ポリアモリーは頭おかしい?浮気性との違いはなに?
近年は一言で「恋愛」といっても様々なタイプがあり、必ずしもたった一人の異性を愛することだけが恋愛とはいえない社会となってきました。
つい固定観念を元に自分とは違う存在を避けてしまいがちですが、その根底にあるのは相手のことをよく知らず、理解できていないのが原因です。
今回はそんな多様性の中で注目を浴びるようになった「ポリアモリー」という考え方についてご紹介します。
現代に至るまでポリアモリーがどのように生まれ、そして発展していったのかも併せて確認してみましょう。
Contents
ポリアモリーとはどんな意味?
ポリアモリーとは、合意の上で複数のパートナーとお付き合いをするといった考え方のことです。
この場合のパートナーとは必ずしも異性とは限らず、ゲイ・レズ・バイセクシュアルも含めて複数の人とお付き合いをしている場合はポリアモリーに当てはまります。
ポリアモリーは相手に黙って他の人とお付きあいをするのではなく、関係者全員が複数とお付き合いをすることに合意しているのが特徴です。
例えば、A子さんとB男さんがパートナーである場合を見てみましょう。
このうちA子さんがポリアモリーで新たにC太さんとお付き合いを始めるならば、A子さんとC太さんの関係をB男さんが知っていなければなりません。
さらにはC太さんも、A子さんには他にB男さんというパートナーがおり、これに合意しなければポリアモリーとはなりません。
一見嫉妬心が芽生えてしまいそうな関係性に見えますが、ポリアモリーの中では様々なシーンで交流が生まれ、大きな団体となっている場合も珍しくありません。
前述の例でいえば、A子さんをきっかけにB男さんとC太さんが仲良くなり、3人でデートをすることもあるでしょう。
さらにはB男さん・C太さんがお付き合いしている他のパートナーも含め、大人数が知り合いになることも多いのです。
また、ポリアモリーは身体の関係を結ぶことが必須ではなく、精神的な安定性を求めてお付き合いをしている方もたくさんいます。
身体関係がある場合・ない場合に関わらずこれらの関係は長期的に続くものであり、一夜の関係で終わるものではありません。
性欲を満たすために短期間の関わりを持ちたいと願う場合とは異なるため、ポリアモリーを実践している方と接するときは誤解しないよう注意が必要です。
もちろん、相手や自分に複数のパートナーがいるからといって、相手に「他の女性と会ってほしくない」「自分を優先してほしい」と願っても間違いではありません。
こういった嫉妬心を含めてパートナー同士で話し合い、納得した上で少しずつ関係性を深めていくのがポリアモリーの特徴といえるでしょう。
関連記事:ポリアモリーの特徴は?浮気と何が違うのか誤解されやすいポイントを解説
ポリアモリーという概念が生まれた原因・背景
私たち日本人からすると、ポリアモリーの考えはすぐに受け入れられるものではないかもしれません。
これは一重に国による文化の違いともいえますが、そもそもどうやってポリアモリーの概念が生まれたのでしょうか。
現在日本でポリアモリーが増えているのは果たして何故なのか、そのルーツを辿っていきましょう。
1990年代にアメリカで生まれた恋愛スタイル
ポリアモリーを実践し、多様な愛の形を追い求める人のことを「ポリアモリスト」と呼びます。
その始まりは1990年代のアメリカであり、この頃はフェミニズムの考えが広まりつつありました。
「家族は父親が絶対的な存在である」「異性同士のパートナーの場合は男性が優位に立つ」といった考え方に疑問を持ち、男性/女性とはこうあるべきだといった固定観念から脱却した人々が、それぞれ自由な恋愛観を持ち始めたのです。
こうした自由な恋愛観は、年代が進むにつれてアメリカ以外の国でも受け入れられるようになりました。
私たちの住む日本ではまだまだ浸透しているとはいえませんが、言葉の意味を知っている人が増えてきているのも事実です。
近年のアメリカではポリアモリストが増えた結果、お互いが合意の上で3人以上が家族として同じ家に住み、それぞれ異なる恋愛関係を紡いでいるのも珍しくありません。
ポリアモリストが集う「ポリーラウンジ」といった交流会が開かれるなど、誰しもが周りを気にすることなく恋愛を楽しめる社会に近づいているのです。
根底にあるのは「愛は無限である」という考え
ポリアモリーについての知識が少ない人にとって、彼らの生き方は不思議であり、想像できないものであるでしょう。
ポリアモリストであることを周りに公表できず苦しい思いをしている人や、後ろ指を指された経験のある人もゼロではないはずです。
しかしポリアモリーを紐解いてみると、根底にあるのは「愛は無限である」といったシンプルな考えであることが分かります。
たった一人のパートナーを大切にしたからといって、自分の中に眠る愛が全て失われてしまうわけではありません。
大切な人が複数いるのならば、それぞれに同じだけ愛を与え、大勢で生活することもできるでしょう。
「愛は一人に対して送るべきだ」という考えを持つ人にとって、ポリアモリーは不誠実に見えることもあるでしょう。
とはいえ愛は数値化できるものではないため、自分の愛を100%相手に与えているように見えても、実はそうではない場合も多いのです。
パートナーと子どもに平等な愛を与える人が多いように、ポリアモリーはパートナーが複数いて、それぞれに対し愛を投げかけているにすぎません。
ポリアモリーと浮気性の違い
