この世の恋をしたことがあるみんなに【山口乃々華 / コトノハ日和 vol.07】
言葉があるから伝えられること、伝わること。そこから広がっていく思考、癒し、つながり、希望、愛情・・・深くて力強いもの。女優 山口乃々華が、心に舞い落ちてきた“コトノハ(言葉)”を拾い集めて、じっくりと見つめ、ゆっくりと味わい、思いのままに綴っていく連載。さあ、一緒に元気になりましょう。
君は僕に愛されたという事実を 金ピカのバッジにして胸にはって 歩いていくんだよ
「この場所から」(詩集『わかりやすい恋』銀色夏生 著) より一部抜粋
叔母が住んでいた埃っぽい部屋の中。
本棚に収まりきらず山積みになった本が、狭い部屋で足の踏み場をなくしている。それに加えて暑い。蒸し暑い。「夏生さんの詩集、ここにあるよ〜」と叔母が紹介してくれた。
適当に何冊か選んで手に取ってみた。どれも表紙は色褪せて、古びていて、もう何十年もそこに眠っていたかのような(実際そうだった)・・・なんて言ったら怒られるのだが、本当にちゃんと時間が経っているのを感じて、この詩集たちをまだ少女だった叔母が読んでいたんだなぁと思うと、ちょっとかわいくて面白い。
そんな“銀色夏生コーナー”の中から、選んだこの詩集。
『わかりやすい恋』。
これは思春期のことを指しているのだろうか? 気持ちを隠すことができないほど、心も脳みそも慌ただしく騒いでしまう恋を、私は想う。うーん。私の恋もまだ“わかりやすい”に入るのだろうか。
それとも、経験とともにどんどん“わかりやすい”が増えていく、ということなのだろうか。だとしたら、このタイトルの意味は思春期ではないことになる。もしかして、“わかりやすい恋をする人”ということなのだろうか。なんて、考えた。
「この場所から」はこの詩集に収められた一篇。
私の心に留まったフレーズの、「君は僕に」というその”僕”が、私にとって、大好きでこの世から居なくなったらたまらなく苦しい大事な人だと想像する。
「愛されたという事実」。それは空想でも、妄想でも、眠っているときに見る夢でもなく、事実。
事実は時にむなしいこともある。
けれど、恋をしていたあの時間を思い返す今となっては、そんな記憶なんて、とっくに放り投げていた。
そっと目を瞑って心臓に手を当てれば、当たり前のようにあの時間が蘇ってくる。呼吸、鼓動、体温、匂い。ふわっと柔らかい笑顔に、奥が深い瞳。
火照った心と、安心が一緒になることなんてあるんだと知った“事実”。
それから、詩の中に出てくる「金ピカのバッジ」。
きっと、私にしか見えていない、みんなには秘密のバッジなのだ。誇り高き金ピカのバッジ。
私は嬉しくて何度も何度も見つめるだろう。
それにしても、”僕”はすごいなぁと思う。
金ピカのバッジで私を簡単支配できてしまうのだから。
言葉に特別な魔法をかけるのなんて、きっと彼にとっては朝飯前。何てことないのだ。
“僕”には、いつだって追いつけない。
でも、追いつけないままでいいのかもしれない。
愛されたことを誇りに思い、そんな人に出会えたことを嬉しく感じている。
そんな幸せを想像した詩だった。
自分の生命の終わりよりも、大切な人の生命が終わる方がずっとこわいと感じる日々のなかで、胸にはる、金ピカバッジが、この世の恋をしたことがあるみんなに必要だなぁ、と私は思う。
山口乃々華(やまぐちののか)
2014年からE-girls主演のオムニバスドラマ「恋文日和」第7話にて主演を務め女優業をスタート。映画『イタズラなKiss THE MOVIE』シリーズ、ドラマ・映画『HiGH & LOW』シリーズほか、2020年には『私がモテてどうすんだ』のヒロイン役など、数々の作品に出演。 2020年末までE-girlsとしての活動を経て、2021年より女優業として本格的に活動を開始。2021年3月、初のミュージカル『INTERVIEW~お願い、誰か助けて~』、同8月にはミュージカル『ジェイミー』、2022年3~4月はミュージカル『あなたの初恋探します』でヒロインを演じた。ドラマ「ビッ友×戦士 キラメキパワーズ」(テレビ東京系)に出演。書籍『ののペディア 心の記憶』(幻冬舎文庫)も好評で、文章を書くことも好き。2022年10月にはconSept Musical Drama #7『SERI〜ひとつのいのち』でミュージカル初主演を務める。
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Instagram @yamaguchi_nonoka_official
自分を信じて進む先に、オリジナルな道がある【ヴィンテージバイヤー 荒木和の衣食住遊学】
いつも元気で幸せそうなひとは、自分の周りに“楽しいこと”を育てる種をまいています。そんな魅力的な方にHummingなライフスタイルのトピックスを伺うシリーズ記事「わたしの衣食住遊学」。今回登場するのは、イギリスでアンティークやヴィンテージのバイイングを行う傍ら、ネイリスト、刺繍作家としても活動中の荒木和さんです。
渡英の目的は点と点をつなげ、線にすること

刺繍は今までの人生で一番熱が入るもの。「刺繍をネイルにのせてみたい」と思い立ってネイルの資格を取得。
大学卒業後、文具雑貨業界で雑貨やヴィンテージのバイイングなどに携わってきた荒木さん。6年前、語学留学で初めて訪れたイギリスには、荒木さんの感性をくすぐるものが溢れていました。個性豊かな花や植物が当たり前に街中に存在し、アンティークやヴィンテージマーケットでたった一つの宝物に出合い、無料開放された美術館で数々の芸術品をじっくりと堪能する・・・「30歳になるまでに絶対にまたここに戻ってくる」と心に誓い帰国したそう。
昨年夏にその想いが叶って念願の再渡英を果たし、現在はロンドン在住。バイヤー、ネイリスト、刺繍作家と幅広く活動し、興味や好奇心の赴くままに挑戦してきた経験をつなぎ、“唯一無二の仕事”を築くための通過点に立っています。
「衣」
周りの目を気にせず、心のままに装うこと

チェルシーフラワーショーに出かける日は、花柄ワンピースがお決まり!?
ロンドンは多くの人種で溢れ、さまざまな文化的背景を持つ人がいます。そういった点からなのか、何が「普通」であるということがかなり曖昧です。よく個人主義の国だといわれますが、必要以上に人に干渉することがないと感じます。ここでは「あなたの好きなように」という空気を感じるから、他人の目を気にせず、好きな服を好きなように着て自分らしく楽しんでいます。
行く先々でよく目にするのは、花柄ワンピースを着た女性たち。お出かけやデートとなると花柄ワンピースを選ぶ人が多いように感じます。特に春先のショップでは「こんなに花柄のバリエーションって存在するんだ!」と驚くほど種類豊富に展開されていました。
私も感化され、ピンク地に緑のハートとバラ模様というかなり派手なワンピースを買いました(笑)。イギリスには各地に「チャリティーショップ」と呼ばれるお店があります。慈善事業団体が運営していて、市民から寄付された中古の服や日用品、本などを販売しており、ショップスタッフの多くはボランティアで、売り上げは慈善事業活動に充てられます。日常の中でそういった活動への理解を深めながら、お金をかけずにおしゃれを楽しんでいる人が多い印象です。

1930年頃に作られたクリスタルビーズのアクセサリーに一目惚れ。

小さな店構えからは想像しがたい量の食器が所狭しと並ぶアンティークショップ。
定期的に蚤の市が開催されたり、アンティークショップも多く、ものを大切にして受け継ぐ習慣が根付いています。アンティークやヴィンテージの買い付けをしていると、素晴らしいジュエリーに出合います。特にアールデコ期のジュエリーが好きで、良いものを見つけるとつい自分のコレクションに。
「食」
食を彩る英国ヴィンテージ食器

