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まずは自分を大切に。子育てには”Boundary(境界線)”が必要?! 【Editor’s Letter vol.09】

Writing by
永野 舞麻(ながの まあさ)
Humming編集長 永野舞麻がカリフォルニアから配信する「Editor’s Letter 」。

日々の暮らしで感じた気付きや、人生において大切にしていることを綴っています。

 

 

私が母親になったのは12年前。

 

右も左もわからない初めての子育て。

 

「〜しなければいけない」
「〜するべきだ」

 

自分で作ったルールにがんじがらめになり、子どもと笑顔で接することができない自分を責め続けていました。

 

そんな私は自分自身と周りとの”Boundary(境界線)”を意識するようになったことで、親子関係に変化を感じるようになりました。

 

親子であっても、同じ人間ではない。私は私。あなたはあなた。

 

自分と他者との間に境界線を引くことは、自分のために、そして相手のためにも大切なことなのです。

 

欲求を押し殺して子どもを優先するのが良い親なのか?!

長女が小さかった頃、私は自分の欲求と限界に気がつけませんでした。自分を押し殺してでも、娘の希望全てを叶えてあげるのが良い母親だと思っていたのです。

 

子どもはなるべく泣かせてはいけない。

離乳食は一から全て自分で作らなければいけない。

赤ちゃんに着せる衣類は肌に優しいオーガニック素材にこだわるべきだ。

自分の全てを子どものために捧げよう。

 

当時の私は誰に強いられたわけでもないのに、自分でルールを作り、「子どものためにもっとできるはずだ」「良い母親でいなければ」と自分を追い込んでいました。

 

しかし、私が良い母親になろうと頑張るほどに、子どもにも夫にもプレッシャーを与え、家族みんなを苦しめていたことにだんだん気がつきました。

 

他者への優しさは自分を満たしてあげてから

長女が4歳になると彼女自身の主張を言葉にすることも増え、イライラを抑えられずに娘を怒鳴ってしまったり、時には手を挙げそうになったりすることが増えました。

 

自分の全てを子どものために捧げているのに、結局は私が娘のことを傷つけているのかもしれない……。そんな自分に落胆し、子どもが寝静まった夜にひとり涙を流すこともありました。

 

その現状を変えたいと思い、夫に勧められて始めたのがセラピーです。

 

セラピーの時間は毎回子育ての話からスタートしました。当時の私はとにかく子育てのことを話したかった。また、幼少期のトラウマが自分の子育てを通じてフラッシュバックするように溢れ出てきていたので、そのことについても先生にたくさん話を聞いてもらいました。私がどんなに自己嫌悪に陥ったネガティブな話をしても「あなたはこんなにもお子さんのことを愛しているじゃない」「あなたは頑張っているよ」「そんな辛いことが子どもの頃あったのね」と、先生は私の良いところを見つけて言葉にして伝えてくれたり、幼少期に感じた私の想いに同調してくれたのです。

 

定期的に自分の内を言葉にすること、そしてありのままの自分を誰かから受け止めてもらえることで、まるで玉ねぎの皮が1枚1枚剥がれていくように、自分が本当に求めているものが見えてきました。

 

たとえば、朝はゆっくりお白湯を飲んだり、趣味のアートをしたり、自分のためだけに時間を使いたい。日中だって疲れた時はゆっくり休憩したい。私には家でのんびりする自分のための時間が必要だったのです。

 

自分自身が満たされない状態で、周りに手を差し伸べるのは難しいことです。酸素がない状態で酸素ボンベを付けずに他者を助けることはできないですよね。まずは自分の欲求を満たしてあげる。そうすることで誰かのためにも優しさやパワーを注げるということにようやく気がつけました。

 

自分のための時間がもたらす変化

それ以降、私は常に子ども優先という自分の考え方を改め、自分のための時間も大切にするようになりました。

 

たとえば、朝6時半までは自分のためだけに時間を使う。「朝6時半まではママは自分の時間を過ごすから、それまでは自分のことは自分でやってね」と子どもたちには伝えています。子どもたちも理解してくれ、早起きした時には、自分でフルーツやグラノーラを食べるようになりました。

 

日中に少し休憩したい時は、子どもたちには「このカップの中のお茶が空っぽになったら手伝うね」とか「時計の針が30分になったらお話を聞くね」とか「このアラームが鳴るまではママにひとりの時間をちょうだいね」などと伝え、自分のための時間を意識的に確保しています。

 

子どもたちにイライラして冷たい言葉をかけてしまいそうな時には、「今は優しい気持ちで会話ができそうにないから、落ち着くまで別のところに行くね。落ち着いたら必ず戻ってくるからね」と伝えて歩き去ることもあります。子どもたちが不安を感じないように「必ず戻ってくる」ことを伝えることが大切です。

 

その他にも、掃除や洗濯などの家事は子どもたちと一緒に行い、子どもたちがいない時間は仕事や趣味に全集中。お手伝いは子どもの自主性を育み、自尊心を高めるとも言われています。子どもといる時間に一緒に家事をやることで、自分の時間が増えて、子どもたちの成長にも繋がる。まさに一石二鳥です。

 

このように自分のための時間を作ることで、常に誰かのために何かをやっている状態から解放され、イライラすることが減り、子どもとの関係も良い方向に変化していきました。

 

私は私。あなたはあなた。”Boundary”の重要性

子育てに関する書籍やセラピーを通じて学んだことは、どんなに親しい間柄であっても、「私は私」「あなたはあなた」と境界線を引くことの大切さ。

 

境界線=”Boundary”。

 

”Boundary”を大切にすることで、パートナーや子どもを「一個人」としてみることができ、尊敬や尊重の気持ちを忘れずに接することができます。

 

また、相手からも自分の境界線を踏みにじられることがなくなり、自分の欲求に早く気がつき、満たすことができるでしょう。

 

私は子育てに境界線を意識するようになってから、心に余裕が生まれ、子どもや夫に怒りや悲しみをぶちまけてしまうことが少なくなりました。

 

もし、あなたが子育てを辛く感じているなら、”Boundary”を意識して、相手と同意できる境界線を見つけ、それを上手く言葉にして、自分のための時間も大切にして欲しいです。

 

自分を大切にできるからこそ、他者に対しても真に優しくなれる。私はそう感じています。

ライター:プロフィール

Humming編集長、一般社団法人ハミングバード代表理事。カリフォルニア在住。

高校時代、スイスに住んでいたときに自然の偉大さに触れ、地球環境保全について学び始める。アメリカの美術大学でテキスタイル科を専攻。

今でも古い着物の生地などを使って、子育ての合間に作品を制作し続けている。


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