夢分析とは?象徴のそれぞれが持つ意味や実践方法とは?
心理学における「夢」とは、しばしば一般的なイメージ以上の意味を持ちます。
今回はそんな夢を細部まで読み解き、象徴がもつそれぞれの意味から心理状態を探る「夢分析」についてご紹介しましょう。
心理学においてたびたび取り上げられるフロイトとユングの夢分析はどう違うのかについても解説します。
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夢分析とは?
夢分析と聞くと、何だか「夢占い」のようなイメージを抱く方も多いのではないでしょうか。
見た夢の内容によって今後の運勢や自分の置かれた状況を占う夢占いに対し、夢分析はもう少し自分本来の意識が引き起こすものとして考えられています。
夢は意識して見られるものではないため、自分が心の奥に閉じ込めている気持ちが現れやすく、これが日常生活に強く影響を与えるといった考えです。
夢分析の考えはオーストリアの心理学者であるジークムント・フロイトが、自身の著書「夢分析」を出版したことからスタートしました。
これに感銘を受けたフロイトの弟子カール・グスタフ・ユングは、彼の考えに共感しながらも、一部異なる夢分析の考えを公表しています。
彼らの生きた1850~1950年代頃から現在まで、夢分析は心理療法の代表的な技法のひとつとして利用され続けています。
夢を見ない人はほとんどいないため、悩める多くの方にとって夢分析は有効な方法といえます。
心の奥底に秘められた感情を紐解き、自分自身を深く見つめることで、本当の問題点を明らかにすることもできるでしょう。
自分自身でさえも気が付いていない自分の本心を知ることは、これからの人生を充実させるためにも欠かせないポイントといえます。
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フロイトとユングの夢分析の違い
心理学者であり精神科医として同じ時代を生きたフロイトとユング。
彼らの唱える夢分析には少々異なるポイントがあり、それぞれ非常に興味深い点があります。
今回は彼らの夢分析を3つの点において比較し、どのような点が違うかをご紹介します。
無意識に対する解釈の違い
フロイトとユングは、いずれも「無意識」について異なる解釈をしています。フロイトにとっての無意識は普段の意識とは別にあると考えます。
無意識は普段意識の外にある記憶や本来持ち合わせている願望を表すものとして重要であり、その領域は個人の中にのみあるとされているのが特徴です。
意識を尊重するあまり願望が無意識の中へ追いやられると、願望は浮上するのが難しくなり、どんどんと奥へ押しやられてしまうでしょう。
これは人格の発展において悪であり、防ぐべき事象であるとされています。
一方のユングはというと、意識と無意識は決して別次元の存在ではなく、互いを補い合っているような関係性だと述べています。
無意識の中には自分自身に抱くイメージとはまったく異なる「別の自分」が存在しており、意識と無意識の両方を統合することでより人格的に発展した存在になれると考えています。
さらにユングの考える無意識には「個人的無意識」と「集合的無意識」があり、集合的無意識は多くの人に共通して備わっているとされる点が特徴的です。
リビドーに対する考えの違い
精神分析学において「リビドー」とは、私たち人間の一人ひとりに備わっている本来の欲求やそれを叶えたいと思う原動力を指します。
これは理性によって抑え込めるものではなく、一人ひとりに必ず備わっている欲求といえます。
このリビドーに関しても、フロイトとユングではそれぞれ異なる解釈がありました。
フロイトの考えるリビドーは「ネガティブ」であり、人格の発展に邪魔となるようなものです。
主に性的欲求に絡めて考えられており、人間は性的欲求に支配されて生涯のパートナーを選んでいる、といわば批判的な意見を持っています。
一方のユングは、性的欲求は生命活動の一環であり、決してネガティブなものではないと説きました。
身体が大人に近づくにつれてリビドーが発達するのではなく、あくまでも生命の一部であり、人間にとって欠かせないものと考えています。
診察・治療の違い
フロイトとユングはいずれも心理学者ですが、同時に精神科医でもありました。
お互いに患者を診察・治療していましたが、その方法に関しても大きな違いがあったようです。
フロイトは「精神分析療法」を用い、神経症の治療を主としていました。
患者が頭の中に浮かんだことを自由に口に出すことで、意識の外にある無意識を少しずつ拾い、抑圧された本来の願望について考える方法です。
フロイトが診ていた神経症患者はきっかけがないのに不安発作が出現するなどして悩んでいましたが、この発作の原因が無意識の中にあると考え、患者と対話を重視した治療を行っていたようです。