お気に入りのヴィンテージ食器。
イギリスに来てから食器に興味を持つようになりました。「ストーク=オン=トレント」といって17世紀から陶器産業が盛んな地方があり、ウェッジウッドやスポードなど名だたるブランドがここから生まれています。アンティークやヴィンテージに携わる仕事をしているため、自然と古い食器を目にすることが増え、販売するもの以外に自分用にも買うようになりました。金箔で豪華絢爛なバラ模様のティーカップなどもアンティークであるのですが、あまりにも私のライフスタイルとはかけ離れているので、素朴な花柄で現代の生活にも合うデザインのものをよく選んでいます。

スーパーマーケットでも簡単に手に入るヴィクトリアサンドウィッチ。価格も手頃でおうちカフェが充実。ラズベリーやブルーベリーなどのベリー類がよく売られていて、ケーキやビスケットと一緒に盛りつければ、ちょっと贅沢な気分に。

スーパーマーケットではスコーンミックスが売られているので、スコーンを焼いて自家製ジャムを添えて。
そうして手に入れたお気に入りの食器でいただくおやつは格別。イギリスの定番お菓子、ヴィクトリアサンドウィッチを食べて以来、イギリスの焼き菓子に興味を持ち、自分でも時々焼くようになりました。イギリスの焼き菓子は簡単なのに素朴で美味しく、気軽にティータイムを楽しめるのが良いところ。甘いもの好きの人も多く、スーパーマーケットの菓子材料コーナーはかなり充実しています。特別な日は大好きなホテルやカフェのアフタヌーンティーに行くこともありますが、自分で好きなお菓子を手作りし、友人と共有する時間も大好きです。
「住」
癒しと楽しみをくれる街並み

ふと目線を上げるとカラフルな花々が。それだけで癒されます。

ショーウィンドウに飾られた愛らしい春の花。
ロンドンは世界有数の都市でありながら自然豊か。季節の移り変わりを肌で感じられ、仕事後や休日にどこか遠くに行かなくても近場でリフレッシュできる機会に恵まれています。テムズ川沿いは絶好のお散歩コースです。
イギリスには新しく建物を建てるのにも、例え自分の家の庭に生えている木であっても許可なく切ってはいけないなど、自然を保護するため厳しいルールがあります。そのためロンドンの47%は緑地なのだそう。野生のリスやキツネを見かけることもしばしば。そんな自然に近いイギリスでは、花を飾る習慣が根付いていて、お店のショーウィンドウに季節の花が飾られていたり、街中にフラワーボウルが吊るされていたりと、いつでも目を楽しませてくれます。
私も自室の窓際を飾るようになりました。ロンドンは家賃がとても高く、シェアハウスが一般的。家具が備え付けのところが多いため、必ずしも自分の趣味ではない部屋をどのようにして居心地良くするか工夫をしながら暮らしています。昨年は窓際に季節の花とヴィンテージやカードを組みあわせてハロウィンには飾りかぼちゃ、クリスマスにはヤドリギを吊るしてイルミネーションを施したり、刺繍作品を飾って楽しみました。
「遊」
“遊び”ながら磨かれる刺繍

初めて販売したのは女の子の顔を刺繍した立体的なブローチ。
学生時代に刺繍に目覚め、独学でスキルを磨いてきた刺繍。きっかけは大学一年生の頃、芸術祭で刺繍のブローチを販売したことでした。そのときが刺繍をするのは初めてで、図書館で初心者向けの本を借りて見よう見まねでステッチを覚えて制作したのですが、嬉しいことに評判がとても良かったのです。

ブロッコリーをモチーフにした立体刺繍。色の見え方など細かく忠実に再現。
その後も刺繍で絵本を作ったり、スタンプワークという立体刺繍の技法を習い、百貨店などで刺繍のアクセサリーを販売したりと制作活動を続け、数をこなしていくうちにスキルアップしていきました。今振り返ると自分の表現方法を早いうちから見つけられたのだと思います。小さくて細かいものが好きなこと、一針一針コツコツ縫った線が絵になり形になる楽しさ。刺繍を始めて10年以上経ちますが、つくづく自分の性分に合っているなと感じます。

ウォレス・コレクションは、ヨーロッパらしい空間も見どころ。

彫刻がたくさん見られるサー・ジョン・ソーンズ博物館。小さな博物館ですが、一点一点興味深い作品ばかり。
イギリスはインスピレーションを得るのに絶好の国だと感じています。私の作品は植物やフルーツ、野菜などの自然物をモチーフにすることが多いですが、美術館や本屋さん、アンティークショップや古い建築、植物園などに遊びに行くと「次はこんなモチーフを作ってみよう」とひらめきます。ほとんどの美術館は入館無料のため、休日は美術館巡りを楽しんでいます。お気に入りは、リチャード・ウォレス卿などによって収集された15世紀から19世紀にかけての芸術作品などが展示されている「ウォレス・コレクション」、イギリスの建築家 ジョン・ソーンズ氏の私邸博物館「サー・ジョン・ソーンズ博物館」。

広大な敷地の国立公園、リッチモンドパークは「あれ?こんなところがあったんだ」と訪れるたびに発見がある場所。
ロンドンは見るところが多く、行きたい場所リストは常に更新され、週末はどこへ行こうかと探す必要はないほど。例え近場であっても隠れた場所に素敵なイングリッシュガーデンを見つけたり、面白いアールデコの建築があったりと探検する甲斐があります。
「学」
オリジナルな仕事を見つける学びの旅

買い付けのために足を運ぶアンティークやヴィンテージマーケット。良い品に出合ったときの喜びは快感!
6年前、ロンドンで半年間の語学留学をしました。その半年間はいろいろな国籍の友達が集まる小さな世界地図のような空間で、言葉に言い表せないほど濃密な時間を過ごしました。彼らから刺激を受けたり、限られた時間のなかで美術館や歴史的価値のある場所を旅したりと、忘れられない思い出が詰まった日々です。帰国後は渡英前から働いていた文具雑貨の会社に戻り経験を積み、昨年、目標としていた30歳で渡英するチャンスを掴みました。

オンラインショップで取り扱っているのはジュエリーや食器が中心。小さな物のなかに、大きなときめきが詰まっています。
再渡英後の一年間は英語を学び直し、仕事を見つけることから始まり、行ったことのなかった場所を巡ったりインプットの日々でした。季節を一周したここからはこれまでの経験を「私にしかできない仕事にする」という目標に向かって邁進していくターンだと感じています。今年5月にはイギリスで買い付けたヴィンテージ食器やジュエリーを販売する自身のオンラインショップをスタート。刺繍はよりイギリスらしいデザインを探求しながら制作しています。
自然を心から愛し、長い歴史のなかで受け継がれてきたものを大切にするイギリスの地で、自分自身と向き合い、たくさんのことを吸収して形にしていきたいです。
新宿三丁目のヴィーガンカフェで、極上パンケーキに舌鼓【渡辺知夏子のエシカルスポットNavi. vol.10】
普段の何気ない暮らしのなかで、サステナブルなアクションが出来たら素敵だと思いませんか? エシカルなライフスタイルを提案しているレストランやショップを、自身もウェルビーイングな生活を心掛けているというモデル渡辺知夏子さんがナビゲート。今回は、オーナー自身の食環境がきっかけでヴィーガンショップをオープンさせたという『AIN SOPH. Journey(アインソフ ジャーニー)新宿』をご案内します。
AIN SOPH. Journey 新宿
今回お邪魔させていただいたのは、新宿三丁目にあるヴィーガンカフェ『AIN SOPH. Journey(アインソフ ジャーニー)新宿』。駅のC5番出口から地上に出ると目の前に現れる、緑に囲まれた雰囲気のあるビルが目印です。
香り高いスパイスやハーブをふんだんに使った、季節のベジタブル料理が楽しめると評判のこちらのお店。そんななかでも人気メニューとなっているのが、ヴィーガン通にはおなじみ、ヴィーガンとは思えないクオリティの「天上のヴィーガンパンケーキ」です。
また、VEGAN AWARD 2022で金賞を受賞した「ティラミス」もとっても有名。著名人にもファンの多いこのカフェの一号店である銀座店がオープンしたのは2009年と、実に10年以上にわたり支持されてきた歴史があります。
「オープン当時からヴィーガンメニューを提供していますが、最初は“ヴィーガン”という言葉を知らない人が多かったため、あえてメニューにもヴィーガンという言葉を使うのを避けていました。そこから10年以上経ち、現在は多くの人がヴィーガンや自然食に関心を寄せるようになっています。ナチュラルでヘルシーな食の提供に役立てていることを、今はとても誇りに思っております」
そう語るのは、AIN SOPH. Journeyのオーナー白井由紀さん。ヴィーガンショップをオープンさせたのは、自身の食環境が大きく関係しているのだそう。

