日本におけるゴミ問題の現状は?環境への影響やわたしたちにもできることを紹介
私たちが地球上に暮らす上で見て見ぬふりはできない「ゴミ問題」
うずたかく積まれたゴミが問題となっている海外諸国の映像を見て、どこか他人事のように感じている方も多いのではないでしょうか。
私たち日本人もゴミ問題とは切っても切り離せない関係であり、一人ひとりが意識していかなければならない課題の一つです。
今回は日本におけるゴミ問題について、詳しい現状や原因・今後私たちが行わなければならない取り組みについてご紹介します。
近年世界各国で行われているゴミ問題への対策を参考に、自分にできることを模索していきましょう。
Contents
ゴミ問題とは?
一言で「ゴミ問題」といっても、その種類は様々です。ありとあらゆる問題を含め、一人ひとりにできることを検討していかなければなりません。
具体的には以下のような問題が挙げられますが、これらは氷山の一角であり、全ての問題点を網羅できているわけではないでしょう。
- ゴミの焼却時に出る温室効果ガスによる地球温暖化
- 自動車や船の排気ガスによる環境汚染
- 海洋ゴミの蓄積による生態系への悪影響
- ポイ捨てや不法投棄などによる公衆衛生の悪化
- ゴミの焼却に関する費用や設備の問題
- 燃やせないゴミの埋立地不足
例えばゴミの焼却場に関する費用や、燃やせないゴミの埋立地不足などの問題点を、私たち個人がすぐに解決するのは難しいことです。
これらの問題は社会全体で取り組むべきであり、これまでも長い年月をかけて各自治体が頭を悩ませています。
一方、海洋ゴミやポイ捨て・不法投棄などは、私たち一人ひとりの心掛けで確実にゴミの数を減らすことができます。
もちろんすぐに現状を変えることはできませんが、いくら社会全体で解決策を講じても、一人ひとりの意識が伴っていなければ解決には至らないでしょう。
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日本のゴミ問題の現状
そもそもかつての日本には、限られたものを修理しながら長く使う習慣がありました。
食材や日用品などの消耗品以外は頻繁に買い替えることはなく、専門の修理業者も今より多かったといわれています。
そんな日本が、今は大きなゴミ問題を抱えているのはなぜなのでしょうか。
2024年現在、日本では「電子廃棄物」によるゴミの量が増え続けています。
これは主にスマートフォンやタブレットによるものであり、国民一人ひとりがこのような電子機器を所有するようになったことから、必然的にゴミの量が増えたと考えられます。
電子廃棄物は一般の燃やせるゴミと同じように廃棄できないため、処理には多額の費用と人材・設備が必要となっています。
また、日常的に出るゴミの排出量も見て見ぬふりはできません。
特に顕著なのは食品ロスで、2024年に農林水産省から発表された2022年度の食品ロスは472万トンにも及ぶといわれています。
1人当たりに換算すると年で38kgもの食品を捨てていることになり、どれだけ多くの食材が無駄になっているかが分かるでしょう。
これらの多くは燃やせるゴミとして焼却されますが、最終的に残った灰は最終処分場へ送られ、今もその体積を圧迫し続けています。
焼却時には多くの温室効果ガスが発生するため、地球温暖化の加速に繋がっているのも大きな問題の一つです。
もちろん、燃やせないゴミの埋立地が不足している問題も見逃せません。日本は国土が狭いため、広大な埋立地を用意することができません。
現在使用している埋立地を含め、2040年にはゴミを処分する場所がなくなるといわれています。
埋立地を新たに作るには土地関係者の理解を得られなければならないため、気軽に別の場所へ移すこともできません。
今ある埋立地をできるだけ長く使うため、家庭や事業所から出るゴミを減らしたり、リサイクルに回したりといった工夫が必要といえます。
ゴミ問題の原因
様々な問題が絡み合い、世界全体の課題となっているゴミ問題。その中でも大きな割合を占めている原因についてご紹介します。
大量生産・大量消費
