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セックスレス、会話不足、不倫…パートナーとの悩みを元AV女優がひも解く!【男女コミュニケーション心理士の小室友里さんインタビュー】

Written by
堀江知子(ほりえ ともこ)

 

「パートナーとのコミュニケーションが最近うまくいかない」と感じていませんか?「言いたいことが言えない」「会話が減った」といった悩みは、多くの女性が抱える共通の課題です。

 

今回、私たちは男女コミュニケーション心理士の小室友里さんにお話を伺いました。小室さんは、かつてアダルト業界でキャリアをスタートさせたという異色の経歴を持つ、コミュニケーションの専門家です。「性」についても率直でユニークな視点をお持ちの小室さんと一緒に、夫婦間のコミュニケーションのあり方、特に「性」が関係する悩みの原因とその解決方について、深く掘り下げていきます。

 

 

アダルト業界から学んだ、男女のすれ違いと本当のコミュニケーション

 

ーーまずはじめに、「男女コミュニケーション心理士」というユニークな肩書きを持つに至ったきっかけを教えていただけますか?

 

私のキャリアは、30年前にアダルト業界からスタートしました。男女間の深いコミュニケーションをビジネスの出発点とした、少し珍しい経歴と言えるでしょう。その中で気づいたのは、アダルト業界から発信される情報が、一般社会では非常に屈折して受け取られているということでした。

 

アダルト業界の人間は、AVを「バイブル」や「教科書」として作っているつもりは全くありません。単なるサービス産業の一つ、エンターテイメントの一つとして制作しているのですが、どうやら一般社会では違う解釈をされているらしい。このギャップを埋め、本来の意図をわかりやすく伝えていく必要があると感じたのです。

 

そこで2015年に「男女コミュニケーション」という表現を使い始め、その後、私自身が「男女コミュニケーション心理士」という資格を作り、取得しました。現在は、男女間のコミュニケーション、ジェンダーの問題、そして女性の社会活躍をテーマに、講演やセミナー、研修を行っています。

 

 

ーーアダルト業界でのご経験が、現在の男女間のコミュニケーションに関する気づきにどのように繋がったのでしょうか?具体的にどのような「屈折したイメージ」に気づかれたのですか?

 

アダルトビデオは、主に男性向けに制作されている作品が多いのですが、その中で現されている女性の表情やスタイル、アクションが、日常生活の性生活においても当たり前に出てくる反応だと考えている男性が非常に多いことに気づきました。たとえそれが「作られたもの」だと分かっていても、現実でもそうしたアクションやリアクションをしてほしいという願望を持つ方が非常に多かったのです。

 

この「理想」と「現実」の間の大きなズレこそが、私がアダルト業界での経験を通じて得た大きな気づきでした。

 

 

男性からの性に関する悩みは主に「自分がいかない」「立たない」「女性をいかせられない」の3つに分けられます。

 

 

ーーその時の気づきや体験は、現在のカウンセリングにどのように活かされていますか?

 

例えば、男性からいただくご相談は、大まかに分けて3つあります。1つ目は「自分がいかない」、2つ目は「立たない」、つまり勃起に関する身体的な悩みです。そして3つ目が「(相手を)いかせられない」というもの。これは、女性をオーガズムに導けない、潮を吹かせられないといった、自分のスキル不足に関する悩みですね。

 

驚くべきは、男性がこうしたことで悩んでいる一方で、女性はそこまで求めていないというケースが往々にしてあることです。この男女間の「ズレ」はかなり大きいと感じています。

 

こうした悩みに対して、私だからこそ答えられることがあると思っています。なぜなら、私は演者側として身をもって現場を体験してきたからです。撮影現場は結構体育会系で、エロい雰囲気なんて全くありません。何分間で何をしなければならないか、アジェンダが明確に決まっているんです。何分後にこういう行為をして、何分後に挿入して、何分後に射精するというように、すべてが作られた映像なんですよ、という話をします。それでも「女性は感じているんでしょ?」と聞かれることもありますが、「いえ、あれは演技であり表現です」とお伝えします。これはなかなか聞けない話ですよね。(笑)

 

 

 

 

セックスレスの背景にある“触れ合い”の不足

 

 

ーー小室さんの元に相談に来られる方の男女比はどのくらいで、一番多い悩みは何ですか?

 

カウンセラーとしては珍しい立ち位置だと思っていますが、私の場合は男性の相談者が多い傾向にあり、これまで6割が男性でした。最近になってようやく女性が4割に増えてきたという感じです。

 

男性、女性問わず、お悩みの根幹にはやはり「性」というものがあります。それが細分化されている、というイメージです。

 

一番多い悩みは、やはりセックスレスですね。そのセックスレスが根幹にあり、そこからマスターベーションの話や、セックスレスの解消、あるいは婚外にパートナーを求めているといった話に細かく分かれていきます。

 

ーーセックスレスの悩みに対して、小室さんが最初にするアドバイス、最初のステップとは?

