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人と触れ合うことってどうして重要なの?

 

 

デジタル化がますます進む現代において、私たちにとって最も大切なつながりの一つである「人との触れ合い」が、日常から静かに消えつつあります。安心感のあるハグ、肩に手を添えるしぐさ、信頼する人とそっと寄り添う――こうした身体的な接触は、私たちの心の健康や「人とつながっている」という感覚に大きな役割を果たしています。しかし昨今、社会的な慣習や文化の変化、そしてパンデミックの長期的な影響によって、安心して触れ合える機会が著しく減少しています。この自分でも気づかないうちに広がる喪失感は、たとえ人に囲まれていても、私たちに孤独感をもたらしています

 

「触れること」の科学的根拠

 

 

人が「触れ合い」を必要とするという研究は数多く存在します。発達の観点から言えば、人間の赤ちゃんは文字通り、触れてもらわないと生きていくことができません。出生直後の肌と肌の接触は、新生児の体温、心拍、呼吸を安定させ、泣く回数を減らすことが示されています。母親もリラックスホルモンやオキシトシンの分泌などが促進されます。

 

 

かつてルーマニアの孤児院で行われた研究では、十分なスキンシップを受けられなかった子どもたちのコルチゾール値や成長の度合いが著しく低かったことが報告されました。

 

 

また、心理学者ハーロウの有名な実験では、ワイヤー製の母猿と布製の母猿を用意し、赤ちゃん猿が餌を与えてくれるワイヤー母よりも、ぬくもりのある布母に強い愛着を示すことが明らかになりました。生きるために食事は必要ですが、私たちが「人として生きる」ためには触れ合いが不可欠なのです。

 

 

その後の研究でも、触れ合いの欠如が不安、うつ、ストレスなどの悪化と強く関係していることが分かっています。触れ合いは神経を鎮め、心拍数を下げ、血圧やストレスホルモンであるコルチゾールを下げてくれます。また、愛着や信頼を高めるホルモン「オキシトシン」も促されます。

 

 

PETスキャンを用いた研究では、手を握ってもらうだけで脳のストレス反応が鎮まり、その効果は愛する人との接触の方が大きいものの、見知らぬ人との触れ合いでも有効であることが分かっています。

 

 

また、触れ合いは私たちの神経回路にまで影響していると考えられています。触れ合いが不足している人は免疫疾患を抱えるリスクが高まることも分かっています。皮肉なことに、パンデミックのように免疫が試される状況でこそ、本来その機能を支えるはずの触れ合いが最も不足してしまうのです。

 

 

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触れ合いを日常で増やすには

 

 

人との触れ合いがとても重要であることは明らかですが、では実際にどうやってその機会を増やせばいいのでしょうか?たとえ家族や“同じ空間で過ごす人”が身近にいたとしても、パンデミック以前に比べて触れ合いの機会が減っているのは確かです。

 

 

研究によると、接触することによるセラピー効果をもっとも効果的に得る方法のひとつがマッサージです。マッサージは、うつ症状の軽減、集中力の向上、免疫機能の強化などに効果があることがわかっています。マッサージが苦手な人は、ネイルやペディキュアなど、触れることが含まれるスパ体験も代わりになるかもしれません。

 

 

また、ペットとのふれあいも、人とのタッチに近い効果を持つことがわかっています。たっぷりとなでてあげる時間を持つことで、ストレス緩和につながります。さらに、重みのあるブランケット(加重ブランケット)は人間の手ではないものの、神経系を落ち着かせるという点で同様の効果を持つとされています。前述の実験で登場する赤ちゃん猿になったつもりで、安心感を得てみてください。

 

 

相手からの同意が大前提

 

 

最後に大切なポイントをひとつ。それは「触れ合いには必ず同意が必要だ」ということです。自分が触れ合いを強く求めているからといって、他人にその提供を強制することはできません。誰かに無理に触れ合いを求めるのは決して正しいことではありませんし、相手が応じなければならない義務もありません。

 

 

特に子どもたちにとっては、自分の身体的な境界線を守る大切さを学ぶ機会にもなります。おじいちゃん・おばあちゃんががっかりするかもしれませんが、それでもこの「同意」の大切さを子どもに教えることは、それだけの価値があります。

 

 


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