
「洗濯について聞いてみて」 ある声が導いた新しい支援のかたち
ある声に導かれ、元警察官が始めた移動式ランドリー。ホームレスの人々に無料で洗濯サービスを提供し、清潔な衣服とともに自信も届けています。きれいな服を着ることが、次の一歩を踏み出す力になる――今回は、そんな温かい物語をご紹介します。
“神の声に導かれたと感じた元警察官ウェイド・ミリヤードさんは、ホームレスの人々が洗濯環境に困っている現実を知り、清潔な衣服と自信を届けるために移動式ランドリーを始める決意をしました。”
アメリカのメリーランド州の警察署に勤務していたウェイド・ミリヤードさん(45歳)。ある日、路上生活者が暮らす一角での家族間のもめごとに対応していたとき、「どこからともなく」声が聞こえてきたといいます。それは神からの声だと彼は信じており、その声は「洗濯について聞いてみて」と彼に語りかけました。
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ミリヤードさんはその声に従い、対応していたホームレスのカップルに洗濯をどうしているのか尋ねます。すると、二人は近くの小川で洗濯をしているというのです。この出来事が、彼の人生の新たな使命を開く扉となりました。
一杯のコーヒーから始まった、尊厳を取り戻すための洗濯サービス
警察官として働く中で、ミリヤードさんはホームレスの人々と接する機会が多くありました。あるとき、彼はホームレスの男性をコーヒーに誘いました。その男性は、洗濯する場所がないため、衣服も清潔でなく就職面接に行けないと打ち明けました。「これこそ自分がやるべきことだ」とミリヤードさんは強く感じたといいます。
警察官として退職した後の人生について考えていた彼にとって、これが決定的な転機となりました。自分の貯金と寄付金を集め、彼は使われなくなった警察のバスを改造し、移動式ランドリーを作り上げることを決めます。
“元警察官のミリヤードさんは、ホームレスの男性が「洗濯できないため就職面接に行けない」と打ち明けたことをきっかけに、自分にできる支援を見出し、退職後に貯金と寄付金で警察バスを改造した移動式ランドリーを立ち上げる決意をしました。”
2025年1月に警察を退職したミリヤードさんは、数ヶ月の準備期間を経て、念願の移動式ランドリーサービス「フレッシュ・ステップ・ランドリー」を立ち上げました。この元警察バスには、3台の洗濯機と3台の乾燥機が設置されています。
このサービスの使命はきわめて明確。住む場所のない人々に無料で、アクセスしやすく、衛生的な洗濯サービスを提供することで、彼らの自信を取り戻すこと。ミリヤードさんは一円も受け取らず、ただ人々の生活を少しでも良くしたいという思いで活動しています。
一台のバスから、明日へ。支援は今も走り続けている
サービスを利用している男性は、「清潔でいると、気分が良くなる。自分自身に少し誇りを持てるようになる」と語ります。ミリヤードさんも、「ほんの少しでも彼らを後押しできればいい。清潔な服が少しでも助けになるなら、私の使命は果たされたことになる」と話します。
サービス開始からわずか数週間で、このランドリーサービスは900キロ以上の服を洗濯してきました。多くの人々が、就職面接や医療機関の予約、あるいは日常生活を送るための自信を取り戻しています。
“利用者は清潔な服が気分や自尊心を高めてくれると語り、ミリヤードさんも小さな支援で人々の背中を押したいと話しています。”
ミリヤードさんの次の目標は、2台目のバスを導入し、サービスを受けられる人々を倍にすること。特に、安定した住居のない学生たちのための専用バスを用意したいと考えています。
多くの人々がミリヤードさんに連絡を取り、他の場所でもサービスを始めてほしいと依頼しています。現在は1台のバスしかありませんが、彼は着実に活動範囲を広げていく計画です。
「どこからともなく」聞こえたあの声は、今日も一台のバスを動かし続けています。
参考記事:https://www.goodnewsnetwork.org/retired-cop-now-drives-mobile-laundry-van-to-wash-clothes-for-the-homeless/

ライター:プロフィール

著者:堀江知子(ほりえともこ)|香港在住ライター
民放キー局にて、15年以上にわたりアメリカ文化や社会問題についての取材を行ってきた。
2025年からは香港に移住しフリーランスとして活動している。noteやTwitterのSNSや日本メディアを通じて、アフリカの情報や見解を独自の視点から発信中。
出版書籍:『40代からの人生が楽しくなる タンザニアのすごい思考法 Kindle版』。
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