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木のノートでプチ森林浴!? 100%自然素材のエシカルな文房具

おにぎりを包んだり、肉や魚の保存にも使える万能な包装材。日本で古くから使われていた「経 木(きょうぎ)」をご存じでしょうか? 今日のプラスチックのフードパックやラップのような使われ方で、ひと昔前の暮らしになくてはならないものでした。時代とともに需要が減っていましたが、実用面ではもちろん環境にも優しいというサステナブルな視点で再び脚光を浴びています。

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薄~い!経木は厚さ約0.2mmの優れモノ

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「経木」の語源はお経を書くために使われていたことから・・・という豆知識はさておき。経木は伐採した木を紙のように薄く削りだして作ります。その厚さは、わずか約0.2mm! 日本伝統の包装材といえます。そのデイリーな使い道は・・・。

たとえば、おにぎりを包んだり

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経木を水で湿らせてから包むと、1. お米がくっつきにくい 、2.  乾燥を防いでくれるというメリットが。キャンプなどのアウトドアシーンでは、このまま包みをポイッと燃やせて便利!

たとえば、肉や魚の保存に使ったり

 

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こちらは今でもお肉やさんなどで見かける光景でしょうか。経木には抗菌効果があり、通気性も優れているのだそう。肉や魚を包んで冷凍・冷蔵保存すれば、ドリップ(汁気)を適度に吸って味と鮮度をキープしてくれます。なんて優秀!

たとえば、ほかほか蒸し料理に・・・

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クッキングシート感覚で加熱料理にだって使えます。せいろに敷いて蒸し物に使えば、ふたを開けた途端に、 ふわっと微かに木の香りも。

適度な湿度を保つ調湿作用と、通気性、抗菌性。さらにほのかな木の香りと木目の美しさは、 自然のぬくもりそのもの。なるほど、昔の人が愛用していたというだけあり、経木の実力はさすがのものです。

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経木は、時代の移りかわりとともにプラスチック製品に代替されてきました。プラ製品に慣れ親しんでしまった私たち現代人にとっては、自由度は低く、少し不便に感じる部分もあるかもしれません。ですが、それも自然素材そのものであるがゆえの特性。

何よりも木材を原料とした循環素材であること、環境への 影響が少ないことなどを考えると、これからの自分の暮らしのなかにも上手に取り入れてみたくなりませんか?


経木を使った手作りノート。ほわんと香る木のかおり

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そんな経木の持ち味を生かした気(木!)になる文房具が誕生しました。見た目、手触り、香り、 書き心地・・・今までのノートの概念をくつがえす新体験ができる 「Shiki bun 木のノー ト」。

ノートの断面は年輪、中身は木。なんとも斬新です! もちろん、香りだってまさに木。いや、 森。 疲れたときは目をつぶってノートの香りで森林浴・・・なんていう、ちょこっと癒しトリップもおすすめです。

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原料は、木そのもの。だからこそ、反ったり曲がったりすることもあるそう。手触りも木目が一枚一枚異なるので、同じものはありません。そんな個性も生き物であるがゆえと思うと、ますます愛おしく使い込めそうですね。いつも手元に小さな森がある、そんな気持ちで大事に使いたいノートなのです。


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信州経木 Shiki「Shiki bun 木のノート」 (縦110mm×横150mm、ページ数140ページ/経木 70枚) ¥1,980/信州経木 Shiki ※やまとわオンラインストアにて予約販売中。

木のノートのカラーリングは、森の木々と自然をイメージ。 表紙は葉をイメージした「濃松葉色」、ケースは樹皮をイメージした「ココア」色です。さて、何を書き留めるノートとして使おうかな。


原材料は100%長野県産のアカマツ。無添加で安心

木のノートに使用している経木は、オリジナルの「信州経木 Shiki(しんしゅうきょうぎしき)」。原材料はすべて地元長野県伊那産のアカマツです。スタッフや地域の木こりチームが伐り、職人が削り出しているのだそう。

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原材料の調達から製品にして販売するところまで、トレーサビリティを確保している点もとても興味深く、信頼度が増しますよね。


