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ナラティブとは?ナラティブアプローチを利用して良好な関係構築

 

ナラティブ(narrative)とは「物語」という意味を持つ単語ですが、ビジネスシーンでしばしば使われる言葉でもあります。

 

ナラティブの考え方を用いることで問題をスピーディに解決できるようになるほか、対人関係を円滑に保つためにも重要です。

 

いかなるコミュニティに属する場合でも、ナラティブアプローチを利用し、誰もが活動しやすい環境を整えてみてはいかがでしょうか。

 

今回はそんなナラティブがどのように生まれ使われるようになったのか、歴史から理解するためのポイントまでを総合的にご紹介します。

 

実際に生活の中でナラティブアプローチを利用すべく、基本的な流れについても学んでおきましょう。

 

ナラティブの意味は?

 

ナラティブとは、日本語に訳すると「物語」という意味があります。

 

私たちがイメージする童話のような物語とはいくつかの違いがあり、耳にしただけでは理解が難しい場合もあるでしょう。

 

まずはナラティブの本質的な意味と、同じく物語という意味を持つ「ストーリー」とは何が違うのかをご紹介します。

 

ナラティブの概要

ナラティブという言葉は、ビジネスシーンや医療現場など様々な場面で使われています。

 

職種によっては聞き慣れない場合もありますが、本来はどのようなシーンにおいても活用できる考え方といえるでしょう。

 

大まかな意味は知っていても、実際に生活の中で活用できている人は少なく、まだまだ浸透しきっていないのも特徴です。

 

ナラティブの語源はラテン語であり、話す・関連づける・説明するといった意味を持ちます。

 

つまり、ビジネスシーンや医療現場においては、ナラティブ=物語の力を使って他者へ分かりやすく物事を説明し、購買意欲を掻き立てたり、自分に合う医療を選択しやすくしたりできるのです。

 

ナラティブを利用する側は自分の主観ではなく、俯瞰的な視点で説明ができるため、自分の理解を深められるのもポイントといえるでしょう。

 

ナラティブアプローチを用いて説明すると、製品やサービスの概要を淡々と説明するのに比べ、相手の心が動きやすいという特徴があります。

 

多くの対象に対して一貫した説明をするのではなく、目の前にいる相手のことだけを考えて話ができるのもメリットの一つです。

 

ナラティブとストーリーの違い

ナラティブと同じような意味を持つ単語として挙げられるのが「ストーリー」です。

 

どちらも物語という意味を持ちますが、両者には明確な違いがあるため、改めて確認しておきましょう。

 

ストーリーとは、起承転結がハッキリしており、主人公視点で進む物語を指します。

 

私たちが普段から触れている小説や漫画・映画などは、ストーリーを意識して作られているものが多いでしょう。

 

主人公視点での世界観は誰が見ても同じように捉えられやすい一方、主人公以外のところで起きている物事に関しては理解が及びにくいというデメリットがあります。

 

一方のナラティブは、主人公を含めた出来事の全てを俯瞰的に見ながら、話し手と聞き手が同時に物語を追っていくのが特徴です。

 

これから先の未来に何があるのかは分からず、話が進むにつれて様々な事象が明らかとなります。

 

ナラティブはいわば人生のようでもあり、未だ完結していないのもポイントです。

 

ナラティブはいつから使われるようになった?

ナラティブの考え方が使われるようになったのは、元を辿れば1960年頃のフランスにさかのぼります。

 

この頃のフランス文学には様々なシーンでナラティブが使われており、読者をより深く物語の世界に取り込み、没頭させられるとして話題になりました。

 

そんなナラティブを実生活で活用するようになったのは、1980~1990年代が始まりだといわれています。

 

元は臨床心理学で利用されたことから始まり、一人ひとりの抱えている問題を物語形式で語ることで、様々な視点から解決策を見出すために活用されました。

 

現在も利用者側・患者側に立つとなかなか気が付かないものの、生活の中でナラティブが利用されている場面は多々存在します。

 

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ナラティブを理解するために

 

ナラティブを実生活で利用するためには、本質を正しく理解しなければなりません。

 

背景にある社会構成主義

ナラティブが実際の生活で利用されるようになったのは、1980~90年が最初だといわれています。

 

文学作品から飛び出したナラティブは、社会構築主義をベースとして発展していきました。

 

今あるすべての出来事は人間の頭で想像したことだ、と考える社会構築主義は、現在の社会にも広く根付いています。

 

例えば、片思いをしている男性がいたとします。彼の中でその思いは単なる恋ですが、周りがどう思うかによって状況は大きく変化するでしょう。

 

周りが彼の思いを応援すると「純愛」になりますが、彼の思いがストーカーだと思われてしまえば、それは「犯罪」になってしまいます。

 

こういった社会全体の考えが出来事の本質を左右するのも、社会構築主義の特徴です。

 