 

相談者の方それぞれなので、まずは詳しくお話を伺わないと分かりませんが、どれだけご夫婦間で日常会話をしているか、ということをお聞きしますね。

 

その日常会話の中に、例えば手を繋ぐ、肩に触れるといったボディタッチのアクションや、少しセクシュアルな話が入っていますか?というようなヒアリングから始めていきます。

 

 

「性は語るべきでない」という文化の中で育った私たちにとって、関係を深める第一歩は、言葉ではなく“そっと触れること”かもしれません。

 

 

ーーセクシュアルな話は、なかなか難易度が高いと感じる方も多いと思います。日々の生活の中で、具体的にどんな声かけや、女性から男性へのアプローチの例がありますか?

 

そうですよね。女性が男性にセクシュアルなアクションを起こすことについて、そもそも日本文化の中では「女性は慎ましくあるべきだ」といった「べき論」で語られてきた部分が多いと思います。私自身も今年50歳になりますが、親世代や祖母世代から「性ははしたない」「言葉にするものではない」といった文化の中で育ってきましたから、いきなりセクシュアルな会話と言われても思いつかないのは当然です。

 

ですので、日常会話や日常生活の中から、少しずつ入れ込んでいくのが良いでしょう。それも言葉である必要はありません。「ノンバーバルコミュニケーション」、つまり言葉ではないコミュニケーションでも十分可能です。具体的には、指に触れるとか、肩に触れるだけでも、実は性的な接触と捉えられなくはないんです。

 

特にセックスカウンセリングでは、一番最初は「手に触れる」ことから始めます。それも嫌がるようであれば、まずは「距離感を縮める」ことから。例えばソファに座っていて、どれだけ体同士の距離感を詰められるか、というレベルからスタートします。

 

 

 

「セックスレスと不倫に揺れる心に寄り添う」――女性の相談が増える背景と、その本音とは

 

 

ーー先ほど悩みのひとつに「不倫」も多いと伺いました。具体的にどのような内容のご相談が多いのでしょうか?男性の悩みというイメージが強いですが、実際はどうでしょうか?

 

不倫のご相談は、実は圧倒的に女性が多いんです。これは私のカウンセリングの場合ですが、もともと男性のご相談者が多い中で、不倫のご相談が増えてきたのはここ1、2年ですね。おそらく、私のカウンセリングに関する女性への認知が高まったからでしょう。

 

ご相談の内容としては、おっしゃる通り、夫とのコミュニケーションのすれ違いやセックスレスが原因になっているケースが多いです。掘り下げていくと、「旦那さんに女として見てもらえなくなった」というお気持ちが非常に強いですね。

 

ーーそういった悩みに、小室さんはどうアドバイスをされますか?

 

その方それぞれに寄り添わせていただきますが、必ず聞かなければならないのは、「どうなりたいのか?」ということです。その方にとってのベストな状態は何なのか、というお話はどこかで聞かせていただきます。

 

なぜなら、相談者の方によっては、もう一度夫と関係を修復したいという方もいれば、正直なところ「夫じゃなくてもいい」という答えが出てくる方もいらっしゃいます。あるいは、夫とは「運命共同体」や「経済共同体」という立場を取れればいい、という方もいます。

 

その方の未来のゴールが、なんとなくでも見えてこないと、今苦しんでいる状況を一時的に解消したとしても、また同じ悩みに戻ってしまう可能性があります。限られた時間ではありますが、その方が求める未来のゴールを見せていただいてから、「では今、何をしていこうか」というお話をするように心がけています。

 

 

多くの女性は「話を聞いてほしい」「今の自分を認めてほしい」という気持ちを抱えて相談に来る傾向があります。

 

 

 

ーー小室さんに相談に来られるということは、不倫を辞めたい、このまま続けてはいけないという意識があって皆さんいらっしゃるのでしょうか?

 

いいえ、必ずしもそうとは限りません。女性の場合は「聞いてほしい」という気持ちが強いように感じます。そして、「こんな自分」を認めてほしい、という気持ちを強く感じますね。これは男性にも共通することですが。

 

特に「性」というところが私の強みでもあるので、その「セックスをしている自分」も含め、今の自分を誰かに承認してほしいという気持ちが強いように感じます。

 

ーーセックスの話は、仲の良い女友達でもなかなか話せない部分だと思います。小室さんのような、現場をご存知の方だからこそ話しやすいというのもあるのでしょうか?

