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この作品への愛は、ぶれることがありません【小泉里子 / 未来に続くBOOKリスト vol.1】

あなたの本棚には、これからの人生で何度も読み返したい本が何冊ありますか? モデル 小泉里子さんの連載エッセイ「未来に続くBOOKリスト」。読書好きの里子さんが、出合ってきた本のなかから“ずっと本棚に置いておきたい本”をセレクトしてご紹介します。

小泉里子連載


BOOK LIST_01

『天は赤い河のほとり』

ジャンル=漫画 篠原千絵 著/小学館文庫 ※全16巻


この連載では「私が自分の本棚にずっと置いておきたい本」をテーマに毎月1冊ずつ本を紹介していきます。
本棚を見たら人柄が分かると言われているように、きっとこの連載を通して私がどんな人なのかが伝わるんじゃないかなと思っています。


そんな第1回目の今回は、漫画です!
早速伝わりましたかね(笑)。ま、何冊か候補はあったのですが、やっぱりこの本を語らずには始まらないなと思い、ここからスタートすることにしました。

この漫画を読み始めたのは高校生の頃。『少女コミック』で連載していた漫画ですが、私は単行本で読んでいました。発売日を今か今かと楽しみに待ったのは、後にも先にもこの漫画だけです。もううん十年前になりますが、それから今に至るまで、何十回読んだことか。

一巻から読み直すときもあれば、好きなシーンだけ抜粋して読んだり、時に人に押し付けて読ませてみたり(特に夫)・・・笑。とにかく、私のこの本への愛はぶれることなく、きっとこの先も漫画部門では第一位。引っ越すたびに、一番初めに本棚に置く本なのです。


ざっと物語を説明すると、高校受験を終えた少女ユーリが現代から紀元前14世紀のヒッタイト帝国にタイムスリップして、そこで出会った王子と恋仲になり、敵対するナキア皇妃からの反撃に立ち向かいながらも、その時代を生き抜く模様を描いたストーリー。

なかでも私の記憶に残っているのが、婿に行くザナンザ王子とともに主人公がエジプトに向かっている途中、それを阻止する者に襲われ、ザナンザ王子は無念にも命を落としてしまう・・・。ユーリも矢を撃ち抜かれたものの一命は取り止め、なんとかハットゥサに戻ってくる。そのときに、刺さった矢を抜かずに戻って来るのですが、矢は国によって、さらに人によって巻き方が違うらしく、それを見たら誰が射抜いたか分かるため、矢を抜かずに戻って来たというシーンがあるのです。

ついにナキア皇妃の化けの皮が剥がれるのではとワクワクしたのと、ユーリがこの時代でちゃんと生き抜く術を身につけていることに驚かされました。ここでユーリが放つ一言は、まるで水戸黄門の決め台詞を聞いているかのようで、とにかくカッコ良く好きなシーンです。


よくあるタイムスリップ系ですが、物語に出てくる地名や登場人物は実在したもので、当時、世界史に疎かった私ですが一気に紀元前14世紀の時代に引き込まれました。

そしてのめり込みすぎた私は、物語の舞台となった今でいうトルコに行って来ちゃいました。そこで感じた空気や匂い、見た景色は、物語の世界を肌で味わうことができ、それはもう終始感動しておりましたが、その感動を遥かに超えるさらなる出会いがありました。

世界遺産でもあるカッパドキアは、物語に出てくるヒッタイト帝国の本拠地となった場所。
そこを訪れたとき、たまたま宿泊したホテルに、なんと作者 篠原千絵さんの筆跡を発見。そこには、これからこの物語を描こうとしている篠原さんの文とイラストが書かれていました。それはそれはもう大興奮。そんなメッセージと目の前に広がるカッパドキアの奇観になんだか、私もタイムスリップした気分にさせられたのでした。

そして時は経ち、十数年後、私は今、中東ドバイで暮らしています。ま、トルコからは少し離れているけど、なんだか中東にご縁があるのかと感じずにはいられない。
さ! また読み返すとします。


『天は赤い河のほとり』(そらはあかいかわのほとり)
 1995~2002年に『少女コミック』(小学館)で連載された、篠原千絵の漫画作品。現代から紀元前14世紀のヒッタイト帝国にタイムスリップした15歳の中学生 ユーリが主人公。ユーリが現代に戻れるか否かのハラハラドキドキ感、カイル皇子とのロマンス、権力者ナキア皇妃の執拗な妨害、国内外での権力争いなど、読者を飽きさせることのないストーリー展開で数多くのファンを持つロングセラー。宝塚歌劇で舞台化もされた。


 

小泉里子


Profile
小泉里子(こいずみさとこ)
15 歳でモデルデビュー。数々のファッション誌で表紙モデルを務め、絶大な人気を誇り、広告やテレビ番組でも活躍。着こなすファッションはもちろん、ナチュラルでポジティブな生き方が同世代の熱い支持を得ている。2021年2月には第1子となる男児を出産し、同5月より生活の拠点をドバイに移す。ドバイでの生活や子育てにもさらに注目が集まっている。
http://tencarat-plume.jp/
Instagram @satokokoizum1


TEXT = 小泉里子

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