「わがまま」と聞いて、あなたはどう感じますか?
この言葉はネガティブなイメージを持たれがちですが、実際の意味は「我がまま」つまり「私の意志のままに」というもの。
私はタンザニアの女性たちと出会って、この「わがまま」について考える機会が増えました。
私たちは、もっと自分に「わがまま」を許しても良いのではないかと感じたんです。
タンザニアの女性たちの生き方には、あなたが、もっと自分のわがままを許せて、もっと楽に生きていくヒントが隠されているように感じます。
自由な自己表現
タンザニアの女性たちは、女性としての楽しさを誰に気兼ねすることもなく存分に味わっていると、日々そんな風に感じます。
例えば、我が家で働いてくれているお手伝いさんのローズマリー。
普段はとてもおとなしくて仕事をテキパキやってくれる彼女。ある日、彼女の意外な姿を目撃しました。
私が在宅で仕事のミーティングがあった日、ローズマリーには別室で子どもと一緒に遊んでもらっていました。
ミーティングが終わると、子どもの部屋から楽しそうなダンスミュージックが流れてきたのです。
ドアを開けたら、いつもおとなしいローズマリーが、3才の息子に負けないくらいノリノリでダンスをしていました。
息子もとっても嬉しそう。「あら、ごめんなさい。ダンスが楽しくて、踊りすぎちゃったわね」と、ちゃめっけたっぷりの彼女。
私自身、ダンスがうまくないということもありますが、こんな風に自然にクリエイティブな自己表現ができて、こうやって楽しめるなんて、うらやましいなと感じました。
苦労を楽しみに変える強さ
タンザニアの女性の自己表現は、ダンスだけではありません。髪型も自分を自由に表現するツールとして楽しんでいます。
例えば、スワヒリ語の先生のクララ。
週に2回会う彼女は、会うたびに髪型を変えています。
それがまたとても似合っていて素敵なんです。
ある時は三つ編みにしたヘアをトップでまとめて、またある時は髪に明るい色のハイライトをいれたり、またはウィッグで短髪にして突然のイメージチェンジなど。
ひんぱんに長さやスタイルを変えて、新しい髪型をいつも楽しんでいます。
私自身は、子育てが忙しくなってからは、手入れしやすい短めの髪型を続けています。
しかし、子育てをしながらも、自分のオシャレを楽しむ余裕を持っている彼女を見ていると、髪型を少しチェンジさせたら私も日々のワクワク度がアップするのではないかと気づきました。
タンザニア女性の髪は黒人特有の縮毛であるため、日々のお手入れが欠かせません。
しかし、彼女たちはこの手入れがめんどうであるという苦労を、女性のファッションをさらに楽しむツールへと変えているのです。
さらに彼女たちは髪型をひんぱんに変えることで、自己表現の幅も広げています。
髪を編んだり、結んだり、アフリカ布のヘアアクセサリーを使ったりすることで、個性的で洗練されたスタイルをつくり出しています。
彼女たちのこういう髪型を使ったファッションは、個性を表現し、自信を高める素晴らしい手段となっています。
必要なサポートは遠慮せず活用
タンザニアの女性が生き生きとしている理由の一つに、お手伝いさん文化があると私は考えます。
お手伝いさんを雇う習慣は、タンザニア社会に根付いており、お手伝いさんは通常、家族の一員のように家に泊まり込んで働いています。
私自身、この文化に慣れていないせいか、当初は、家事を他人に任せることに抵抗がありましたが、アフリカで経験できるせっかくの体験だと、思い切って雇ってみました。
「自分が得意ではないことは他の人に任せてみたらいい」「本当に大切なこと以外はやらなくていい」そんな理想論をどこかで聞いたことはあっても、実際には無理なことだとあきらめてきた私。
しかし、お手伝いさんのおかげで、この「理想論」を実現できたのです。
その結果、何年も「忙しいから」を理由に伸ばし伸ばしにしていた活動を始めたり、子どもたちと過ごせる時間が増えました。
このお手伝いさん文化は、タンザニアの女性のエンパワーメントの役割を担っています。
お手伝いさんの存在によって、働くママたちは仕事に行きやすくなります。
つまり、子育てや家事に追われることなく、自分のキャリアや個人の成長に専念することができるのです。
「家事育児は女性の仕事」という社会通念がまだまだまかり通っているタンザニア社会。
お手伝いさんの存在によって、タンザニアの女性たちは、時間とエネルギーを自己成長や自己表現に注ぎ、女性たちの夢の実現や経済的な自立に大きく貢献しています。
▶︎SHOGENの視点:🏳️🌈日常を大切にしていたタンザニアの人々
「わがまま」と決めつけずに
タンザニアの女性たちは、男尊女卑という今も残る社会的な制約にもかかわらず、こうやって生き生きと輝いています。
それは、自由に自己表現をする彼女たちのパワーと、お手伝いさん文化という社会から与えられた機会に支えられています。
自己表現したりサポートを受け入れることを、私たちは「わがまま」と決めつけて、我慢しがちではないでしょうか。
タンザニアの女性たちの生き方から、この「わがまま」と片づけてしまいがちな視点を見直すことができそうです。
つまり、私たちも自己表現をもっと大切にし、必要な支援を受け入れることで、より充実した生活を送ることができるということです。
ぜひ、日々の生活の中で、こういった視点を取り入れてあなたの考え方を更新できる部分がないか、考えてみてくださいね。
ライター:プロフィール
著者:堀江知子(ほりえともこ)|タンザニア在住ライター
民放キー局にて、15年以上にわたりアメリカ文化や社会問題についての取材を行ってきた。
2022年からはタンザニアに移住しフリーランスとして活動している。
noteやTwitterのSNSや日本メディアを通じて、アフリカの情報や見解を独自の視点から発信中。