しかし私たちは誰もが、少なからず物事に関するフィルターを持っています。

 

上記のケースでいえば、物事の本質を見ないまま、「男性なのだからどうせストーカーだろう」などと決めつけてしまうことも多いでしょう。

 

こういったフィルターによって本質が曲げられてしまうことがないよう、俯瞰的に物事を見ながら、もっとも正しい答えを見出していくことがナラティブの役割なのです。

 

ドミナントストーリーとオルタナティブストーリー

ナラティブを理解するためには、ドミナントストーリーとオルタナティブストーリーについて学ぶ必要があります。

 

ドミナントストーリーとは、直訳すると「支配的な物語」という意味を持ちます。

 

ドミナントストーリーは問題を抱えている当事者が感じる内容がすべてであり、他の可能性については触れていません。

 

「〇〇はこうである」といった思い込みが反映されているため、当事者は変えることができないと信じており、考えが凝り固まってしまっているのも特徴です。

 

これに対しオルタナティブストーリーは、「代替の物語」という意味の単語です。

 

固定されたドミナントストーリーに対し、様々な可能性を考慮したオルタナティブストーリーを考えることで、問題に対しあらゆる視点で解決策を講じることができます。

 

ドミナントストーリーとオルタナティブストーリーを語る際に例として挙げられやすいのが「アリとキリギリス」の物語です。

 

私たち日本人は幼い頃からの固定観念で、「働き者のアリと怠け者のキリギリスの話」だと思い込んでいます。

 

これはドミナントストーリーであり、一見これ以外の解釈はないようにも思えます。

 

しかしオルタナティブストーリーの考え方では、キリギリスは怠け者なのではなく、短い寿命を謳歌するために歌い暮らしていたのかもしれない、と考えます。

 

キリギリスには病気の友人がおり、彼を勇気づけるために歌うのをやめなかったのかもしれません。

 

物語の中に書かれていない可能性にも注目し、新たな可能性を考えることが、オルタナティブストーリーの役割です。

 

モノローグとダイアローグ

モノローグは「一人で語ること」、ダイアローグは「対話をすること」と訳されます。

 

物語をモノローグで語ると、視点が偏り、ドミナントストーリーのように意味合いが固定されがちです。

 

語り手の世界観がすべてとなるため、聞き手にも同じようにその世界観が引き継がれるでしょう。

 

これに対しダイアローグで物語を語るとき、語り手同士の会話の中では、これまでに見られなかった新たな考えが生まれる可能性があります。

 

その瞬間から物語はあらゆる可能性を含み、どのような展開になるか予想できなくなるでしょう。

 

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ナラティブアプローチとは?

 

ナラティブが話し手と聞き手によって紡がれる物語である、と説明を受けても、それがビジネスシーンや医療現場でどのように活用されるのか分からない方も多いものです。

 

まずはナラティブを使ったアプローチ方法がどのような目的で導入されているのか、その役割について確認していきましょう。

 

ナラティブアプローチの概要

ナラティブアプローチとは、自分と相手が対話する中で様々な可能性を見出し、問題解決へと駒を進めていく方法です。

 

自分の思い描くドミナントストーリーを大切にしながら、相手の意見を取り入れてオルタナティブストーリーを展開することで、あらゆる可能性に気が付くでしょう。

 

このとき自分と相手は必ず対等な関係であり、どちらの意見も同じく尊重されなければなりません。

 

シーンによっては、対話の相手が医師と患者であったり、専門家と一般人であったりと、知識量に差がある可能性も考えられます。

 

こういった場合でも両者が対等であることは変わりなく、お互いを尊重しながら対話をすることが大切です。

 

どんな目的で導入されている?

ナラティブアプローチが導入されている場面として分かりやすいのは医療現場です。

 

医師と患者、もしくは看護師と患者がナラティブアプローチによって対話を行うことで、単なる病気の内容とその治療法を話し合うだけでなく、患者の生活や金銭面への負担、精神状況を踏まえた最適な治療方法を見出すことができます。

 

医師や看護師側は患者目線での物語を聞くことで、今までに気が付かなかった可能性を考慮し、より負担の少ないケア方法を提案できるでしょう。

 

これはビジネスシーンでも同じであり、カスタマーを主人公として物語を作成することで、企業側が気が付かない可能性を見出し、より顧客に合った満足度の高いサービスを実現できます。

 

同じように、教育や福祉シーンでも活用の幅が広がる考え方だといえるでしょう。

 

ナラティブアプローチの流れ

ナラティブアプローチに関する知識が深まったところで、実際に生活の中で利用する際の流れを確認してみましょう。

 

今回はビジネスシーンを例に挙げ、問題解決に行き詰まり、良い案の浮かばない状態であると仮定してご紹介します。

 

ドミナントストーリーを聞く

ナラティブアプローチの目標は、ドミナントストーリーをオルタナティブストーリーへと書き換え、その中であらゆる可能性を見出すことです。

 

