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自分を奮い立たせることができるのは、自分しかいない【モデル 高山都のIt’s My Story】

20代のころから変わらない、周囲を明るく照らすような笑顔。センスあふれるインテリアや料理、ファッションなど、彼女のスタイルに憧れる人は多い。そのライフスタイルを綴った『高山都の美食姿』は同世代の女性から共感を得て、第4弾までシリーズ化されるほどに。インスタグラムのフォロワー数は22.5万人(2022年4月14日現在)を超え、商品プロデュースのオファーも絶えない。20代半ばでの葛藤、30代前半で味わった挫折を経て少しずつ確立していった自分らしい生き方。その道のりを伺いました。

miyako

何も持っていなかった、かつての私。モデルとして持続していける強さもなくて

19歳で大阪から上京し、モデルとして青文字系雑誌を中心に活躍。白い肌とベビーフェイスがウケて、ビューティモデルとして人気に。24歳のときにはドラマ『ガリレオ』のオーディションに合格、さらに25歳で『ROOKIES』の出演者オーディションのインターネット投票で1位になり出演権を獲得。女優としてヒット作への出演が続きました。

「ありがたいことにモデルとしてコンスタントにお仕事をいただいていましたが、専属モデルではないし、言ってみればその日暮らしのようなもの。もっと自分を表現したいという気持ちはあるけれど、その雑誌ごとの色に染まらないといけないし、型にハマることが正解だと思っていました。お芝居の世界に足を踏み入れてみたけれど、自分の力のなさに気付かされました。自分を表現したい、型にハマらずにもっとはみ出したいと思っているけれど、表現する力も得意なことも何もなかったんです。夢だけは大きくて、ただ与えられた仕事をするだけでどうすべきか答えが見出せず、受け身でいる自分に苛立ちがありました」

好きな分野の音楽を極めようと積極的にライブハウスに通い、今までと違う分野の人たちと出会って刺激を得たり。それがラジオの音楽番組でパーソナリティを担当するという挑戦にもつながりました。何者かになりたい。自分で扉を開くために、考え、悩み、奔走した日々。

miyako

「私らしさとは?」を掘り下げたら、何も恥ずかしいことはなくなった

ライフスタイルをテーマにした発信に注目が集まる高山さん。そのきっかけとなったのが、34歳のときに出版した『高山都の美食姿「したたかに」「自分らしく」過ごすコツ』。

「知り合いの編集さんから、インスタを見てイキイキと生活しているのが楽しそうだからと声をかけていただき、本を出すことになりました。ラジオで自分を出すことや失敗をすることは恥ずかしいことではないと気付けたけれど、どこかでこう見られたいという心のバリアがあって。いいかっこしいの面が出ているのを編集さんに見透かされ、厳しい目で写真や原稿をチェックしてくれました」

でも本の出版という人生の大きなイベントの裏で、人生最大の危機に直面ーー。

「当時、お付き合いしていた人との生活も本に掲載していたのですが、制作中に破局してしまったんです。結婚を約束していたからショックは大きかったし、本にも二人分の料理をのせていたし、もう私の人生どうしてくれるのよ!!って悔しさ、悲しさ、寂しさ・・・いろいろな思いが渦巻いていました。でも、発売することは決まっていたので、やるしかないと腹をくくりました」

ハプニングを乗り越え、完成した本の売れ行きは好調。モデル 高山都に注目が集まる結果に。

「うれしいことに2冊目を出すお話も決まって、正直にお別れしたことを本につづりました。自分で積み上げてきたことだから、自分できちんとけりをつけようと思って。30代半ばの女性が結婚を約束していた人と別れるのはどん底ですけど、人生何があるかわからないもの。結婚しても別れることはあるわけですし、私の失敗談が誰かの生き方のヒントになればいいかなーーって。2冊目を作っているときから、恥ずかしいことがなくなりました。隠すものはないというか」

落ち込んだとき自分を奮い立たせることができるのは、自分しかいない

2冊目となる『高山都の美食姿2「日々のコツコツ」続いてます』も多くの女性から支持が集まり、2020年には3巻、4巻を同時発売。ただ、なぜか本の制作中にハプニングが起こるのです。

