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「リマレンス」と片思いの違いとは?執着的な恋と健全な恋の境界線

 

片思いって、もっと楽しいものじゃなかった?

 

好きな人のことで頭がいっぱいになるあの感覚。ちょっと切なくて、でもどこか心が温まるような気持ち。けれど、その「好き」が苦しさや不安、執着心に変わったとき、それはもしかすると、「リマレンス」という状態かもしれません。

 

この記事では、近年SNSでも話題になっているリマレンスの正体と、健全な片思いとの違い、そしてそこから抜け出すためのヒントを、専門家の意見を交えて解説します。

 

リマレンスとは何か?ただの片思いとは違う、心の依存

 

 

「リマレンス(limerence)」という言葉を初めて聞いた人も多いかもしれません。これは1979年、心理学者ドロシー・テノフが自身の著書『Love and Limerence』の中で紹介した、“恋愛における強い執着心”を指す心理学の用語です。

 

リマレンスは、一言でいえば「感情的な見返りを強く求める執着状態」です。自分でも止められないほどの強い思い込みや理想化、相手のちょっとした反応に過敏になる精神状態が特徴です。相手に恋をしているように見えて、実はその人自身ではなく、「その人に満たしてもらいたい気持ち」に執着している状態と言えるでしょう。

 

恋愛感情のようでいて、どこか苦しく、そして終わりが見えない。これが、一般的な片思いとの大きな違いです。

 

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リマレンスに陥りやすい人と、その背景

 

 

日本ではまだ「リマレンス」という言葉は広く知られていませんが、それに近い感情として、「報われない片思い」「執着的な恋愛」「恋愛依存」といった言葉で語られることがあります。

 

TikTokでリマレンスについて発信しているクリエイターのダニエル・ウォルターは、リマレンスを「不安型愛着や自信のなさ、うつ傾向といった精神状態からくる、“相手を理想化した非現実的な恋愛の執着”」と表現しています。

 

実際、リマレンスに陥りやすいのは以下のようなケースが多いとされています。

 

  • 幼少期に感情的なニーズが満たされなかった
  • ネグレクトや虐待など、愛情の欠如を経験している
  • 不安障害やうつ、PTSD、OCD(強迫性障害)などを抱えている
  • 相手が自分に何をくれるかに強く期待しやすい

 

複雑性PTSDの支援活動を行っているアンナ・ランクル氏は、YouTubeなどで「Crappy Childhood Fairy(つらい子ども時代からの回復を支援する妖精)」という名で情報発信を行っており、次のように語っています。

 

「子どもの頃に十分な愛情を受け取れなかった人は、大人になってからも、愛情表現が乏しい相手や、心の距離を感じさせる人に惹かれてしまうことがあります。これは心理的な罠の一つです」

 

誰しも一度は、会話をほとんど交わしたことのない相手に惹かれ、頭の中で理想的な恋愛関係を空想した経験があるかもしれません。現実では距離を取りながらも、心の中では親密な関係を思い描き、気づけば強い執着へと変わっていることもあります。それは恋愛というより、現実から目をそらすための心の逃避といえるでしょう。

 

片思いとリマレンスの違い。「恋」か「幻想」か

 

 

片思いは、本来もっと自由で楽しいものです。相手を少しずつ知っていく過程にときめきを覚えたり、共通点を見つけて嬉しくなったり。たとえ実らなくても、自分の世界が広がる経験になります。

 

対してリマレンスは、

 

「相手に振り向いてもらえないのに、なぜか気持ちが強くなる」
「相手を知らないのに、運命を感じてしまう」
「SNSを何度もチェックしてしまう」

 

など、制御不能な思考と感情に振り回されます。

 

恋愛・人間関係のコーチであるニコール・コラントーニは言います。

 

「健全な片思いとリマレンスの違いは、その感情があなたの生活や心にどう影響を与えるかです」

 

片思いは自分らしさを取り戻すきっかけになりますが、リマレンスは自分を見失うきっかけになります。感情の深さではなく、「その恋があなたをどう変えるか」が大きな分かれ目です。

 

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リマレンスの執着はどう変化していく?よくある3つのプロセス

 

 

リマレンスは、相手への執着や理想化が強く続く状態ですが、それが永遠に続くとは限りません。

 

ある出来事や心の変化によって、少しずつ気持ちの熱が和らいだり、方向が変わったりすることがあります。

 

ここでは、リマレンスへの執着が少しずつ弱まっていくときによく起きる、3つの変化を紹介します。

 

1. 現実に触れて、気持ちが冷めていく

 

相手との距離が縮まり、実際に関係が始まったり、相手の素の部分を知ったりすると、頭の中で理想化していたイメージとのズレが生まれます。

 

たとえば、「思ったより普通の人だった」「合わない部分が見えてきた」といった現実に触れることで、自然と気持ちが落ち着いていくことがあります。

 

これは「叶ったから満足」ではなく、「幻想が現実に置き換えられた」ことによる感情の変化です。

 

2. 反応がないまま、気づけば関心が薄れている

 

好きになっても、相手から連絡が来ない、話しかけられない、目も合わない、そんな一方通行の状態が続くうちに、次第に気持ちが冷めていくことがあります。

 

はっきりとした区切りがあるわけではなく、ある日ふと「そういえば最近、気にならなくなってたな」と気づくような感覚です。

 

相手は何もしていないのに、自分の気持ちばかりが膨らんでいく。そのギャップに疲れてしまい、自然と気持ちが離れていくこともあります。

 

3. 別の誰かに惹かれていき、自然と距離ができる

 

新しく気になる人が現れると、それまで強く執着していた相手の存在が徐々に薄れていくことがあります。

 

ただし、これはあくまで気持ちの“対象”が変わっただけで、リマレンスが解消されたわけではありません。同じように理想化や執着を繰り返してしまう可能性もあります。

 

リマレンスへの執着は、時間や状況の変化で自然と弱まることもあります。

 

けれど、「また似たような相手に惹かれている」「今回も一方通行だった」と感じることがあるなら、それは“相手が変わっただけ”で、心の癖は変わっていないという可能性もあります。

 

リマレンスを繰り返す人の多くは、「なぜあの人に執着したのか?」「自分はどんな感情を求めていたのか?」という内側の問いに向き合うことなく、 “次の相手”に気持ちを移してしまいます。
本当にリマレンスから抜け出したいなら、目の前の人ではなく、自分自身の心の奥を見つめるところから始める必要があるのかもしれません。

 

まとめ:「好き」がつらいなら、それは恋ではない

 

恋愛のエネルギーは本来、あなた自身を輝かせるものです。

 

けれど、それが不安や依存、自己否定に変わったとき、その恋はあなたを壊しかねません。

 

リマレンスのループから抜け出したとき、

 

「あれは恋じゃなかった」「本当に欲しかったのは、安心感だった」ときっと気づくはずです。

 

好きな人がいるのは素敵なことです。

 

しかし、その気持ちがあなたを傷つけているなら、一度立ち止まってみてください。

 

その恋があなたを大切にしてくれているか。それが、見極めるべき本当の指標です。


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