これはのちに「自由連想法」と呼ばれています。一方のユングは、本記事のテーマでもある「夢分析」を用い、統合失調症の患者に対応してきました。
日頃見た夢の内容を書き留めてもらい、その内容に本質が隠されているとして治療を進めていく方法です。
統合失調症とは自らの考えや気持ちが一つにまとまらないことで悩む方を指し、しばしば幻覚や妄想が起きたり、集中力や意欲の低下が起きたりするでしょう。
そんな統合失調症の患者に対し夢分析を行うことで、まとまらない考えの中に眠った本質を見抜き、自らを見つめなおすきっかけを作っていたと考えられます。
夢の象徴のそれぞれが持つ意味
夢分析において、夢にどんな対象が登場したのか、またどんな出来事の起こる夢だったのかは重要なポイントとなります。
自分の見た夢がどのような意味を持つのか、それぞれの象徴ごとにご紹介します。
人物の象徴
人物にまつわる代表的な象徴とそれぞれが持つ意味は以下の通りです。
- 赤ちゃん:傷つきやすさや弱さの象徴であると同時に愛すべき存在
- 子ども:生命力や若さに溢れ、これからの未来に明るさや可能性を見出す
- 魔女:嫉妬や否定的な感情があふれ、何をするか分からないもの
- 王様、王子様:統合を目指し、周りを支配する高度な存在
- 小人:生命力や治癒力・想像力にあふれ、周りを見ながらよく働く
- 乞食:どこかで誰かの慈悲を求めながら、貧困や困難に苦しむ
生き物の象徴
生き物にまつわる代表的な象徴とそれぞれが持つ意味は以下の通りです。
- 犬:忠誠心に溢れ、深い愛情を持って他者に接する番人
- 牛:忍耐強く温かな母性をもった母親的存在
- 馬:活気にあふれ、直観で行動する力を持った人
- 熊:冬眠から目覚め、力強く荒々しい母性を抱えた人
- 象:父親は権威、母親は保護を象徴とし、周りとの助け合いを大切にする
- ライオン:欲望と洞察力が優れ、他者を導く知恵と保護力のある存在
- ワニ:こちら側に引きずり込む破壊的な力を持つ
- 鳥:広い視野とひらめきを持つ精神的に自由な存在
- カエル:成長によって形を変える未知の可能性を持つ
- 蛇:毒にも薬にもなる大きな力を持ち、死と再生の両方を司る
- 魚:自然溢れる環境で育ち豊かさや実りを意味する
- 蜘蛛:自分を中心とした世界を愛し、高い想像力を有する
- 蜂:小さな身体で命をかけて相手を刺す鋭い痛みと魂を意味する
- 龍:高く上昇する力を持ちながら、どこか危険性を秘めた魅力を持つ
- 樹:全ての生命の大元であり、上へ上へと成長していく姿を意味する
- 花:これまでに溜め込んでいた感情が開花し、冬の終わりを告げる
自然の象徴
自然にまつわる代表的な象徴とそれぞれが持つ意味は以下の通りです。
- 月:本性とは異なる隠された側面や謎の多い魅力
- 太陽:暖かさと生命の源であり、強い自我を持つ存在
- 星:無意識の中でも光を放つ強い意識や希望・願望
- 火:荒々しさの中に精神を浄化する働きをもった熱い感情
- 水:生命の源であり高い治癒力を誇るのに対し、無意識を表す存在ともいえる
- 風:感情の乱れやエモーションなど魂の変化や心の動きを指す
- 雨:天空の恵みであり、地上の悪を浄化する役割を担う
- 雷鳴:天からの強い力を表すと同時に、ひらめきや洞察力・直観を象徴する
- 虹:これから起こる未来への期待や希望、完成までのステップ
- 海:全ての生命が産まれる母体であり生命力と死が両立する
- 川:時間の流れを表すと同時に、別の世界と世界を隔てる境界線でもある
- 泉:無意識の中で生命力が溢れ出ており、愛情や治癒力を司る
- 石:決してなくなることのない永遠な存在であり富や名誉を表す
- 洞窟:無意識への入り口であり暗闇や無意識に潜む危険を示す
- 森:動物などの生き物と自然の宝庫であり探求心や冒険欲が掻き立てられる
- 山:困難や苦行を超えて自我を確立できる非日常的なもの
人工物の象徴
人工物にまつわる代表的な象徴とそれぞれが持つ意味は以下の通りです。
- 鏡:自分のありのままを映すものであり霊魂や生命力が封じられている
- 城:栄光と支配を意味し自我が責められるのを防衛する
- トイレ:不要なものを排除し自らが抱えている孤独や孤立を無意識へ戻す
- 電車:新しい生活へスタートを切る力やエネルギー
- 指輪:永遠の愛を誓い合う結婚のシンボル
- 時計:現実的に待ち受ける運命に向かって刻々と進んで行く時間
- 仮面:自らの真意を隠し建前や民衆の声を体現するもの
- 冠:今が人生の絶頂期であり勝利や成功・地位や権威を表す
- 船:凪いだ海を無意識の深層心理に例えゆったりと海を渡る様子
- ランプ:無意識の中を意識が光で照らし、新たな発見をする
- 壺:中に抑圧された秘密を好奇心から覗く様子
- ガラス:触れただけで壊れてしまうようなもろさ
夢には深層心理が現れる
