共感と気付き。今の私へと導いた、シャネルの言葉【小泉里子 / 未来に続くBOOKリスト vol.8】
あなたの本棚には、これからの人生で何度も読み返したい本が何冊ありますか? モデル 小泉里子さんの連載エッセイ「未来に続くBOOKリスト」。読書好きの里子さんが、出合ってきた本のなかから“ずっと本棚に置いておきたい本”をセレクトしてご紹介します。
BOOK LIST_08
『ココ・シャネルの言葉』
ジャンル=エッセイ 山口路子 著/だいわ文庫(大和書房)
シャネルのバッグを持つことが憧れでした。それは今も変わらずに存在する憧れ。
こんなにも長く女性の憧れであり続けるブランドであるということ。その理由は、この本のなかにたくさん詰まっていました。
「私はモードではなく、スタイルを作り出したのです」という彼女の言葉。ガブリエル・シャネルが作り出したスタイルは、発表した当初、あの時代においては、何とも風変りで“へんてこりん”と思われてしまうようなものだったのかもしれないけれど、徐々に彼女の作り出すスタイルに世界中の女性が引き込まれ魅了されていったのはご存じのとおり。それは、今私たちが生きてる時代も同じで、彼女のスタイルはずっと生き続けています。
シャネルに関する本は数多く出版されていて、大好きで何冊も読みましたが、なかでも何度も読み返しているのがこの一冊です。言葉集なので、パッと開いたところを読んで、その都度シャネルの言葉に励まされたり、気付きをもらったり。シャネルは生涯独身で、恋多き女性だったものの一度も結婚には至らなかったのですが、これだけの成功を収めたパワーのほとんどすべては仕事に注がれていたのかな・・・と勝手に想像してしまいました。
本のなかで見つけた「強い男でなければ私と一緒に暮らすのはとても難しい。そしてその人が私よりも強ければ、私がその人と暮らすことは不可能なのだ」ーーこの言葉に私は異常に反応してしまいました。何度も読んでいる本なのに、そのときの私にものすごく響いたのです。
それは、自分の矛盾に気付いたという気分。思わず「そうなのー!」と叫んでしまいました。
男の人に頼るというのは、強い女の一番むず痒いところ。本当の本当、心の奥底では実は頼って生きてみたいけれど、それ以上に仕事が大好きで、どうしても譲れないものが出てきてしまう、そして自分でも時にコントロールできなくなる矛盾。そんな苦しみがシャネルもあったのかと思うと、お茶して語り合ってみたいとめちゃくちゃ思ってしまいました(笑)。
5年前、私自身がそんな矛盾で悩んでいたとき、シャネルのこの一節を読んで、もはや結婚は望まず、一人の人生を歩んでいくか、なんて思ってみたりもして。再婚して子供も欲しいけれど、男性を潰してしまうほどの自分の強さ、でも強い男性がいいと思っている自分もいて、でも自分より強いと嫌で・・・。あ~、こりゃややこしい女だわ~と思ったのですが、私にはシャネルほどの功績はなかった・・・とお門違いとすぐに気付きました(笑)。
気付いた私は今、主人に頼り息子も生まれ、今までとはまったく違う人生を送っています。仕事への気持ちも180 度変わりました。それが良いのか悪いのか、その答えは私のなかにあります。
私は、私よりも強い男の人と出会い、ともに人生を送ることにしました。そんな答えを教えてくれたのは、ガブリエル・シャネルなのです。
『ココ・シャネルの言葉』(ここ・しゃねるのことば)
かつてないスタイルを生み出し、世界中の女性たちを熱狂させ、今もなお多くの人を魅了し続けているブランド、シャネル。ココ・シャネルが残した数々の言葉を、美、恋愛、ファッション、仕事、人生の5つのパートに分けて紹介し、その言葉に託された想いや秘められた意味を解き明かした一冊。
Profile
小泉里子(こいずみさとこ)
15 歳でモデルデビュー。数々のファッション誌で表紙モデルを務め、絶大な人気を誇り、広告やテレビ番組でも活躍。着こなすファッションはもちろん、ナチュラルでポジティブな生き方が同世代の熱い支持を得ている。2021年2月には第1子となる男児を出産し、同5月より生活の拠点をドバイに移す。ドバイでの生活や子育てにもさらに注目が集まっている。仕事、プライベート、ドバイでの生活を綴った著書『トップモデルと呼ばれたその後に』(小学館)も好評。
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PHOTO = 取田和衣