
ジョシュア・スティーブンス撮影、NASA地球観測衛星が捉えた2019年のアマゾン山火事
「地球の肺」とも呼ばれるアマゾン熱帯雨林。2019年には世界中のメディアが「燃えるアマゾン」と大きく報じ、その光景に胸を痛めた人も多いでしょう。干ばつや人為的な理由で広がった火災は、森林破壊だけでなく生態系や地球全体の気候にも深刻な影響を与えるとされてきました。
そんなアマゾンから、この9月、希望を感じさせるニュースが届きました。
2025年、アマゾンで火災により失われた森林面積は前年より65%減少し、観測が始まって以来の最小を記録したのです。
昨年の干ばつから一転、今年は雨と人々の努力が守った森
2024年には、アマゾン流域で記録的な干ばつが発生し、数十万エーカーの森林が焼失しました。乾いた大地と強風によって火災はさらに広がり、消火活動も追いつかない状況が続いたのです。
しかし2025年はこの状況が大きく変わりました。環境研究者フェリペ・マルテネクセン氏によれば、今年は「例年以上に強く、長く続いた雨季」が森林を守り、さらに「農民や住民が火の扱いにいっそう慎重になった」ことが火災の減少につながったといいます。
自然の恵みと人々の努力が重なった結果、アマゾンの森はかつてないほど火災から守られたのです。
衛星が捉えた「観測史上最小」の数字
火災の規模は、衛星モニタリングプロジェクト「MapBiomas」によって記録されています。このプログラムは、2019年の大規模火災をきっかけにスタートし、毎年の火災面積を追跡してきました。
そのMapBiomasの最新データによれば、2025年にアマゾンで焼失した森林面積は観測開始以来最も小さく、前年から65%も減少しました。さらにアマゾン流域にとどまらず、ブラジル全土でも火災による焼失面積は前年比54%の減少。ブラジル国内全体でも自然環境の回復が進んでいることがわかります。

COP30を前に「地球の肺」に注目が集まる
今年12月には、ブラジルのベレン市で国連気候変動会議「COP30」が開かれます。このタイミングも象徴的です。開催地はアマゾン流域の都市で、まさに世界中の視線が「地球の肺」に注がれます。
ブラジルのルーラ大統領は「2030年までにアマゾンの森林破壊を終わらせる」との公約を掲げています。今回の数字は、その実現に向けた希望のサインともいえるでしょう。
未来への希望をつなぐ
かつて「燃えるアマゾン」と呼ばれた光景は、世界に無力感を与えました。しかし2025年の成果は、そのイメージを大きく塗り替えます。
アマゾンの森はまだ生きており、守ることができる。人と自然が協力すれば、地球規模の課題にも希望を見いだせる。
このニュースは、そんな力強いメッセージを私たちに届けてくれています。

ライター:プロフィール

著者:堀江知子(ほりえともこ)|香港在住ライター
民放キー局にて、15年以上にわたりアメリカ文化や社会問題についての取材を行ってきた。
2025年からは香港に移住しフリーランスとして活動している。noteやTwitterのSNSや日本メディアを通じて、アフリカの情報や見解を独自の視点から発信中。
出版書籍:『40代からの人生が楽しくなる タンザニアのすごい思考法 Kindle版』。
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