あなたの寄付が幸せを紡ぐ。自分をも幸せにする「誰かのために」【Editor’s Letter vol.07】
Humming編集長 永野舞麻がカリフォルニアから配信する「Editor’s Letter 」。日々の暮らしで感じた気付きや、人生において大切にしていることを綴っています。
毎月欠かさず行っているとある団体への寄付。
その行動がどのように誰かの未来を変えているのか、その真実を自らの目で見るために、私はインドのバラナシへと向かいました。
世界では推定5000万人が、強制労働や性的搾取など、奴隷制の犠牲になっている現実を知っていますか?
(※参考:現代奴隷制の世界推計)
特にインドでは、貧困や社会的な格差が奴隷問題を助長し、多くの人々が過酷な状況下で働かざるを得ない現実があります。
私は今回インドで人々が奴隷から解放される瞬間を目の当たりにしました。自由を手に入れたことで、人々の目には輝きが戻ったのです。
自分の寄付が誰かの笑顔に繋がることを体感し、私自身も大きな幸せを感じることができました。
寄付したお金の行先とは?!奴隷解放の瞬間を目にしたインドへの訪問
2023年10月、定期的に寄付を行っているとある団体からの声がけで、奴隷解放を後押しするためにインドのバラナシに向かいました。
私が訪れた村々には劣悪な環境で地主に仕えて働く、いわゆる奴隷がたくさんいました。
村の人々は土の上に建てられた木造の家で、ハンモックのようにロープをはったベッドで寝ています。
電気も通っていないので、明かりは焚き火のみ。
食事も牛の糞を固めて乾かしたものを燃やして作り、水は井戸から汲み上げられたものを使います。
お金は1週間の給付金が地主からもらえますが、それもほんのわずか。
幼い頃からずっとまともに栄養を摂れないため、大人であっても背が低く、痩せ細っている。
いつ生まれたのか出生証明書がないので年齢は不明。また、誰との間に授かったかわからない赤ちゃんを抱っこしている女の子もいました。
私はそこで、6ヶ月前までは地主に仕えて苦しんでいたひとりの女の子に出会いました。
どうして奴隷になってしまったのか、そして何がきっかけとなり奴隷から解放されたのか、話を聞くことができました。
彼女はとある村で家族と貧しい暮らしをしていました。
ある日「良い仕事があるよ」と言われ、その人を信じて家族で村から200キロも離れた場所に連れて行かれたのです。
もちろん良い仕事があるというのは全くの嘘。奴隷にするための口実でした。
そこでは、ご飯をろくに食べられなかったり、作ったご飯を蹴り飛ばされるなどの嫌がらせをされたり、意味もなく夜中に叩き起こされたりしました。
ひどい環境の中で長時間休みなく働くことを強いられていました。
そんな環境に耐えられなくなり、ある晩、意を決して家族でその村から逃げ出したのです。しかし、途中で彼女とお姉さん以外は地主に捕えられてしまいました。
家族を助けるためにも彼女たちは必死で逃げました。そして、その途中に奴隷解放に力を注いでいる慈善団体のメンバーに出会ったのです。
彼女たちは微かな望みをかけてその団体に「家族を救って欲しい」と助けを求めました。とはいえ、団体は彼女たちがどの村に住んでいたのかすらわかりません。
1ヶ月ほどかけて事実確認のための調査を行い、場所を特定して彼女たちが奴隷にされていた村を訪れました。
そこで目にしたのは、狭い一室に閉じ込められていた彼女の家族でした。
地主から「奥さんを連れ戻さなければ生き埋めにしてやる」と脅され、部屋の外には生き埋めにするための穴が掘られていました。
助けに行くのがあと少し遅れていたら、きっと彼女の夫や両親は殺されていたことでしょう。
彼女が地主から逃げ、勇気を持って自分たちが置かれている状況を団体に話したことで、彼女の家族は地主から解放されることができました。
今では、国からお金を借りて畑を耕し、育てた野菜を市場で売ったり、イケアなどで販売しているようなジュートのマットなどを作って、企業に買い取ってもらったりしています。
彼女達は、自分たちで生活費を稼ぎながら自由を手にして暮らしています。
自分の現状を知ることの大切さ
「どうして警察に助けを求めないのか?」、疑問に思う方がいるかもしれません。
インドではカースト制度の考えが根強く残っています。
そのため、カーストが低い人たちは、自分よりもカーストが上の人たちと話をすれば痛めつけられるかもしれない恐怖に怯えているのです。
さらには、メディアに触れる機会がないため、自分たちが地主からされていることが違法行為であることさえ知りません。
現地の奴隷解放運動をしている人たちに話を聞くと、最初は彼らを助けるために村を訪れても口を聞いてくれないと言います。
学校を建てて、子どもたちのお昼ご飯を食べられるようにしてあげるから、子どもを学校に送るようにと、まず説得します。
そして「私たちはあなたを傷つけるようなことはしない」と信頼してもらえてようやく話をしてくれるようになると。
「奴隷制度が違法であること」、「あなた達がこんなひどい扱いを受けるのは当たり前ではないこと」、「自分たちで地主に今の状況から解放するように訴えられること」
「警察に助けを求められること」を彼らに伝えていきます。
そうすることで、奴隷として生きていた彼らは自らの力で「もう、正当な賃金なしでは働かない」と地主に訴え、奴隷から解放されていくのです。
毎月の寄付は誰かの人生を変えている
私は、人々が奴隷から解放される瞬間を目の当たりにし、毎月の寄付が誰かの人生を変えるきっかけになれていることを、自分の目で確認することができました。
出会った時は、ひどい環境下での労働を強いられ、絶望に満ちた目をしていたひとりの女の子。
自由を手に入れてからは明らかに表情が明るくなり、まるで希望の光が照らしているかのように目が輝いていたのです。
どんなに絶望の中にいても人は希望を取り戻せる。生命の強さを感じずにはいられませんでした。
辛い環境で生きる人々に手を差し伸べることができて、本当に良かったと心から感じています。
「誰かのため」は自分さえも幸せにする
日本ファンドレイジング協会が発行する寄付白書2021によると、2020年時点での日本の個人寄付総額は「1兆2,126億円」。10年前と比べると2.5倍ほど増加しているものの、同年のアメリカの寄付額(34兆5,948億円)と比べると30分の1ほどです。
また、イギリスの慈善団体「チャリティーズ・エイド・ファンデーション(CAF)」の2022年の調査では、日本の「世界人助け指数」は119ヵ国中118位。宗教的な背景や税制上の待遇などが要因となり、寄付文化が他国に比べて根付いていない状況と言えるでしょう。
人は「他の人が幸せになることを望む生き物」です。自分のために鞄を買ったり、美味しい食事を味わったり、もちろんそれも自分にとっての幸せです。
しかし、利己的なことだけで幸せを感じ続けるには限界があるものです。
利他性と幸福度の関係にまつわるさまざまな実験や研究が、世界中で行われています。
お金を自分のために使った人と、他人のために使った人とでは、後者の方が明らかに幸福度が高いといった研究結果も出ています。
あなたが自分以外に関心を寄せるものは何ですか?たとえば、子ども、動物、医療、環境保全、災害・復興支援など。
自分の関心を探り、今の自分にできる範囲で寄付やボランティアを始めてみるのもおすすめです。
誰かのためにとる行動は、自分自身を幸せにする近道なのです。
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