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プレイセラピーのやり方や対象となる子供の特徴は?成功事例も紹介

 

私たち大人が誰かとコミュニケーションをとるときは、言語を使って繊細な気持ちの変化までしっかりと伝えられるでしょう。

 

しかし子供の場合はそうもいかず、抱えている気持ちを100%読み取るのは難しいものです。

 

そんな子供たちの精神状態を把握すべく考えられたのが「プレイセラピー」です。

 

日本語に表すと「遊戯療法」とも呼ばれており、子供にとってさまざまな効果があるといわれています。

 

今回はそんなプレイセラピーのやり方や対象となる子供の特徴をご紹介しながら、一体どんな効果をもつ療法なのかを探っていきましょう。

 

プレイセラピーとは?

 

プレイセラピー(遊戯療法)とは、私たち大人が子供の心を理解するために生み出された方法の一つです。

 

子供に対する療法は種類が豊富で、どの療法が合っているかはやってみなければ分からない部分も多くあります。

 

カウンセラーと対話しながらカウンセリングを受けてみましょうといわれても、問いかけに答えられず上手くいかない子も少なくないでしょう。

 

知らない人の前では緊張してしまったり、自分の気持ちを言葉で表すのが苦手だったりする子供に対し効果的だといわれているのがプレイセラピーです。

 

子供に好きなように遊んでもらい、その様子を観察することで抱えている気持ちを汲み取るために行われています。

 

一般的な会話形式のカウンセリングでは緊張してしまう子も、普段遊び慣れたおもちゃがあったり、初めて見るおもちゃに触れたりするうちに自然な態度で接してくれるようになるでしょう。

 

カウンセラーが時には見守り、また時には一緒に遊んでくれることで、子供もゆっくりと慣れていけるでしょう。

 

プレイセラピーの効果や狙いは?

プレイセラピーは、一見子供がただ遊んでいるようにも見えるため、どんな効果があるのかイメージしにくい方も多いのではないでしょうか。

 

プレイセラピーでは、最終的な目標を「子供が自己表現できるようになる」などといった点に定めて行われます。

 

緊張しがちな子供は肩の力を抜いて他人と関われるように、他人に対し攻撃的な態度をとってしまう子供は気持ちを抑えて他人と関わりやすくなるようにするなど、状況に応じて声掛けの内容を変えていくことが大切です。

 

最初は黙って遊んでいるだけだった子供も、遊びを通して大人と心を通わせられるようになり、次第に同年代の子供と上手に関われるようになっていきます。

 

コミュニケーションに不安要素のある子供の中には、やりたいことがあってもどう声をかけて良いか分からなかったり、そもそも自分がどうしたいのか分からなかったりとモヤモヤした気持ちを抱えている子も少なくありません。

 

遊びを通して自分と向き合い、「自分はこう考えている」「自分はこうしたいと思っている」といった考えがまとまることで、他人との関わりもスムーズにできるようになるでしょう。

 

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プレイセラピーと似ている言葉との違い

 

プレイセラピーと似ている言葉には、「療育」や「遊び」があります。

 

一見遊んでいるだけに見えるプレイセラピーが、これらとどう異なるのか見ていきましょう。

 

療育とは、精神障害・身体障害・知的障害とさまざまな状態の子供が受けるものです。

 

その内容は子供によって異なりますが、いずれもそれぞれの子供が悩みを解決し、今後社会に出る際に困らないような状態を目指すために行われます。

 

身体障害がある子には運動療法を、知的障害がある子には知育療法を行うなど、子供に合わせた方法を選ぶことが大切です。

 

遊びとプレイセラピーは似て非なるものであり、遊びの中で声掛けを行いながら悩みの改善を目指すのがプレイセラピーです。

 

通常の遊びではケンカをしたときや泣いているときにのみ声掛けをすることも多いですが、プレイセラピーでは子供の様子を見ながら常に声掛けをしていくのが特徴です。

 

子供にとっては普段の遊びと変わらないため、より肩の力を抜いて過ごせるのがメリットといえるでしょう。

 

プレイセラピーの対象となる子供の特徴

プレイセラピーを行うのに適しているとされるのは、おおむね3歳頃から小学校卒業程度までの子供たちです。

 

自分の言葉で少しずつ気持ちを伝えられるようになれば、プレイセラピーを受けても効果が見られやすいでしょう。

 

また、プレイセラピーの対象となる子供たちは、チック症や吃音症・場面緘黙症などで会話を避けがちな子や、暴力がみられ他人との関わりが上手くいかない子、不登校の子などさまざまです。

 

年齢に応じて言葉が出にくい子であったり、自閉症・ADHD・アスペルガー症候群などの診断が下りた子であったり、一人ひとりに合った内容で声掛けを行うことで効果が得られやすくなります。

 

療育の一部として行われるケースも珍しくありません。

 

これらの悩みを抱えた子供たちは、家でお父さん・お母さんや兄弟と関わっているだけでは悩みが改善されない場合があります。

 

プレイセラピーを上手く取り入れることで、子供へ負担をかけずにコミュニケーションを取りやすくなるでしょう。

 

関連記事:自己肯定感が低い原因はプライドが高いから?親のせい?高める方法とは

 

