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寄付による税金の控除とは?ふるさと納税との違いも解説

 

国や自治体、あるいは学校、医療機関など、公的機関や施設に対して寄付をすることで所得税が軽減される場合があるのをご存知でしょうか。

 

また、寄付と聞くと「ふるさと納税」をイメージする方も多いと思いますが、一般的な寄付金控除とふるさと納税にはどういった違いがあるのか疑問に感じる方も多いはずです。

 

そこで本記事では、寄付によって受けられる税金の控除の仕組みやルール、計算方法などもあわせて詳しくご紹介します。

 

「特定寄附金」を支払うと税金が控除される

 

会社員の場合は給与、個人事業主や経営者の場合は売上から経費を差し引いた利益に対して所得税が課税されます。

 

所得税は累進課税という仕組みが採用されており、基本的に所得金額が大きい人ほど課税割合も高くなる仕組みとなっています。しかし、同時にさまざまな控除も用意されており、これらをうまく活用することにより税負担軽減できます。

 

一定の寄付金を支払った際に控除される「寄附金控除」もそのひとつで、国税庁のタックスアンサーには以下のように掲載されています。

 

”納税者が国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対し、「特定寄附金」を支出した場合には、所得控除を受けることができます。これを寄附金控除といいます。”

 

引用:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1150.html

 

「寄付金」と聞くと募金や義援金などをイメージする方も多いと思いますが、税金の控除の対象となるのはあくまでも「特定寄附金」に該当するものに限られ、必ずしもすべての寄付金が控除の対象とはならないため注意が必要です。

 

特定寄附金の範囲は?

 

では、所得税の控除対象となる「特定寄附金」とはどのようなものなのでしょうか。国税庁では以下のいずれかに該当するものを特定寄附金と定義しています。

 

  1. 国、地方公共団体に対する寄付金
  2. 公益社団法人、公益財団法人その他公益を目的とする事業を行う法人または団体に対する寄付金
    ※「一般に広く募集されているもの」かつ「緊急性と公益性が高いと財務大臣が指定したもの」
  3. 特定公益増進法人(独立行政法人、社会福祉法人、公益社団法人、公益財団法人、日本赤十字社など)に対する寄付のうち一定のもの
    ※教育・科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献、その他の公益の増進に著しく寄与すると認められた特定公益増人法人に対する寄付金
  4. 特定公益信託のうち、その目的が教育・科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与すると認められる一定の公益信託の信託財産とするために支出した寄付金
  5. 政治活動に関する寄付金
    ※寄付をした人に特別の利益がおよぶもの、政治資金規正法に違反するものを除く
  6. 認定特定非営利法人等(認定NPO法人等)に対する寄付金
    ※寄付をした人に特別の利益がおよぶものを除く
  7. 特定新規中小会社により発行される特定新規株式を、払込みにより取得した金額のうち一定の金額(800万円まで)

 

上記の内容を簡単にまとめると、特定寄附金として認められる重要なポイントは公益性の高さといえるでしょう。

 

たとえば、「クラウドファンディングで特定の人やお店、企業を支援するために寄付をした」というのは特定寄附金とみなされず、税金から控除することもできません。

 

また、寄付先がNPO法人や社会福祉法人、公益社団法人などであったとしても、寄付金の用途や募集の仕方などによっては特定寄附金としてみなされないケースも想定されるため注意が必要です。

 

寄付金の控除額は?

 

実際に支払った金銭が特定寄附金に該当する場合、どの程度の割合が寄附金控除として認められるのでしょうか。

 

まず前提として覚えておきたいのが、税金の控除には所得金額から差し引く「所得控除」と算出された納税額から差し引く「税額控除」の2種類があるということです。

 

そして、「寄付金特別控除」に該当する場合は両者のいずれかから選択でき、それ以外の寄付金控除は所得控除が適用されます。

 

所得控除の場合の寄付金控除額算出方法

  • 「年間の寄付金額」または「総所得金額×40%」のいずれか低い金額-2,000円

 

税額控除の場合の寄付金控除額算出方法

  • (年間の寄付金額-2,000円) × 30~40%

 

