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「ハッスルカルチャー」の本当の問題|なぜ頑張り続けても満たされないのか

 

 

 

「時間」との歪んだ関係

 

数か月前、私はメモにこんな独白を書いていました。

 

“いつからこうなったのかは分からない。でも今の私は、時間と健全ではない関係を築いてしまっている。”

 

時間は「無駄にしてはいけない、世界で最も価値のある資源」になり、私は自分の人生のすべての時間を生産的であるかどうかで評価していました。

 

確かに、時間には限りがあります。永遠に生きられるなら、時間に価値は生まれません。限りがあるからこそ貴重なのです。

 

でも水と同じで、必死につかもうとすればするほど、指の間からこぼれ落ちていく。足りないと感じれば感じるほど、大切にできなくなっていきました。

 

「もっと頑張らなかった時間」はすべて無駄。
楽しむことや人付き合いでさえ、効率的でなければ許されない。

 

これはまさに、ハッスルカルチャーに飲み込まれた状態でした。

 

 

目標トレッドミルという罠

 

目標を追いかけるプロセスは、心理学でいうヘドニック・トレッドミル(快楽順応)とよく似ています。

 

ヘドニック・トレッドミルとは、良い出来事や悪い出来事が一時的に幸福度を上下させても、最終的には元の基準値に戻ってしまう、という考え方です。

 

目標達成も同じ構造を持っています

 

  • 短期的には:小さな成功で一時的に気分が上がる
  • 長期的には:目標達成後、束の間の高揚感のあとに「次は何?」という空虚さが訪れる
  • そして新しい目標を設定し、同じサイクルを繰り返す

 

つまり、目標トレッドミルはヘドニック・トレッドミルの上に重なって存在しているのです。
そしてその性質は同じく、「もっと欲しい」という尽きない渇望を生み出します。

 

 

混乱の正体|なぜ満たされると思ってしまうのか

 

問題は、目標を追うこと自体ではありません。
問題なのは、目標を達成すれば、人生の土台そのものが良くなると期待してしまうことです。

 

私たちは無意識にこう思っています。
「もっと達成すれば、もっと幸せになれる」
「いつか、もう頑張らなくてよくなる」

 

でも実際には、その「追いかける行為」こそが、私たちをトレッドミルに留めているのです。

 

ここで重要なのが、相対的な目標と究極的な目標の混同です。

 

  • 相対的な目標:お金、影響力、成功、評価
    → 他人と比べるため、終わりがない
  • 究極的な目標:幸福感、充足感、満足、安心

 

ハッスルは相対的な目標には有効ですが、
幸福や満足といった究極的な目標には、ほとんど役に立ちません

 

 

 

「もっと欲しい」という欲望の正体

 

ハッスルの根底には、常に「もっと欲しい」という感覚があります。
そして「もっと欲しい」と思うことは、今の状態に満足していないという宣言でもあります。

 

欲望そのものが悪いわけではありません。
でも欲望とは、本質的にこういう契約です。

 

欲しいものを手に入れるまで、自分は不幸でいてもいい
— ナヴァル・ラヴィカント『The Almanack of Naval Ravikant』より

 

私たちは日常的に欲望を抱きながら、なぜ満たされないのか不思議がります。
だからこそ、どんな欲望を持つかを慎重に選ぶ必要があるのです。

 

ナヴァルは、「人生で同時に持つ大きな欲望は一つだけにする」と語ります。
それは同時に、「どこで自分が苦しむことを選んでいるのか」を自覚するということでもあります。

 

 

追いかけることと、どう向き合うか

 

ハッスルの本質を理解したあと、私たちにはいくつかの選択肢があります。

 

① マインドフルな節度

 

• 追いかける欲望を意識的に選ぶ

• 同時に抱える目標の数を制限する

 

 

② 相対的目標には、明確な終点を

 

• 数値で測れるゴールを設定する

• なぜそれを達成したいのかを明確にする

• ゴールを動かさない

 

 

③ 追い続けること自体を「遊び」にする

 

• これは終わらないゲームだと理解する

• アップダウンを含めて楽しむ

• 成果ではなく、プロセスを味わう

 

 

まとめ|目的地ではなく、地平線としての目標

 

すべては、ハッスルの正体を理解し、受け入れることから始まります。
そこから先の選択は、すべて「明確さ」の上に成り立ちます。

 

楽園は、目標と同じで「到達する場所」ではないのかもしれません。
むしろ、私たちが本当はたどり着きたくない、終わりのない地平線。

 

それは、 「目標を達成するため」ではなく「どんな目標でも達成できる自分になるため」に働き、成長し続ける理由なのかもしれません。

 


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