Humming♪

水川あさみさんと考える、ワクワクする未来【対談 / 森カンナと未来人vol.3】

社会を広く見渡すユニークな視点をもち、連載エッセイ『ごきげんなさい』でもそのオリジナルな感性を披露している森カンナさん。彼女が「未来人=時代の先を走るリーダー」を招いて、気になるテーマについて語り合います。ゲストはプライベートでも親交のある俳優 水川あさみさん。vol.1では食について、vol.2ではファッションや暮らしについて語り合い、今回vol.3では働き方や理想の世界にまで二人の会話は広がっていきました。

私たちは何のために働いているのか

森カンナ(以下、森)「私がこのところよく考えているのが『働くって何?』ということなの」

水川あさみ(以下、水川)「私自身は、働くことで得られるものはお金だけではないと思ってる。たとえば経験や生きがい、人脈が広がることでできる仲間やご縁・・・。本当にさまざまだなと感じてる」

「仕事に向かう姿勢は、ずっと変わらない?」

水川「根本的なものは変わらないかな。ただ10代、20代のころと、30代後半になった今とでは、『演じること』に対する距離感が少しずつ変わってきていると思う」

「具体的にはどんなふうに?」

水川「世の中も目まぐるしく変化するなかで、本当に大切にしたいものは何か、それを大切にするために、自分のなかで仕事をどんな位置に置くとバランスがいいのか。それを深く考えるようになったというか。以前は自分の存在をより多くの人に知ってもらうため、とにかくたくさん仕事をして、途切れることなく作品に出続ける・・・それが重要だと思ってた。そうすることで自分の存在意義を測ったり、どこか安心感を得たりすることもあったかもしれない」

「今は、少し違う?」

水川「今は、仕事はもちろん、家族や仲間など大切にしたいものがさらに増えて、もっと心地よい距離感で役者業に取り組みたいと考えている自分がいる。年齢を重ねるにつれて、求められる役柄も、作品におけるポジションも変化していく。私は俳優という職業を心から愛していて、一生やり続ける覚悟でいるけど、その一方で別の道を選ぶこともできる、そんな軽やかなスタンスも持ち続けていたいんだ」

「それはすごく大きな変化だよね。世の中的にも、コロナ禍以降、オンラインの環境が整ってリモートワークが増え、働き方自体が大きく様変わりしてる。そんな環境のなかで、仕事で収入を得るという前提はありつつも、それ以上に、もっと人間同士の気持ちの交換というのかな、そういうものが大切になっている気がする」

水川「私も人との出会い、人とのつながりがすごく重要だなと感じてる」

「うん、やっぱり人が好き。だから人と人とが関わって一つの作品をつくり上げていくというこの世界に、仕事は仕事だけど『働いている』という感覚を超えて向き合っている」

kanna

好きか、嫌いか。自分で考えて自分で決めよう


水川「最近特に思うのは、海外では40代50代の俳優たちが活躍している作品もたくさんあるけど、日本ではどちらかというと若い世代を中心とした作品が多くて、上の世代はそのサポートに回るような立ち位置の役柄が極端に多くなっているように感じるんだよね。もちろんそれも大切な役割だけど、年齢を重ねたからといって役割や立ち位置が限定されてしまうと、演じたいという熱量も減ってしまう。ただそれを仕方ないと諦めたくはないから、どうすればいいのかを考えているところ。この課題を共有できる仲間と一緒に、制作側にまわるのも面白いかもしれない・・・そんなふうに、いろんなことを思索している最中」

「うわぁ、興味深い! 今は軽やかに垣根を越えて、ボーダレスに活躍している人が増えているよね。時代はどんどん進化しているなってすごく感じる」

水川「役者という仕事を型にはめてしまうことなく、もっと自由に、もっと幅を広げてもいいのかなと思うの。芸能の世界に限らず、私たちは知らず知らずのうちに“競争世界”に放り込まれてしまうけれど、他者と比べることでは得られない、もっと本質的な面白さを追求したいなって」

「視聴率とか、いいね!の数とかー-数値で測ることで置いてけぼりになってしまう“本質”って絶対にあるよね」

kanna

水川「数字にこだわると、心からワクワクするもの、クリエイティブに富んだものは見放されてしまいがちだから。広く伝えることも大切だけど、一方で強く深く伝えることも大切にしたい。どちらかを否定するのではなく、どちらも共存するような豊かな世界になればいいな」

「あなたが考える『理想の世界』ってどんなもの?」

水川「これは理想論かもしれないけれど、みんながみんな、心から面白いと感じる“やりたいこと”を仕事にするのが本来の形ではないかなと思う。それを大前提にして、お金や情報の発信、伝達、共有、交換などが行われるのが理想かな。だから誰よりも稼ぐとか、あの人より有名になるとか、そういうのは少し違うかなと思う」

