相談2:スクリーンタイム(テレビの見過ぎ)の悩み (7歳〜小学生高学年向け)
読者からの相談:
子どものスクリーンタイムについて悩んでいます。
子どもがテレビやスマートフォンを見る時間が長すぎないかと心配しています。
そのため、最近は「テレビを見る時間は1日30分まで」と決めています。
最近では子どもたちが外から帰ってくると「30分見ていい?」朝起きると「30分見ていい?」と聞いてくるようになりました。
テレビの時間を制限することで、子どもがさらにテレビに執着しているような気がします。
子どものスクリーンタイムの悩みをどうしたらいいか知りたいです。
ジョアンナさん:
これはよく聞く悩みで、多くの親や教師たちにとっても大きな関心事です。
スクリーンタイムが長すぎることは若者の健康に良くないことは多くの人がわかっていますが、この課題にどうやって対応すればいいかは、よく議論になりますね。
この問題に悩んでいる多くのご両親に私は強く共感します。
「スクリーン」(テレビ、スマートフォン、アイパッド、電車の中や街角の広告など)に囲まれた生活をしている現代社会において、この問題の解決は簡単ではありません。
良質なスクリーンタイムとは何かを判断するのも難しいですよね。
例えば親戚とのフェイスタイムならいいのか?教育番組を見るのは良いのか?など。こういうのもスクリーンタイムですからね。
米国小児科学会(American Academy of Pediatrics)は、1歳半未満の子どもにはスクリーンタイムを一切与えないことを推奨しています。
また、2歳から6歳までは(教育番組のような)「質の高い」スクリーンタイムを1時間以内にすることを推奨しています。
忙しくて疲れている親が、テレビに子守りをしてもらいたいと思う気持ちはわかります。
でも、それによって生じる、子どもの成長と発達への代償はあまりにも大きすぎるのです。
幼い子どもたちがスクリーンばかり見過ぎることは、子どもたちから自分で何かを作り出す力、想像力を奪うことになります。
こういうことを踏まえると、スクリーンタイムを30分に制限することは、とても合理的なことだと思います。
親として最も大切な役割は、子どもに明確なルールをしっかりと示すことです。
子どもは、その時その時に欲しいものを手に入れるために、あらゆる努力をするものです。
駄々をこねて泣いてみたり、叩いてみたり、もっと勉強するからと交渉をしてきたり。これに対して怒る必要はありません。
子どもは親と一緒に決めた約束事を守ることを続ける中で、いずれ自分や物事の限界を知り、良い決断をすることについて多くを学んでいくからです。
30分という制限を与えることで、子どもたちは、いつスクリーンタイムを使うかの判断について学ぶことができます。
もしかしたら、子どもが朝一番にその日のスクリーンタイムを使い、夕方にはスクリーンタイムがないことにがっかりしたり、怒ったりするかもしれません。
その場合は、子どもの残念だと思う気持ちにまず共感をしてあげてから、明日は違う選択をしてもいいかもしれないと話し合う機会にすればいいのです。
最初のうちは、子どもが不満に思うかもしれません。
でも 「ルールは守らなければならない」ということをあなたがはっきりとした態度で示し続ければ、そのうち子どもは否定的な反応は止めるでしょう。
制限を設けることは「自分の」時間をいつ使うかを子どもにある程度コントロールさせることになります。
つまり、子どもがある程度のコントロールと自主性を持つことができるということです。
また、あなたがいう「執着」は、「スクリーン」がいかに中毒性のあるものであるかを示していますね。
スクリーンタイムが終わると、とにかくまたやりたくなるということも研究結果でわかっているそうです。
スクリーンの中毒性を考えると、これからの人生において、様々な依存性のあるものから距離をとる練習になるかもしれません。
タイマーをかけたり口頭で「あと5分」「あと1分」と知らせてあげると、次のことに移行することが難しい子どもには大きな助けになります。
また、30分をスタートする前に、スクリーンタイムが終わったら何をするのかを先に考えて気持ちの準備をしてから遊び始めるのも効果的です。
私の子どもたちは、大人になってから、子ども時代に家にテレビがなかったことを私に感謝してきました。
幼い頃、常にテレビに接していた友人たちが、やることを思いつかず手持ち無沙汰な時間を過ごしていました。
その間、私の子どもたちは自分たちに無限の想像力や発明力があることに、よく驚いていました。
スクリーンタイムに固執しなかった私の子どもたちは、決して「退屈」することはなかったんです。
もうひとつ伝えたいことがあります。それは私たち大人がスマートフォンという「スクリーン」にどれだけの時間を費やしているかということです。
小さな子どもたちは、親がいつもスクリーンを見ているのに、なぜ自分だけが制限されるのだろうと不思議に思っています。
あなた自身がどれくらいスクリーンタイムを使っているのか、それが子どもにどのような影響を与えているのか、考えておくとよいでしょう。
子どもは模倣の生き物ですから、自分の鏡のような存在だと思っておくといいでしょう。
体を動かすゲームや遊び、自転車に乗ること、パズル、アートプロジェクト、本を読むこと、音楽を聴くことなどは、子どもたちが楽しめる最適なアクティビティですね。
こういった活動は、大人になっても自由な時間を楽しく過ごすための良い習慣として続くでしょう。
子どもたちは、とても想像力豊かな生き物です。
ただの段ボール箱ですら、とてもクリエイティブなものに変身させることができます。
家、レストラン、車、船、消防車、診察室、学校の部屋、ロケット、ホテルなど、私自身が、段ボールで作られた数え切れないほどの作品を見てきました。
私たちは、子どもたちの大きな創造力を奪うことはしたくはありません。
人間の脳が受け身な状態を作り出すスクリーンタイムに多くの時間を費やすのは、子どもにとって多くのリスクがあります。
子どもの心と体に秘められている大きな可能性を全力でサポートしていきましょう!
最後に、段ボールにまつわるすばらしい思い出を共有させてください。
私はあるプロジェクトで家にテレビがない子どもたちのために、大きな段ボールでテレビをつくったことがあります。
この時に子どもたちはすべてのテレビ番組を自分たちで制作しました!
私たち大人は子どもの作ったニュース、バラエティ、ダンス発表会の番組の鑑賞会に招待されました。
手作りの衣装や小道具がどんどん増え、番組はより手のこったものになっていきました。大きな創造力に私たち大人の心は温まったものです。
子育ては非常に難しい仕事です。大人はいつも試されているのです。
自分が正しい育児の道を歩んでいると思ったら、自信を持ってしっかりと歩めばいいのです。
目先の楽さや、大変さ、その場しのぎに言うことを聞かせたり、周りの目にこだわるより、大切なことがあります。
子どもをクリエイティブで、バランスのとれた優しい人間に育てるという長期的な目標も持つことが、何よりも大切なのです。
ジョアンナ・ウィギントン氏
助産師として600人以上のお産に携わる。
教育者であり、アーティスト。北カリフォルニア在住。
20年以上にわたりオルタナティブ教育施設であるカスパー・クリーク・ラーニング・センターを創設・指導してきた。
現在はNPO組織Flockworksの活動に参加し、子供や教師をサポートしている。アートの力を広めるためのプログラムを展開中。
すべての人がアーティストであるという強い信念を持ち、若者から年配の人までが創造力を探求する機会を作り出している。
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