取材に対応してくださったオーナーの白井由紀さん。
「10代の頃に留学したカナダのとある地域が、たまたまヴィーガン文化が強く根付いた場所だったんです。そこで初めて、ヴィーガン食に触れる機会ができたのですが、私はわりと抵抗なくなじむことができました。それは、父方の実家が真言密教の家系で、以前から精進料理などを口にする機会が多かったことも影響していたのかもしれません。
そのカナダ留学中に、環境問題をはじめ、宗教などの信条、動物愛護などの理由で、動物性食物を避ける方が世界中には数多く存在することを知りました。そのような方々が、思想の違いでテーブルを別にするのはとても寂しい。そんな思いから、ヴィーガンの方はもちろん、それ以外の方も楽しく食卓を囲める空間づくりをしようと決意しました」
ヴィーガンということで食材に制限はあるものの、「一般の食事以上の美味しさやバリエーションをお届けできるよう努力を重ねてきました」と語る白井さん。その甲斐もあって、現在は本店の銀座や新宿三丁目店のほかにも、池袋店や京都店、さらにはフランチャイズ店も続々とオープン。食生活をより豊かに、楽しいものにするために、店内の内装にも心を配っています。
「新宿店は、異国にタイムトラベルしたような空間づくりがコンセプトになっております。食器はモロッコから直接取り寄せたものを使い、照明などにもこだわりました」

シンプルな内装の中に無国籍なインテリアを配置して、リラックスできる雰囲気に。
料理の内容だけでなく、店を訪れていただくからには、食事すること自体を楽しむことが大前提。空間づくりにもおもてなしの心を込める、そんな思いが多くのお客様に愛されている所以なのかも。
白井さんに、初心者でも挑戦しやすいヴィーガンライフについて伺ってみると、明日からでも真似できそうなアイデアが!
「週末だけ動物性食物を控える『ゆるベジタリアン』から初めてみるのはいかがでしょう。ヴィーガンは無理に強いるものではなく、自分を大切にしたり、その先にある世界や大切な人を愛する気持ちの方が重要なのです。時には瞑想を取り入れてみたり、ゆったりとした気持ちをもってトライするのがベストです」
初訪問の知夏子さんが、人気メニューを網羅
ヴィーガンレストランといえば、広尾や青山など、外国人居住者の多い街にあるイメージですが、今回訪れたのは新宿三丁目。
「最初は意外な場所だなと思いましたが、よくよく考えてみたら新宿も外国人居住者の多い街。さらにいろんな国の人が多く集う多国籍エリアなので、ヴィーガンのお店が長年人気があるのも納得です」と知夏子さん。
入り口から続く階段を降りると、白を基調とした落ち着いた空間が広がっています。1階にはテイクアウトの焼き菓子やスイーツカウンターがあり、イートインスペースは地下1階と2階にも。混雑する時間帯でも、ゆっくりと食事を楽しめそう。

こちらは2階。シンプルながら居心地のいい空間は、世代を問わず好評です。
席に着く前に店内を一巡した知夏子さん。そこで、テイクアウトできるコーナーの焼き菓子に添えられたプレートを熟読。
「こちらで使っている食材には肉、魚、乳製品、白砂糖を使わないのはもちろん、自然農や無農薬の食材を、なるべく日本製にこだわって作っていると明記されています。このコンセプトは、とても大切ですよね」
さていよいよ、実食へ。1階奥のテーブル席に移動します。自然光がたっぷり入る窓際は、居心地の良い空間。まずは、ランチで一番人気のサラダ&デリランチをオーダー。
「まず最初に驚いたのが、ボリューム感! 色とりどりの旬の野菜がプレートいっぱいに盛り付けられていて、さらにソイミートの唐揚げやキッシュ、玄米と、食べ応え満点!」
「正直なところ『食べきれないのでは?』と思いましたが、心配無用でした(笑)。とにかく新鮮な野菜がとても美味しくて! プレート全体のバランスも良くて、一つひとつが味わい深いです」

季節の野菜は蒸したものからフレッシュなものまで、厳選された7種類をトッピング。さらに日替わりデリを3種類乗せて、玄米ライスもしくはバケットをチョイス。鮮やかな見た目も食欲をそそります。サラダデリランチ¥1,630
ランチセットのドリンクには、産地選びにもこだわっているという日本製のハーブティーをチョイス。ドリンクは、ハーブティーの他に、オーガニックコーヒーや紅茶を楽しむことも。ハーブティーは日によって提供される茶葉が変わります。

この日のハーブティーは月桃茶。ショウガのような爽やかな味わい。セットドリンク¥330
ランチを堪能した後は、いよいよお楽しみの、「天上のヴィーガンパンケーキ」の登場。ランチセットのドリンクとともにいただきます。
「フワッフワの生地にチーズの香りが楽しめるパンケーキ。こんなにチーズを感じるのに、乳製品を一切使っていないだなんて本当に驚き! 自家製アイスクリームやフルーツとの相性も素晴らしいです。トッピングは季節ごとに変わるので、訪れるたびにオーダーしてしまいそう」
研究に研究を重ね、卵を一切使わずにフワフワのもちもち食感を実現。季節のフルーツも添えられた、華やかで美しい一品です。
そして最後に、人気のティラミスも試食させていただくことに。

ティラミスはオンラインショップでも購入可能。4セット、6セットのいずれかを選択。4セット¥ 3,320、6セット ¥4,770(送料別)
VEGAN AWARD 2022金賞を受賞した「ティラミス」は、口に入れた瞬間にとろけるような極上の美味しさ。!
「マスカルポーネ風ソイクリームチーズの濃厚な味わいと、リキュールとコーヒーの絶妙な組み合わせ! 隠し味の伊予柑ピールで、爽やかな風味も楽しめます。VEGAN AWARD金賞というのも納得の美味しさです」
取材後は、白井さんとのヴィーガントークがさらに盛り上がり、今回もまた、たくさんの学びを得たという知夏子さん。ヴィーガンな人、ヴィーガンに関心がある人だけでなく、食事をヘルシーにしたい人、人気のスイーツを楽しみたい人にもおすすめのこちらのお店。オンラインショップも充実しているので、ぜひ一度AIN SOPH. Journeyの幸せな味を体験してみて。
「AIN SOPH. Journey新宿」
東京都新宿区新宿3-8-9 新宿QビルB1階、1階、2階
050-3503-8688
https://www.ain-soph.jp/journey-shinjuku
太陽も海風も色になる、奄美大島の泥染め【現代美術家 山本愛子 / 植物と私が語るときvol.3】
染色を中心に自然素材や廃材を使い、ものの持つ土着性や記憶の在り処をテーマとした作品を制作する現代美術家、山本愛子さんの連載 。草木染の研究にいそしむ山本さんが、さまざまな土地を訪れ、そこで出合った植物についてつづっていきます。第3回目は奄美大島の泥染めをご紹介。
風土により培われる個性
先日、ずっと行ってみたかった奄美大島へ行ってきました。北方と南方を結ぶ交流の接点「海のシルクロード」とも呼ばれる奄美大島。大島紬、泥染めなどの染織でも有名です。今回の滞在では、染色工房「金井工芸」の金井さんに泥染めを教えていただきました。

