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料理嫌いの私にやる気を授けてくれる一冊【小泉里子 / 未来に続くBOOKリスト vol.4】

あなたの本棚には、これからの人生で何度も読み返したい本が何冊ありますか? モデル 小泉里子さんの連載エッセイ「未来に続くBOOKリスト」。読書好きの里子さんが、出合ってきた本のなかから“ずっと本棚に置いておきたい本”をセレクトしてご紹介します。


小泉里子


BOOK LIST_04

『arikoの美味しいルーティーン』

ジャンル=料理 ariko 著/講談社


アリコさんとの出会いは、『クラッシー』というファッション雑誌でした。ライターとして多くのページを担当していて、私は表紙撮影でも7年間お世話になりました。
そんなアリコさんとご一緒する現場のもう一つの楽しみは、やっぱり”食”! 寒い日の早朝ロケには、熱々の人参スープが。真夏の暑いロケには、さっぱりとした手作りジュースが。ランチは、街の中華屋さんから高級鉄板焼きまで、アリコさんお墨付きの数々のレストランへ。

今思えば、なんて贅沢な現場でしょう。

アリコさんお墨付きのレストランが知れる贅沢もありながら、7年間、私の胃袋を満たしてくれたといっても過言ではないくらい、なんとも美味しい現場でした。

数あるアリコ本のなかで、今回紹介するのは、『arikoの美味しいルーティン』。
アリコさんの本は、すべて日本の家の本棚に揃っていますが、この本と『アリコのパン』の2冊だけをドバイの家に持ってきました。本当は全部持ってきたかったけれど、荷物を最小限に、なるべく息子の絵本を優先したので、厳しいドバイ行きを勝ち取ったのがこの2冊でした。


この本は、レシピはもちろんですが、文字も多いのでアリコさんの言葉とともに味わえます。
「そうそう、そうですよね!」と呟きながら、「そうなんだ〜」と学びなから。

料理って、自分だけの範疇で行ってるといると、本当にワンパターンになるし、レパートリーがなくなるし飽きる、そして落ち込む(笑)。
毎日のことだから、落ち込んでても畳みかけるように料理の時間がやってきて、さらに悪循環。できない自分にイライラするし、何か作っても自信なさげ。なので、それを脱却するために、私はこの本を開くのです。


ドバイでの料理は、食材が思うように調達できず、レシピどおりにいかないときもあって、そんなときは、アリコさんだったらどうするかな〜とか考え、こっちで安く大量に買えるハーブを使ってみたりして、アレンジしたりもしてます。

最初は、日本のように何でも1つのスーパーマーケットで揃ってしまう便利さに慣れていて、ドバイでの料理がストレスで仕方ありませんでした。
お肉は臭いし、薄切りはないし、野菜はちゃんと見て買わないと傷んでいるし。今夜のメニューを決めて買い物に行っても、あれがないこれがないで、結局メニュー変更なんてこともしょっちゅうありました。


そもそも私、料理が嫌いなんです。
でもドバイに来てからは、食べたいもの、食べたい味はここにはないので、自分で作るしかない。そんなときは頭のなかにアリコさんを登場させるのです。

私のなかのアリコさんは、いつも美味しい話をしてました。
その話を聞いてると無性に料理がしたくなるんです。あの7年の間も、嫌いなわりには結構よく自炊していて、むしろとっても楽しかった。

そんな私の料理熱を上げてくれるアリコさんとは、なかなかお会いする機会も無くなった今。あのときの美味しい話を思い出させてくれるのが、この本なのです。


私の食欲スイッチをバンバン押してくれる。誰でも味わったことがあるメニューだからこそ、想像できるし、食べたくなるし、でも家庭の味にひと手間加える美味しいポイントがここにはあって、それがさらに作る側も食べる側も新鮮に感じることができるんじゃないかな。

この本を開くと、作る工程も香りも味も想像しながら気持ちも昂り、その晩の我が家の食卓には、楽しく作ることができた自信ありげな私とともに、そのメニューがテーブルに並ぶのです。
これが私のルーティンです。


『arikoの美味しいルーティン』(ありこのおいしいるーてぃん)
読むだけで、今すぐに料理したくなる、料理の味が変わる。読んだ人のやる気スイッチを押してくれると評判の人気レシピ本。目次に並ぶ料理名には、“かつおの冷製パスタ” “焼き餃子” “煮込みハンバーグ” “しょうが焼き”・・・とおなじみの料理がたくさん。随所にある[料理メモ]や、会話式で紹介される料理の背景や思い、著者ならではの視点も興味深く、実用的なレシピ本としてだけでなく、読み物としても楽しめる一冊。


小泉里子


Profile
小泉里子(こいずみさとこ)
15 歳でモデルデビュー。数々のファッション誌で表紙モデルを務め、絶大な人気を誇り、広告やテレビ番組でも活躍。着こなすファッションはもちろん、ナチュラルでポジティブな生き方が同世代の熱い支持を得ている。2021年2月には第1子となる男児を出産し、同5月より生活の拠点をドバイに移す。ドバイでの生活や子育てにもさらに注目が集まっている。
http://tencarat-plume.jp/
Instagram @satokokoizum1


TEXT = 小泉里子
PHOTO = 取田和衣

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