森を豊かにする循環づくりを目指したプロダクト

「信州経木 Shiki」「Shiki bun 木のノート」のプロダクトを手掛けている「やまとわ」は長野県の伊那を拠点に、森づくりからものづくりまで行っている会社です。

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夏は農業、冬は林業の農林業チーム、地域の木を使ったものづくりチーム、家づくり・ 暮らしづくりチーム、森のプランニングチームなど、社内にはずらり森のエキスパートが揃っています。日本と世界の森林課題解決をトータルで目指しているのだとか。

信州伊那谷産アカマツにこだわる理由

「信州経木 Shiki」や「Shiki bun 木のノート」に使用されているアカマツは、会社の本拠地である伊那市の民有林で約20%を占める伊那谷の“地域材”。つまり地産のものを有効活用しているわけです。

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アカマツは「マツ枯れ病」という問題を抱えていることをご存じでしょうか?  輸入木材から媒介した害虫によりアカマツが枯れてしまうというその病気は、昭和50年代に全国的な被害のピークを迎え、 今なおその被害は継続しています。
そして信じがたいことに、現在伊那地域は被害の最先端地域となり、ここ数年は長野県全体で毎年7万㎡もの被害が出ているのだとか・・・。

マツ枯れ病になってしまったアカマツの行く末は、薬品処理もしくは焼却処分。 被害の拡大を防ぐためとはいえ、悲しくなる末路です。もちろん、繊維がダメになってしまうため、 材木としても使えません。何十年もの長い年月をかけて育ってきた木々が、枯れていく。枯れてしまえば、もう使えない。そんな負のサイクルを少しでも変えたい、日々の暮らしのなかでアカマツを使いたいーーそう考えたところから、地域材のアカマツを使った商品が誕生したのです。


森林保護のために、木は伐ってはいけない?

「森林保護のためには、木は伐らないほうがいい」 そう、思いこんでいる人もまだまだ多いのではないでしょうか。木は再生可能な資源です。現在の日本で、地域の木を適切に使うことは、実は森林保全につながります。それは、森林の未利用や管理放棄によって、数々の問題が引き起こされてしまうから。

森林と私たちの暮らしを守るために目の前にある資源を適切に使っていくこと。特に、地域の木を地域で、日本の木を日本で使うことは森林保全のために注力すべき取り組みなのです。

そのプラ製品、今本当に必要?

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Photo by Agenlaku Indonesia on Unsplash

もう間もなく、2022年4月1日に施行される「プラスチック資源循環法(※)」。なかでも、私たちの生活により身近でニュースなどでも注目度の高い施策が、コンビニエンスストアや飲食店などに対する使い捨てプラ製品の使用削減義務。2030年までに、使い捨てプラ食器やアメニティ類などのワンウェイプラスチックは累積で25%排出抑制することが目標とされています。

プラスチックゴミを減らすだけでなく、できるだけ使わないようにすることやプラスチック以外 の素材へ代替えすることなど、消費者のエシカルな選択がより一層問われる社会へ移り変わります。温暖化問題・海洋プラスチック問題など環境問題の深刻化を目の前にして私たちできることは何か、ぜひ改めて考える機会にしたいですね。


プラスチック資源循環法
「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(略して「プラスチック資源循環法」)。令和3年6月11日に公布、令和4年4月1日に施行予定。プラスチック廃棄物の分別や回収、処理はもちろんのこと製品の設計段階から環境に配慮したプラスチック資源の循環を目的にして います。 “3R+Renewable”(1)Reduce (リデュース)、(2) Reuse(リユース)、(3) Recycle(リサイクル) + Renewble(リニューアブル)を基本原則にサーキュラーエコノミー(循環型経済) への移行を加速させる狙い。
https://plastic-circulation.env.go.jp/


今回は、使い勝手の良さとサステナブルな機能性で見直されている日本の伝統包装材である経木と、その経木を使った新発想のノートをご紹介しました。

プラ製品の代替品として再注目したい、環境に優しく、 循環する“自然発”のプロダクト。暮らしを心地良く、 豊かな森を守るために。森林保全の課題や世の中の動きなどその背景をきちんと知って、エシカルなアクションにつなげていきましょう。

信州経木 Shiki
Shiki bun 木のノート
https://shinshukyougi.jp/shikibun


TEXT = 山下優子

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