ジェンダーアイデンティティと代名詞を理解する
多様な性のあり方を知るための基礎ガイド

Contents
- 1 ジェンダーは「決まった答え」ではなく、対話のプロセス
- 2 ジェンダーは一つではありません。
- 3 ジェンダーとは何か?
- 4 ジェンダーと文化・環境の深い関係
- 5 よくあるジェンダーの思い込みの例
- 6 代名詞とは?【基礎知識】
- 7 「they」は文法的に正しいの?
- 8 正しい代名詞の使い方
- 9 ジェンダーとセックス(生物学的性)の違い
- 10 ジェンダーの尊重は、メンタルヘルスとも深くつながっている
- 11 トランスジェンダー・シスジェンダーとは?
- 12 ノンバイナリーとは?
- 13 ジェンダーに迷っているあなたへ
- 14 子どもや若い世代にとっての意味
- 15 ジェンダーの3つの側面
- 16 トランジション(移行)について
- 17 言葉とラベルについての大切なこと
- 18 間違えてもいい。大切なのは「どう向き合うか」
- 19 最後に
ジェンダーは「決まった答え」ではなく、対話のプロセス
ジェンダーについて理解するうえで大切なのは、「正解を覚えること」ではなく、対話を続ける姿勢です。
人のジェンダーアイデンティティは、人生のある時点で言語化されることもあれば、時間とともに変化することもあります。昨日までしっくりきていた表現が、明日は合わなくなることもある。それは混乱ではなく、自己理解が深まっているサインでもあります。
だからこそ、「一度聞いたら終わり」ではなく、変化を前提に尊重し続けることが重要なのです。
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ジェンダーは一つではありません。
私たちが当たり前だと思ってきた「男/女」という枠組みは、実はとても限定的な見方です。
このガイドでは、
- ジェンダーとは何か
- 性別との違い
- 代名詞の意味と使い方
- ノンバイナリーやトランスジェンダーについて
を、初めての方にも分かりやすく解説します。
ジェンダーとは何か?
ジェンダーとは、社会や文化の中でつくられた「性別にまつわる考え方・役割」のことです。
たとえば、
- どう話すべきか
- どんな服装が「ふさわしい」とされるか
- 感情をどう表現するか
といった答えは、ジェンダーによって無意識に決めつけられがちです。
アメリカや日本を含む多くの社会では、「男はこうあるべき」「女はこうあるべき」という性別に期待される役割が、幼いころから刷り込まれています。
しかし、これらは生まれつき決まっているものではありません。
ジェンダーは二択ではなく、濃淡のあるものとして存在しています。

ジェンダーと文化・環境の深い関係
ジェンダーの考え方や表現は、文化や社会環境によって大きく左右されます。
ある文化では自然と受け入れられている表現が、別の場所では誤解や偏見の対象になることもあります。
そのため、ジェンダーについて考えることは、「個人の問題」ではなく、「社会のあり方」を見つめ直すことでもあります。
誰かが安心して自分らしく存在できるかどうかは、その人の強さではなく、周囲の環境によって決まることが多いのです。
よくあるジェンダーの思い込みの例
- 女の子はピンク、男の子は青
- 男性は泣かない、女性は感情的
- 男性は攻撃的・論理的、女性は優しく世話好き
これらは文化的につくられたイメージであり、 個人の在り方を決めるものではありません。
代名詞とは?【基礎知識】
代名詞とは、名詞の代わりに使う言葉です。
ジェンダーにおいて、代名詞はその人のアイデンティティを尊重する大切な要素です。
英語でよく使われる代名詞の例
- he / him / his
- she / her / hers
- they / them / theirs(単数でも使われます)
「they/them」は、
- 自分を男性・女性のどちらとも感じない
- 二択に当てはまらない
と感じる人によく使われます。
また、
- he/they
- she/they
のように複数の代名詞を使う人もいます。
「they」は文法的に正しいの?
はい、正しいです。
実は私たちは日常的に単数の「they」を使っています。
例:
「誰かが財布を落とした」
→ I need to find the person who lost their wallet.
歴史的にも、シェイクスピアやエミリー・ディキンソンなどの作家が使ってきました。

