なんか上手くいかない、何をやってもダメ。
悪いことが起こったというわけではないのに、どこか鬱々と気分が晴れない。
そう感じること、たまにありますよね。
そんなときは、一旦落ち着いて自分の周りを見渡してみましょう。
あなたの周り、ちょっと散らかっていたりしませんか?
実は身を置いている環境が片づいていないこと自体が、メンタルにも悪影響を及ぼすことがあるのです。
今回はそんな掃除とメンタルヘルスの関係、そして上手く習慣化させるコツについて紹介していきたいと思います。
Contents
掃除すると心も晴れる?
みなさんは、こんな経験ありませんか?
面倒だと思って嫌々はじめた掃除も、途中から楽しくなって「ここもあそこも!」と時間を忘れて没頭してしまうこと。
そして、ひと通り終えてピカピカになった部屋を見渡して、とても清々しく明るい気持ちになったこと。
理由を聞かれても上手く答えられないけど、掃除するととにかくスッキリ前向きな気持ちになる。
誰しも一度は、そんな経験をしたことがあると思います。
筆者もその一人です。
元々、細かいところまで考えすぎるタイプで、そのぶん落ち込みやすい性格なのですが、それを差し引いてもメンタルがずーんと沈みすぎていると感じることがありました。
どんよりした気分でうつむきながら歩く、仕事からの帰り道。
「なんで全部上手くいかないんだろう」
「あれもこれも気になるし、毎日ストレスだらけ」
「周りは十分やってるとか言ってくれるけど、何も出来てないのに…どこが?」
「絶対気を遣われてるだけじゃん…ああもうこの捻くれた性格も嫌になる!」
そんな独り言が頭を駆け巡り、メンタルはネガティブまっしぐら。
今にも泣きそうな顔で家に帰り、真っ暗な部屋の電気を点けたときのことです。
目に飛び込んできたのは、恐ろしく散らかった自分の部屋でした。
ベッドの上に勢いよく脱ぎ捨てられたパジャマ。
冷ます時間がなく、勢いよく床に投げ捨てられたヘアアイロン。
テーブルにはそのままの朝ごはんの食器と、飲みきれなかったコーヒーでくっきり茶渋がついたマグカップ。
当然、昨晩畳むのを後回しにした洗濯の山もそのままです。
仕事着を取り出すのに邪魔だったから、クローゼットの前からベッドの上に場所が変わっているだけ。
泥棒が入ったようなとまではいかないけれど、朝、ドタバタ身支度に走り回った自分がそこに蘇ってくる散らかりようでした。
そして思ったんです。
「分かった、まずこれだ」って。
ただでさえざわついてる心が、部屋を見た瞬間、さらにぞわっとしたから。
まずこのめちゃくちゃな空間を整えないことには、自分の心だってどうにもならないと悟ったのです。
そして地道に一つずつ片づけはじめると、このめちゃくちゃは朝だけのことじゃないとも気づくのです。
食器を下げにシンクに持っていくと、昨晩飲んだ水のグラスも洗っていなかったことに気づく。
ヘアアイロンを拾おうとすると、昨晩のドライヤーで抜けまくった髪の毛が床に散らばっていることに気づく。
洗濯物を畳んで片づけようとすれば、下着もパジャマもあと1セットしかない状態だったことに気づく。
アイロンをかけないといけない服が溜まっていることにも気づく。
だから仕事に着ていける服がなかったんだと気づく。
さらに部屋を見渡せば、あちこちに読みかけの本が置かれ、「何か」やった気になろうとノートやペンで作業した痕跡もそのままになっていることに気づく。
小さなことが全く整っていなかったことに、次々と気づいていったのです。
どちらかといえば綺麗好きなほうなのに、ここまでめちゃくちゃになっていることに気づいてすらいなかったことが衝撃すぎて、そこからは一心不乱に片づけに取り掛かりました。
片っ端から部屋を整える間、帰宅中に浮かんでいたような独り言は1ミリも顔をのぞかせませんでした。
代わりに、ようやく片づけ終わった瞬間には、清々しさと心地よい疲れに加え、ちょっぴり自信もこみあげてきました。
それ以来、メンタルが沈み、考え込んでしまいそうなときは、まず部屋の掃除をするように意識しはじめました。
目に見える汚れがなければ、普段はしない一歩踏み込んだ掃除をしてみる。
掃除中は余計な考えごとが浮かばないし、何より達成感があって終わると少し気分も上向く。
そんな経験を何度かしたことで、すっかり掃除が私のメンタル回復方法の一つになったのです。
掃除がメンタルにもたらす効果
私たちが経験則で感じているこの掃除とメンタルの関係、実は科学的にも証明されています。
では、具体的に掃除がメンタルにもたらす良い影響には、どんなものがあるのでしょうか?