 

そうですね。私も感じるところですが、近しい関係であればあるほど話せないのが「性」や「セックス」だと思います。似たようなところにお金の話もあるかもしれません。遠ければ遠い人ほど話しやすい、ということはありませんか?例えば、たまたま居酒屋で隣に座った人に飲みながら愚痴程度に話す、といったように。

 

ーー男性の不倫で悩んでいる方も、やはり女性と同じように「承認してほしい」という気持ちが強いのでしょうか?

 

承認してほしい、という気持ちは女性と似ていると思います。ですが、男性の場合は心のどこかに「このままじゃまずいよね」という気持ちがあるように感じます。

 

ーー男女間のコミュニケーションにおける最大の課題とは何でしょう?特に、「女性の価値が男性主導で決まる」という小室さんがご指摘されている社会的な背景について、小室さんが感じる課題を教えてください。

 

まず女性の方からお話すると、女性は自己承認をすることで、様々な問題が解決していくと感じています。自己承認の中には、自分の「性」への自己承認も含まれます。以前もお話ししたかもしれませんが、女性の性が男性の価値によって「価値づけされている」という現状があります。

 

女性が自身の価値を自分自身でまだ決めきれていない、という部分ですね。これを「私はこれでいい」と自分で決めてあげることができたら、おそらく性の話だけでなく、家庭のことや仕事のことも、すべて自分で「私、これでいい」と責任を持てるようになると思うのです。

 

先ほどの不倫の話に戻れば、「不倫をしているこんな自分も、私だからこれでいい」と、何かあった時には私が責任を取ります、という気持ちがあれば、もっと楽に生きられる気がしませんか?もちろん、それには責任だけではなく、家庭のことや経済のことも関わってきますが、そこすらも自分の責任だと置き換えて考えた時に、女性の生き方は変わるのではないかと考えています。

 

 

 

セックスレスや不倫の悩みを根本から見直すには、自己承認を高めることが鍵

 

ーーやはり「男性からどう判断されるか」「男性にどう思われるか」というところが基準で女性が考えがちな部分は、結婚しても変わらないことが多いと感じます。この自己承認は、どうやったら高められるのでしょうか?

 

今までの文化に逆らう部分も出てきてしまうので、自分の生き方そのものに一度メスを入れるというか、疑いを持つ時間も当然出てきてしまいますから、決して楽な時間ではないと思います。

 

まず大切なのは、他の先生方もおっしゃると思いますが、自分で自分を良しとすることです。その一つの方法として、私は「働く」ことだと思います。例えば専業主婦の場合、評価してくれる方はパートナーである夫とお子さんや家族といった、ここからの評価に限られますよね。その評価をいただける場所をもっと広げていくことです。様々な方から様々な評価をいただくことで、それが自分の自信に変わっていくと思うのです。

 

自己承認の力をつけていく、もっと言えば、他人の力を借りて自己承認をしていくということですね。家の外に出ることで、自分の力が見えてくる、できるようになるという感覚です。

 

ーー小室さんは女性の社会活躍の分野でもご活躍されていますが、女性がさらに社会進出し、会社でも上の立場になるという傾向は良い流れだとお考えですか?

 

はい。これは、女性がもっと楽に楽しく生きられるようになるだけでなく、特に日本人男性が抱えてきた「男はこうあるべきだ」という価値観からの解放にも繋がっていくと思うのです。

 

男性ももっと楽に、もっと自分らしく生きられるようになっていくだろうなと。最終的な結果は多分そこだと思います。女性だけでなく、男性側にとってもですね。

 

そこには男性も男性で、今までの自分の価値観というものに一度立ち返る必要はあります。「自分が稼ぐことが価値」であり、セックスに置き換えれば「自分が快感を与えることが価値」だという考え方です。

 

それが、女性も自分の快感や快楽を自分で取りに行く、自分も与える側になる。そうすると、セックスはもっと楽になりませんか?お互いもっと自由な形でリラックスして、お互い与え合える関係、与え合えるセックスができたら、めちゃくちゃ楽しくなりそうじゃないですか。

 

ーー海外では、そういった性の同等な関係性が一般的な国もありますよね。

 

私の考えですが、セックスで与え合えるようになると、そこに至るまでに信頼構築が絶対に必要なので、時間もかかります。そうなることで、他の人とのセックスをする理由がなくなっていくんです。つまり、不倫がなくなる、ということです。
そういった、お互いが本当に望むもの、つまり「自分が与えたいもの」ではなく、「お互いが望むもの」をギブできるようになれば、他に行かなくなる。不倫がなくなる。こういうサイクルなのではないかなと思います。セックスというもののイメージが、そう考えると変わってきますよね。

 

 

セックスレスや愛情表現に悩む私たちがまずできることは、「ポンコツな自分」を許し、認めることから

 

 

ーーセックスや愛情表現に関する私たちが持つ思い込みを手放すために、今日からできる小さな習慣や、日々に取り入れられるちょっとしたことはありますか?

