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不安なきもちとの上手なつきあい方

Written by
堀江知子(ほりえ ともこ)

*この記事は、社交不安症(ソーシャル・エンザイアティー)を経験したアメリカ人の筆者の記事をもとにしたものです。

 

 

ごく日常的な場所でこんなことはありませんか?
例えば、スーパーに買い物に行った時。

 

シャンプーを選ぶのに時間がかかりすぎている自分をみんなが変な人だと思って見ているかもしれない。ずっと買い物かごが空っぽの状態でこの人は何をやっているんだろうと思われているかもしれない。レジに並びながら、あちらのレジのほうが進み具合が早いけど、あちらに行ったら優柔不断だと思われるかもしれない。

 

こんな風に、人に見られている場面で何かをすることをとても不安に感じることはありませんか? 批判されたり間違ったことを言っていないかと不安になり、人と関わることを避けがちになるこの社交不安症、最近は日本でも耳にするようになりました。

 

でも、私たちはこんな不安に支配される必要はないんです。ちょっとしたコツをつかめば、社交不安症の人も満足のいく社会生活を送ることができます。その方法を紹介したいと思います。

 

自分の内面をよく見てみる

内面への働きかけは、社交不安症に対処するのに大切ですが、これは簡単なことではありません。なぜなら、たいていの場合、他人からどう見られているかを気にしなくなるには時間がかかりますし、自分ではどうしようもないことに不安を感じていることが多いからです。

 

内面をよく見るためには、自分の思考や感情、リアクションにあなたがもっと注目することが不可欠ですが、これには、かなりの練習が必要となります。その点で、瞑想やマントラを唱えることは、自分自身をグラウンディング(自分と地球のつながりを感じてエネルギーのバランスを取ること)させ、気持ちを落ち着かせるのに役立つでしょう。

 

不安を感じたときにぜひくり返してほしいおすすめのフレーズがあります。

 

「他人がどう思うかなんて気にしていない」

 

実際、私は他人がどう思っていようが、私が喜ぶことをするほうが好きなんだとやっと気づいた時に、この言葉の重みを改めて強く実感しました。このフレーズを自分に言い聞かせることで、私は不安になった時にこの自分の軸に立ち戻ることができるのです。

 

自分に語りかけるフレーズは自分に合ったものを自分で作ればいいんです。不安な思考がまたぶり返して戻ってくることはありますし、社交不安が完全に消えなくてもいいんです。自分の意識を内側に向ければ向けるほど、不安の度合いは対処しやすくなっていくでしょう。

 

一緒にいて安心できる友人を見つける

 

社交不安症の人は、友だちが多すぎると精神的に疲れがちです。その代わり、信頼できる小さな友達の輪を持っていればそれで良いのです。そういう友達は、社交的な場でも、あなたがある程度のスペースを必要としていることをわかってくれています。

 

人と距離を置いたり、友人との予定をキャンセルすることは、相手に対して失礼だと思う必要はありません。自分自身を主張することは、健全な人間関係のために必要なセルフケアです。そして、あなたが必要とするスペースを友だちが理解してくれるとき、あなたは大切にされていて安全な場所にいるのだと安心することができるでしょう。

 

とはいえ、信頼できる友だちを見つけることは難しいことです。新しい友だちを作るときは、自分の興味や慣れ親しんだ空間に身をゆだねてみましょう。例えば、いつも行くカフェの店員さんが世間話を始めたら、いつもより少し長居して、その会話の行く末を見守ってみましょう。または、会社の同僚があなたと気が合いそうな友達を紹介すると言ってきたら、それに素直に応じてみましょう。こうやって日々のちょっとした新しいことを受け入れることで、ささやかながらも満足のいく社会生活を送ることができます。

 

いつでも退出できるようにする

これは、社交不安症の人に対する一番のアドバイスです。例えば、あなたが人と会う時には、すぐにその場を離れることができるような公共の場やカフェのようになじみのある場所でするようにしましょう。プレッシャーを感じたり辛くなりそうだったら、その場を離れることができるとわかっていれば、安心して気持ちのコントロールができます。

 

こういう「逃げられる」手段を用意しておくことを恥じるべきでないし、その手段を実際に使うことも恥じるべきでありません。イベントに30分しかいられなかったとしても、それでいいんです。実際にイベントに顔を出して、不安と向き合っただけであなたは褒められるべきがんばりをしたのです。

 

自分に優しくする

社交不安が思うようにすぐに解消されないとしても、それはまったく普通のことです。「それは、あなたが目に見える結果が出るのを欲するあまり、改善を急ぎすぎたからかもしれないし、社交の場でもっと練習をしたほうがいいということかもしれない」と精神科医のドーン・ポッター博士は指摘する。

 

パニック発作であれ何であれ、何が反応の引き金になったのかを後からしっかりと確認することも大切です。「どうすればそのことについて違う考え方ができるか、どうすれば次にその状況を変えることができるか、こういうことを考えてみましょう」とポッター博士は提案する。「例えば、コンサートで大勢の人に囲まれてパニックになったとしましょう。次回は、後ろや通路側の席に座るとか、不安を感じたら、出口の近くに行くなどです」

 

ポッター博士は、一般的に人は他人のことなどそれほど考えていないとも言います。「私たちは、次に自分が何を言おうか、自分が何をしようか、そうやって自分のことを考えるのに忙しいのです」「あなたが自分について強く感じている不安な要素は、他人にはほとんど目立たないことであることが多いのです」

 

周りのサポートを受け入れる

 

社交的な場面で不安を感じ、助けが必要かもしれないことを周りに認めるのは、恥ずかしく屈辱的なことかもしれません。特に友人や恋人に、特別なサポートが必要かもしれないと伝えることは、大きな支えになります。「人は親しい人と社交的な場所にいれば、より快適に感じるものです」とポッター博士は言う。

 

親しい相手と一緒にいることは、社会不安症の人が時間をかけて自立していくのを助けることになります。信頼できる友だちや家族が、社会不安のあるあなたを自然に会話に引き込んであげるという方法もあります。「ああ、サラがそのテーマについて何か言いたいことがあるみたいだよ。彼女はそのトピックに興味があるみたい」こうやってあなたの殻を破ってくれることで、あなたをサポートすることができるでしょう。ただし、社交不安症の人は、自分が何か言わなければならない状況に追い込まれるのを嫌がることがありますから、事前に話し合っておきましょう。

 

日本のこれから

社交不安の症状を訴える日本人の割合は、アメリカ人のそれと比べると8分の1と少ないという調査もでています。これには、会議や授業では上司や先生など人の話を聞いていればよかったという日本の社会的背景があるのかもしれません。

 

ただ、そんな日本も、職場や学校などの生活で自分から発言することが重視される社会へと変化しています。そんな時に不安を感じることがあれば、自分に対して優しく、他人との比較をやめ、周囲のサポートを受け入れて充実した人間関係を築いていくことが、社交不安を乗り越える道となるでしょう。

 

参考:

https://www.thegoodtrade.com/features/how-to-deal-with-social-anxiety/

https://health.clevelandclinic.org/how-to-overcome-social-anxiety/

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC181152/

ライター:プロフィール

著者:堀江知子(ほりえともこ)|タンザニア在住ライター

民放キー局にて、15年以上にわたりアメリカ文化や社会問題についての取材を行ってきた。

2022年からはタンザニアに移住しフリーランスとして活動している。

noteやTwitterのSNSや日本メディアを通じて、アフリカの情報や見解を独自の視点から発信中。

出版書籍:『40代からの人生が楽しくなる タンザニアのすごい思考法 Kindle版』

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