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カツセマサヒコさんが大切にしている言葉とは?【気になるあのひとに10の質問】

オリジナルなスタイルを持って生きている素敵なひとに聞く、10のQuestion。心や暮らしの豊かさは、ブレない生き方や考え方が築くもの。内面から輝くひとは日々どのようなことに目を向け、何を実践しているのか––。
社会に出たばかりの若者たちの迷いや恋を描く小説『明け方の若者たち』で2020年に小説家デビューを果たしたカツセマサヒコさん。そのライフスタイル、お仕事を探る質問に答えていただきました。


「願うってことだけは何歳になってもしていきたい」

カツセマサヒコ

Q1 大切にしている言葉、座右の銘は?

「願わなければ、叶わない」。
誰の言葉というわけではないのですが、いつもそう思っています。昔から夢は口に出す方で、「何かをしたい」と願うことで、それを実際に達成してきたタイプなんです。願うってことだけは、何歳になってもしていきたいです。

本を出すことも「叶わないかもしれないけれど、いつかは」と思っていた一つの夢。僕が初めて書いた小説が『明け方の若者たち』です。自分が社会人になりたての頃に感じた「こんなはずじゃなかった」という気持ちと、そんなこと言いながら遊んでいた日々。その時期をマジックアワーっていうんじゃないかなと、そんなテーマから生まれた作品です。

そのときに関わった仲間たちをモチーフに書いたこの作品が、映画にもなりました。頭の中で描いていたものが、本当に動いている、現実になっているという純粋な感動がありました。夢かな、というくらい(笑)。とはいえ、映画化についてはわりと冷静に見ていて、小説は子供、映画は甥っ子くらいの感覚なんです。甥っ子はかわいいけど、どんなに褒められても親は僕ではなくて、監督と演者ですから。小説と映画、それぞれにしかないセリフとシーンがあって、お互いが高め合うことのできる映画をつくっていただけてとてもうれしいです。

カツセマサヒコ

映画『明け方の若者たち』は、北村匠海、黒島結菜、井上祐貴ほかが出演、監督は松本花菜。12月31日全国公開予定。©カツセマサヒコ・幻冬舎/「明け方の若者たち」製作委員会


Q2 自分のスタイルに大きな影響を与えたひとは?

Mr.Childrenの桜井和寿さん! 大衆的であることの魅力としんどさを教えてくれました。

12歳のときから好きで、彼らがどうやって国民的アーティストになり、人気を維持し続けているのかを一ファンとして見てきました。桜井さんが何歳のときにどんなことを言ったのか、どんな曲を作ったのか、どんなアーティストとコラボレーションをしてきたか、参考にさせてもらうことが多いです。作品を作るとき、セールスを考えるときも、「大衆的であるかどうか」はある程度、意識するようにしています。


Q3ご自身の作品のなかで、いちばん好きなセリフは?

「結婚したら既婚者、出産したら母親。レールに沿って生きたら、どんどん何者かにされちゃうのが、現代じゃん。だから、何者でもないうちだけだよ、何をしてもイイ時期なんて」

『明け方の若者たち』の彼女のセリフです。
映画でもこのセリフを残していただいてうれしかったですね。この作品の主人公たちの年齢、23~4歳頃の僕は、何者でもないことにすごく焦っていた。そのときに「何者でもないうちだけだよ、何をしてもイイ時期なんて」と誰かに言って欲しかった。何をしてもいい、なんでもやればいい、と言ってくれる人が側にいたらよかったな、そう思って書いたセリフです。


Q4 心やカラダが疲れたときのリラックス法は?

カツセマサヒコ

海に行くこと! 仕事場から海まで歩いて行けるので、何かあるとボーッと黄昏に行っています。波の音を聴いて、海を見ているのもいいですが、そこにいる人たちを見るのも好き。「あの2人組は、どちらから誘って海に来たんだろう」とか「あの男の人は1人でどうしてここにいるんだろう」とか、それぞれのストーリーが膨らんでいくから海っておもしろい。僕にとってのストレスは小説のネタが浮かばないってことなので、困ると海に行ってネタを探しています。


Q5 今、一番行きたい旅先は?

オーストラリアのケアンズ。昔、妻と2人で行ったんです。あとは、子供が魚好きで、ずっと図鑑を見ているので、きれいな海で泳いでいる魚を見せてあげたい。とはいえせっかく家族で行くなら、ちゃんと子供の記憶に残ってほしいから、もっと先になるかなと思います。僕は小学校1年生のときに海外に連れていってもらったらしいのですが、まったく覚えていなかったので。もったいなかったなあ、と(笑)。


Q6 欲しいものはありますか?