ストレスが減る
先ほどの筆者の経験談のように、散らかっている部屋に心を乱されるというのは、実は科学的にも関連性が証明されています。
心理学の論文では、家が散らかっていると感じている人は、気分が落ち込みやすく、ストレスに応じて分泌される「コルチゾール」も増加すると発表されているんです。
逆に言えば、ただ片づける、掃除するというだけでもストレスは減らせるということですね。
幸せホルモンが分泌される
掃除の中でも特に、床を拭いたり、窓を磨いたりといった単純な反復作業で、幸せホルモンの「セロトニン」が分泌されることも分かっています。
セロトニンは脳の興奮を鎮静させ、気持ちをリラックスさせる効果があるので、淡々と掃除するうちに、イライラや不安感も落ち着いてくるわけです。
自己肯定感が上がる
整理整頓された部屋は、なんとなく明るくなった感じもして、気持ちも前向きになります。
そして何より、黙々と掃除を終えて、綺麗になった部屋を見渡すときって「よし、やりきったぞ!」という達成感も感じますよね。
こうした達成感は自己肯定感を高め、家族や友達など周囲との人間関係も上向いていきます。
実際、毎日の掃除の習慣は、精神療法としても効果が高いと言われています。
生産性や効率が上がる
周囲に物があふれていたり、雑多な環境に身を置くと、なんとなく日々の行動や意思決定も適当になっていくもの。
「ちょっとくらい」とか「明日でいいや」とか、小さな言い訳が増え、ついだらけてしまいます。
筆者の場合、ストレッチやトレーニングを習慣にしたくても、十分なスペースがないことを言い訳に先延ばししてしまうことがあります。
また、スペースがあったとしても、ヨガマットなど道具を探すのに時間がかかれば、その間にやる気は下がっていくもの。
仕事術なんかでも、よく、デスクを片付けるだけで生産性や効率がアップするなんて言われます。
それは片付いていれば、必要なものがすぐに取り出せ、やりたいことにすぐ取り掛かれるからですよね。
このように、掃除には私たちの心や行動にさまざまなメリットをもたらしてくれるのです。
機嫌を取り戻すお掃除のコツ
はじめてしまえば、芋づる式に良い効果がもたらされると分かっても、最初は掃除に取り掛かること自体面倒かもしれません。
そこで最後に、筆者が普段どのように「メンタルケアの一環としての掃除」を習慣化しているかをご紹介したいと思います。
大前提として、筆者は特別掃除が好きというわけではなく、基本は「掃除、面倒だな~」と取り掛かるまで時間がかかるタイプです。
なので、意識高く、頑張ってやるというようなものはないのでご安心ください。
毎日のちょっとした掃除
この掃除は「自己肯定感を下げない」ための習慣です。
筆者は、昔から髪の毛が良く抜けるタイプで、ドライヤー1回でもかなりの量が床に散らばります。
仕事から帰ってきて、部屋や脱衣所などあちこちに髪の毛が落ちていると、それだけでもげんなりしてしまいます。
なので、これだけはできるだけ毎日掃除するようにしています。
例えば、朝の身支度が終わったあと、ササッと掃除機かカーペットクリーナーをかける。
本当はドライヤーを済ませた後、つまり汚した直後にやるほうがスムーズだし時間にも余裕がありますが、やる気が出ないので朝に定着しました。
一人暮らしの狭い部屋なので、ものの3~5分程度で終わります。
なのに、それだけで帰ってきたときの気持ちが全然違うのです。
掃除したことでご機嫌になるというよりは、帰ってきたときにげんなりしないためなので「自己肯定感を下げない」ための掃除と位置付けています。
とはいえ、それでも時間の余裕がない日は、スパッと諦めます。
「帰ってきたときの自分のために!」とドタバタしてまでやったところで、結局心がざわざわしたまま家を出ることになり、一日の始まりのご機嫌を損ねるという逆効果になりかねません。
帰ってきて散らかっている髪の毛に一瞬げんなりはしますが、心の準備があるのでそこまでメンタルダウンすることはありません。
「まあそういう日もあるよね」と思いながら、簡単にそのまま掃除するか、潔く翌朝の自分に託しています。