たとえば、年間の所得金額500万円の人が、ある政党(政治資金団体)に対して10万円を寄付した場合のシミュレーションは以下の通りです。

 

【所得控除の場合】

10万円-2,000円=9万8,000円

 

【税額控除の場合】

(10万円-2,000円)×30%=2万9,400円

 

控除額を見れば所得控除のほうが金額が大きいですが、税額控除は算出された納税額から上記の金額を差し引くため、条件によっては税額控除のほうがより高い節税効果を見込めるケースが多いのです。

 

ただし、上記のいずれかから選択できるのは「寄付金特別控除」に該当する場合に限られ、主な対象の寄付先としては政治資金団体および政党、公益財団法人・公益社団法人、認定NPO法人などに限られます。

 

ふるさと納税との違いについて

 

寄付金控除と聞くと、昨今利用者が増えている「ふるさと納税」を連想する方も多いのではないでしょうか。

 

両者は税制上似た仕組みであり混同してしまうケースも少なくありませんが、控除の対象や申告の手続きなどに大きな違いが見られます。

 

控除の違い

寄付金控除の場合、上記で紹介した通り年間の寄付金額または総所得金額の40%にあたる金額から2,000円を差し引いた分が所得金額から控除され、所得税が算出されます。

 

これに対し、ふるさと納税は寄付額から2,000円を差し引いた全額が控除の対象となるほか、加えて住民税の特別控除も適用されるという大きな違いがあるのです。

 

すなわち、寄付金控除は所得税のみ、ふるさと納税は所得税+住民税から控除が受けられるため、ふるさと納税のほうが高い節税効果が期待できることを意味します。

確定申告の違い

年末調整の対象となっている会社員であっても、寄付金控除を受けるためには確定申告を行わなければなりません。

 

しかし、ふるさと納税の場合は「ワンストップ特例制度」が利用でき、一定の条件を満たしていれば確定申告の煩雑な手続きが必要なく控除や還付が受けられます。

 

ただし、ふるさと納税は寄付金控除との併用も可能であり、この場合は年末調整が対象の会社員であっても確定申告を行わなければなりません。

 

寄付金控除の計算シミュレーションはこちら

寄付金控除によって所得税の節税効果が得られるとはいっても、どの程度の金額が低減できるのか、おおよその目安を知っておきたいという方も多いでしょう。

 

大前提として、最終的な納税額は所得金額や配偶者の有無、その他さまざまな控除の内容、条件によっても変わってきます。

 

ただし、所得金額と寄附金額をもとにおおよその控除割合や控除額をシミュレーションすることは可能です。

 

たとえば、課税所得(給与所得控除後の金額から所得控除の額の合計額を差し引いたもの)が400万円の方が1年間で5万円の寄付を行った場合、所得控除の場合で9,600円、税額控除では1万9,200円が寄付金控除として受けられます。

 

また、寄付額が10万円であった場合には所得控除で1万9,600円、税額控除で3万9,200円、20万円では所得控除が3万9,600円、税額控除で7万9,200円と上がっていきます。

 

すなわち、所得控除であれば寄附金額に対して約2割、税額控除は約4割程度の節税効果が得られる計算になります。

 

寄付金控除のシミュレーションは以下のサイトにアクセスし、課税所得金額と寄附金額を入力することで概算を求められるためぜひ参考にしてみてください。

 

https://kikin.keio.ac.jp/simulator/

 

まとめ

所得税の算出にあたっては、一定の条件を満たす寄付を行った場合に控除が受けられる寄付金控除があり、これを活用することで税負担を軽減できます。

 

ただし、すべての寄付が控除の対象として認められるものではなく、国や自治体をはじめとして、公的団体や公的機関、そして公益性がある用途などに限定されています。

 

現在、ふるさと納税の利用者が増えていますが、寄付金控除に比べると住民税の特別控除も受けられる違いがあるためメリットは大きいといえるでしょう。

 

寄付金控除を活用し税負担を軽減したいと考えている方は、今回紹介したシミュレーションも参考にしながら、ふるさと納税とも比較し検討してみてください。


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