金井工芸さんで泥染めをしている様子
はじめは「泥でどうやって染めるの?」というのが純粋な疑問でした。天然染色では、「藍染め」や「タマネギ染め」のように染料にする植物が染めの名称になります。しかし泥染めの場合は異なります。泥染めの泥は、染料を繊維に定着させる役割を果たしていて、繊維を染める染料は、車輪梅(シャリンバイ)という木から煮出した色素です。車輪梅にはタンニンが豊富で、泥の中の鉄分がタンニンと反応していくことで、深い色が布に定着していくそうです。

車輪梅(シャリンバイ)の染料。名前の由来は葉が枝先に車輪のように放射状に集まり、花が梅の花に似ていることから。
金井さんの「奄美は紫外線も強く海風が強いから、シャリンバイが自身を守るためにタンニンを豊富に生成している。奄美大島の風土で強く育ったシャリンバイだからこそ、泥染めにしたときに濃く染まる」というお話が印象的でした。風土と色彩の関係を、現地で日々感じ取っている金井さんの言葉は心に響きます。

シャリンバイのチップ。車輪梅の木を砕いてチップ状にして煮る。

煮出したばかりのシャリンバイの染料液。まろやかないい香り。
奄美大島を訪れ、私の肌も焼けました。海風が肌や髪に刺激を与え、ここに住んだら皮膚が強くなりそうだなと感じました(笑)。夜ご飯には地魚の美味しさが胃袋に染みました。植物も、私たち人間も、外の環境によって中身が培われていくのだなぁとひしひし感じます。「紫外線と海風が車輪梅のタンニンを増やしているんだ」と聞いたとき、目に見えないことでよく実感が湧かなかったけれど、染色によってそれが目に見える形になったときに、「あぁ、これが奄美の自然が生んだ色なんだな」と腑に落ちる瞬間があったのです。

染まったTシャツ。上半分が車輪梅のみで染めた色、下半分だけ泥に浸けて、泥染めにした色。
染色は私に旅をさせてくれます。作業をするために手を動かし、原料を見るために足を運び、さまざまな土地に向かわせる旅。そうして染まった色を見て、車輪梅、泥、紫外線、海風などの自然を感じる心の旅。
奄美大島にはこの秋にもう一度行き、さらに現地の染織と植物についてを深堀りしていくのでまたお付き合いよろしくお願いします!

今回の滞在先である放浪館からの奄美の風景。
感動の瞬間をどれだけキャッチできるか。それが人生の原動力【シンガーソングライターAK Akemi Kakiharaの衣食住遊学】
いつも元気で幸せそうなひとは、自分の周りに“楽しいこと”を育てる種をまいています。そんな魅力的な方にHummingなライフスタイルのトピックスを伺うシリーズ記事「わたしの衣食住遊学」。今回は、NYを拠点に世界デビューを果たし、多岐にわたり活躍するシンガーソングライターAK Akemi kakiharaさんに登場していただきました。
いつまでも新しい夢に向かって前に進みたい

東京お台場で開催されたBody & Soulでの凱旋ライブの様子。
日本で作詞作曲家、アーティストとして成功を手にしながらも、新たな挑戦を求めてNYに移住。今、世界を視野にシンガーソングライターとして活躍するAKさん。この春にリリースされた新曲の「Beautiful You」もヒット中で、その透き通る歌声とオリジナリティ溢れるメロディが多くの人々を魅了しています。楽曲制作やレコーデイングと、多忙な日々を送るなかで、東日本大震災の追悼式展を主催したり、アフリカ難民の子供たちへのサポート活動を精力的に続けています。そんな彼女に、人々に癒しをもたらしながら、自身も日々を豊かにと心を砕く日常について伺いました。
「衣」
まとうことでもらえるエネルギーを楽しむ

肌ざわりのいいレースで着心地がすごく良く、シルエットもお気に入りだという、セルフポートレートのドレス。繊細なレースやメッシュを使ったフェミニンなスタイルが得意なブランド。© Romi Uchikawa
服が大好きで、白やピンク、ナチュラルな色のものを着ることが多いです。年齢を重ねるほどに、一生のなかで自分が着こなせる服の数は限られていくのだと思うと、もっとおしゃれを楽しみたい、いろんな色やデザインにチャレンジしてみたいと思うようになりました。
服選びの際には、オーガニックコットンやリサイクル糸を使っているかなど品質や素材も必ずチェックしますが、まず第一に、試着したときの肌に触れた感じ、服の質感や着心地にこだわっています。何よりも、着たときに自分がどう感じるかを大切にしたいのです。
フッションには、80年代、90年と、年代によってその時々の流行りがあったと思いますが、今の時代はいろんなものがミックスされていて、今までだったらこれは選ばなかったなというようなアイテムにもトライしてみたいと思うようになりました。

ブラウスは、NYを拠点に活躍中のデザイナーキャロライン・コスタス。遊び心のあるバルーンスリーブが目を引く。素材も気持ち良く、ほどよいストレッチの効いたパンツはラグ&ボーン。レコーディング中は長時間缶詰になるので、着心地の良さは必須。服はそのときに創っている音楽の雰囲気や歌詞に没入しやすいアイテムを自然に選んでいることが多いそう。
以前だったら、このデザイナーのこのデザインがカッコいい、おしゃれとかそういう目線だったのが、最近は、デザイナーの気持ちとか、その服が作られた背景に興味があります。デザイナーがどういう気持ちでこの服を作ったのかを、考えながら着るのも楽しい。
服も音楽も、ものを“つくる”という意味では過程は似てると思います。まっさらな白いキャンバスの上にアイデアを重ねて、思い描いているものを形にしていく。デザイナーが服を作っているときの背景を想像したり、作り上げたときの喜びやエネルギーが伝わってくると感動します。
「食」
料理を作ることは癒し、もてなすことは歓び
友達を招いてディナーパーティーを催すこと、誰かのお祝いごとをホストしておもてなしすることが大好きです。テーブルセッティングはパーティーのコンセプトによって変わりますが、どんな構成にするのかを考えるのも楽しくて!
とにかく料理すること自体も大好き。仕事柄、曲の制作に没頭していることが多いので、その間は集中するし、緊張が続きます。どこかでブレイクを取りたいときに、料理することが最大の息抜きでもあり、癒しの時間。とにかく無心になれますね。

アスパラガスのスープ。野菜を中心にできるだけ旬のものを使い、ヘルシーであることをベースにしているそう。
食べるものが体をつくっていると信じているし、美味しくてヘルシーなものを食べて健康になれるなら最高でしょ? せっかく自分の手で作るならば、できるだけヘルシーなものにしたいと心がけていて、オーガニック、ヴィーガン、グルテンフリーの素材を積極的に取り入れています。
材料は、基本的に野菜が中心で、どれだけフレッシュでナチュラルなものを自分の体に取り込めれるかを常に考えています。油はオリーブオイルがメイン。塩、砂糖はできるだけ避けて、水はたっぷり摂ります。