ポリアモリーを語る上でもっとも誤解されてしまいやすいのが、浮気性との違いです。
「同時に複数の人を愛する」という意味を持つ両者ですが、大きく異なる点があるため、一括りにしてしまうのは間違いです。
ポリアモリーと浮気性の違いをしっかりと抑え、ポリアモリストに対して不要な誤解を抱かなくても済むようにしておきましょう。
合意と透明性があること
一般的に、パートナーに隠れて浮気をする場合、その事実がバレないように嘘や隠ぺいをしながらドキドキして過ごしているケースが多いのではないでしょうか。
万が一隠していた事実が明るみに出てしまえば、破局や離婚に繋がったり、慰謝料を請求されたりする可能性が高まります。
多くの人の間で「浮気は悪である」といった考えが広まっていることからも、浮気は不誠実でありすべきではない行動の一つといえるでしょう。
これに対しポリアモリーは、全てのパートナーが合意した上で関係が進んでいる状態をいいます。
A子さんにB男さんとC太さんというパートナーがいる場合、B男さんもC太さんもお互いの存在を理解していなければなりません。
ここには嘘や隠ぺいは一切なく、どこへ行っていたのか、この日は誰と会うのかなどの情報がしっかりと明かされており、透明性があるのもポイントです。
そのため、A子さんがB男さんと会っていても、C太さんが怒ったり悲しんだりすることは少ないでしょう。
時には3人が同じ場所に集い、コミュニケーションをとることで、浮気とは異なる関係性を築けるのです。
全ての相手に誠実であること
浮気や不倫でパートナーをだましている人は、少なからず嘘をつきながら、後ろめたい気持ちで生活をしていることでしょう。
通常、心が移ってしまったのならパートナーとの関係を清算してから次に進む必要がありますが、それをしないということは不誠実に他ありません。
しかしポリアモリーの場合、複数いるパートナーの全てに誠実であり、嘘や隠し事のない関係が築かれます。
「今日はB男さんと会うからC太さんとは会えない」「明日はC太さんの番」といったように、違うパートナーと会う際もしっかりと連絡しておく方が多いでしょう。
相手も順番でのデートに合意しており、揉め事が起こらないのも特徴といえます。
一次的な快楽が目的ではないこと
先ほども触れたように、ポリアモリーは長期的な関係を築くため、どのパートナーとも慎重なコミュニケーションが行われます。
これはたった一人のパートナーを愛する人も同じであり、真剣に交際したいと思えば思うほど、ゆっくりと時間をかけて関係を進展させていく人が多いのではないでしょうか。
こういったことから、ポリアモリーは恋愛感情を抱く相手が複数いるだけで、その他の部分は他の恋愛と変わらないことが分かります。
複数のパートナーを探しているからといって、身体だけの関係を望んだり、性行為をしたい・寂しさを埋めるために誰でもいいから話したいといった短期間の関係が目的ではないことを覚えておきましょう。
日本に根付いている「モノガミー」について
私たちの住んでいる日本でポリアモリーがなかなか浸透しないのは、古くから「モノガミー」の考えが広まっており、固定観念として根付いているためだと考えられます。
古い時代も今も男性と女性が一対一で婚姻を結ぶのが常識であり、男性同士・女性同士の婚姻や複数婚は事実上できないこととなっています。
こういった考えは当たり前のように思われていますが、これもポリアモリーと同じく一つの概念であり、たまたま現代の日本で多くの人が受け入れているだけにすぎません。
イスラム圏にある国々は古くから一夫多妻制を導入しており、現代も「当たり前」として受け入れられています。
このような古くからの慣習をそのままに、新たな考え方も否定せずに取り入れることで、大勢が生活しやすい社会が生まれるのではないでしょうか。
ポリアモリーは「頭おかしい?」「気持ち悪い?」
ポリアモリーについてネット上で調べてみると、時に「頭おかしい」「気持ち悪い」といったキーワードがヒットすることがあります。
これまでに述べたように日本では複数婚が承認されていないため、ポリアモリーについて否定的な考えが多く出てきても不思議ではありません。
今後どのようにポリアモリーが広まるかは分かりませんが、現時点ではまだまだマイノリティであり、カミングアウトしにくい社会が続いているといえます。
筆者はポリアモリーと現代社会について、今後人々がさらに寛容になり、自分の気持ちを大切にしてほしいと願います。
自分は異性が好き、自分は複数のパートナーを持ちたいといったそれぞれの願いを大切に、周りの人々を良い意味で「気にしない」状態になれたら良いのではないでしょうか。
自分と違う意見をすぐさま受け入れるのは難しいため、まずは人それぞれ異なる意見を否定せず、多様化する社会で自由に生きられるような変化が起こることを期待します。
上記はあくまでも筆者一個人の考えであるため、必ずしも同じ意見を持つ必要はありません。
さらに時代が進み、誰もが「私は〇〇だ」とカミングアウトできる社会になれば良いと考えます。
まとめ
性自認が多様化するにつれ、恋愛の仕方にも様々な方法が登場してきた現代。
ポリアモリーは決して浮気性のように不誠実なものではなく、多くの人と同じように愛し合うことで、モノガミーと同等もしくはそれ以上の経験ができるでしょう。
ポリアモリーをカミングアウトする著名人も多数いるため、まずはその人の生き方を見ながら、多様性を受け入れる準備を進めていくことが大切です。