先程もご紹介したように、かつての日本は今あるものを大切に使う習慣が根付いており、職人によって作られたものを必要なときにだけ購入する、といった生活スタイルが主流でした。
ものが壊れてしまったときはまず「直す」ことを選び、すぐに捨てるようなものはほとんどありませんでした。
これに対し現在はというと、スーパーなどの店舗ではいつ訪れてもずらりと製品が並び、消費者がいつでも購入できるように準備されています。
中には購入されないまま消費期限を迎え、廃棄されてしまうものもあるでしょう。
こういった大量生産による過剰な供給が、ゴミ問題を引き起こす一つの要因といえます。
また、大量生産に伴い、消費者自身がものを大量に消費するようになったのも原因の一つです。
特に食品や日用品など安価に購入できるものは、必要以上に購入し、不要となったら気軽に廃棄を選ぶ人が増えています。
使いきれずにゴミとして捨ててしまう食材がある方や、ティッシュペーパーや割り箸など最終的にゴミとなるものを日常的に使っている方も多いのではないでしょうか。
こういった大量消費を控え、本当に必要なものだけを購入したり、繰り返し使えるものを選んだりといった工夫が大切だといえます。
自然災害の増加
日本は災害大国ともいわれており、地震や台風による豪雨災害などが多い国の一つです。
海に面した地域では津波による被害を受けたり、山や川の近くでは土砂災害や洪水が起こったりと、どこに住んでいても常に災害の危険が付きまとうでしょう。
こういった災害とゴミ問題は一見関係がないようにも見えるでしょう。
現実では災害によって家屋が倒壊したり道が崩れたりすることによって、多くの廃棄物が生まれます。
これらのほとんどは焼却できず、埋立地に運ばれて体積を圧迫するでしょう。
現在使用されている埋立地の残余年数は、あくまでも家庭や事業所から出たゴミを処分することを想定して計算されたものです。
これに加え大きな災害が起こってしまうと、埋立地の多くで残余年数が減り、さらなる問題が起こる可能性が高まります。
台風による豪雨災害などは、地球温暖化が加速することでも起こりやすくなるといわれています。
豪雨災害によりゴミが増えるだけでなく、最悪の場合は命を落とす危険性もあるため、こういった意味でも地球温暖化を軽く見てはなりません。
食品ロス
世界の中には今日食べるものすらない人々がいるのに対し、日本では多くの食品ロスが生まれています。
私たち個人が家庭で出すゴミのほか、店頭で売れ残り廃棄される製品や、飲食店で食べ残された食材の分も含まれています。
特に予約販売がメインとなるクリスマスケーキや恵方巻などの季節商品は、該当する日にちが1日過ぎるだけで売れなくなるため、食品ロスになりやすいことでも有名です。
こういった食品ロスがやがてゴミになり、地球温暖化や埋立地の不足問題となるのはご存じのとおりです。
また、このままの状態が続くと将来人口が急激に増加したり、大災害が起きてインフラが機能しなくなったりした場合、深刻な食糧不足になる可能性もあるでしょう。
食材は食べきれる分を選んで購入し、冷凍など食材を廃棄せずに済む工夫を心掛けながら、日々の食品ロスを少しでも減らすことが大切です。
ゴミ問題が及ぼす環境への影響
ゴミが多く出ると環境に悪い、というイメージがあっても、具体的にどのような影響を及ぼしているかまで詳細に想像するのは難しいものです。
私たちの知らないところでどのような悪影響が出ているのか、詳しく知っておきましょう。
地球温暖化
先程から度々触れているように、ゴミを燃やす際に出る温室効果ガスによって、地球温暖化が加速することは有名です。
温室効果ガスの主な成分は二酸化炭素であり、これが地球の大気を覆ってしまうと、地熱がこもって大気の温度が上がってしまいます。
南極など寒冷地の氷が解けて海面が上昇したり、植物の不足によって生態系に異常が生じたりと、様々な面で悪影響を及ぼしてしまうでしょう。
私たち人間にとっても、地球温暖化は切り離せない問題の一つです。
数十年前は夏であっても気温が30℃に満たない日が多かったにも関わらず、近年は40℃に達する日が出てくるなど、屋外での活動が難しい気温が続いています。
エアコンなどの機器を正しく使わずにいたり、水分や塩分が不足したりすることで、熱中症により命を落とす方も増加しています。