まずは悩んでいる相手とそれぞれドミナントストーリーを作り、お互いに発表し合いましょう。

 

同じ問題に対処しているにもかかわらず、人によってドミナントストーリーの内容が異なるため、これだけでも新たな気づきがあるかもしれません。

 

この際に大切なのは、相手がどんな内容を言ったとしても、否定せずに聞くということです。

 

話の途中で口を挟んだり、「ここは〇〇の方が良い」などとアドバイスしてしまうと、ドミナントストーリーの意味がなくなってしまうでしょう。

 

問題を外在化する

続いて、ドミナントストーリーを元に問題を外在化していきます。

 

目に見える形で問題を提起することで、より分かりやすく解決策を講じられるようになります。

 

今回の場合、もっとも大きな問題は「売れる製品が作れない」ことだとします。

 

試作品をいくつ作っても上司にOKをもらえなかったり、販売にこぎつけた製品も思うように売れなかったりといった問題が出てくることでしょう。

 

続いて、その中からもっとも重要な問題を選びます。今回は製品を売る前に、まず社内でOKが出るような製品案を作らなければなりません。

 

ここに焦点を絞り、第一の目標を立てることで、効率的に問題を解決できるようになります。

 

反省的な質問をする

続いて、お互いに対し反省的な質問を行います。

 

時間をかけて編み出した製品案にどうしてOKがもらえないのか、改善すべき点について反省会を行いましょう。

 

このときの反省点は、具体的であればあるほど良く、さまざまな可能性を見出しやすくなります。

 

例外的な結果を見出す

質問を投げかけた方は、返答に対しどのような結果が見出せるのかを考えます。

 

「〇〇という製品が良いと思ったが、却下された」という反省点の中にも、実は予算面で却下されていてもデザインは好評を得ていたり、成功には至っていないものの着眼点は良いと褒められていたりする場合があります。

 

こういった気づきにくい例外的な結果を見出してあげることで、これまでに気が付かなかった視点から問題にアプローチできるようになります。

 

オルタナティブストーリーを構築する

ここまでのステップをクリアしたら、いよいよドミナントストーリーに対するオルタナティブストーリーを構築します。

 

これまでに出た例外的な結果を全て含め、ありとあらゆる道筋を考慮した物語を作りましょう。

 

実は初期段階で褒められた内容が、製品の完成に大きく貢献してくれる場合もあります。

 

「〇〇はダメだ」と言われた内容が、実は「△△ならば良い」と捉えることで、新たなアイディアが浮かぶこともあるでしょう。

 

こういった考えを一人で行うのではなく、対話形式で整理しながら行うことで、より効率的な問題解決に繋がるのです。

 

ナラティブアプローチのメリット

 

ナラティブアプローチを定期的に取り入れることは、様々なメリットを生み出します。

 

今回はナラティブアプローチ導入の参考となるよう、メインとなる3つのメリットをご紹介しましょう。

 

良好な関係を築きやすい

ナラティブアプローチは他者との対話があって成り立つため、コミュニケーションの機会が増え、対人関係が良好になりやすいのが特徴です。

 

話し手と聞き手の関係は必ず対等となるため、普段の地位や立場に関わらず、平等に話ができるでしょう。

 

これまでに会話の機会が得られなかった相手とナラティブアプローチを行うことで、新たな信頼関係の構築にも繋がります。

 

解決策の幅が広がる

ナラティブアプローチを使って問題に対応することで、これまで気づかなかった解決策を取り入れ、様々な面から取り組めるのがメリットといえます。

 

目上の人から「こうしなさい」と命令されるのではなく、相手との対話の中でお互いに気づいた可能性を試していくため、自分の意にそぐわない方法であってもスムーズに受け入れられるでしょう。

 

能動的に実行しやすくなる

ナラティブアプローチを使って見出された解決策に対しては、話し手と聞き手の両方が納得した上で出てきたものであることが多く、より能動的に実行されやすいでしょう。

 

他者から「こうしなさい」と指示されたことよりも、自分で動こうと決めた解決策の方が、よりやる気が湧いてくるのではないでしょうか。

 

あらゆるシーンでナラティブアプローチを取り入れることで、日頃の作業効率が上がったり、問題に対しポジティブに対応できたりするのもメリットの一つです。

 

関連記事:マイノリティ・マジョリティとは? 多様な社会の理解を深めるために

 

まとめ

ナラティブを使ったアプローチ方法は、医療・教育・福祉などの専門分野はもちろん、ビジネスシーンでも多く使われる手法です。

 

私たちの身近にある問題を総合的に解決できるようになるため、日頃から積極的に取り入れると良いでしょう。

 

相手との対等な会話ができる点から、その場の雰囲気を改善し、人間関係を良好に保てる点にも注目してみてはいかがでしょうか。

gd2md-html: xyzzy Fri Aug 02 2024


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