感情が高ぶると、私はいつも涙が出てしまいます。でも子どもの頃は、泣くたびに叱られていたので、いつの間にか「泣くことは弱さの証」だと思うようになりました。それから長い間、人前で涙を見せないようにしてきました。
でも、人生でとてもつらい出来事が起きたとき、もう我慢できなくなりました。チームミーティングの最中、私は思わず泣き崩れてしまったのです。驚いたことに、当時の上司はその場を穏やかに受け止めてくれました。そしてそのとき私が感じたのは、恥ずかしさではなく「安堵」でした。
ずっと心に重くのしかかっていたものが、涙とともに少し軽くなったように感じました。思考は鈍り、やる気も失っていた私にとって、泣くことで少しだけ前が見えるようになったのです。
もちろん、涙が問題を解決してくれるわけではありません。でも、心を整えて、また一歩踏み出す力をくれる。何より、「自分は人間なんだ」と思い出させてくれます。それだけで、十分な意味があると思うのです。
涙活ってなに?
忙しさやプレッシャーに追われる毎日。人はつい、自分の感情にフタをしてしまいがちです。泣きたいのに泣けない、弱音を吐けない──そんなときに、心をそっとゆるめてくれるのが「涙活(るいかつ)」です。
「涙活」とは、意識的に涙を流すことで、ストレスを和らげ、心のデトックスを図る活動のこと。
映画を観たり、感動的な話を読んだり、人と深く語り合ったりして、涙を誘う時間をあえて設けます。2013年頃から日本で広まり、企業の研修やワークショップに導入されることもあります。
涙がもたらす驚きの効果
涙は単なる感情の表れではなく、科学的にも心身に良い影響があることがわかっています。
- ストレスホルモンを排出する
情動による涙には、ストレスホルモン(コルチゾールなど)を体外に排出する働きがあるとされています。 - 副交感神経が優位になり、リラックスモードへ
涙を流すと、副交感神経が優位になり、身体が自然と休息モードに。呼吸も落ち着き、緊張がほぐれます。 - 感情の解放で「自分らしさ」を取り戻す
泣くことで抑えていた感情に気づき、認めてあげられる。これは、自分自身との関係性を回復する第一歩です。
涙活のやり方
涙活は特別な道具や場所がなくても始められます。以下はおすすめの方法です:
- 感動系の映画・ドキュメンタリーを観る
自分の感情に重ねやすい作品を選ぶと、自然と涙があふれてきます。おすすめは『そして父になる』『湯を沸かすほどの熱い愛』『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』など。 - 「泣ける話」や手紙を読む・書く
誰かへの感謝を手紙に書いたり、昔の自分宛に手紙を書くと、思わぬ感情があふれることも。 - 涙活イベントに参加する
最近では「涙活セミナー」「涙シェア会」など、他人と一緒に涙を流す体験型のイベントも増えています。共感による癒やしの効果も得られます。
涙を我慢しがちな人へ
「泣くこと=弱さ」と思われがちな文化もありますが、涙は自然な感情の表れであり、むしろそれを受け止める強さが必要です。泣くことで、心のモヤモヤが少しずつ流されていきます。
たとえ涙がポロっと一粒でも、それはあなたの心が自分を守ろうとしている証拠。
最後に──涙は、心のマッサージ
涙活は、自分を甘やかすのではなく、自分にやさしく向き合う時間です。
強くあろうと頑張る毎日だからこそ、ほんのひととき、自分をゆるめてあげることも大切。
「最近、泣いてないな」と思ったら、ぜひ涙活、してみてください。

ライター:プロフィール

インタビュー:條川純 (じょうかわじゅん)
日米両国で育った條川純は、インタビューでも独特の視点を披露する。彼女のモットーは、ハミングを通して、自分自身と他者への優しさと共感を広めること。