週末のイッキ掃除
こちらは「自己肯定感上げるため」の掃除習慣です。
今さらなことを言いますが、家ってすぐ散らかるしすぐ汚れますよね。
埃はすぐ溜まるし、洗濯物もすぐ溜まるし、洗面台はすぐに水垢がつくし、トイレの便器はすぐ黒ずみます。
「え?こないだ掃除したのに?」と思うことが1週間に何度あることか。
でも筆者の場合、平日はなかなか時間が取れないので、見て見ぬふりをして、土日などに一気に家全体の掃除をするようにしています。
もしくは、平日でも少し余裕があれば1~2カ所だけでもまとめてガーッと掃除します。
ある程度の時間をとって、お気に入りの音楽やラジオをタイマー代わりにしながら、集中してピカピカに磨き上げる。
掃除がメンタルにもたらす効果のパートでもありましたが、確かに淡々と単純作業することで、気持ちもだんだん落ち着いてきますし、終わった後には心地よい疲れと達成感が味わえるんですよね。
たまに1日1ヵ所掃除すれば、無理なくずっとお家を綺麗に保てるという話もありますが、筆者の性格には合いませんでした。
例えば食器洗いにしても、コップ1個でも毎回洗って、常にシンクに何もない状態にするより、1日分溜めた食器を「よし!」と気合を入れ、片っ端から洗いあげるほうが好きです。
掃除や食器洗いがご褒美になるなんて、字面では考えづらいですが、日々の暮らしの中でそれを無意識に実感している人も多いのではないでしょうか。
掃除は「ルール」ではなくご機嫌を取るため
掃除タイプを2種類に分けて考えている筆者ですが、何よりもまず大事にしている考え方があります。
それは「ルール」にしないこと。
毎朝のササッと掃除も、週末のイッキ掃除も、あくまで自分の性格やライフスタイルには、そういう掃除の仕方が合っていると認識しているだけで「必須」とは思っていません。
忙しいとか気力がわかないとかで、1週間朝の掃除をさぼってしまうことも、週末に予定が続いて、気づいたら1ヶ月掃除できていないことだってあります。
それぞれの掃除を「ルール」にしていたら、今日も出来なかった、今週も出来なかったと自分を責めてしまいかねません。
そうではなく、掃除はあくまでご機嫌を取り戻すための手段。
そう考えておくと、日々汚れや散らかった部屋が目に飛び込んできても「そりゃメンタルも沈むよな…」と冷静に判断できますし、「忙しいけど、悪い流れを断ち切るために、この日だけは掃除デーにしよう」と戦略的にもなれます。
真面目な人ほど、ちゃんとしようと「ルール」にしてしまいがちです。
でもそのルールに縛られ、振り回されては本末転倒。
そうではなく、掃除の主導権はあなたが握ること。
ちなみに、そうは言っても汚れが気になるのに掃除ができなくて発狂しそうという人には、おすすめの回避法があります。
それは、視力が低い人限定になりますが、汚れが目立つところでは眼鏡やコンタクトを外してしまうこと。
当然ですが、そうすると髪の毛や部屋の隅の埃は一切見えなくなりますよね。
そもそも見えなければ、気にすることもなくなるという理論です。
実はこれ、昔どこかでたまたま聞いた年配の方のアドバイスの受け売りで、その方は「細かい汚れまで気にするほど残りの人生は長くない、だから掃除のときは眼鏡を外す」のだそう。
ふざけて聞こえるかもしれませんが、こういうクスッと笑える発想の転換で、普段頑張りすぎている自分を緩めるのは結構おすすめですよ。
まとめ
掃除というと面倒でやらなくていいに越したことはないことかもしれませんが、掃除で心もスッキリすると意識的に感じられるようになれば、少しずつ億劫な気持ちは小さくなっていくはずです。
じっとしたまま心のモヤモヤについて考えを巡らすと、それは不用意に膨らみかねません。
それよりも体を動かしながら、そのモヤモヤを目の前のゴミなどに投影して、物理的に掃除してしまえば、意外とすぐ心は晴れてくるかもしれませんよ。
無理のない範囲で、自分に合ったご機嫌お掃除方法を見つけてみてくださいね。
ライター:プロフィール
とにかく「言語化」することを軸に、
心や頭に浮かぶ漠然とした不安やモヤモヤも「言語化」