最近よく耳にする「セルフプレジャー」という言葉。
以前はタブーとされ、女性が話しにくいトピックでしたが、実はセルフプレジャーは健康と密接な関係があります。
ハミングの代表の永野 舞麻(ながの まあさ)が、セックス・セラピストのジョーダン・ルロ博士に、セルフプレジャーが、どうして女性にとって大切なのか聞きました。
男性が一人で 楽しむものというイメージのあるセルフプレジャーですが、実は女性がうまくとりいれることで、綺麗なお肌、健康な身体、バランスのとれた心だけではなく、幸福感も得られるというメリットがあると博士は言います。
そして、パートナーとのセックスを楽しむ上でも自分の身体の好き・嫌い、気持ちい・気持ち良くないを学ぶことはとても大切なのだそうです。
あなたのセックス観を変えるような新しい考え方を提案してくれた博士とのインタビューをお楽しみください。
Contents
セルフプレジャーの目的はオーガズムに達することではない
永野:日本でも、セルフプレジャーということが注目されていますが、博士の考えるセルフプレジャーとは?
まず知っておいてほしいことは「セルフプレジャー」がオーガズムに達することだけが目的ではないということです。セルフプレジャーを体感することで、私たちは、オーガズム以外にも多くの楽しみを体験することができます。
永野:私たちは、「オーガズムを感じなければ、満足なセックスでない」と考えがちです。でも先生が指摘したように「セルフプレジャー」にはオーガズム以上のもっと広い意味があるんですね。
そうです。「セックスの目的はオーガズム」と考えると、セックスの楽しみが減ってしまいます。そういう風に目標を設定するとプレッシャーを感じてしまいますよね。これでは、身体も心も緊張してしまいセックスを十分に楽しめなくなります。
最も楽しいセックスとは、目標を持たずに行うセックスだと思ってください。自分の体をどう動かすかなど一切考えないで「今この時」「この瞬間」に気持ちを集中して、楽しむのです。
永野:女性がセルフプレジャーをすることのメリットは何ですか?
セルフプレジャーをすると、オキシトシンやドーパミン、エンドルフィンのような体に良い化学物質が放出され、それが免疫機能を改善させることは研究でわかっています。また、オーガズムは、生理痛を和らげ、睡眠の質をあげ、ストレスも緩和します。セルフプレジャーを生活に取り入れることで、健康面で多くのメリットがあるのです。
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セックスのイメージを変えるセルフプレジャー
これをふまえて、セルフプレジャーのメリットについて考えてみましょう。
まず、オーガズムという点で、男女間には大きな差があります。一般的に、セックスとは女性の性器への挿入からスタートし、男性がオーガズムに達して終わる、というものです。 女性がオーガズムに達したかどうかは、考慮されていませんね。
女性がオーガズムに達したふりをする傾向にあるのはこれが理由です。つまり、女性がオーガズムを感じたかどうかは、重視されていないのが今の社会です。相手をがっかりさせたくないと感じる女性は、オーガズムを感じたふりをして、相手をハッピーにさせようとします。
これが、現代社会の、または映画やメディアで描写されるセックスシーンの典型です。
つまり「セックス」=「男性の快楽」という構図です。
だから男女の間には、オーガズムという点で大きなギャップがあるのです。
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セルフプレジャーの楽しみを知らないのは人生の楽しみを見過ごしているようなもの
このギャップを埋めるためにも、女性がセルフプレジャーすることがとても重要なんです。セックスとは男性の快楽がすべてではないのです。
だから、女性がセルフプレジャーすることは、女性自身がセックスの快楽を感じ、自分の体について、もっと知ることができるというメリットがあるんです。
自分が気持ちよくなる方法を知らないなんて、人生における大きな楽しみを見過ごしているようなものです。自分がどうしたら気持ちよくなれるのか、何が気持ちいいのかを知ることは女性にとっても大切です。
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セルフプレジャーは「恥」ではない
永野:アメリカで友達が自分の好みのセックストイについて恥じらいもなく気ままに話しているのを聞いて、驚いたことがあります。日本ではまだ、セルフプレジャーについてオープンに話しにくい状況です。もっとオープンに話せる社会を実現するためには、どんなサポートが必要でしょうか。
あなたが今言った「恥」がまさに確信をついていますよね。これが、セルフプレジャーに関して誰でも感じる「恥」。だからセックスについてオープンに会話できないのです。
この「恥」をなくしていくためには、幼少期から性教育を始めることが必要です。
今の思春期の性教育というと、セックスによる感染症や望まない妊娠についてなど実用的なことばかり。でも性教育は、セックスの楽しさやパートナーとの関係を築く方法など、もっと包括的であるべきです。
また、セックスは「健康状態」のカテゴリーの1つとして考えるべきです。かかりつけの医者に行き健康状態を聞かれた時に、性的な健康状態についても聞かれ、頭痛や息切れと同じ様に「性的な健康上の心配はありませんか?」と医者に聞かれる、そんなイメージです。
性的な健康が、学校の科目に組み込まれ、医者では健康分野に組み込まれれば、セックスやセルフプレジャーについて話すことが「恥」ではなく、当たり前のことになります。
セックスを楽しむことを女性が自分に許可できるような社会へ
永野:女性がセックスを楽しむことへの社会的偏見には、どう対処すればいいのでしょうか?
