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辞めることで起こったパラダイムシフト。実は色々なことをやりすぎていた?幸せの鍵はLess is More。 【Editor’s Letter vol.08】

Written by
永野 舞麻(ながの まあさ)
Humming編集長 永野舞麻がカリフォルニアから配信する「Editor’s Letter 」。日々の暮らしで感じた気付きや、人生において大切にしていることを綴っています。

 

 

 

 

綺麗な服を着飾るのが好きだった。

人脈を作るために積極的にランチに出かけた。

出張で世界中を飛び回っていた。

 

振り返れば、私はいつも自分の表面的なことを磨くことに力を注ぎ、忙しない日々を過ごしていました。

 

どちらかと言えば、派手で騒がしくて、外交的。そんな私が今では約1年間の時を経て、段々と外出を極力減らし、家の中で静かに瞑想をしています。

 

内と向き合う時間を大切にする。自分が大切だと思っていたことを辞めることを決断する。選択肢が少なくなることで、迷いが減り、穏やかな心で過ごせる時間が増えました。さらに、これまで気がつかなかったことに目が向けられるようにもなったのです。

 

40歳を目前にして起こったパラダイムシフト。

 

そのきっかけは何だったのか?内と向き合うことで現れた変化とは?私の体験談をお話します。

 

現状を受け入れ潔く辞めた海外出張

 

数年前までの私は、仕事や旅行で世界中を行き来したり、知人とランチに出かけたり、忙しない日々を送っていました。頻繁に会議のために日本へ、ケニアへ映画の撮影に行った帰りに、ロンドンに寄ってミーティング。来月も出張と家族旅行を合わせてニュージーランドへ行く予定になっていました。毎月スケジュール帳はいつもぎっしりと予定で埋め尽くされていました。

 

先月、予定していた日本出張の少し前のこと。体調を崩し、やむなく全ての予定を一度キャンセルすることを決断したのです。

 

もちろんキャンセルすることに対して、約束していた人たちへの後ろめたさや残念な気持ちもありました。しかし、自分の置かれたありのままの現実を受け入れ、入れていた予定を全て潔く”手放す”ことで、時間にも心にも余裕が生まれ、自分自身に思わぬ変化が現れたのです。

 

何事も”始める”のも勇気がいるけれど、”辞める”のには更に勇気がいる。しかし、4年前から始めたメディテーションで段々と自分の内側が変わりつつあったところに加えて、少し前に体験したヴィパッサナーリトリートで「大きな流れに逆らわず、今を受け入れることの大切さ」を体感していたからこそ、潔く”手放す”選択ができました。

 

内向的な自分を知ることで出会った心の平穏

 

ごちゃごちゃしていたスケジュールが綺麗になったことで、生活のリズムが整いました。

 

毎日、同じ場所、同じ時間に瞑想できるようになったことも相まって、性格までも少し大人しくなり、これまでは気がつかなかった日常の中の静寂に目が向けられるようになったのです。また、静かで落ち着いた空間を心地よいと感じるようになり、一人きりの時間を寂しいと感じる代わりに、エンジョイするようになりました。

 

たとえば、「水が欲しいのかな」とか、「この部屋の光加減が合うんだな」とか、植物が求めているものがわかるようになったり、私が静かになることで、子どもたちから話してくれることが増え、また、自分も静かに周りを観察するようになり、子どもたちの心の内や思考をより深く知れたり。

 

さらに、家にいる時間が増えたことで、趣味のアートもこれまで以上に充実しています。

 

遠方への出張を辞めたり、知り合いとのランチの機会を減らしたり、最初は周りと疎遠になるのではないかと不安を感じることもありました。しかし、辞めてみれば意外にも気持ちはスッキリ。これまでは必要以上に動き回っていたことに気がついたのです。

 

外に出なくても必要な情報は得られるし、会いたい人にはピンポイントで会えればいい。

 

これまで外交的だった私が、内向的になったことで、パラダイムシフトがおきたのです。

パラダイムシフトとは?

パラダイムシフトとは、考え方や価値観が根本的に変わること。

 

人は無意識のうちに特定の視点や信念に固執し、そのフィルターを通して日々を過ごしているのです。しかし、パラダイムシフトが起こると、これまでの「当たり前」が覆され、新しい見方や考え方ができるようになります。

 

この変化は小さな瞬間から始まり、次第に生活全体に影響を及ぼします。パラダイムシフトは私たちに新しい可能性を示唆し、人生に深みをもたらす大切なプロセスだといえるでしょう。

 

“Less is More”が人生における幸せの鍵

 

20世紀に活躍したドイツ出身の建築家、ミース・ファン・デル・ローエが残した言葉“Less is More”。これは「シンプルなデザインを追求することによって、より美しく豊かな空間が生まれる」という、彼の建築家としての信念を表した言葉です。

「少ない方が豊かである」という意味あいのこの言葉は、建築のみならず、人生を幸せに過ごすためにも重要な思想だと私は実感しています。

 

なぜなら、多くのものや情報に溢れた現代、便利な反面、膨大な選択肢に迷いや悩みが生じやすく、心身が疲弊するからです。

 

だからこそ、大切なのは選択肢を極力減らすこと。辞めること・やらないこと、自分の中に基準を持つこと。選択肢が減ることで迷うときや悩む時に使う思考の量が少なくなり、心穏やかに過ごすことができるのです。

 

もちろん、これまであたり前にしてきたことを辞めたり、習慣を変えるのは勇気がいることです。しかし、何かを手放し余白が生まれるからこそ、本当に大切なことに気がつけたり、新たなご縁に出会えたり、新しい可能性が広がるものです。

 

体調を崩し、海外出張をキャンセルしなければいけない。一見ネガティブに思えるこの出来事が、私にパラダイムシフトを起こし、”Less is More”の重要性に気がつかせてくれました。

ライター:プロフィール

Humming編集長、一般社団法人ハミングバード代表理事。カリフォルニア在住。

高校時代、スイスに住んでいたときに自然の偉大さに触れ、地球環境保全について学び始める。アメリカの美術大学でテキスタイル科を専攻。

今でも古い着物の生地などを使って、子育ての合間に作品を制作し続けている。


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