正しい代名詞の使い方
- 自己紹介のときに名前+代名詞を伝える
- 相手の代名詞を覚え、使う
- 間違えたら、簡単に謝って言い直す
過剰に言い訳したり、長く謝る必要はありません。
大切なのは「尊重する姿勢」です。
ジェンダーとセックス(生物学的性)の違い
- セックス(sex):出生時に医師が身体的特徴から割り当てる性
- ジェンダー(gender):自分自身がどう感じ、どう認識しているか
セックスも実は二択ではなく、トランスジェンダーのように、身体的特徴が多様な場合もあります。
ジェンダーの尊重は、メンタルヘルスとも深くつながっている
研究や現場の声からも、自分のジェンダーや代名詞を尊重されることは、心の安全性に直結することが分かっています。
特に若い世代のLGBTQ+の人たちにとって、
- 正しい名前で呼ばれる
- 正しい代名詞を使ってもらえる
という小さな行為は、「自分はここにいていい」という安心感を育てる、大きな支えになります。
言葉はただの記号ではなく、安心をつくるツールでもあるのです。
トランスジェンダー・シスジェンダーとは?
- シスジェンダー:出生時に割り当てられた性と、ジェンダーアイデンティティが一致している人
- トランスジェンダー(トランス):一致していない人
どちらも自然な在り方で、優劣はありません。

ノンバイナリーとは?
ノンバイナリーとは、「男性/女性」という二分法に当てはまらないジェンダーの総称です。
- ジェンダーフルイド
- ジェンダークィア
- バイジェンダー
- ポリジェンダー
など、さまざまな表現があります。
ノンバイナリーの人すべてがトランスと名乗るわけではありません。
ジェンダーに迷っているあなたへ
迷うことは、おかしいことではありません。
自分に問いかけてみてください。
- 生まれたときの性別をどう感じている?
- どんなジェンダーとして見られたい?
- どんな服装・表現が心地いい?
- どの代名詞がしっくりくる?
答えは一つでなくても大丈夫です。
子どもや若い世代にとっての意味
子どもたちは、大人の言動を驚くほど敏感に受け取ります。
大人がジェンダーについて柔軟であること、多様性を自然なものとして扱うことは、「自分らしくあっていい」という許可を次の世代に渡すことでもあります。
ジェンダーの3つの側面
- ジェンダー表現:服装・髪型・振る舞い
- ジェンダーアイデンティティ:自分自身の感覚
- 周囲からの認識:社会がどう見るか
これらは必ずしも一致する必要はありません。

トランジション(移行)について
トランジションには、
- ソーシャル(代名詞・名前)
- 法的(戸籍・書類)
- 医療的(ホルモン・手術)
などがありますが、どれも必須ではありません。
どこまで行うかは、完全に個人の選択です。
言葉とラベルについての大切なこと
- 「transgender」は形容詞として使う
- 「transgendered」は使わない
- 呼び方は必ず本人に確認する
言葉は、人を尊重するために使うものです。
間違えてもいい。大切なのは「どう向き合うか」
ジェンダーや代名詞について、誰もが最初から完璧である必要はありません。
大切なのは、間違えないことではなく、間違えたときの態度です。
素直に認め、言い直し、学び続けること。
その積み重ねが、「安全な人」「信頼できる人」という評価につながっていきます。
最後に
ジェンダーを理解することは、誰かを特別扱いすることではありません。
それは、
人を一人の人として見ること。
相手の言葉を信じること。
そして、尊重を行動で示すこと。
完璧でなくていい。
でも、無関心ではいないこと。
その姿勢こそが、多様な世界をやさしく支える土台になります。
参考記事:Understanding Gender Identities & Pronouns