「仕事を続けていくなかで、好きではないこと、得意ではないことをしているなーーと悩んでいるひとも多いと思う。そういう気持ちをやり過ごしてしまわずに、情報がびゅんびゅん飛び交う世の中だけど、少しだけ立ち止まって『本当の自分って何が好きだっけ?』をゆっくり考えることが必要なのかも。それをしないままだといつか壁にぶつかるし、そこにしっかり向き合った人は大きく羽ばたけるんじゃないかな」

水川「目の前に差し出されたものをただ手に取るのではなくて、それを好きか嫌いか、自分で考えて自分で決める。本当はすごくシンプルなことなんだよね。キーワードは『自分で考える』。情報過多の時代だからこそ、考えることを決して手放したくない。これは自戒の念も込めて強くそう思う」

kanna

しなやかな人は、自分をご機嫌にする方法を知っている


「そうすると、自分の心の声を聴くことが重要だと思うんだけど、そのためにやっていることってある?」

水川「私の場合は、ピラティス。心とからだはつながっているから、からだを動かすことで聞こえてくる心の声があると思っていて。ピラティスにもいろんな学派があるようだけど、私の先生は『地球に対して真っ直ぐ立つこと。その正しい姿勢ができていれば、過度な運動は必要ない』と語ってくれて、それがすごく腑に落ちた」

「私も同じところに通い始めたのだけど、ピラティスは本当にいいよね。ずっとハードに運動してきたタイプだから、自分はすぐに動けると過信していたけど、とんでもなかった。実際の私は、気・血・水、すべてが滞っていて、ピラティスを始めたことで、それらが再び巡り始めたことを実感したから」

水川「ピラティスだからこそ得られるものってあると思う。私もヨガから加圧トレーニングまでいろんな運動を経てきたけれど、ようやくしっくりくるものに辿り着いた感覚がある」

「この素晴らしさを言葉にするのはなかなか難しいね」

水川「カンナの言うとおり、まずは『巡る』。さらに『整う』という表現がフィットするかな。人間にとって理にかなった運動方法だと思う」

kanna

「あなたと一緒にいると、すごくしなやかな軸のようなものを感じるの。その理由の一つはピラティスだと思うけど、あとは『自分をご機嫌にする方法を知っている』ということに尽きると思う」

水川「確かに、自分を喜ばせるセルフケアのようなものを無意識のうちにやっているかもしれない。人間だからストレスが溜まることもあるし、作品の役柄を引きずって心身がズタボロになってしまうこともある。でも自分の機嫌は自分で取らなければいけないし、自分の感受性は自分で守らないといけないからね」

「自分の気分を良くしてあげる方法を、手のひらの上にいくつも用意しておく。それってすごく重要なことだよね」

水川「そう、それは大したことじゃなくていいと思うの。好きなお香を焚くとか、友達に愚痴を聞いてもらうとか、その日だけはジャンクフードOKにするとか(笑)」

「自分の心の声を丁寧に聞けば、何が足りなくて、どんなことを欲しているのかがわかってくるよね。そしてそれは、自分一人でできることもあれば、仲間が必要なこともある。今は誰かを必要としているなと思ったときは、ぜひあなたを頼りにさせてください」

水川「この対談で、本当にいろんなことを話したね。こうやって意見を巡らせることで気付きがあるし、理解し合うことで心が整う。楽しかった! ありがとうございました」

「ありがとうございました!」


3回にわたりお届けした二人のトーク。交わされた言葉のなかには、従来の価値観とは違う、新しい時代の新しい生き方のヒントが随所に散りばめられていました。自分の軸を持ち、しなやかに生きる“未来人”の姿は、これからも私たちを魅了し、未来に向かって進んでいくことの楽しさを教えてくれるのです。


Profile
水川あさみ(みずかわあさみ)
俳優。大阪府出身。完全招待制のショートムービー『太陽-TAIYO-』が特設サイトにて公開中。初監督を務めた『おとこのことを』が短編映画製作プロジェクト『MIRRORLIAR FILMS Season4』にて9月2日(金)より全国公開。またAmazon Original『モダンラブ・東京』が今秋世界同時配信。
https://am-sucre.com/
Instagram @mizukawa_asami


森カンナ(もりかんな)
俳優。富山県出身。映画やドラマなど数々の作品に出演。2021年には、自身初舞台となった蓬莱竜太演出『昼下がりの思春期たちは漂う狼のようだ』で、600人のなかからオーディションによって選ばれ、観客を魅了した。2022年、フジテレビ4月期月9ドラマ『元彼の遺言状』1話、2話にゲスト出演。そして、6月28日(火)深夜24:55から2週連続OAとなるフジテレビドラマ『ブラック/クロウズ~roppongi underground~』(※関東ローカル)に、あゆみ役で出演する。
https://kannamori.com/
Instagram @kanna_mori


PHOTO = 嘉茂雅之
HAIR & MAKE-UP = 岡野瑞恵
TEXT = 本庄真穂

関連記事