パーティーのテーマに合わせてケーキのデザインもAKさんが考案。写真はマシュマロを使い、ウサギをデコレーション。中にはピーチコンポートのサプライズを。
友達や家族を私の料理でおもてなしするのは、至福の喜びです。「ひとと一緒に食事をすることはすごく大事なこと」と、とあるひとから言われたことがありましたが、本当にそうだなと実感しています。私の作った料理を食べて「美味しい」と言ってもらえることと、私の音楽を聴いて「癒されました」って言ってくれることは一緒。ひとを幸せな気分にできたら、私自身が幸せなのです。
「住」
五感に響く、自然からのインスピレーション
ニューヨークから飛行機で45分、ナンタケット島というマサチューセッツ州の東海岸沖に小さな島があります。NYで生まれ育った夫(ダニー・クリビット)が、子供のころから夏を過ごしていた島で、ダニーのママであり、私の義理の母が移住したこともあり、今も時間ができると年に一、二度は必ず訪れています。古き良きアメリカという雰囲気で、自然あふれるのどかな島。

ナンタケット島の代表的な家屋。木の温もりを感じられる造りで、配色は白、グレーなどナチュラル系。ノスタルジックな自然に溢れていて、美しい草木、花に囲まれている家が多い。写真の白い花は、AKさんが大好きなライム・ハイドレンジャー(ライム色の紫陽花)。
私は『Summer of 42』(邦題『おもいでの夏』)という映画の世界観が大好きで、ナンタケット島はそのロケーションと似ているんです。映画の舞台はニューイングランドの島なのですが、ナンタケットも“南のニューイングランド”と言われているんですよ。美しい水と砂浜、そして、メインの街並みは石畳でとてもノスタルジック。薬局やジューススタンドも、どこか懐かしい風情です。そんな、自然とノスタルジックが融合した世界観は、私の故郷を思い出させて、どこか懐かしく、切なくもあるのです。
私が生まれたのは、広島県福山市の駅家町というところで、家の周りには自然がいっぱい。山と川、そして緑に囲まれて育ったので、ナンタケットにいると子供時代の思い出がよみがえります。自然と親しんで育った私には、花の香り、海の香り、自然の音や風、太陽の光ーーがとても必要だと感じています。

NYブルックリン、ウイリアムズバーグにある自宅の窓からの眺め。目の前にはイーストリバーが広がっています。
小さいころには、れんげを摘んで首飾りを作るとか、干し草を積んでベッドでにしたり・・・そういうときの匂いや感触は、私の五感に大きく影響していて、記憶に刻まれています。自然が私の心に与えてくれるインスピレーションはとても大きいのです。NYにいても、無意識に空を見上げたり、自宅の窓から目の前に広がるイーストリバーの景色を飽きることなく眺めたり、川の流れや光や風を感じて生活しています。
「遊」
音楽は私にとっての心の遊び場

ブルックリンのウイリアムズバーグにて。撮影の合間に、置かれていたストリートピアノを見つけて弾き始めるAKさん。 ©Romi Uchikawa
映画音楽やジャズが好きな父の影響で、家には音楽が溢れていました。5歳からエレクトーンを習って、『シェルブールの雨傘』や『男と女』などの映画音楽を弾いて、ちょっとおませな子供でした。私が8歳のときに、クロスオーバーと呼ばれたエウミール・デオダートの『プレリュード』を父が買ってきて、そのアルバムを聴いたことが私の運命を変えました。深く心を打たれて、“私もこんな曲を創りたい!”と思い、8歳からエレクトーンで曲を創り始めました。創った曲はボサノバ。デオダートにそっくりな曲でした(笑)。

NYにあるマスタリングスタジオ「Sterling Sound (スターリングサウンド)」でレコーディングの最終プロセス、マスタリング中の一枚。
そのころはまだ、将来音楽が仕事になるなんて思ってもいなくて、ただ“こんな曲を創りたい”という気持ちで心の赴くままに創っていました。詩は10歳くらいから書いていて、中学3年の時には“将来はシンガーソングライターになりたい”と決意。高校の学祭などでパフォーマンスもするようになり、日芸(日本大学芸術学部)の大学3年、21歳でデビュー、それまで書き留めていた曲でデビューアルバムをつくりました。
私には、音楽を創ること = 仕事という感覚はあまりなかったですね。音楽は好きだし、曲を創ること自体も好きで、気が付いたらそれが自然に仕事になっていました。音楽って「自分が楽しめないと人にも楽しんでもらえない」と思っているので、まずは自分が心から大好きと思えて、楽しめることが大事だと思っています。

写真奥は、夫でDJのダニー・クリビットさん。
「楽しい」「切ない」「うれしい」「悲しい」「幸せ」ーーそういうすべての感情を音楽で表現できる。そして、その音楽を奏でてるとき、聴いてるとき、その感情に浸れるのです。
例えば、ダンスミュージックを聴いてると自然に踊りたくなるし、ロマンチックな曲を聴いてると恋心をくすぐられて、誰かに恋をしたくなるかもしれない。音楽には心を豊かにしてくれる魔法がいっぱい。心のビタミン剤でもあり、エモーションの宝庫であり、音楽は私にとって「心の遊び場」のようなもの。そして、曲を創るためのレコーディングスタジオは、フィジカルな遊び場という感じかな。
「学」
子供たちから気付かされる夢と可能性の大切さ

アフリカ、ガーナのボナイリ村にあるMY DREAM.org(mydreambridgethegap.webs.com)代表 原ゆかりさんが作ったMY DREAMスクールの子供たちと一緒にコンサートをするAKさん。
東日本大震災がきっかけで、それ以降、被災地を何度も訪問してボランティアとして現地に出向いてコンサートを行いました。そこで、子供たちとの触れ合いを続けるなか、もっと彼らを支援したいという気持ちが芽生えて、2013年に「I FOR DREAM」というプロジェクトを立ち上げました。それが、私の「世界中の子供たちの夢とモチベーションを育てる支援」の始まりでした。
そんな折に、子供支援への情熱を分かち合い、DREAMという共通のテーマでアフリカの子供支援をしている元外交官の原ゆかりさんと出会いました。そしてアフリカの子供たちのために曲を創る機会をいただいたのです。
世界の子供たちの未来が、家族、友達、愛、そして、感動の瞬間であふれ、夢が叶うことを願って、「夢は叶う」というメッセージを込めた『MY DREAM』という曲を完成させました。そしてこの歌を通して、世界の子供たちをつなぐ「MY DREAMソングプロジェクト」を展開しました。
アフリカのボナイリを訪問したとき、無垢で純粋な子供たちがとても生き生きとしていて、喜びと幸せが溢れていることを感じました。誰かと自分を比べることもなく、困難な状況や過酷な環境であっても、そこにあるもの、自分の周りにあるものを素晴らしいと思える気持ちで満たされている。どんな場所からも、アイデアと情熱と実行力があれば、何かを生み出すことができる。物事は、捉え方一つであり、夢や願いごとは叶えることができるのだと気付かされました。
有名な例え話ですが、コップの水をこぼしてしまったときに、残った半分の水を見て「半分しかない」と思うか、「半分も残っている」と思うか。私はできるだけ「半分もある」っていう気持ちでいたいというのが根底にあります。人生はその人の感じ方や捉え方次第で、幸せだと感じるか否かも、そのひとの心の判断次第。何事もポジティブに捉えていきたいと思います。
ボナイリの子供たちにとって、夢や可能性を持つことが、希望の原動力になっているのを見て、いつまでも夢に向かって前に進み続けるということを彼らからも学びました。そして、諦めずに前に向かって進んでいくことで、幾つになっても学びを得ることができるのだと思っています。

