最近よく耳にする「ウェルビーイング」という言葉。「よりよく生きる」ために、私たちは自分のために何ができるでしょうか。他の誰でもない、自分のために、自分らしく生きて、自分自身が幸せを実感できる毎日へ。この連載では、予防精神医学者の島田恭子さんに、自分軸でモノゴトを進めていく人生を送るために学びたい「自分学」について教えていただきます。
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「自分を知る」ことはなぜ必要?
皆さん、こんにちは。予防精神医学を研究している島田恭子です。
生きづらい現代。楽しいこともあるけれど、何かと辛いことや悩みも尽きない日々・・・。そんななかでも「自分の人生を実りある、後悔のないものにしたい」と思っておられる方は多いはず。
私もその一人です。これまでの人生、紆余曲折してメンタルへルス(心の健康)を学び、今は「ウェルビーイングに生きる」をテーマに、仲間と絶賛活動中です。
ウェルビーイング、私のイメージは「自分らしく、いい感じに生きる」。死ぬときに「私の人生、悪くなかったな。うんうん満足♪」と思えたらいいなと。
・・・とはいえ、“実りある人生を送りたい!”と思っていても
「一体どうやったらいいのかわからない」
「目の前の雑多なことに追われてあっという間の毎日。そんなこと考える余裕もない」
「そんな先の小難しいこと考えるの、面倒だ」
「自分のことや人生について考えるの、なんだか怖い」
ーーそんな感じで何となく、日々が過ぎている方も多いのでは?
だって私の20代~40代がまさに、そうでしたから。
でも、いま振り返って思うこと。それは「早いうちに(若いうちに)、自分について、これからについて、人生について、考えたらよかったな」ということ。もしかすると、“何よりも優先して考えると、いいことあるかもしれない”ということです!
この連載では、日々の忙しすぎる時間から少しだけ離れ、自分を見つめ、自分を大切にし、自分をアップデートするために、役に立つことをお伝えします。
精神保健学や予防医学、心理学や行動科学の知見から、私自身の失敗談から、ヒントになりそうなものをご紹介していきます。皆さんのより良いウェルビーイングライフのために、お役に立てればうれしいです。
自分を大切に、ウェルビーイングに生きている女性は意外と少ない?
今でこそ、「自分を大切にしたいよね」と言ったら、うなずいてくれる人がたくさんいますが、昭和かつ田舎生まれの私の青春時代は、そうはいきませんでした。
学校では、周りと同じように黙って座って授業を受けるのが正解。突飛な意見はNG、教科書通りの回答が大正解。そんな社会で優先されるのは、“自分の価値観より社会的正しさ”です。
小さいころから私たちは何度、「周りに迷惑をかけない生き方をしなさい」と言われたでしょう。子供は迷惑をかけるのが当たり前なのに。
自分がどう思うかとか、どうしたいかより、気にすべきは親や先生、それに世間がどう思うか、など“他人の評価軸”。世間の常識や価値基準に囚われ、「自分の思いは後回し」にすることに、慣れていきます。
「自分らしさ」がわからない私たち
こうして少しずつ周りに沿い、自分より世間や親(女性は特に母親に対して気を遣うことが多い)、先生の意向を尊重するうち、“自分が本当に大事にしたいもの” とか“自分はどうしたいか” 、”自分らしさ“みたいなものが、だんだん自分でもわからなくなってしまいます。
これを「コントロール感がなくなる」といいます。
小さいころから、良い子、おとなしい子、と言われた方ほどその傾向があります。周りの大人の価値基準に影響されてしまうんですね。
生まれたころの赤ちゃんは、自分の欲望のままに泣き、食べ、思いどおりにならないと駄々をこねます。それが少しずつ、周りに配慮した行動を取り、空気を読んだり、忖度するようになる。それを社会性がつく、といったりしますよね。
でもそれが行き過ぎると、自分の欲望や思い、「〇〇したい」をいつも我慢し、やがて自分は何が大事だったのか、どんなことに価値を置いていたのか、自分でもわからなくなってしまうのです。
真面目な人ほど、自分の価値感と違っても、世間の基準に「合わせなきゃ」「認められなきゃ」と頑張り、無理をすることになってしまいます。
自分を知って、“ねば must”から“したい want”へ
子供時代は、学校生活の規律のために、社会性をつけるために、ある程度そんな訓練も必要だったかもしれません。
でももう大人になった私たち。ほかの誰かの価値観で、「〇〇しなきゃ」と頑張る必要はありませんよね。
自分の価値観ではなく、他者の評価軸で生きるとき、私たちはどこかで無理をしています。目には見えないかもしれませんが、ストレスを感じています。「〇〇しなきゃ」と頑張ったところでいつか限界がきます。イライラして人に当たったりメンタル不調になったり、イキイキと生きられなくなります。
一方、自分の価値観でやりたいことを自由にやっているとき、私たちはハッピーです。「〇〇したい」と思ってやることは、楽しい。これは私たちのウェルビーイングにとって、とっても大事なことです。
だからここらへんで、自分の価値観に目を向けて、自分らしさや自分軸、「〇〇したい」に意識を向けてみませんか。
“ねば(must)”から”したい(want)”への、パラダイムシフトです。
そのための大きな一歩は「自分を知る」こと。自分を知る作業を重ねることで、自分の本当の価値観、自分の“したい(want)”がみえてくるのです。
人生は、自分が主役の一度きりの長い旅。だからWantで生きませんか?
私たち一人ひとりに平等に与えられた“人生”という旅。どこに向かうか、誰と行くか、目的、テーマ、どんな旅にするか・・・。企画をするのは全部、自分自身です。
誰かに縛られているように見えても、実はほかの誰も、指図できないんです。途中の変更も大いに結構。行き先も、一人旅か誰と行くか、テーマの変更もまったく自由です。
でも、一つだけ自分で決められないこと。それは“いつ終わるか”だけ。
1年後かもしれないし、10年後かもしれない。でも100年以内にはほとんどの方が旅を終えるでしょう。
考えてみれば、ほんの一瞬ですね。
だからこそ、少しでもはやく、自分が望む旅の形にしませんか。行きたい人と行きたい場所に、テーマも目的も自分次第。これからいくらでも、変更することも可能です。
自分を知り、自分を整え、自分をアップデートすることが、自分旅を形づくります。さぁこれからご一緒に、自分がいいと思える、自分だけの旅程を企画していきましょう。
※次回から「自分を知る」ための具体的なアプローチ法や、自分軸で考える方法についてのレクチャーがスタートします。どうぞお楽しみに!
ライター:プロフィール
精神保健学者。コンサル会社での人材育成を通して、心の健康の重要性を感じ、東京大学大学院にて予防医学とメンタルヘルスを学ぶ(保健学博士)。
「人が、心豊かでその人らしく、健やかな人生を送れるように後押しすること」がライフワーク。
一般社団法人ココロバランス研究所代表。