子どもがいうことを聞いてくれなくてイライラする。
最近夫婦喧嘩ばかりでしんどい。
部下の教育に頭を抱えている。
このように、家庭や職場での人間関係のストレスに悩まされている方も多いのではないでしょうか。
そんな時、「NVC(非暴力コミュニケーション)」を実践することで、対人関係の問題が改善されたり、解決への糸口が見つかったりするかもしれません
本記事では、NVCついて、具体的な例を交えながら解説していきます。人間関係が好転するヒントを探してみてください。
Contents
NVC(非暴力コミュニケーション)とは
「また同じミスを繰り返すの?」
「言うことを聞かないなら、もう知らない!」
こんな風に、ついカッとなって相手を責めたり、見放したりする言葉を発してしまった経験はありませんか?
私たちが日常的に使用する言葉は、時として暴力的に相手や自分自身を傷つけることがあります。
そこで注目したいのが、1970年代にアメリカの臨床心理学者マーシャル・B・ローゼンバーグ博士によって体系化され、提唱されたNVC(非暴力コミュニケーション)です。
NVCは、あらゆる人間関係を、支配や対立、緊張、依存の関係から、自由で思いやりあふれる関係へと変革する方法です。また、私たちの生き方や人生の目的を根本から見つめ直すきっかけにもなるでしょう。
NVCでは、相手の言動に反射的に反応するのではなく、以下の4つの要素を用いて自分の感情を見つめ直し、相手の感情にも耳を傾けることを提案しています。
NVC4つの要素
1. 観察(observation)
NVC第1の要素「観察」は、自分の状態を左右する外的な事実を、「評価を交えずに」明確に認識することです。
例えば、散らかった部屋を見て「あなたは片付けが苦手なのね」と言うのは、観察ではなく評価です。「脱いだ洋服が床に散らばっている。本は開いたまま机に置かれている」のように、事実だけを観察するのです。
2. 感情(Feeling)
NVC第2の要素では、自分の「感情」を表現します。ただし、自分の感情と「いまの自分が思っていること」を区別する必要があります。
例えば、友人との約束が急にキャンセルされたとき、「友達は私のことを大切に思っていないのかもしれない」と考えるのは感情ではなく、相手の行動を自己流に解釈していると言えます。
一方、「約束がキャンセルされてがっかりした。楽しみにしていたから残念だ」というのは、自分の内面の状態を率直に表現した「感情」です。
3. 必要としていること(Need)
NVC第3の要素は、感情の根底にあるニーズを見極め、表現することです。
例えば、パートナーの帰りが遅いことに不満を感じたとき、心の底には「もっと一緒に時間を過ごしたい」といったニーズがあるかもしれません。
4. 要求(Request)
NVC第4の要素は、自分のニーズを満たすために、相手にどのような行動を求めるのかを明確に伝えることです。
例えば、パートナーとのコミュニケーションに不満を感じていた場合。「もっと私の話を聞いて」という曖昧な言い方ではなく、「私が話している時は、スマートフォンを見ずに目を見て聞いて欲しい」と具体的にリクエストを伝えます。
ただし、急ぎでクライアントに返信をしなければいけないなど、相手にも事情があるでしょう。相手の立場に立って理解を示しつつ、状況に応じて柔軟に対応することが大切です。
この4つの要素を意識してコミュニケーションを取ることで、私たちは評価や判断に注意を向けるのではなく、自分の本当の望みを見極め、明確に表現できるようになります。
また、相手の言動の裏にある感情や必要性にも目を向けられるようになることで、お互いを尊重し、相手をより深く理解することができるでしょう。
NVCを使った具体的なコミュニケーション例
NVCを実践する前後では、コミュニケーションの質が大きく変わります。具体的にどのように変化するのか、以下の2つの例を見てみましょう。
「お片付けしなさい!」と子どもに怒鳴ってばかりいる母親のケース
NVCを取り入れる前の伝え方また片付けをしていないじゃない。 あなたのだらしなさにはうんざりよ。 今すぐ片付けなさい! |
NVCによる伝え方
部屋が散らかっていると、私は悲しくて困ってしまうの。(感情) 家族みんなが快適に過ごせる、整理整頓された空間を大切にしたいからなの。(ニーズ) 一緒に片付けをしない?ブロックは専用の箱に入れて、ぬいぐるみは棚に並べて、絵本は本棚に戻してもらえると嬉しいわ。(リクエスト) |
締め切りを守らない部下に困っている男性の上司のケース
NVCを取り入れる前の伝え方また締め切りに遅れたのか。 何度同じミスを繰り返すんだ。 君の仕事ぶりには呆れ果てるよ。 次からは必ず期日を守れ。 |
NVCによる伝え方
先月提出してもらった企画書は締め切りの2日後、今回のレポートは期日を1週間過ぎてからの提出だったね。(事実) 正直、がっかりしているし、チームの信頼関係が損なわれないか心配だよ。(感情) チームのスケジュール管理と生産性を維持するためにも、締め切りを守ることが不可欠だと考えているんだ。(ニーズ) 次回のプロジェクトから、もし締め切りに間に合いそうにない場合は、早めに相談してくれると助かるよ。毎週月曜日の定例ミーティングで進捗状況を報告してもらえれば、問題解決に向けて一緒に取り組めると思うんだ。(リクエスト) |
このようにNVCの4つの要素を意識することで、自分の感情やニーズに向き合い、それを言葉にすることができます。そして、相手の状況を尊重しつつ、明確にリクエストをすることで、お互いを思いやり、理解し合える関係性を築くことができるでしょう。
NVCを習得するには練習が必要
NVCを身につけるには、日々の生活の中で意識的に実践することが大切です。イライラや怒り、悲しみなどのネガティブな感情が湧き上がってきた時こそ、NVCを練習するチャンスと捉えましょう。
ネガティブな感情の奥底には、「相手に理解してほしい」「自分の気持ちを知ってほしい」といった切実な願いが隠れていることがよくあります。そのため、一時的な感情に任せて相手にぶつけるのではなく、自分の感情の根源にあるニーズを見極め、それを具体的な言葉で伝えることが重要です。
また、自分のニーズを理解するだけでも、ネガティブな感情は和らぐものです。NVCの4つの要素を意識することで、自分自身でニーズを満たす方法が見つかるかもしれません。
自分の気持ちに正直に向き合い、相手の立場に立って考えるコミュニケーションを心がけることで、人間関係はより豊かになっていくでしょう。
参考書籍:「NVC 人と人との関係にいのちを吹き込む法 新版」マーシャル・B・ローゼンバーグ著
ライター:プロフィール
1987年東京生まれ。
大学卒業後、損害保険会社の営業事務を6年間経験。
その後、夫の海外赴任に帯同するため退職し、1年間インド・ムンバイにて海外生活をおくる。
帰国後は、「おうちで働く」を一つの軸に、ベビーマッサージの先生、Webデザインの勉強、物販のお手伝い、ブログ運営、様々なことに挑戦しながら、最終的に「ライター」の仕事に巡り逢う。
興味のある分野は、人の働き方・生き方、マインドフルネス、教育。推しはBE:FIRST。プライベートでは2児の母。