被災地でもあった福島県相馬市、みなと保育園の園児たちと。”夢はきっと叶う”というメッセージを込めた『My Dream』という曲を創り、コンサートを開催。
私の人生で大切にしているものは、家族、友達、愛、そして感動の瞬間をどれだけキャッチできるか。大切なひとたちと分かち合う貴重な体験や時間を幸せだと感じることができるのも、自分の心がそれを幸せだと感じるチカラがあってこそ。感動をキャッチできるかどうかは、自身の感受性次第ですから。自分自身や心の在り方をどのように保ち、成長させるか。私にとってそれは一生の学びです。
音楽の才能を最大限に活かして、ひとを癒し、ひとを癒すことで自身が癒され、喜びを見出しているAKさん。その姿が、衣食住遊学のすべてを大切に、“感動すること”に積極的であることが、日々の充実と幸せにつながることを伝えてくれます。あらゆる感情を表現できる音楽で、彼女が世界に向けて語り掛けるメッセージにも注目していきましょう。
農でマインドフルになる【イケてる八百屋「イケベジ」の農日誌 vol.2 】
新潟県・佐渡島と兵庫県・淡路島を中心に自然栽培農家を営む「イケベジ」。今回はイケベジ発起人の一人、いもたろうさんが畑を営むことで体験したこと、学んだことをお届けします。
畑はわたしに還る場所
僕にとって畑は自分に還れる大切な機会を与えくれる場所だな~と感じます。なんせ畑はそこで生きるすべてのいのちがありのまま。例えば、人参の種はかぼちゃにはならないでしょうし、ジャガイモの種からは大根にはなりません。人参は“にんじん”らしく。ジャガイモは”じゃがいも”らしく、畑で生きるたくさんの命と共生しながら育まれています。そこに人が関わらせていただくことでそれぞれのお野菜が持つ本来の姿が引き出され、非常にエネルギッシュで豊かな味わいになります。
僕は人も同じように考えていくと、本当に多くのご縁を自然や人、社会からいただきながらわたしと世界が育み合ってきたからこそ、“今”この瞬間のわたしが在るのではないかと思います。自身だけでは育めないことに気がつくと目には見えないけれども、確かにあるつながりや巡りに自然と感謝の気持ちが湧いてくるんです。自然界はそれぞれ違う個性を持った生物たちが、ありのままで生命活動していて、互いを助け合い高め合いながら生きています。そんな豊かな循環のリズムのなかでずっと地球を育んでくれたおかげで今のわたしたちがあります。
人間のお仕事は“手入れ”
自分の畑というよりもお邪魔しているような感覚が強いんです。ただ、「置かれた場所で咲きなさい」という言葉があるように、本来植物は種が芽吹いてから種になるまでの一生をその場で過ごしますが、より良い環境を植物自体が選択したり“手入れ”することはできません。僕らが栽培活動を通して、やらせていただくことは生産物のみならず、その場で生きるすべてのいのちが“より”心地良く生きるために環境を整えること=手入れなのではないかと思います。例えば最初の畑の状態を観察しながら、微生物がより活性化しやすくするために籾殻を土の中に混ぜたり、耕すタイミングを慎重に見極めたりします。
そのなかでも苗を植える作業は植物にとって、最初で最後のお引越しで非常に繊細な行程の一つです。苗トレーからフォークを使いながら大切に一株ずつ取り出していきます。そして畝に等間隔で苗に合う大きさ、深さの穴をあけ、新たな根が地中に拡がるように少し苗をほぐしてから畑の土と馴染むように植えていきます。
土に触れる、いのちを育む
僕は土に触れる、いのちを育むことで循環の一部を担い、食を本来ある豊かなものへと還すことができると思います。それは同時にわたし自身に還るということにもつながってきます。まずは身近で出来るところから! いきなり畑を営まなくても、プランターでお気に入りのお野菜を育ててみるところから始められても良いと思います。都会にお住まいでお忙しい方は季節ごとにご縁のある農家さんのところへ足を運び、生きた土に触れる体験をすることもとっても素敵です。もちろん淡路島や佐渡島にあるイケベジも大歓迎です! 農や食を通じて心も体も豊かな暮らしを育んでいきましょう!
Profile
いもたろう
イケベジ発起人、育み人。淡路島で「農」を通じて多くの「いのち」に触れる体験から、人も同じようにありのままで生きていくことで豊かになれると思うようになる。2021年春、友人とともに人も自然も共に育む場「イケベジ」をスタート。大学での講演活動や「命の繋がり・巡り」をテーマにした「育ベジRetreat」などありのままで生きる世界を広める活動を続けている。実は料理好きで、マクロビを取り入れた「いも飯」はイケベジの人気コンテンツ。
https://ikevege.com/
森カンナ「なぜ年齢に縛られているのだろう」【連載 / ごきげんなさい vol.10】
俳優 森カンナさんが日々の生活のなかで見つけたこと、感じた想いを綴る連載エッセイ「ごきげんなさい」。自分を“ごきげん”にするためのヒントを探しましょう
「歳の数」
あるときふと自分の名前がネットニュースに上がっているのを見つけた。
森カンナ(34)が〇〇〇〇(30)と〇〇〇〇(45)にどうたらこうたらみたいな感じで名前の隣に丁寧に年齢をご紹介してくれていた。
思えば、日本のメディアはほとんど、人の名前と一緒に年齢が表記される。海外では考えられないことだろう。
一体なぜ日本人はこんなにも年齢に縛られているのだろう。
確かに、日本語にはものすごく細かい敬語がある。
この人には敬語を使うべきなのかタメ語でいいのか。という精査をしなければならないのも分かる。だがそれと、この日本人の何ともいえない、年齢に囚われている感は別だと思う。
この話をアメリカ人の友人に話してみた。
友人もずっと不思議に思っていたらしい。「日本人は気付いてないと思うけど、とにかく年齢の話が好きだよね〜」と・・・。
確かに、アラサー、アラフォー、アラフィフ、美魔女、イケオジ、結婚適齢期。みたいな年齢にまつわる不思議な言葉もたくさんある。
ドラマや映画でも、35歳崖っぷちヒロイン!運命の相手が現れるのか!?-ーみたいなのもよ〜く目にする。いや、まったくもって崖っぷちではないだろ・・・と思いながら、日本のこのロリコン文化にうんざりしたりする。
年齢を重ねることで人は成長するし、経験も積める。幅も視野も広がる。なのに何故、生きた年の数字が増えていくだけのことを、こんなにもネガティブに受け止めている人が多いのか。
私はそんなことを気にするよりも、年齢を重ねるにつれて滲み出てくる人相を気にした方がよっぽどいいと思う。
政治家の方でも政治家になりたてのころと現在の人相の違いに驚くことがある。
年齢を重ねるたびに、心のなか、魂がどんどん目や口の外側にあらわれ出す。どんなに取り繕ろっても、いろんな手段で顔年齢を巻き戻そうとしても、滲み出ているので嘘はつけなくなると思っている。
自分自身でもパッと鏡に映った顔を見ると、おっ良い顔をしてるじゃん!ってときと、何というひどい顔をしていたんだ!とびっくりするときがある。
何歳からおばさんかしら?なんて考えるより、毎日気持ちよく、“良い顔で生きるには”を考えて、年齢を重ねていきたいものだ。
それではごきげんなさい(^_^)

