PTSDの不安や恐怖を軽減する対処法。トリガーを理解して向き合おう
突然、怖い記憶が頭に浮かび、胸がドキドキして不安に襲われることがあります。
日常の何気ない音や匂い、景色が、過去のつらい体験を鮮明によみがえらせることもあるでしょう。
これが『トリガー(引き金)』です。
トリガーはPTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状を引き起こす原因となり、外出が難しくなったり、人と会うことが怖くなったりするなど、日常生活に支障をきたすことがあります。
この記事では、PTSDの対処法を中心に、トリガーの種類や向き合い方、セルフケアの方法をわかりやすく解説します。
Contents
PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは?
PTSDは、命の危険や重大な事故、暴力など、強い恐怖を伴う出来事を体験した後に発症する心の病気です。
症状としては、突然当時の体験がよみがえるフラッシュバックや悪夢、不安、過覚醒(過敏状態)などが挙げられます。
これらの症状は、特定の刺激をきっかけに突然現れることがあり、この刺激は『トリガー(引き金)』と呼ばれます。
音や匂い、景色、人の言動など、あらゆるものがトリガーとなり、過去のトラウマ体験を無意識のうちに思い出させる可能性があります。
PTSDにおけるトリガー(引き金)とは?
トリガーは、PTSDの症状を引き起こす要因です。
トリガーには大きく分けて内的トリガーと外的トリガーがあります。
内的トリガーの例
内的トリガーは自分の内面から生じるものです。
具体的には以下のようなものがあります。
強い怒り
- 不安感
- 悲しみ
- 孤独感
- 心臓のドキドキ
- トラウマに関連する記憶
- 筋肉のこわばり
- 無力感、見捨てられた感覚
たとえば、運動中に心臓が速く打つ感覚が、過去の暴力的な体験を思い出させることがあります。
本人自身、「なぜ今この感覚が出たのか」と気づけないケースも少なくありません。
外的トリガーの例
外的トリガーは外部の刺激から来るものです。
以下のような状況や物がトリガーになることがあります。
- トラウマ体験に関連する音や匂い
- 当時の出来事を思い出させる人や場所
- 暴力シーンのあるテレビや映画
- 特定の日付(記念日、事故の日など)
- 激しい口論
- 事件を扱ったニュース記事
- かつての経験に関連する煙の匂い
トリガーは本人にとって強いストレスを引き起こし、「今まさに危険にさらされている」という感覚をもたらします。
その結果、パニック、過呼吸、泣き出す、逃げ出す、過剰防衛といった反応が起こることもあります。
PTSDの対処法:トリガーに気づき、向き合う方法
PTSDの対処には、トリガーを理解し、上手に向き合うことが重要です。
ときには心の負担を軽減するために強いストレスや刺激を伴う場面を避ける必要があります。
しかし、過剰な回避は生活の幅を狭めてしまうことにも繋がります。
以下にPTSDの具体的な対処法を紹介します。
1. セルフケアを取り入れる
セルフケアは、PTSDの症状を和らげ、日常生活の中で自分を守るための大切な手段です。
心の不調に気づきながら、自分自身を落ち着かせる工夫を積み重ねることで、少しずつ安心できる時間を増やしていけます。
専門的な治療を受けている場合も、こうした日常のセルフケアは治療効果を支える重要な役割を果たします。
- 深呼吸や瞑想
不安や恐怖が高まったとき、ゆっくり深呼吸することで落ち着きを取り戻せます。 - 日記を書く
感情や考えを紙に書き出すことで、頭の中を整理できます。 - 軽い運動
ウォーキングやヨガなど、無理のない範囲で体を動かすことでストレスが和らぎます。 - 信頼できる人と話す
気持ちを吐き出すことで心が軽くなることがあります。
2. 自分のトリガーに気づく習慣をつける
自分のトリガーを知ることは、心の備えになります。
「なぜ急に不安になったのか」「何がきっかけで怖さを感じたのか」など、日々の小さな出来事を振り返る習慣を持つことで、次に同じような状況に出会ったときの対処がしやすくなるでしょう。
3. トリガーに直面したときの対処法を身に着ける
突然トリガーに触れてしまったときでも、心を落ち着ける方法を身につけておくことで、冷静さを取り戻せるようになります。
具体的な対処法としては「グラウンディング法」や「呼吸法」があります。
- グラウンディング法
五感を意識し、「今ここ」に意識を戻す方法です。
たとえば「今目に見えるものを5つ数える」「自分の足裏の感覚に集中する」といったやり方があります。 - 呼吸法(スクエア呼吸・指呼吸)
呼吸のリズムを整えることで、心拍数が落ち着き、気持ちの混乱をやわらげます。
PTSDの治療法:専門家の助けを得る
トリガーや症状が生活に大きな支障をきたす場合は、専門家のサポートが必要です。
以下の治療法が効果的とされています。
- 認知行動療法(CBT)
思考パターンを見直し、症状を軽減します。 - 曝露療法
安全な環境でトリガーに徐々に触れ、恐怖感を弱めます。 - 薬物療法
不安やうつ症状を軽減するために使用されることがあります。
「病院に行くほどではない」と感じる方でも、一度相談してみることで適切なアドバイスを得られる可能性があります。
周囲の人ができること
PTSDを抱える人を支える場合には、無理に話を聞き出そうとせず、本人の気持ちやペースを尊重することが大切です。
無理をさせると、かえって心の負担を増やしてしまうことがあるからです。
また、事件や事故のニュース、暴力的な映像など、過去のつらい体験を思い出させるような話題や状況を避ける配慮も必要です。
日常の中に思いがけずトリガーにつながるものもあるので、急な予定変更をしない、大きな音を控えるなど、その人に合わせた配慮が必要です。
支援する側も、自分自身がストレスや疲れを感じることがあるでしょう。
無理をせず、自分の気持ちを話せる相手を見つけたり、必要に応じて相談機関を利用したりすることも大切です。
まとめ:一人で抱え込まず、少しずつ前に進もう
PTSDは決して「心が弱い」から起きるものではなく、誰にでも起こりうる症状です。
「トリガー」という存在を理解し、上手に対処することで、少しずつ日常を取り戻せます。
自分に合った対処法を見つけながら、無理のないペースで回復への一歩を踏み出しましょう。
