
(left) courtesy photo (right) Glen with his new shed – credit, Bucket List Wishes Charity
毎日忙しく過ぎていく日常の中で、ふと「人のやさしさって、このめちゃくちゃ自分のことだけで忙しい時代にまだ存在するのかしら」なんて思うこと、ありませんか?
そう感じたときにこそ知ってほしい、世界のどこかで本当に起きた「心があたたかくなる」物語をご紹介します。
「今日一日をがんばろう!」そんな前向きな気持ちになれるお話です。
2023年の終わり頃、イギリスの街・レディングで、ある建設現場が火災に見舞われました。煙と風が渦巻く中、逃げ場を失い高層ビルの外側に取り残された作業員──その命を救ったのは、クレーン運転手のグレン・エドワーズさん(66歳)でした。
彼が操作していたクレーンのバスケット(人を乗せてビルの外壁を作業できるかご)を、視界がほとんど見えない状況で的確に操作し、命がけで作業員を救出したのです。バスケットが無事近くに届き、作業員が乗り込んだとき、そこには火と煙、有毒ガスの混ざる過酷な状況が広がっていました。
グレンさんのこの勇気ある行動はニュースとなり、地元では「本物のヒーロー」として語り継がれています。
そんな彼のもとに、ある日、意外な知らせが届きます。彼の勇気ある行動を知った慈善団体から、「あなたの夢を一つ叶えさせてほしい」と申し出があったのです。
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この団体は、人生の終わりが見えてきた人たちの「やりたいことリスト」を叶える活動をしている団体なのです。実は、グレンさんは末期がんの診断を受けていたのです。彼はがんの治療をしていましたが再発し、現在は脊髄への転移もあるとのこと。
命がけで他人を救ったその日に、グレンさん自身もがんと闘っていたのです。
でも、グレンさんが団体にお願いしたのは豪華な旅や高価な品ではありませんでした。
「引っ越したばかりの家に新しい床材がほしい」
「庭に物置を置きたい」
それだけでした。「必要なことを叶えてくれれば十分」──彼のその謙虚さに、団体スタッフたちも心を打たれました。
最終的に団体は、床と物置の設置だけでなく、新しいキッチン家電一式や寝具を購入するためのギフト券、さらには釣り旅行までプレゼント。
テレビの取材に対して、グレンさんは火災についてこう語っています。
「煙が本当にひどくて、ほとんど作業員さんの姿は見えなかった。でも、彼には8歳と13歳の娘さんがいるって聞いていたんだ。後日、その子たちから心に響く手紙をもらったんだ。読むだけで涙が出るような内容だったよ」
自分も誰かのために、ちょっとだけやさしくなれるかも
誰かの命を救い、自分の病については語らず、ただ必要なものを求めただけの彼。そんなグレンさんの姿は、「本当の強さ」と「やさしさ」の意味を私たちに教えてくれます。
日々の暮らしの中で、ふと疲れを感じたり、誰かにやさしくする余裕がなくなったりすることもありますよね。でも、世界のどこかで起きているこうした物語を知ると、「自分も誰かのために、ちょっとだけやさしくなれるかも」と思えてきませんか?
小さな親切や思いやりが、こんなにも大きな希望を生む──
今日も一日、私たちらしく、やさしさを忘れずに過ごしてみましょう。

ライター:プロフィール

著者:堀江知子(ほりえともこ)|香港在住ライター
民放キー局にて、15年以上にわたりアメリカ文化や社会問題についての取材を行ってきた。
2025年からは香港に移住しフリーランスとして活動している。noteやTwitterのSNSや日本メディアを通じて、アフリカの情報や見解を独自の視点から発信中。
出版書籍:『40代からの人生が楽しくなる タンザニアのすごい思考法 Kindle版』。
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