Humming♪

自分でみつける。この場所で生きていく理由【山口乃々華 / コトノハ日和 vol.04】

言葉があるから伝えられること、伝わること。そこから広がっていく思考、癒し、つながり、希望、愛情・・・深くて力強いもの。女優 山口乃々華が、心に舞い落ちてきた“コトノハ(言葉)”を拾い集めて、じっくりと見つめ、ゆっくりと味わい、思いのままに綴っていく連載。さあ、一緒に元気になりましょう。


好きな場所をみつけて生きていく

nonoka

今年のGW、皆さまいかがお過ごしでしたか? 三年ぶりに規制のないGW。私は両親と共に母の実家に行きました。ゆっくりと数日間を過ごせたのは、とっても久しぶりで。うーんと羽を伸ばし、そこでの時間を満喫してきました。

朝方に聴こえてくるのは、鳥たちの声。
あぁそうだったなぁって、記憶がよみがえった。

私がまだ小学生で、もしこれが夏休みの朝だったら、飛び起きて、朝ごはんを急いで食べて、外で汗だくになりながら遊んでいたけれど。今の私はとにかく眠くて、たまらなかった。

しかし変わらずに心地の良い朝。さぁ、ゆっくり休んでいいですよ。と神から許されたような気分になりました。思う存分二度寝をして、飽きたら起き上がるのです。
それからリビングに行けば、家族の誰かしらが起きていて、「おはよう〜」と言いながら、それぞれの寝癖をチェック。見事な大爆発。

そこにある当たり前な日常に包まれるのは、とても心地がいい。私、そんなに疲れているわけでも、凹んでるわけでもないのだけれど、癒されました。


そんな数日を過ごした帰り道は「あー! 頑張らなきゃな」と思う。しっかり遊んだし。気持ちをシャキッとするスイッチをオンにして取り戻さないといけない。東京はいつのまにか、静かにじっくり沼に足を取られるような場所だということを、私はまだ忘れてはいけない。

そんな気持ちにさせる東京というものは、私を知らぬ間に”夢中”で埋め尽くしてくれている。そんなパワーがある。だから頑張れているのかもしれない。
強くて眩しい。
強くて眩しいから私はここ東京が”好き”なんだと、少し離れて分かった。


いろんな人がいて、いろんな生き方がある。

ここで生きるのが好きな私を、この場所を選んでいるのは私自身なんだということを、あらためて思い出させてくれました。すべてを、もう一度愛さないとなぁ、なんて思うGWでした。


銀色夏生さんの『すみわたる夜空のような』という詩集のなかに「この中で」という詩があります。

「この中で」

この中で
好きな場所を
ぐるっとみわたしてみつける

あのすみ
あたたかく沈みこんでるような
静かに落ち着く場所

いつも
今いるこの中で
目の前のこの中で
好きな場所をみつけて
生きていく

この中だったらここ

ここじゃないとはもう言わない

(銀色夏生 『詩集 すみわたる夜空のような』/角川文庫より)


この詩集を読んでいると、古いアルバムをめくっているような気持ちになった。それが、私のアルバムなのか、違う誰かのものなのかはわからないけれど、懐かしくて、ちょっと心の古傷が痛む。

一見、この詩で書かれていることと、私が抱いた“今いる場所”への想いは異なっているようだけれど、でも私なりの解釈はしっかり重なっている。

「この中で」の詩は、「好きな場所をみつけて生きていく」というのがお気に入り。
自分の好きが、「この中で」味方になる。

今を見つめて、ここじゃないなんて、思うことなく、この場所を選んで、ここにいる私。


だから、”ここ”で、私は、私らしく生きていきたい。


nonoka


Profile
山口乃々華(やまぐちののか)
2014年からE-girls主演のオムニバスドラマ「恋文日和」第7話にて主演を務め女優業をスタート。映画『イタズラなKiss THE MOVIE』シリーズ、ドラマ・映画『HiGH & LOW』シリーズほか、2020年には『私がモテてどうすんだ』のヒロイン役など、数々の作品に出演。 2020年末までE-girlsとしての活動を経て、2021年より女優業として本格的に活動を開始。2021年3月、初のミュージカル『INTERVIEW~お願い、誰か助けて~』、同8月にはミュージカル『ジェイミー』、2022年3~4月はミュージカル『あなたの初恋探します』でヒロインを演じた。ドラマは現在「ビッ友×戦士 キラメキパワーズ」(テレビ東京系)に出演中。書籍『ののペディア 心の記憶』(幻冬舎文庫)も好評で、文章を書くことも好き。2022年7月、舞台『オッドタクシー』への出演が決定。
https://www.ldh.co.jp/management/yamaguchi_n
Instagram  @yamaguchi_nonoka_official


TEXT = 山口乃々華

関連記事