普段意識して考えていないような内容であっても、夢には深層心理として現れる場合があります。
夢の内容は決して否定して良いものではなく、本当の自分が隠されていると考えましょう。
例えば、誰かを害する夢を見たとします。このときあなたの深層心理は、決して夢と同じく「誰かを害したい」と考えているわけではありません。
夢と願望が直結しているわけではなく、この場合は「夢で害した相手と距離を置きたい」と考えているのだといえるでしょう。
表向きは円満な関係を築けていると思っていても、自分の本当の気持ちが夢を通して表れているのかもしれません。
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夢分析の自分で行う方法
専門的な夢分析とはいかないものの、自分自身でも簡易的な夢分析を行うことができます。今回は夢分析の実施方法を7つのポイントに分けてご紹介します。
夢を記録する
夢分析は夢の内容から判断するため、まずは覚えている限りの内容を書き出すことから始めましょう。
起きたときに覚えていた夢も、時間が経つにつれて分からなくなってしまうことがあるため、朝に日記をつける感覚で記録を行うことをおすすめします。
夢全体の流れはもちろんのこと、誰が登場したのか、どんな場所にいたのかなどもより細かく記載できると良いでしょう。
夢の状態から大まかな心理状態を考える
記録した夢を見てすぐに細かな分析を始めるのではなく、まずは大まかな心理状態をイメージしてみましょう。
楽しい夢であればそのまま楽しい心理状態であると判断できますが、どちらでもない場合も多々存在します。
家の周りを散歩している夢であれば、「道端で花を見つけてテンションが上がった」とポジティブな連想ができる場合もあり、「途中で雨が降ってきてしまった」とネガティブな連想ができる可能性もあります。
夢辞典を参考に夢を解釈する
先ほどご紹介した夢の象徴が持つ意味を参考に、夢の内容を解釈していきましょう。
一つ目にご紹介した「赤ちゃん」は、少し触れただけでも泣いてしまうような繊細さと、誰しもに愛される魅力を兼ね備えた存在です。
赤ちゃんに関する夢を見たときは、ストレスが溜まっており今にも爆発しそうな繊細さを持ち合わせている一方、あなたがそこにいるだけで周りから愛される素敵な存在であることを示しているでしょう。
元型から夢の意味を探る
夢分析を用いて治療を行っていたユングは、私たちが内側に抱いている概念の象徴を「元型(アーキタイプ)」と名付けました。
夢に現れる象徴がどの元型に当てはまるのかを考え、夢が持つ意味を探りましょう。ユングの唱える元型とそれぞれの意味は以下の通りです。
- シャドウ:人間の悪い面やその人の弱点を表す
- ペルソナ:誰もが内側に秘めている思いを隠すため、仮面を被っている状態
- アニマ:男性の中にある女性的かつ繊細的な部分
- アニムス:女性の中にある力強い男性的な部分
- グレートマザー:誰しもがイメージする偉大な母親像
- オールドワイズマン:精神的な支えとなってくれる偉大な父親像
- セルフ:表に出している人格の裏に隠れた本来の自分
- エゴ:夢の中のシーンを第三者の目線で観察している様子
- 子ども:エネルギーに溢れ、これから来る新たな未来を象徴する存在
自覚している心理状態と照らし合わせる
あなたが赤ちゃんに関する夢を見たとき、夢分析では「ストレスが溜まっている」と出るでしょう。
しかし実際はストレスなど感じておらず、毎日健康的に過ごしている場合、夢分析との相違が生まれてしまいます。
夢分析は自身の深層心理を探るものであるため、相違があるということは、すなわち自身の本質に気が付けていないということになります。
夢分析の結果と自覚している心理状態を照らし合わせ、相違があった場合は見逃している感情がないかを改めて考えてみましょう。
以前見た夢との関連性を考える
夢分析では当日に見た夢だけを考慮するのではなく、昨日やその前、時には一年前の夢を使う場合があります。
人間は毎日生まれ変わっているわけではないため、少なからず過去の影響を受けて生きています。
夢分析においても、過去の夢が現在に干渉している可能性は十分に考えられるでしょう。
総合して夢を分析する
1から6までのステップを綜合して、自分の見た夢がどのような意味を持つのか分析します。
答えが一つになるとは限らず、見る側面によって様々な見え方が出てくるかもしれません。
これは今の自分自身を表すと同時に、これからの生きるヒントにもなるため、決して無視することなくしっかりと向き合いましょう。
まとめ
夢分析は古くから用いられる治療法でありながら、現在の私たちにとっても自分を知るために重要な方法といえます。
フロイトやユングの考えを知った上で、今の自分がどのように感じて毎日を過ごしているのか、その深層心理を詳しく探ってみてはいかがでしょうか。