私の友人の菊乃、堺小春姉妹の母の岡田美里ちゃん! いつもキラッキラな笑顔で出迎えてくれる。こんなふうに歳を重ねていきたいと、会う度に思う。本当に素敵な人だ。
Profile
森カンナ(もりかんな)
俳優。富山県出身。映画やドラマなど数々の作品に出演。2021年には、自身初舞台となった蓬莱竜太演出『昼下がりの思春期たちは漂う狼のようだ』で、600人のなかからオーディションによって選ばれ、観客を魅了した。2022年は、フジテレビ4月期月9ドラマ『元彼の遺言状』1話・2話にゲスト出演、フジテレビ2週連続ドラマ『ブラック/クロウズ~roppongi underground~』にレギュラー出演。そして、先日スタートした7月期カンテレ月10ドラマ『魔法のリノベ』にも1話ゲスト出演した。
https://kannamori.com/
Instagram @kanna_mori
どのように人生を送りたいのか、考えてみたくなる【小泉里子 / 未来に続くBOOKリスト vol.10】
あなたの本棚には、これからの人生で何度も読み返したい本が何冊ありますか? モデル 小泉里子さんの連載エッセイ「未来に続くBOOKリスト」。読書好きの里子さんが、出合ってきた本のなかから“ずっと本棚に置いておきたい本”をセレクトしてご紹介します。
BOOK LIST_10
『金持ち父さん 貧乏父さん アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』
ジャンル=人生論・教訓 ロバート・キヨサキ、シャロン・レクター 著 白根美保子 訳/筑摩書房
今までご紹介してきた本とはまったく路線が違いますが、世界的に大ヒットした一冊。すでに読んだという方は何となく男性読者の方が多いかなと思いますが、今月はこの本を紹介します。
主人から薦められたときに、タイトルを耳にして「金持ち倒産、貧乏倒産」だと思い込んでしまって、何度聞いてもそのフレーズが頭をよぎ ってしまうのですが(笑)。著者のロバート・キヨサキさんは、“勉強をして良い大学に入り、良い会社に就職することが金持ちになる道だ”と実の父から教えられてそう思っていたけれど、友人の父親から“実はそれは貧乏への道なんだ”ということを知らされます。
この本でいう「貧乏父さん」とは、自営業や会社員。そのなかには会社経営者や医者なども含まれます。一見お金持ちそうなのにと思いますが、実はそうではないということ。働いているうちはお金が稼げるけれど、仕事時間に追われて自分の時間がなく、常に頭も体も動いていて、そして働かなくなったら稼ぐことが出来なくなる。
対して「金持ち父さん」は、いかにして働かずにお金を稼ぐか。何とも夢見たいなお話ですが、これを実現するために勉強し、そのためにお金を使うのだということ、自分が働くのではなく、お金に働いてもらうのだと。
私が学生のとき、お金について勉強をするだなんて考えもしなかったけれど、近年では学校のカリキュラムとして取り入れられつつあります。学生のときからお金についての知識を学ぶことができれば、これからの未来、みんなの働き方が変わってくるかなと思います。もし私の時代にもそんな授業があったら、今とは違う、何かもう一つの選択があったのかもしれないなと思うのです。
そして、モデルという職業は完全に「貧乏父さん」に属します。仕事のオファーがあればその分だけお金も稼げますが、仕事がなかったらそれまでです。何の契約もなく、毎月の収入も変わる。この本を読めば読むほど、なんて不安定な職業なんだということを思い知らされます(笑)。現に子育て中の今は、仕事をしていないので、収入はゼロです。
若いときにこの本を読み、学んでいれば、こんなときのために何か蓄えられたんじゃないかな・・・と思うのですが、でも遅ればせながらこんな状況の今、私なりのお金の勉強はできているなと思います。とはいえ今までに後悔はなく、これからもきっと私の選択は、お金よりも“好きなこと”を優先して選んでいくのだと思います。
男性と女性ではお金への考え方が少し異なる部分があるのかなと思っていて、この本を読んで、男性の考え方を少し理解できた気もします。そして、全く違う2種類の父さん像は、これからも変わることなく存在し続けるのではと思います。
私の父もまた自営業で、ここでいう「貧乏父さん」に属します。常に仕事をしてきた父。家族を養うために働き、頑張ってきました。今も現役でやっておりますが、その姿は頼もしくかっこいいです。なかなか家族旅行にも思うように行けなかったりもしたけれど、家で楽しむ術は存分に教わりました。父が忙しいときはみんなで手伝い、それもまた社会勉強になっていたと思います。貧乏父さんだからと言って、決して心が貧乏なわけではありません。
この本でもそんなことをいっているのではなく、単にお金の動きを分かりやすく解説してくれています。自分がどちらに属するのか、これから先の未来、どのように人生を送りたいのかを考えてみたくなる本です。
私の父のように職人肌な父さんも素敵だと思うし、また最先端の情報を常に更新しながお金と向き合っていく父さんも素敵だと思います。
余談ですが、今住んでいるドバイでは、圧倒的に「金持ち父さん」が多く占めているようです。なぜなら、暇そうにしているリッチな人が多いから(笑)。
『金持ち父さん 貧乏父さん アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』(かねもちとうさん びんぼうとうさん あめりかのかねもちがおしえてくれるおかねのてつがく)
日本で累計410万部、全世界では累計4,000万部を突破(版元ホームページより)している「金持ち父さん」シリーズの1冊目として、日本では2000年に刊行されたベストセラー本。教えの書と実践の書から成り、読者のお金感を変える、わかりやすいアドバイスに満ちた内容。2013年に改訂版が出され、現在も売れ続けているロングセラー。
Profile
小泉里子(こいずみさとこ)
15 歳でモデルデビュー。数々のファッション誌で表紙モデルを務め、絶大な人気を誇り、広告やテレビ番組でも活躍。着こなすファッションはもちろん、ナチュラルでポジティブな生き方が同世代の熱い支持を得ている。2021年2月には第1子となる男児を出産し、同5月より生活の拠点をドバイに移す。ドバイでの生活や子育てにもさらに注目が集まっている。仕事、プライベート、ドバイでの生活を綴った著書『トップモデルと呼ばれたその後に』(小学館)も好評。
http://tencarat-plume.jp/
Instagram @satokokoizum1
ぽっかり空いた時間と心の隙間【山口乃々華 / コトノハ日和 vol.06】
言葉があるから伝えられること、伝わること。そこから広がっていく思考、癒し、つながり、希望、愛情・・・深くて力強いもの。女優 山口乃々華が、心に舞い落ちてきた“コトノハ(言葉)”を拾い集めて、じっくりと見つめ、ゆっくりと味わい、思いのままに綴っていく連載。さあ、一緒に元気になりましょう。
誠実と正直は違う
7月、夏真っ只中。アツい夏になるぞ〜と意気込んでいましたが、出演する予定の舞台が新型コロナウイルスの影響により全公演中止となりました。カンパニー全員で力を合わせてきたものが、お客様に届けられず、完成されない歯痒さ、悔しさが私のなかにこもっていた熱をさーっと冷ました。こればかりは仕方ない、仕方ないのだけれど。
こういった経験は、あまりしたくないなと思った。このコロナ禍でたくさんの人が同じような、それよりもっと大変な、生活に支障をきたすほどの問題を抱えて、やるせない気持ちになっていただろう。
こんなことに“慣れる”なんて、あまりに辛いけれど、強くならねばやっていけなかった人もたくさんいるだろう。すでに”あるある”と化したこの状況、乗り越えていくしかない。
そう思っていた矢先、今回共演していた先輩から、メッセージが届いた。
「残念なことになったね。でも大丈夫よ、きっとまたみんなで作品を作れるはず!」と本当はもっと長文だったけれど、こんな雰囲気の優しい言葉をいただいた。
この作品には関わりのない人からもいろんな言葉をかけてもらって、とても励まされた。
”同じ気持ちだよ”が本当に同じだと感じるときと、例え違っていても、元気をくれようと私の心に寄り添ってくれたときがあるけれど、どちらも温かいなぁと思う。みんな優しい。
私は、ぽっかり空いた時間をどうにか埋めようと部屋を見渡した。まだ読んでいない本がたくさんあった。うちの本棚は、いただいた本と私の好きな作家さんの本といろいろごちゃ混ぜになっていた。そんななかから気になったものを手に取って、パラパラとめくってみた。
『降伏の記憶』植本一子さん。
この本、とっても分厚い。なんだか気になる。そう思った私は本格的に読んでみることにした。
淡々と、本当に正直なままの言葉が並んでいて、日記のように綴られた一冊だった。そんな文章を読んでいると、体温まで伝わってくるようで、人間の体温ってだいたいみんな一緒なんだなぁと安心する。見えないところがそんなに違わないのなら、人を冷たいと感じたり、温かいと感じたりする、心の感覚だってそんなに違いはないのかもしれないと思う。わかりあうことは難しくても、同じように思う、ということが私は一人じゃないんだ、と感じさせてくれた。
それにしても、私は、今生きているこの世界をこれほど正直に捉えられるだろうか。生きやすいように、装飾してばかりな気がしてきた。
人間関係においては、なるべく人を嫌いにならないように、という気持ちが働く。少し嫌だなと思っても、あまり気にしたくない。誰かをものすごく嫌いになると、私の世界が暗くなり、どんどん性格が悪くなっていく気がする。しかし、一番の理由は、どうしようもなく自分が傷つきたくないだけなのかもしれない。
この日記には、物事や人への下心も、隠すことなく書かれているように感じた。私は、下心をなるべく隠したいと思ってしまう。心の奥底で思っていることがバレバレなのは、恥ずかしい。それに、なんだか欲望っていけないもののように感じてしまう。
最初はそんなふうに捉えていた”下心”だけれど、段々と決して悪いものではないと思った。だからこそたどり着ける真実があったり、自分の心に一番近い声だったりするよなぁと思った。素直な気持ちを伝えられる間柄の人が多くなれば、もっと世の中に許されたように感じるのではないだろうか。その世界はきっと居心地がいいだろう。
しかし、この本のなかに“誠実と正直は違うと思っている”という言葉もあって、間違えてはいけないなと思った。
自分勝手な意見ばかりを伝えては、相手への思いやりを忘れてしまうだろう。私は傷つきたくないし、傷つけたくもない。相手と対話するとき、私自身が誠実であれば、正直な心だって棘にはならないだろう。
降伏の記憶ー-誰かを求め、自分のなかを答え合わせしていく植本さんの日々に私も重なるものがあった。
自分の生活とは違う、他人のリアルな日々。それを読むことは、たとえ筆者と会話することができたとしても、それよりも近く、深く、肌感覚的なものまで感じられる気がする。不思議。
そして、“本のなかの他者の生活”に私の心を一瞬でも置けることが、ポカンと空いた心の隙間を埋め、救いになったりする。
居心地の良い世界が、読んでいる時間にはあった。
ただ読んでいるだけの私だけれど、受け止めてもらえたような気持ちになった。
Profile
山口乃々華(やまぐちののか)
2014年からE-girls主演のオムニバスドラマ「恋文日和」第7話にて主演を務め女優業をスタート。映画『イタズラなKiss THE MOVIE』シリーズ、ドラマ・映画『HiGH & LOW』シリーズほか、2020年には『私がモテてどうすんだ』のヒロイン役など、数々の作品に出演。 2020年末までE-girlsとしての活動を経て、2021年より女優業として本格的に活動を開始。2021年3月、初のミュージカル『INTERVIEW~お願い、誰か助けて~』、同8月にはミュージカル『ジェイミー』、2022年3~4月はミュージカル『あなたの初恋探します』でヒロインを演じた。ドラマは現在「ビッ友×戦士 キラメキパワーズ」(テレビ東京系)に出演中。書籍『ののペディア 心の記憶』(幻冬舎文庫)も好評で、文章を書くことも好き。2022年10月にはconSept Musical Drama #7『SERI〜ひとつのいのち』でミュージカル初主演を務める。
https://www.ldh.co.jp/management/yamaguchi_n
Instagram @yamaguchi_nonoka_official
藍で染める《 Waiting for Others − 青の環 》が生まれるまで 【現代美術家 山本愛子 / 植物と私が語るときvol.2】
染色を中心に自然素材や廃材を使い、ものの持つ土着性や記憶の在り処をテーマとした作品を制作する現代美術家、山本愛子さんの連載がスタート! 草木染の研究にいそしむ山本さんが、さまざまな土地を訪れ、そこで出合った植物についてつづっていきます。第2回目は北海道美瑛町よりお届けします。
北海道から藍の魅力を発信!
前回のコラムでは、私のお庭で育てている「藍」のお話でした。その藍がはるばる旅をして新たな文化を育みはじめています。
2022年7月7日、明治40年から続く染物屋の水野染工場が手掛ける、北海道美瑛町に「藍染結の杜(あいぞめゆいのもり)」という藍の魅力を発信する文化複合施設がオープンしました。この施設では、藍染め体験にはじまり、美瑛で栽培した藍の葉を使ったお茶やクッキーなどを楽しめます。プレオープンには地域の方々や関係者、約150人が来館し賑わいました。

