| 香港から、ハミング編集部の知子が日常の中の小さな気づきをお届けしていきます。読み終えたあとに、今日の自分がもっと好きになれる。そんな時間になればうれしいです。 |

こんにちは、ハミング編集部の知子です。
香港での生活にも慣れ、最近では、気づけば毎日1万歩は歩く日々を送っています。もともとアクティブな方ではありましたが、今の私は、朝から体を動かして「なんて気持ちのいい1日がスタートできるんだろう!」と充足感を感じられています。
でも、実を言うと、この幸せな朝の習慣が手に入ったきっかけは、当時の私にとって「絶望」ともいえるような、最悪な出来事からでした。
今回は、40代からの人生をより身軽に、そして楽しく変えていくための「視点のスイッチ」についてお届けします。
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「最悪!」から始まった、香港での試練
事件が発覚したのは、子供が新しい学校に通い始める、まさに前日のことでした。
完全に私の準備ミスだったのですが、なんと「子供のスクールバスが、自宅の近くに停まらない」ことが判明したのです。
スクールバスが停車する家から一番近いバス停を確認して、ぼうぜんとしました。家からタクシーで10分も離れた場所。
「と、遠すぎる……」
慣れない土地で、毎日朝と昼の2回、タクシーを飛ばしてバス停まで送り迎えしなければならないとは。
「仕事をする時間が削られる」
「せっかくの私の自由時間に制約ができる」
「そもそも、毎日タクシーなんてお金がかかりすぎる!」
頭の中は、一瞬にしてネガティブな言葉で埋め尽くされました。
“子どもの新学期前日、自宅から遠いスクールバス停しかないことが発覚し、送り迎えの時間や費用への不安から、頭の中は一瞬でネガティブな思考に覆われました。”
実際にタクシー通学が始まると、私のストレスは頂点に。
香港の朝はタクシーがつかまりにくく、「もし遅れてバスに乗り遅れたら?」という焦りで、毎朝イライラが止まりません。
少しでも早く行こうと焦って外でタクシーを待っていると、そういう時に限って、タクシーがなかなか来ない。そんな私たちの横を、アパートの目の前にちゃんと来てくれる他校のスクールバスが通り過ぎていく……。
「私たちは、なんてかわいそうな親子なんだろう」
「こんなタクシー通学の生活、絶対に続けられない」
悲劇のヒロインになったような気持ちで、どん底の気分で朝を過ごしていました。

「もがき」の先で見つけた、小さな冒険
この状況を解決すべく、必死でもがきました。
スクールバスのバス停の近くのアパートへ引っ越そうか、いっそ学校を変えてしまおうか、専用の運転手を雇ったらいくらくらいになるんだろうか……。けれど、どれも現実的な解決策には至りませんでした。
結局、今の私にできるベストな選択は「毎日タクシーでバス停に行くこと」だけでした。
ほとんど、あきらめに近い気持ちでいたある日のこと。
いつものように子供をバス停で見送り、呼び止めようとしたタクシーの手を止めました。
「今日はなんかお日様も気持ちがいいし、歩いて帰ってみようかな…」
“朝の光を浴びながら歩いて帰ることを試してみたことで、思いがけない近道や小さな街の魅力に気づき、張りつめていた心が少しずつほどけていきました。”
以前、ポッドキャストで聞いた誰かの言葉を思い出しました。
「朝に5分だけお日様の光をあびると、自律神経が整っていいよ」
気まぐれに思い出した言葉に従って歩き始めてみたら、すぐに驚きの発見があったんです。
普段はタクシーでは走る騒々しい大通りを避けて、公園を横切ってみたんでする。すると、そこに予想外の近道を発見。家までの距離は歩いて20分ほど。「あれ? 意外と歩ける距離かもしれない?」
翌日も、娘をバス停で見送った後、帰りはタクシーに乗らずにまた歩いてみました。
すると、あんなにトゲトゲしていた心が、歩く振動とともに少しずつ解けていくのが分かりました。ふと顔を上げると、今まで気づかなかった景色が目に飛び込んできます。
どこからか漂ってくる、焼きたてパンの香ばしい匂い。角を曲がると、そこには、地元の人で賑わうこじんまりとしたベーカリーがありました。物価の高い香港で、驚くほど手頃な価格のぶどうパンとデニッシュ。思わず買って帰ったそのパンは、頬が落ちるほど美味しかったんです。

視点を変えたら、景色が180度変わった
「この道、子供と一緒に歩いたら楽しいかもしれない」
そう思い立ってからは、バス停からの午後の子供との帰り道も、手をつないで歩くのが日課になりました。
学校であったことを娘から聞きながら歩く20分。それは、タクシーで効率よく移動していたらきっと味わえなかった、とてもぜいたくな娘と2人だけの大切な時間になりました。
さらに、あんなに私を苦しめていた「朝はタクシーが捕まらない問題」も、実はあっさりと解決しました。
配車アプリの「Uber」を使い、家を出る10分前に手配すれば、だいたいの日は玄関を出たら車が待っていてくれる。
「なんであんなにイライラしてたんだろう」
悲劇のどん底にいるときは、すぐ側にある解決策にさえ、目が向かなくなっていたのです。気をもんでいたタクシー代も、勤務先が「通学費」としてサポートしてくれることが決まり、経済的な不安も消えていきました。
「がんばり」を手放して、直感の声を聴く
「悲劇のどん底」にいた私ですが、あれから10か月。今の私の朝は、こんな感じです。
子供をバス停で見送ったあと、香港らしいエネルギーに満ちた都会の街並みを見下ろしながら、緑豊かな公園を突き抜けてゆっくりとランニング。朝日を全身に浴びながら、広場で太極拳に励んでいるおばあちゃんたちからもパワーをおすそ分けしてもらっています。
あの時に「最悪」だと思っていた時間は、今では「1日を最高にするためのスイッチ」に変わりました。
これが、よく言われる「パラダイムシフト(見方の転換)」なのかなと思います。
40代を過ぎ、人生の折り返し地点に立つ私たち。
“かつては最悪だと思っていた朝の時間も、今では公園を走りながら街のエネルギーを感じる「一日を最高にするスイッチ」へと変わり、物事の見方が大きく変わったことに気づきました。”
これまでは「こうあるべき」「もっと効率よく」「もっと頑張らなきゃ」と、自分を枠に当てはめて苦しくなっていたかもしれません。
でも、もし今あなたが何かに突き当たって「最悪だ」と感じているなら、それは「生き方をもっと楽にするためのサイン」かもしれません。
ほんの少し視点をずらすだけで、目の前の障害物は、あなたを幸せにするための「扉」に変わります。
もっと自由に、もっと欲張りに、やりたいことをやっていい。まずは深呼吸をして、自分の内側の声に耳を傾けてみてくださいね。

ライター:プロフィール

著者:堀江知子(ほりえともこ)|香港在住ライター
民放キー局にて、15年以上にわたりアメリカ文化や社会問題についての取材を行ってきた。
2025年からは香港に移住しフリーランスとして活動している。noteやTwitterのSNSや日本メディアを通じて、アフリカの情報や見解を独自の視点から発信中。
出版書籍:『40代からの人生が楽しくなる タンザニアのすごい思考法 Kindle版』。
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