セラピストは一人じゃないといけない?「複数のセラピストを持つ」という新しいメンタルケアのかたち

うつや不安をケアするために、長年セラピストや精神科医のサポートを受けてきたエミリー・カーター(仮名)。けれど、仕事を失い、同じ日に恋人との関係も終わったとき、彼女は「もう少し違うサポートも必要かもしれない」と感じました。
そこで35歳のエミリーは、キャリアや人生の方向性を整理するため、週に一度ライフコーチとのセッションを始めます。普段は仕事や将来の話が中心ですが、ときには心の奥にある感情の話に触れることもあるそうです。
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「何かに心が揺さぶられたとき、信頼できる第三者にすぐ話せるのは助かります。緊急のセラピー予約を取らなくても、気持ちを整理できるんです。」
一方、26歳のフリーランス旅行ジャーナリスト、ケイシー・クラークは、ニューヨークとフロリダを行き来する生活の中で、それぞれの場所にセラピストがいます。
「二人の視点が違うのが面白いんです。ニューヨークのセラピストは共感的でホリスティック。フロリダのセラピストは、もっと実践的で少し厳しいタイプ。片方は安心感をくれて、もう片方は厳しい愛の教えという感じですね。」
こうしたスタイルは、最近少しずつ注目され始めている新しいメンタルケアの考え方につながっています。それが 「一人のセラピストにこだわらないセラピー」。
「一般的なセラピーを受けながら、トラウマ専門のセラピーを別で受けることもできます。異なるアプローチが互いに補い合うことで、より広いサポートが生まれるのです。」
悩みは一つじゃないから
心理学者であり『Freeing Yourself From Anxiety』の著者、タマー・チャンスキー博士はこう言います。
「以前は“一人のセラピストがすべてをケアする”という考え方が一般的でした。でも今は、人の悩みはもっと複雑で、多面的だという理解が広がっています。」
例えば、不安を抱えている人がいたとしても、その背景にはさまざまな要素があります。
・過去のトラウマ
・仕事のストレス
・パートナーとの関係
・家族との問題
・身体的な不調
こうしたテーマすべてを一人のセラピストが専門的に扱うのは、必ずしも簡単ではありません。
精神科医レスリー・カークパトリックは、複数のセラピストを持つことのメリットをこう説明します。
「例えば、一般的なセラピーを受けながら、トラウマ専門のセラピーを別で受けることもできます。異なるアプローチが互いに補い合うことで、より広いサポートが生まれるのです。」
医療と同じ“専門医”という考え方
摂食障害や依存症を専門とするセラピスト、モリー・カーメルは、この考え方を医療に例えます。
「私たちは体調を管理するために、かかりつけ医に通いますよね。でも、心臓の問題があれば心臓専門医に行くはずです。
セラピーも同じ。トラウマや依存症など特定のテーマには、専門の知識を持つセラピストが必要になることがあります。」
つまり、メンタルヘルスのケアも “チーム”で支える時代 になりつつあるのかもしれません。

ただし、気をつけたいこと
とはいえ、複数のセラピストを持つことには注意点もあります。
まず大切なのは オープンなコミュニケーション。それぞれのセラピストが、お互いの存在を知っていることが理想的だと言われています。
もし共有されていない場合、アドバイスが矛盾したり、治療方針が合わなかったりすることもあるからです。
また、セラピーの数が増えるほど、
・スケジュール調整
・同じ話を何度も説明する負担
・費用
といった現実的なハードルも増えていきます。
さらに、セラピーを増やすことで 自分自身で感情を整理する力が育ちにくくなる可能性 もあると専門家は指摘しています。
“多くの場合は、メインとなるセラピストが一人いて、必要に応じて他のサポートを加える形が理想的だと言われています。”
大切なのは「役割」を分けること
もし複数のセラピストと関わるなら、それぞれの役割をはっきりさせることが大切です。
例えば、
・個人セラピー
・カップルセラピー
・子育てのサポート
・トラウマ専門セラピー
など。
多くの場合は、メインとなるセラピストが一人いて、必要に応じて他のサポートを加える形が理想的だと言われています。
モリー・カーメルは、それをこう表現します。
「まるで、自分の人生のための“取締役会”を持つような感覚ですね。」
自分に合うサポートを見つけるということ
メンタルヘルスのケアに、絶対の正解はありません。
一人のセラピストと深く向き合うことで大きな変化が生まれる人もいれば、複数の専門家のサポートによって安心感を得られる人もいます。
大切なのは、「どんなサポートが、いまの自分にとって心地いいか」を見つけること。
もし今、心のケアについて迷っているなら、それはあなたが自分自身を大切にしようとしている証なのかもしれません。
焦らなくて大丈夫。自分のペースで、安心できるサポートを少しずつ見つけていけばいいのです。