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子供が自分のペースで成長できるように、私たちがしたいこと【Editor’s Letter vol.04】

Hummingの編集長 永野舞麻がカリフォルニアから配信する「Editor’s Letter 」。日々の暮らしで見つけたこと、感じたこと、考えたことをシェアします。

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Photo by Sander Dewerte on Unsplash

モンスターは友達?

次女がまだ2歳半くらいだったころの話です。
読み終わった本がベッドの横に数冊積み上げられ、ナイトライトだけが灯され、薄暗い部屋にボヤーと影が映し出されると、決まって次女が震え出すのです。隣で横に寝転がっている私にもしっかりとその振動が伝わってくるくらいに。

抑えきれないほどの恐怖に、体を揺すりながら「モンスターが窓から入って来て私を連れて行っちゃう」とぎゅっと瞑った目からはポタポタと涙がこぼれ落ちています。

そんな彼女を毎日抱きしめながら「大丈夫。大丈夫。ママがいるから心配ないよ」としか言うことができずにいる自分がもどかしく、母親はなんて無力なんだと、彼女の内側には決して入っていけない自分の力不足に悲しさばかりが溢れてきました。

初めは一過性のものかと思い、誤魔化しながらやり過ごし、きっと成長とともに平気になるのではないかと思って様子をみていました。
私なりにいろいろと考えて、彼女が眠りにつく瞬間までお気に入りの本を何度も何度も読み続けたり、歌を歌い続けたり、試行錯誤を繰り返しながら。

それなりの効果はあったけれど、特に決定打になるような手立てが見つからず、日々は過ぎていきました。

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Photo by charlesdeluvio on Unsplash

ドキドキしながら試した方法

そうこうしているうちに、何週間かがあっという間に過ぎていきました。

それでも夜な夜な怖がり続ける娘のことがさすがに心配になり、ついに友人に勧められたチャイルドカウンセラーに相談してみました。アドバイスはもらったけれど、自分でも思っていたような、“成長の過程でだんだん良くなる”という程度のことだけで、これといった特効薬はないようでした。

そんなとき、なんでもっと早くインターネットで調べなかったんだろうと思うほど簡単に、その“アドバイス”が見つかったのです。

そこで、次の日に早速、ドキドキしながらもその方法を試してみました。
次女が「モンスターが怖い」と言い出すと、私は、いつものように彼女をなだめる代わりに、興味を持ってそのモンスターについて聞いてみました。

「そのモンスターは男の子? 女の子? お父さんとお母さんはいるのかな? 兄弟は?」
「そのモンスターにバレリーナの格好をさせてみたらどうかな?」
「リップやお化粧もさせたら? 頭にはリボン! きっととっても可愛いよ」

すると、いつもなら恐怖に体を強張らせている娘が、肩を揺らしてクスクスと笑い出したのです。そこで私は少し黙って、今度は彼女のアイデアに耳を傾けてみました。
たどたどしい言葉で、彼女なりにアイデアを出している様子に恐怖はなく、逆に頭のなかは滑稽な姿のモンスターに対する想像で満たされているのがわかりました。そして、そのうち話し声も途切れがちになり、疲れて眠りにつきました。

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ストーリーの主役は子供たち

私がこのときに一番大切にしたかったのは、「モンスターなんていないわよ」と、彼女が実際に体感している恐怖を遮断しないで、彼女の気持ちに寄り添って共感することでした。

7歳くらいまでの子供たちにとっては、夢みがちで現実離れしたことも、真剣に捉えて必死に悩んでいたり考えていたりするものなのです。例えば、子どもたちが行ったこともないような場所で経験したことを話し出したら、「そんなところに行ったことはないし、そんなことやったことないでしょう」とは言わずに「そうだったの。そんなことを体験したのね」などと、話を合わせてあげてほしいです。

子供たちは頭のなかで、それは本当にあった出来事だと思っているのです。

“現実”を見始めるのは、7歳のお誕生日が過ぎて、8歳が近づいてからでも遅くありません。ただでさえ、ニュースや、学校のお友達、大人の会話などから、現実の情報は子供の想像力豊かな脳のなかに止めどなく入ってきます。

ふわふわしていて、どこか宇宙人のような、大人からはちょっと理解しづらい不思議な部分が、“子供らしさ”です。

大人の社会で生きていくのだからと、急いで立派な大人に早く育てあげようとしなくても、子供のペースに合わせてやっていたら、彼らは自信を持って自分のペースで成長していくのです。

立つ木の影から見守ると書いて「親」。私たち親は、子供の人生の応援団の一員であって、私たちが彼らのストーリーの主役にならなくていい。私はそう思って子供たちと接しています。


編集長 永野舞麻


 

 

永野舞麻(ながのまあさ)Humming編集長、一般社団法人ハミングバード代表理事。カリフォルニア在住。高校時代、スイスに住んでいたときに自然の偉大さに触れ、地球環境保全について学び始める。アメリカの美術大学でテキスタイル科を専攻。今でも古い着物の生地などを使って、子育ての合間に作品を制作し続けている。


TEXT = 荻原正子

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