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【ハミングが届けるポジティブニュース】 最高の恩返し。64年間「自分の部屋」を持てなかった母へ贈る安らぎの空間

Written by
堀江知子(ほりえ ともこ)

Credit: Courtesy Anan Duarte

 

人生の経験を重ねるほど、私たちは母親という存在の「強さ」と、その裏側にある「沈黙の苦悩」を理解するようになります。特に、自分が親になって初めて、「あの時、母はどれだけ大変だったのだろう」と胸を締めつけられる瞬間があるのではないでしょうか。

 

今回ご紹介するアメリカのアナさん(25歳)と母アネットさん(64歳)の物語は、貧困と不安定な生活の中で、母が娘に与え続けた「揺るぎない愛」、そして娘が大人になって初めて気づいた「誰が母の面倒を見るのか」という問いが、最高の恩返しへと繋がった、心温まる実話です。

 

 

 

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これは、単に部屋をプレゼントした話ではありません。苦労を重ねた母に、娘が「心の平和と新しいスタート」を贈った、家族の物語です。

 

アナさんの幼少期は、絶え間ない不安定さとの戦いでした。住む家もなく避難所を出入りし、次にどこで眠るのかさえ分からない日々。「本当に落ち着くことがなく、常に移動していました」とアナさんは振り返ります。

 

 

“苦労を重ねてきた母に、娘が住まい以上の「心の平和と再出発」を贈った、困難を乗り越える家族の物語です。”

 

 

母アネットさんは、父親の重病のため、10代で高校を中退し家族の介護にあたらざるを得ませんでした。英語は第二言語で、頼れる人も少ない中、アネットさんはマクドナルドなどで懸命に働き、二人の生活を維持しました。

 

アナさんは言います。「いつ何が起こるか分からない、常に不安が付きまとう生活でした。精神的にも疲れ果てる毎日でしたが、私は母がひたむきに働く姿を見て育ちました。その強い精神が、私を支えてくれたのです」。

 

 

Credit: Courtesy Ana Duarte

 

 

彼らは、安い家賃で借りられる「ボロボロの狭い部屋」を転々としてきました。「そこは『家』というより、次の引っ越しまで生き残るための場所でしかなかった」とアナさんは語ります。

 

しかし、中学時代、再びホームレス状態に陥ったとき、アナさんは教育こそが貧困から抜け出す唯一の方法だと気づきます。奨学金を得て進学した私立学校で、豊かな家庭の子どもたちに囲まれ、避難所暮らしを隠し、お古の制服を着て登校する日々は、大きな不安と劣等感の毎日でした。それでも彼女は、「いつかもっと良い人生を築く」という希望を心の支えに、学業に専念しました。

 

アナさんの努力が実を結び、一家の中で初めてとなる大学卒業者となったのです。大学を卒業し、ソーシャルワークの学位を取得したことは、長年の苦難に終止符を打つ決定的な瞬間でした。

 

現在、アナさんはアメリカ最大のキリスト教系非営利団体の一つで働いています。「貧困に苦しむ人たちを助ける仕事は、私にとって深い意味があります。すべてを失った時の苦しさは、私が誰よりも知っているからです」と彼女は語ります。

 

 

“アナさんは、長年の苦難を乗り越えて大学を卒業し安定した仕事に就いたことで、これまで一度も自分の部屋を持てなかった母に「本当の家」と安らぎを贈る恩返しを実現しました。”

 

 

この安定した生活の中で、アナさんは母に恩返しをするチャンスを得ます。初めて手に入れた安定したアパートで、家賃や食費を支払えるようになっただけでなく、母に「本当の家」をプレゼントする時が来たのです。

 

アナさんは、アパートのメインベッドルームを母にプレゼントすることを決めました。その理由はシンプルでした。

 

「私の母は、生まれてから64年間、一度も自分の部屋を持ったことがないんです」

 

「母は自分が持てなかったものを全て私に与えようとしてくれましたが、誰がこれから母の世話をするのでしょうか? 私は、大人として親を大切にすることの重要性を強く感じています」この思いが、彼女にサプライズを決行させました。

 

 

Credit: Courtesy Ana Duarte

 

 

上品に飾り付けられたベッドルームは、アネットさんにとって、まさに64年分の「心の平和と新しい始まり」のシンボルとなりました。

 

アナさんは言います。「今までの貧困生活は長く、厳しかったけれど、その苦労のおかげで私は強さ、広い視野、そして思いやりの心が身につきました。もし昔の自分に、大学を卒業し、家と仕事、そして母と暮らす未来が待っていると話しても、きっと信じられなかったでしょう。でも、今、私はここにたどり着きました」。

 

「あきらめずに進み続ければ、いつか振り返ったとき、『やってよかった』と心から思える日が来る」という彼女の言葉は、今を生きる私たちへの力強いメッセージです。

 

 

参考記事:https://people.com/woman-surprises-mom-with-her-own-bedroom-after-overcoming-homelessness-exclusive-11808896

ライター:プロフィール

著者:堀江知子(ほりえともこ)|香港在住ライター

民放キー局にて、15年以上にわたりアメリカ文化や社会問題についての取材を行ってきた。

2025年からは香港に移住しフリーランスとして活動している。noteやTwitterのSNSや日本メディアを通じて、アフリカの情報や見解を独自の視点から発信中。

出版書籍:『40代からの人生が楽しくなる タンザニアのすごい思考法 Kindle版』。

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