この偏見という意識をはずすための「性の健康の6原則」があります。
あなたがパートナーとセックスする時、または1人でセルフプレジャーするときに、この6つの価値観に従っているか自問してみてください。
- 同意:パートナーとの間で、ちゃんと同意が得られてセックスをしているか?
- 搾取しない:パートナーとの間に、力関係があるのか?一方が他方を都合よく利用していないか?
- 守る:性感染症や望まない妊娠から身体を守るということ。
- 誠実さ:セックスを行う時にお互いが正直であるかどうか。
- 価値観の共有:つまりセックスをする時に、何のためにセックスをしているか明確にするということ。一夜限りのセックスなのか?新しい恋愛関係の始まりなのか?お互いのセックスへの動機を明確にするということです。
- 双方の快楽:快楽が男性だけではなく、双方の快楽となっているか。
6つ目の「双方の快楽」は特に重要です。つまりセックスは男性だけではなく、女性も喜びを感じるものであるということです。
また、快楽の定義は人それぞれです。例えば、ある人にとってはオーガズムかもしれないし、他の人にとっては感情的な結びつきかもしれません。異なっていていいんです。
この6つの原則をみんなが尊重している社会をイメージしてください。
そんな社会が実現すれば「セックスの快楽のギャップ」の問題も解消されるでしょう。そうすれば、セックスをもっと安心してできるようになると思うんです。その結果、女性が「セックスを楽しむ」ということをもっと自分に許可できるようになると思うのです。
永野:セルフプレジャーを行うことは、ベッドの上で自由に自己表現ができることにもつながるのでしょうか?
もちろんです。自分が何が気持ちいいのかわからなければ、相手にも伝えることはできませんよね。 セックスをしている最中ではなく、お互い落ち着いた雰囲気で話しあえるタイミングでパートナーとセックスについて話すことをお勧めします。
例えば、週末に、普段のセックスについてどう思うか、セックス中にやってみたいこと、やりたくないことはあるか、など相手に率直に聞いてみるのです。
パートナーとこういう時間が作れたら、セックスについてお互いが感じていることを話し合う安全な空間をつくることができます。そのためには、そもそも自分がどうしたら気持ちよくなるのか自分の体のことをわかっていないと、相手に伝えることもできません。
永野:セルフプレジャーをした後に孤独や恥ずかしさを感じることから、セルフプレジャーを避ける女性もいます。どうすれば、より多くの女性が安心してその一歩を踏み出すことができるのでしょうか?
私のクライアントでも、セルフプレジャーをして孤独や恥ずかしさを感じてしまうという悩みを持つ人はいますよ。
それが本当に「孤独」なのかどうか、もう一度考えてみて欲しいです。セルフプレジャーの時間は「私との大切な時間」、誰にも邪魔されない、自分を見つめることができる特別な時間です。
一人でハイキングに行ったり、一人でコーヒーを飲みに行ったりするのと同じです。
自分の体と向き合える一人の時間は「孤独な体験」ではなく、「自分自身を知るための素晴らしい時間」と考え方を変えてみましょう。
永野:自分のことをもっと知る必要があるのですね。そして、パートナーとオープンに話すことで、安全な空間をつくることができますね。最後に、日本の皆さんと世界の人たちにメッセージをお願いします。
大切なことは、セルフプレジャーはあなたの身体、それから心の健康に良いということです。自分が何を気持ちいいと感じるのかをぜひ知ってみてください。セルフプレジャーは、自分のことをもっと知る素晴らしい機会なんです。
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ライター:プロフィール
Humming編集長、一般社団法人ハミングバード代表理事。カリフォルニア在住。
高校時代、スイスに住んでいたときに自然の偉大さに触れ、地球環境保全について学び始める。アメリカの美術大学でテキスタイル科を専攻。
今でも古い着物の生地などを使って、子育ての合間に作品を制作し続けている。
著者:堀江知子(ほりえともこ)|タンザニア在住ライター
民放キー局にて、15年以上にわたりアメリカ文化や社会問題についての取材を行ってきた。
2022年からはタンザニアに移住しフリーランスとして活動している。
noteやTwitterのSNSや日本メディアを通じて、アフリカの情報や見解を独自の視点から発信中。