースト制度が明確に否定されていますが、国民の中では未だに色濃く根付き、差別の対象となっています。
バラモン・クシャトリア・ヴァイシャの3つは上流階級とされていますが、シュードラは下流階級、ダリットに至っては他の階級とコミュニケーションをとることさえ許されていません。
ダリットが少しでも触れたものは不浄であるとされ、他の人が触れるのを禁じているため、「不可触民」と名付けられたといわれています。
これはインドの制度ですが、日本でも一部の地域で同じような風習があり、兼ねてから問題視されてきました。
それがいわゆる「部落差別」。
始まりは江戸時代といわれており、武士や百姓・町人に分類されなかった一部の人たちが差別を受け、その子孫が今もなお差別に苦しんでいるのです。
勘違いされがちなのは、これらの人たちは江戸時代で単に差別に苦しんでいたかといえばそうではありません。
一部の人々は農林業・水産業に従事し、また一部の人々は芸能業に従事するなど、私たちの生活に欠かせない職業に就いていたのです。
つまり彼らの子孫も何ら差別されるいわれはなく、このような差別をなくそうとする試みが続けられています。
経済的マイノリティ
経済的マイノリティとは、その名の通り「経済的に苦しい人々」「貧困層」などを指す言葉です。
時にはホームレスや生活保護受給者であったり、時には年収200万円以下の人を指したりと、場合によってその対象は異なります。
例えば、オフィスでデスクワークを行う人を「ホワイトカラー」、現場で身体を使って作業する人を「ブルーカラー」と呼んだ時代がありました。
これは単に来ている服装のことだけでなく、大学を卒業していなければホワイトカラーにはなれない、一生懸命勉強しなければブルーカラーになってしまう、といった差別的意味合いで使われることも多かったのです。
これに伴い、「ホワイトカラー=高給取り」というイメージが広まりました。
一定以上の収入がある人々が貧困層をあざ笑うとともに、体力を使う仕事を見下す人も増えてしまったのです。
現在はというと、現場で働く人々はそれぞれ異なる資格を持っていることも多く、さまざまなスキルを要する仕事が増えてきました。
これに伴い、職業による差別が徐々に薄れてきたといえるでしょう。
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マイノリティ・マジョリティの使い方と具体例
これまでご紹介してきたマイノリティはごく一部であり、私たちの身の回りでもさまざまなシーンで使われています。
マイノリティ・マジョリティの具体例を元に、それぞれのイメージを膨らませてみましょう。
マイノリティの具体例
私たちがイメージしやすいマイノリティに、「左利き」があります。
右利きに比べて数の少ない左利きは全体の1%ほどしかおらず、どちらになるかは脳の発達の影響が大きいといわれています。
左利きだからといって差別を受けるケースはそれほど多くないものの、ハサミやお玉が使いにくかったり、駅の改札を通りにくかったりといった不都合を感じる方も多いようです。
これらの不都合全てに対応するにはまだまだ時間がかかると思われますが、今もなお右利き・左利きに関わらず過ごしやすい設備の導入が検討されています。
左利きと聞くと、「頭が良い」と思われるケースも珍しくないでしょう。
左利きの場合は右脳が発達しており、アーティスティックな感性を持っている方も多いようです。
さらには日常生活で右手を使わなければならない場面も多く、左右の脳をどちらも使っているために処理能力が速いともいわれています。
とはいえこれらの違いは微々たるものであり、個人差も考慮しなければなりません。
「左利きなのにテストの成績が悪い」などといった考えは差別の元となるため、利き手に関わらず同等に考えることが大切です。
マジョリティの具体例
日本人がマジョリティとなるケースとして挙げられるのは、主に日本に住んでいる場合です。
そしてこの場合にマイノリティとなるのは、日本に移り住んできた外国人やハーフの方々です。
学校や職場においてコミュニケーションが難しく、孤立してしまうケースも少なくありません。
こんなとき、マジョリティである日本人がとるべき行動は、マイノリティを特別扱いすることではありません。
日本語でやり取りができないのならば翻訳アプリを使い、生活スタイルに違いがあるのならば寄り添い、周りの日本人と同じように接することが大切です。
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マイノリティ・マジョリティの影響
マイノリティ・マジョリティの問題は、いかなる場合であってもゼロにすることはできないでしょう。
人々の間で考えが割れたり、出身や職業が違ったりする限り、多数派・少数派の違いはどうしても出てきてしまいます。
問題なのは、時としてマジョリティがマイノリティの考えや生活スタイルを圧倒し、差別の対象として捉えてしまうといった点です。
経済的マジョリティでは家を失う心配がなく、カースト制度上では差別を受ける心配がないなど、マジョリティには一種の特権があります。
これは本人の意思に関わらず自動的に付与されるもののため、気が付かないうちにマイノリティを差別したり、下に見たりしてしまうこともあるでしょう。
私たちが重視しなければならないのは、「マイノリティ=悪」といった考えを根本から捨てることです。
自分と違うからといって悪いわけではなく、数が少ないからといって軽視して良いわけではありません。
冒頭でも述べたように、私たちはいつでもマイノリティ・マジョリティの両方に属しています。
考え方を変え、多数派・少数派に関わらず相手の認識を受け入れることが大切だといえるでしょう。
まとめ
マイノリティとマジョリティが対立してしまうのは、コミュニケーションが不足し、お互いを理解できていないことが原因です。
視野を広く持ち、相手の考えを受け入れることこそが、根本的な差別をなくす第一歩となるでしょう。
私たち人間に与えられたコミュニケーション能力は、相手をけなすためにあるわけではありません。相手を理解するためにその言語を使い、より良い社会を目指していくべきだといえます。