元気な胃! 10代、20代の人にアドバイスができるなら、これは絶対言いたいです、今のうちに脂っこいものをひたすら食べておけ!と(笑)。

てんぷらが好物で、「てんや」に行くのも大好きだったんですけど、最近もう脂っこいものを食べるとリカバリーに3日くらいかかるんですよ。あと、アフタヌーンティーの3段スイーツも、20代のうちに食べておいた方がいい!

年齢を重ねると、蕎麦や山菜の旨さに気が付く、みたいなことがありますけど、でもそんな地味なことより、揚げ物たくさん食べられた方がよかったなって、今は思います。


「元気でいないと、と強く思っています」


Q7 仕事をサステナブルにするために必要なことは?

身体的な健康と、精神的な若さ。健康のためには、ウォーキングしたり、食べるものも気をつけています。お腹がいっぱいになるまで食べずに腹八分目にしておこうとか。最近は朝にキウイを食べるようにしているから調子がいいです。

作家は個人事業主。体がしんどかったら生活できなくなってしまうので、元気でいないと、と強く思っています。

そして精神的な若さも小説家には必要。若い人の気持ちになって書かないといけないこともある。そのために、常に謙虚であること、自分で情報を拾いにいくことは心がけています。


Q8 地球のために実践している、ちょっとイイコトはありますか?

昔は、とりあえず安い家具を買って、引っ越しの度に捨てるということもしていましたが、それはもうやめて、これからは一緒に歳を重ねていけるものと暮らしていきたいと思っています。

カツセマサヒコ

作業場を作る際、50年先も使えるものだけで空間を構成したいと考えて家具を選びました。特に本棚は、憧れのブランド、INDUSTRIAL BRANCHで購入しました。鉄の枠と木の板だけのシンプルなもので、板は耐久性や保存性が高い檜。とても丈夫で、きっと僕よりも長生きすると言われました。


Q9 これから挑戦してみたいことは?

カツセマサヒコ

ギターです! 2021年の9月、35歳の誕生日にアコースティックギターをを買いました。大人になってから何かを始めるって、あまりないことなんですよね。久々のゼロ歳児を経験していますけど、伸びしろしかなくて楽しいです。 Fコード弾けたよってだけでうれしくなって。「まだ始めて半年だから」と言い訳できるうちに、ライブをしたい(笑)。

これからもギターみたいに新人に戻れることをいろいろやりたいんです。50歳になったら、写真を始めたいとも思っていますし。仕事も「小説家」と名乗り始めてまだ2年なので、めちゃくちゃ純粋でいられるんですよ。どんどん書きたいし、いろんな人に見せたい。でも5年も経てばきっと、キャリア相応のいいものを書かなければいけないというプレッシャーも生まれてくると思うので、そうなる前に新しいことをどんどん始めていきたいです。新しいことに挑戦し続けることで、若くいられて、謙虚でいられる気がします。


Q10  2030年までに実現したい、ご自身の夢やテーマを教えてください。

その頃は44歳。作家生活10周年を超えた頃になっているので・・・出版社さんに10周年フェアをしていただけるように、作品をたくさん発表していたいですね。

作家として長生きするために、仕事環境も可能な限り維持していたい。今の仕事場は、暮らしとのバランスもとてもいいので、そこが荒れたり散らかったりせず日々を生きたいです。それはとても難しいことなのでしょうけど。

最近は圧倒的に朝型スタイルです。余裕があるときは朝4時に起きて、コーヒー1杯ですぐ仕事。家族が起きてきたら一緒に朝ごはんを食べて、子供を送っていったらしばらくは妻と2人の時間を過ごせることもある。午後は一瞬眠くなりますけど(笑)、そんなペースで仕事をしています。
プライベートと仕事のバランスがとてもいいから、こんな時間がいつまでも続いてほしいんですけど、それも『明け方の若者たち』と同じ、人生のマジックアワーみたいなものだってわかっています。いいバランスであるうちを楽しみたいですね。


カツセマサヒコ

Profile
カツセマサヒコ
1986年9月15日生まれ、東京都出身。2020年『明け方の若者たち』(幻冬舎)で小説家デビュー、2021年には2作目『夜行秘密』(双葉社)を上梓。東京FM「NIGHT DIVER」のラジオパーソナリティを務めるなど、活動の幅を広げている。

カツセマサヒコ

『明け方の若者たち』(文庫版)カツセマサヒコ 著/幻冬舎

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PHOTO = 七咲友梨
TEXT = 安井桃子

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