「たくさんの方が本を手に取ってくださり、私のライフスタイルに興味を持っていただけたことで、料理や商品プロデュースなど新しい仕事が増えていきました。でも、忙しい日々と、周りが求める高山都のイメージに自分が追いつかなくなって、眠れなくなってしまいました。本の制作中は薬を飲みながら原稿を書いていましたし、料理もできない、走ることもできない。好きなことをする気力さえありませんでした。

みんなが求めてくれているのだから頑張るしかないと、なんとか2冊を仕上げることができましたが、そのころの記憶がほぼないのです。編集さんをはじめ、スタッフに迷惑をかけてしまったことが申し訳なくて。周りは力を貸してくれるけれど、結局最後に頑張るのは自分しかいないんだと、改めて気付かされました」

仕事の忙しさだけでなく、40歳を目の前にして周りの雑音も高山さんを悩ませたそう。

「37~38歳という年齢、子どもを産むならもう時間がないよと言われることが増えて、それがストレスにもなっていました。女性にはいくつかのタイムリミットがあるけれど、今はライフスタイルを自分で選べる時代です。自分のなかで今はそのタイミングではないと思っていた一方で、時間がないこともわかっていた。そんなこんながあって、心身のバランスを崩してしまいました。病院で薬をもらったら、少し落ち着いて。そのうちにいい意味で開き直ることができました。元気を取り戻して薬も必要なくなって。今までは周りの意見を大事にしすぎていたけれど、自分軸で生きていこうと思えるようになったんです。

それに、全部欲しがってもそれは無理な話。ようやく“イイ子”でいることを辞めることができました。そのタイミングで髪色もハイトーンにしちゃいました。40歳を前にして、不良になってやろうって(笑)。20代からずっと『はみ出したい』と思っていたけれど、できない自分がいた。今ようやく、自分らしく生きられる気がしています」

miyako

自分の失敗談が誰かの生きるパワーになればいい

自分の力で山を乗り越えての今、“ていねいに生きる”を体現している高山さん。最近、ますます笑顔が輝いて見えます。

「キラキラした笑顔を求められることが多いけれど、私だって笑えない日もありますよ。そういうときは正直に言うようになりましたし、そんな日はお風呂に入って早く寝るのが一番! SNSを見ていると誰かをうらやんだりしてモヤモヤするでしょ? 比べることがネガティブになる原因だと思うから、人は人、私は私、誰が上とか下とかはないのだから、比べそうになったら『はい、閉店! ガラガラ~(シャッターが閉まる音)』で寝てしまって、明日、新しいスタートをきればいい。

私もどん底を味わったけれど、ちゃんと這い上がることができました。その経験を公表することで、誰かの生きるパワーになれたらいいなと思っています。トークショーに来てくれた人からも『私、彼と別れたばかりで・・・でも、元気をもらえました』と言ってもらえて。正直に書いてよかったと思えたし、自分自身も救われました。幸せの形は人それぞれだから、こんな生き方もあるよというヒントになればいいなと思っています」


「ゼロからのやり直しは慣れているから」と新しいことへチャレンジする意欲が衰えることのない高山さん。この3月に自身のブランド「re:L’aube(リ・ローブ)」をローンチしたことをSNSで発表し、その動向も楽しみ。一つひとつをていねいに、正直に、思うままに。高山都という女性の生き方は、真っ直ぐでしなやか。彼女が自身のチカラで手にしたその“強さ”が、私たちを魅了し、自分らしくあることの大切さを教えてくれるのです。


Profile
高山都(たかやまみやこ)
1982年12月27日生まれ、大阪府出身。19歳で上京し、ビューティモデルとして女性誌で活躍。その後、ドラマや舞台、ラジオなど活動の幅を広げる。趣味のマラソンでは、横浜マラソン2016を3時間41分で完走した記録を持つ。「#みやれゴハン」として料理やうつわを紹介するインスタグラムが人気となり、2017年にライフスタイルをまとめた『高山 都の美食姿』(双葉社)を出版。飾らない、心地良さを軸にした生き方が支持され、その後シリーズ化。2020年11月に第3弾、第4弾となる2冊を同時発売。2022年3月26日に自身がプロデュースする「re:L’aube(リ・ローブ)」をローンチ。
Instagram @miyare38
Twitter @miyare38


PHOTO = 勝吉祐介(PEACE MONKEY)
HAIR & MAKE-UP = 鈴木智香(A.K.A.)
TEXT = 岩淵美樹

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