森カンナ「繰り返してきた失敗から抜け出した今」【連載 / ごきげんなさい vol.06】
俳優 森カンナさんが日々の生活のなかで見つけたこと、感じた想いを綴る連載エッセイ「ごきげんなさい」。自分を“ごきげん”にするためのヒントを探しましょう。
「髪型迷子」
あーー髪を切るとなんでこんなにスッキリするんだ。
私は本当に髪を切ることが好き。
古くなった自分を切り落として、また新たな自分を始める感じがして気持ちがスーーっと澄む。
大袈裟かもしれないが私は髪を切るとそのくらい爽快になる。
あの、ざくっざくっと切り落としていく感覚がたまらなく好き。
美容院を出たあと、まるでナルシストのように街の至る所にある鏡、ガラスに新しい自分を映してみたりする。その時間もまた好きだ。
ただ、私は失敗もよくする。
昔、友人の水川あさみと新しい美容院に行ってみよう!と私が見つけた美容院に2人で行ったことがあった。
何日も前から髪を切るのを楽しみにしていた私は、この美容師さんが新しい私に出会わせてくれる!なんて思ってうっきうきのわくわくで椅子に座った。
数時間後、鏡に映ったのは、あれ? 80年代にタイムスリップしたのかな・・・?と勘違いするほどの聖子ちゃんカットになった自分だった。
しかも、前髪が短い聖子ちゃん。
その半泣きの前髪が短い聖子ちゃんの隣で爆笑していた水川には、今もその話でイジられている。私は何だかそんな失敗ばかりだ。
何度、美容院を出て何事もなかったかのように、髪をギュッと結んで街を歩いたことか。
だが、そんな髪型迷子だった私も最近はすっかり落ち着いた。髪色もここ一年くらいヘナをしている。高校生くらいのときから白髪があるので、月に一回は美容院で白髪を染めていたが、今はそれもやめて、自宅でインディゴで白髪を染めている。
以前に、森田要さんが書いた『髪 あるがままの美しさを求めて』という本を読んだ。キリンはキリン。しまうまはしまうま。キリンがしまうまになりたいなんて無理だ。という言葉に私はぐっときて、その森田さんがやっているヘナ専門の美容室にも足を運んだ。
そのとき、森田さんが「癖毛は美しいんだよ」と見せてくれたインドのかなり癖毛の女性の写真。
その髪は本当に美しかった。
そして、そのときから私は髪についてかなりの意識改革をした。
ヘアスタイルを変えて気分転換はいいが、美容師さんを新しい自分に出会わせてくれる救世主などと思わないことにした。
今考えると「外国人風で!」なんかも無理な話なんだから・・・。と過去の自分を恥ずかしく感じる。なぜなら私は日本人で、髪の量も多ければ毛も太い。
髪もありのままでいいのだ。
もちろん、役で髪を変えなければならない!となったら金髪にも坊主にでもするのだが、今は黒髪で鎖骨あたりまでのザクッと切りっぱなしにしたスタイルで落ち着いている。
もうタイムスリップなんてしないんだから・・・。
きっと・・・。
Profile
森カンナ(もりかんな)
俳優。富山県出身。映画『地獄の花園』『鳩の撃退法』、TBS『プロミス・シンデレラ』、フジテレビ『ラジエーションハウスII』など、数々の映画やドラマに出演。2021年には、自身初舞台となった蓬莱竜太演出『昼下がりの思春期たちは漂う狼のようだ』で、600人のなかからオーディションによって選ばれ、観客を魅了。4月11日(月)21時スタート(初回30分拡大)のフジテレビ 月9ドラマ『元彼の遺言状』にゲスト出演する。
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