土壌汚染
ゴミを焼却した後に残る灰や燃やせないゴミなどは、圧縮されて埋め立てられるのが一般的です。
安全に配慮して埋め立てられているとはいえ、時間をかけて有害物質が土壌に染み込み、付近を汚染する可能性も高いといわれています。
土壌汚染は埋め立ててからすぐに影響が出るものではなく、日々少しずつ広がりを見せるため、私たちが気づいたときには既に手の施しようがない状態にまで進んでしまう点に注意しなければなりません。
汚染された土壌に雨が降って水が染み込むと、有害物質を含んだ水が低地へと流れ、やがて広範囲を汚染することとなります。
作物が育たなくなったり、付近の水質を汚染したりする可能性があり、私たちの健康にも悪影響となるでしょう。
海洋汚染
一見どこまでも綺麗に広がっているように見える海ですが、実は多くの海洋ゴミが漂い、生態系に影響を及ぼしています。
海の生き物がプラスチックなどの海洋ゴミを食べたり、ネットに絡まったりして命を落とすケースも珍しくありません。
こういった海洋ゴミの多くは、元々私たちの家庭から出たゴミが街に捨てられ、山から川へ、川から海へと流れ着いたものです。
周りに海がないからといって、海洋汚染と関係がないわけではないことを覚えておきましょう。
自然環境破壊
燃やせるゴミは温室効果ガスを放出して地球温暖化を加速し、燃やせないゴミは埋立地を圧迫したり土壌を汚染したりするなど、様々な場面で環境に悪影響を与えています。
ゴミ処理場や埋立地を開拓するために森林を伐採したり、有害物質の含まれた土壌を放置したりすると、そこに住んでいた生き物は住処を追われて路頭に彷徨うことになるでしょう。
食べ物が足りずに人里に下りてきたクマやサルなどが、人間を傷つけて殺処分されるケースも珍しいことではありません。
また、山間部や海沿いなどで問題となっているのが不法投棄です。冷蔵庫やテレビなどの大型家電を中心に、廃棄する際に必要な料金を出し渋り、目の付きにくいところへ捨てていく人が後を絶ちません。
中には自動車など、簡単に撤去できないものまで捨てられていることもあります。
不法投棄されたゴミが自然に還ることはないため、誰かが気づいて処分するまでは変わらずに放置されることとなるでしょう。
動物が触って怪我をしたり、土壌汚染や水質汚染に繋がったりする可能性も高く、自然環境を破壊する大きな一因となっています。
関連記事:リデュースとは?リユース・リサイクルとの違いやそれぞれができることを解説
ゴミ問題解決のためにできること
ゴミ問題を解決するためには、「5R」を生活に取り入れることが大切です。
かつてはリデュース・リユース・リサイクルを中心とした「3R」が推進されてきましたが、近年はリフューズ・リペアを加えた5Rとして生まれ変わっています。
それぞれの内容を詳しく知り、自分にできることを検討してみましょう。
リデュース(Reduce)
リデュースは「ゴミを発生させるのを防ぐ」ことです。
必要以上にものを購入してゴミにしてしまったり、食べきれない量のメニューを頼んだりせず、自分から出るゴミの量を減らすように努めましょう。
必要とする期間が限られているものは中古品やレンタル品で賄ったり、本体に詰替えられるタイプの洗剤やシャンプーを使ったりするのも良いでしょう。
リユース(Reuse)
リユースは「繰り返し使う」ことを指します。1回だけ使ってすぐに捨ててしまうのではなく、形を変えて利用できないか検討してみましょう。
たくさん使って古くなってしまった衣類を雑巾として再利用したり、子どもが成長して使わなくなってしまったおもちゃをリユースショップへ売却したりと、一つひとつのものを少しでも長く使ってあげることが大切です。
リサイクル(Recycle)
リサイクルは「再生して利用する」という意味を持ちます。
ペットボトルや古紙などが主な資源であり、同じペットボトルとして使われることもあれば、トイレットペーパーやスタッキングボックス・衣類などに生まれ変わることもあります。
こうしたリサイクル製品を生み出すためには、私たち消費者が資源ゴミをしっかりと分別し、清潔な状態で出すことが重要です。