〈写真左上から時計回り〉藍染結の杜外観、藍クッキー付き美瑛牛乳ソフト、藍染した布、藍とドライフルーツのスコーン
この藍染結の杜で栽培されている藍の元の種が、私のお庭の藍なのです。小さな庭から生まれた藍が、美瑛町の広大な畑で育まれている様子をみて、とても感動しました。気候的に本州でしか育たないのではと勝手に思っていましたが、北海道の気候でも元気に育っていました。

美瑛で育つ藍畑
そもそも何故、私の藍をお譲りする経緯になったかというと・・・水野染工場の東京店舗で、藝大生時代にアルバイトをしていたのがきっかけなのです。その後私はアルバイトを卒業して中国杭州に行くのですが、帰国してしばらく経った頃に「藍染結の杜」の構想段階でお声がけいただきました。それが丸2年前です。現在は、施設全体のコンセプト作りの協働、アート作品の提案・制作・設置、藍の教科書の監修をさせていただくなど、より専門的な立場で関わっています。アーティストとしての立場を尊重されたうえで、企業と協働させていただけることは私にとって大変ありがたく貴重なことです。きっと私だけではなく、現代のアーティストにとっての大切な一つの事例なのだろうと思いながら、この仕事に携わっています。

私が手掛けたコンセプトボード
オープンと同時に、施設内の丘に設置した作品《 Waiting for Others − 青の環 》をご紹介します。施設の裏には、絶景が一望できる丘があるのですが、その魅力はなかなか気付かれず、上まで登る人が少ないことが課題でした。そこで丘にのぼるきっかけを作りたいと社長からご相談をいただき、丘のてっぺんに「座れる作品」を作りたいです!と提案をして生まれた作品です。

《 Waiting for Others − 青の環 》完成。丘の風景と作品
丘の斜面に合わせて段上に設置した、循環を表す円形の椅子。座面の木材は藍染めです。パーツごとに取り外せるように設計し、パーツの一つひとつを美瑛町内の方々と一緒に藍染めしました。そして50名以上の方と一緒に染めた共同作品が、美瑛の丘に生まれました。タイトルの《 Waiting for Others − 青の環 》は、この椅子に座り、他者(自然)を待つ場所になってほしいという願いを込めて名付けられました。

椅子の木材を美瑛の人たちと染める様子

染めた木材を設置する様子
藍を栽培し、染めて、食べて、飲んで。座って景色を眺め、自然との出合いを待つ。
藍を全身で味わえるこの場所が、これから多くの人に愛される場所になることを願っています。

美しく染まった木目
藍染結の杜
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