プレイセラピーのやり方

 

プレイセラピーを行う際は、大まかな流れに沿って子供一人ひとりへ対応していきます。

 

まずは子供に日頃過ごしているのと同じ状態で、リラックスして遊んでもらうことから始めます。

 

これにより子供が抱えている悩みを明らかにし、どういった対応が必要なのかを浮き彫りにしていきます。

 

普段周りとうまく話せずに一人でいることが多かったり、気に入らないことがあると手が出てしまったりと、実際の様子を見ることで対応策を考えやすくなるでしょう。

 

続いて、これらの行動を起こすとき、本当は子供がどう考えているのかを考えます。

 

一人でいるからといって周りと遊びたくないわけではなく、本来であれば声をかけて混ぜてもらいたいと思う子もいるでしょう。

 

手が出てしまうのにも理由があり、どうやってイライラした気持ちを発散すれば良いか分からないだけかもしれません。

 

こういった一人ひとりの状況を踏まえ、ここでようやくプレイセラピーの目標を立てられます。

 

「自分で他人を遊びに誘えるようになる」「イライラしたときは一旦落ち着き、手を出さないようになる」など、無理のない範囲で目指すべき姿を考えることが大切です。

 

この目標を達成するためにどのような声掛けを行うべきか、時にはお父さん・お母さんも含めて話し合いが行われます。

 

プレイセラピーでの声掛けは特別難しいものではなく、「お友達を誘うときは何て言ったら嬉しいかな」「叩くと自分の手も痛いから、一度深呼吸してみよう」など子供の気持ちに寄り添うことが一番大切です。

 

一日で目標を達成する必要はまったくないため、始めたばかりのときは子供と他愛ない会話をするのも良いでしょう。

 

一緒に遊んでいる中で「この人が楽しい」と思ってもらえれば、自然と会話が続き、気持ちを伝えてくれる子も少なくありません。

 

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プレイセラピーの成功事例

 

プレイセラピーを行っている医療機関や療育施設は非常に多く、成功する場合もあれば別の方法が合う場合もあります。

 

今回は江戸川大学で行われたプレイセラピーについて、伊藤渚氏がまとめた論文をご紹介します。

 

本件は小学校2年生の女子児童が学校へ行きたくないと訴えたことで、母親が心配して教育相談を受けたことが始まりです。

 

周りとのコミュニケーションが上手くいかず、時には手が出て周りと衝突し、2年生に上がったタイミングで学校へ行けなくなってしまいました。

 

泣いたり怒ったりといった情緒の不安定さが見られ、時には自傷行為に及んでしまうこともあったようです。

 

当初女子児童はプレイルーム内でのびのびと過ごすことができず、自由にして良いといわれても周りに迷惑をかけないように振舞ったり、ゲームをしても大人を勝たせたりといった「気遣い」が見られました。

 

髪を口に入れる様子から、落ち着かないことがあっても上手く言葉に出せず、気持ちを閉じ込めてしまうことが伝わってきます。

 

時間をかけるにつれ、女子児童はゲームで勝ちにこだわったり、のびのびと遊ぶ様子が見られたりするようになりました。

 

学校でトラブルがあった際にどう考えていたのか、自分の感情も素直に伝えてくれるようになったといいます。

 

「本当は一緒に遊べる友達がほしい」といった願いも口にするようになり、次第に自傷行為や暴力が少なくなっていきました。

 

最後まで見られた会話内での「攻撃的表現」においては、大人がごっこ遊びの中で攻撃的な言葉で傷つけられている役を演じることで、自分の周りの環境を客観的に見られるようになりました。

 

次第に学校での友達ができ、無事肩の力を抜いて生活できるようになるまで、時間はかかったものの彼女が得たものは大きかったといえるでしょう。

 

このように、プレイセラピーは解決までに長い時間を要することも少なくありません。

 

逆に言えば、時間をかけて行うことでその子の本質が見えやすくなり、信頼関係を築くことで子供の本当の気持ちを理解しやすくなるのです。

 

どんな子供でも心の中ではさまざまなことを考え、悩み、葛藤しながら生きています。これらの考えを大人が汲み取り、自然な形での放出を目指すことが重要です。

 

引用元:人との関わりがうまくいかない子どもとのプレイセラピー【PDF】

 

プレイセラピーの効果がない子供はいる?

「こんな子供はプレイセラピーを受けるべきではない」といった明確な指針は存在せず、やってみて初めて効果がなかったり、別の方法が合っていることが発覚したりする場合もあるでしょう。

 

また、自閉症やADHD・アスペルガー症候群といった発達障害が診断されている子供にとって、プレイセラピーが他者との関わりをスムーズにすることはあっても、発達障害そのものを克服できるかといえばそうではありません。

 

子供にとって良い方法を組み合わせて試し、時間をかけて他者との関わりを促してあげることが重要といえるでしょう。

 

まとめ

プレイセラピーは通常のカウンセリングとは異なり、遊びながら子供の自立を促せるものです。

 

堅苦しい話し合いが苦手な子も、好きなことで遊べる時間となれば、肩の力を抜いて過ごしやすいのではないでしょうか。

 

あくまでも療法の一種として、目標とする状態まで長い時間をかけて進んでいくことが大切です。


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