 

小室友里的な観点でお話させていただければ、「ポンコツでいいんじゃないか」と思っています。だって、できないことはできないし、嫌なことは嫌だし。それを自分で許してあげる、認めてあげることがまず第一段階です。

 

このポンコツな自分を相手が認めてくれるか、というのはまた別の話なので、それは相手が受け取りやすいように形を変える、言葉を変えるなどして、やはり伝えていく。これが第二段階かなと思います。「受け取ってもらいやすい土壌を作っていく」ということですね。

 

私もそこそこポンコツなんです。こういう雰囲気で喋っちゃってるので、あまり「ポンコツだね」って言ってもらえないんですけど(笑)。でも、すごくポンコツなんですよね。

 

ーーでも、「ポンコツでいい」という言葉は、「これでいいんだ」と思わせてくれる落ち着く響きがありますね。

 

「ダメな人間」と本質的に同じことを言っているんですけど、私は「ポンコツ」という言葉が好きです。

 

ーー他人が決めた女性としての価値に振り回されず、自分の軸を持って生きていくために、何を心がけたら良いでしょう?

 

「なんとなく」でやらないことです。自分の軸はこれだ、というものを、やはりどこかで書き出して、それを自分で見ることです。書き出してみると色々なものが出てくるんですよね。自分の価値観、それは恋愛に対しても仕事に対しても、お金に対しても、家庭に対しても、様々な価値観があると思います。これを書き出してみる、見てみる。この作業は、自分軸を作ってくれると思います。

 

私も実際に書いています。今、めちゃくちゃ書いていますね。手帳でもノートでも何でもいいので、やっぱり手を動かして自分の文字で書き出して、その文字を見ている時間というのが、何よりの自分との対話に繋がっているなと感じます。

 

ーー最後に、多くの読者が抱える「今さら夫に愛しているなんて言えない」といった悩みを持つ女性に、一つアドバイスがあるとしたらどんなアドバイスになりますか?

 

「愛している」なんて言えない、という方には、「なんで愛しているって言えないの?」というのを、5回、自分に問いかけてみてください。「なんで?なんで?なんで?」と繰り返していくと、5回目くらいになってくると、「なんで私、愛しているって言えなかったんだろう」というご自身の答えが見えてくるかもしれません。

 

いきなり「愛している」と言うためにこれをやりましょう、と言っても根本解決にはならないと思うんです。なんで自分は「愛している」と言えなくなったのか、というのを、ご自身が理解してからでないと進めないんですよね。スタートラインに立てないので。

 

私がお伝えするとしたら、まず自分のスタートラインをしっかり自分が認識しましょう、ということですね。どんな悩みもそうですが、根本の原因やゴールを考えないと、そこで止まってしまいます。

 

 

小室さんの温かくも力強い言葉は、長年の経験と深い洞察に裏打ちされたものでした。夫婦間のコミュニケーションの悩みは、一見すると表面的な問題に見えても、その根底には「性」や「自己承認」といった、より深いテーマが隠されていることを改めて感じさせられました。

 

あなたの「なんで?」の答え、ぜひ一度ご自身と向き合って見つけてみませんか?

 

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プロフィール

小室友里

日本人がタブー視するセクシュアリティ(性のあり方)を切り口にした新しい視点で、ハラスメント予防法に男女心理の違いを用い、経営者向けの講演、セミナーにて全国各地を訪れている。 講演登壇100回以上、参加者は延べ5,000人以上。
2021年にチャレンジした「女性も男性も『大切な人を傷つけない』性の知識を得て、真に性に向き合える社会へ!」と謳ったクラウドファンディングでは、1ヶ月で197名から350万円の支援金を集め達成率700%を記録。オンラインサロン「女性のためのセックスエデュケーションコミュニティ」を開設。他人の性を否定しない主旨から男性も参加可能にし、男女格差を減らす情報を発信している。

2022年3月、90年代を代表する元セクシー女優として、AV出演被害防止法提出前に国会議員から意見を求められ、可決時の記者会見にもコメントを求められた。世界最大のリファーラルマーケティングチームBNIに所属し、2018年にはBNI主催のナショナルカンファレンス日本大会の総合司会に抜擢されるなど、元セクシー女優のセカンドキャリア構築のパイオニアとしても呼び声が高い。

 

Instagram:https://www.instagram.com/komuroyuri_official/
著書『結婚が幸せになるための性書』

ライター:プロフィール

著者:堀江知子(ほりえともこ)|香港在住ライター

民放キー局にて、15年以上にわたりアメリカ文化や社会問題についての取材を行ってきた。

2025年からは香港に移住しフリーランスとして活動している。noteやTwitterのSNSや日本メディアを通じて、アフリカの情報や見解を独自の視点から発信中。

出版書籍:『40代からの人生が楽しくなる タンザニアのすごい思考法 Kindle版』。

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