リフューズ(Refuse)
リフューズは「不要なものをもらわない(断る)」という意味の言葉です。
つい食べきれない量の食材をもらってしまったり、無料だからと割り箸や試供品をたくさん持ってきてしまったりする方も多いのではないでしょうか。
こういった不用品によるゴミの発生を防ぐため、マイバッグを持参してビニール袋の購入を控えたり、最低限の包装で販売されているものを選んだりすると良いでしょう。
リペア(Repair)
リペアは「直しながら長く使う」ことを指します。安価なものであればあるほど、気軽に捨てて新しいものを購入したくなってしまう方が多いはず。
接着剤などを使って自力で直したり、修理業者に依頼したりしながら、一つのものに愛着をもって長く使ってみてはいかがでしょうか。
ものの寿命が長くなる分、普段使っているものよりも少しランクの高いリッチなものを選べるようにもなるはずです。
ゴミ問題に対する世界の取り組み
最後に、日本をはじめとする世界各国では、ゴミ問題に対してどのような取り組みが行われているのかを確認してみましょう。
未だ日本が取り入れていない対策を知っておくことで、個人でできる取り組みも増えるはずです。
日本
日本では先ほどご紹介した「5R運動」を中心として、個人はもちろん各企業がゴミの削減に向けて取り組んでいます。
現在問題視されているゴミの約半分は一般家庭から、そして約半分は企業から出ているため、各々が削減に向けて取り組む必要があります。
ビニール袋の有料化を始め、私たち一般市民の目にも分かりやすいところで対策が始まっているのもポイントです。
アメリカ
アメリカではリデュース・リユース・リサイクルの3Rに加え、「ロット」と呼ばれる行動を勧めています。
これは「腐る」という意味の単語であり、主に生ゴミを腐らせ、土壌に還すことでゴミを削減する目的で行われているものです。
生ゴミだけを腐らせることで土壌汚染を防ぐとともに、肥料として食物の育成に活用できるため、まさに一石二鳥の取り組みといえるでしょう。
スウェーデン
日本では多くのゴミが埋め立てられて問題となっていますが、スウェーデンでは家庭ゴミのうち埋め立てられるのはわずか1%程度であり、埋立地の圧迫などの問題も起こっていないといわれています。
これはほとんどのゴミがリサイクルに回っているためであり、さらにリサイクル時に出る熱などを利用した発電機能を使い、エネルギーの無駄遣いを減らしているのもポイントです。
空き缶やペットボトルなどはデポジット制を導入しており、製品を購入する際に一部の料金を負担し、飲み終わったボトルを返却する際に返金を受けることで、ゴミの発生を防いでいます。
シンガポール
世界一清潔な国としても知られるシンガポールでは、ゴミのポイ捨てや不法投棄に重い罰金刑があるなど、ゴミ問題に対し積極的に取り組んでいます。
民間のアパートなどには特殊なゴミ収集システムが備わっており、空気の力で捨てたゴミを処理場まで運ぶことができ、人件費や環境汚染を最低限に抑えられているのが特徴です。
中国
人口が多く、その分出るゴミの量が多いことで知られる中国。
これまでは埋め立てによるゴミ処理が一般的でしたが、近年は埋立地の不足などを背景に、焼却によるゴミ処理方法への移行が進められています。
これまで各地域でバラバラだった条例を一つにまとめ、リサイクルの方法などを統一したことで、ゴミの削減に向けて住民たちの意欲も高まりつつあります。
ベトナム
ベトナムでは、事業所から出たゴミは全て生産者が責任を負う形を取っており、産業廃棄物の削減を目指しています。
一方で一般家庭にゴミの分別方法が浸透しきっていないため、プラスチックなど再生可能な素材がゴミとして出されてしまい、深刻な問題となっています。
現時点ではプラスチックゴミのおよそ7割が埋め立て処理されているといわれており、今後の発展に期待が寄せられています。
まとめ
日本はもちろん世界各国で取り組むべきゴミ問題。さらにいえば、私たち一人ひとりがゴミを減らす工夫をすることで、地球を守ることに繋がるでしょう。
人間はもちろん動物や植物も含めたすべての命が過ごしやすい環境を作るため、5Rを中心に自分にできることを模索していきましょう。