人との縁やつながりを結んだ、大切なものたち【素敵な彼のタカラモノ拝見】
蚤の市で見つけた掘り出しもの、小さい頃から愛用している分身のようなアイテムー-年月を超えて大切にされてきた品々は暮らしに豊かなストーリーを添えてくれます。おしゃれに暮らす素敵な方々に「いつまでも大切にしたいアイテム」を見せていただきました。今回は、ワイン商を営む八田さんの3つの“タカラモノ”をご紹介します。
大切な人から受け継いだものと、ものがきっかけで広まった出会いと
ワイン商としてワインや食にまつわる輸入卸や店舗プロデュースなどを手掛ける八田さん。「タカラモノを見せてください」とお願いすると、ファッションアイテムばかりが登場しました。けれどそれは単なるファッションアイテムではなく、人と人をつなぐきっかけになったものばかり。ご縁を大切にしてきた八田さんだからこそ大切にしてきたタカラモノです。
幼い頃、祖父から譲り受けた腕時計
小学校3年生のときに亡くなった祖父が、生前に使っていたというSEIKOの腕時計。「ベルトは交換しましたが、時計はオーバーホールしながらずっと愛用しています」と八田さん。あらゆるものが一つひとつ丁寧に作られていた時代ならではの、シンプルなフォルムに毅然とした美しさと機能性の高さが感じられます。
「時計としての美しさと祖父の思い出とが詰まった時計。これ以外使っていませんね」
串野真也さんにオーダーした西陣織のレースアップシューズ
レディ・ガガの靴なども手掛けるファッションデザイナー、串野真也さんに作ってもらった西陣織の生地を用いた靴。そもそも知人を介して京都の西陣織の老舗「細尾」の当時の社長(現会長)をご紹介いただいたご縁で串野さんデザインの西陣織の靴をオーダーすることになったのだそう。
「自分にとって大切なものというのは、単にものとしての愛着だけでなく、誰かが自分のために心を込めて作ってくれたものだとか、それを通して誰かとのご縁が広がったもの、というように、人とのつながりに関わりの深いものばかりです」
ロエベの魅力を知るきっかけとなった、オレンジの革ジャン
10年ほど前に購入したという、ロエベのオレンジ色の革ジャンも八田さんのお気に入りの一点。
「それまでロエベは一着も持っていなかったのですが、たまたま目について、そのオレンジのきれいな色合いに一目惚れしたんです。鮮やかだけれど落ち着きのあるオレンジ。試着してみるとびっくりするほど軽くて。高価なものだったのでかなり悩みましたが、担当者からどのように作られているのかなど親切に説明をいただき、納得して購入。その担当者の方とはそれがきっかけで今も担当していただいています。その後当主が交代した折に小笠原伯爵邸で開かれた、デザイナーの来日パーティーにも呼んでいただきました」
以来毎シーズン新作のチェックを楽しみにしているのだそう。
ものは人と人をつなぐ橋渡しをしてくれる存在。そう考えると、何かを手に入れるときも、手に入れたものをどう扱うかも、ずっと真剣になりそうです。安いから、流行っているから、高級ブランドだから・・・そんな理由ではなく、自分がなぜその品を選び、そのものを通して誰と出会い、どんな関係性を深められるのか、ということに思いを馳せてみると、見えてくる景色がきっと変わります。
Profile
八田(はった)
ワイン商。ワインなどを飲食店に提供し、レストランのプロデュースなど飲食にまつわるビジネスを手掛ける。今年6月には、新橋6丁目に昼はカフェ、夜はバーになる店「コパン」をオープン予定。
PHOTO = 名和真紀子