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お産は「痛い」でなく「気持ちがいい」もの。ドゥーラのサポートで本来の自分に戻った出産体験とは【バースドゥーラの木村章鼓さんインタビュー】

 

「お産は痛いもの」――そう思っている人は多いかもしれません。でも、今回お話を伺ったバースドゥーラの木村章鼓さんは、「お産はきもちいい体験だった」と語ります。実際に2回の自宅出産を経験し、その背景にはドゥーラの存在がありました。

 

そもそもドゥーラとは何をしてくれる人なのか? 産婦さんにどんな変化をもたらすのか? 木村さんの体験を通じて、ドゥーラがいることで「お産がどう変わるのか」が見えてきました。そして今、日本でも注目を集めるドゥーラの役割と、その広がりの理由についても深掘りしていきます。

 

ーー木村さんは、自宅出産を2回されていますが、どんな体験でしたか?

 

日本とアメリカで、自宅に助産師さんを招いて水中出産をしました。その経験は「自分の自立性を持つことが人生を生きていく上での底力になる」ことを強く感じさせる体験でした。「痛い」「辛い」「怖い」のがお産だと思っていましたが、実は「気持ち良くて、楽しくて、辛くない」ことがとことん腑に落ち、驚きました。こういうお産の文化は、日本ではまだ知られていないのではと思います。

 

産婦人科医の先生と比べて、助産師さんの存在はあまり認知されていないかもかもしれません。でも、「お産の医療化」という流れの中で、精神的にも肉体的にもお産を支えてきたのは日本の産婆さん、つまり助産師さんだったと思うんです。

 

私はありがたいことにすばらしい助産師さんに出会い、20年前に素晴らしいお産をさせてもらいました。私一人が体験するだけででいいのだろうかという罪悪感が出るほどだったんです。

それから私もドゥーラになりたいと思って、この20年間ずっと走り続けてきました。

 

ーー多くの女性が、出産は痛いものだと考えますが、そうではなかったのですね?

 

ミシェル・オダンという80代のフランスの産婦人科医がお産について興味深い調査をしています。この医者は若い頃から、フランスの国立病院の中に「野生の部屋」と名付けた部屋を設けました。女性が野生に戻るために部屋を薄暗くし、洞窟の奥にこもったような感覚になれる部屋を作ったんです。すると、この部屋で出産する多くの女性が安産だったのです。この調査から、外部から介入やコントロールされないお産は、本人の野生的部分や五感を発動させ、お産の痛みではなく、質の高い心地よさをを生み出したことがわかりました。

 

私自身も女性の体について学んでいくうちに、私たちが知らないだけで、女性の体に起きることはこんなに深い意味があり、日本の助産師さんのケアレベルが世界的に見てもそうとう高く素晴らしいものだったということを知り、大きな衝撃を受けました。

 

 

ーー日本の助産師さんのケアレベルは世界とどう違うのですか?

 

日本の助産技術で筆頭に挙げられるのが「会陰保護」です。日本の助産師さんが辛抱強く待てるのは豊かな経験の裏返しでもあります。会陰が和紙のように伸びると、赤ちゃんの頭が産道をくぐってきても割けることなく、外科的な処置の必要もないのです。これは、体にとって健やかで優しく痛みのないお産となります。こういう会陰保護の技術があるのはすごいなと気づきました。

 

例えば、日本の助産師さんは熱いお湯を洗面器にはって持って来てくれます。その洗面器に清潔なガーゼを浸し、熱いうちにキュッと指先で絞って、女性の会陰に押しくらまんじゅうのような力で押し戻してくれます。それを繰り返すと会陰も慣れ潤いが増し、初産でも会陰は裂けません。そんな風に丁寧に大切に会陰を扱ってもらう経験は「ご神体として大切に体を扱ってもらった」という財産になります。ですから、私は助産師さんに恩返しをしたいし、こういうお産を体験する女性が一人でも増えてほしいと思っています。

 

ーードゥーラと助産師の違いは?

 

医療者か被医療者かの違いだけですね。私たちバースドゥーラは非医療的な関わりをしていきます。医学的な見地からお話をすることはなく、何かあった時に「この専門の先生に見てもらうといいですよ」とか「こういう鍼灸師さんがいますよ」といった橋渡し役をやっていますね。

 

ーー日本でドゥーラの認知度は広がっている?

 

私が理事をさせていただいている「ドゥーラシップジャパン」という一般社団法人が、日本では一番古いドゥーラの団体です。ドゥーラの認知度は、テレビなどのメディアにとりあがられるようになり高まっていますし、利用する女性も増え、産後のケアに特化した団体も増えています。

 

一人の女性が出産する回数が減ってきている今だからこそ、その一回、二回の貴重な体験をより良い体験にし、大切な子供たちをどう産み育てていくかということに意識を払っているお母さんが増えていると感じますね。

 

 

ーードゥーラは、具体的にどんなサポートをしてくれるのでしょうか?

 

ケースバイケースで個人差がありますね。自宅分娩の方なら、そのままお家でお産。病院など外部施設でお産の場合も、ドゥーラは寄り添い、お産に向き合う女性を「女神のように丁寧に扱って心情的なサポートに徹する」というのが根幹です。

 

例えば、アロマセラピスト専門の方だったら香りだったり、他にも音楽、照明や、環境的なものをセッティングするということもドゥーラの目配りする分野に入ります。妊婦さんだけでなく家族全体もサポートします。

 

例えば付き添いのお父さんが所在投げにしていたら「コーヒーを飲んで外で休んできたらどうでしょう」なんて声をかけることで、逆に元気になって部屋に戻ってきて心身ともに心構えできる男性もいますね。逆にお父さんには「ずっと奥さんの背中をさすっていてあげてください」とお願いする場合もあります。

 

分析的なマインドが働きがちな男性は出産時に奥さんの会陰を凝視してしまうこともあるんですね。でも女性にしたら恥ずかしいですし、膣をずっと観察されるのはちょっと…という方もいますよね。その場合もドゥーラが適切に対応します。

 

バースプランを立てる時に、ご希望に応じて、どんな風にドゥーラがクッション役として皆さんがサポートし合えるかを判断します。妊婦さんの身体的な快適さのためのお手伝いだけでなく、お父さん、お子さん、義理のお母さんや、実家のお母さんなどへの対応はそれぞれで語り尽くせないですね。

 

産後は「お産のふりかえり」と呼ばれる体験の聞き取りも行います。女性が「あの時言われた一言が傷ついた」など後から思わぬことを思い出したりすることがあるものです。出産直後に行うのが良いので、お産から数日とか数週間してから女性の希望に応じて行います。このふりかえり以外にはもちろん身の回りのケアも大切な役割です。

 

ロンドンで私がドゥーラをしていた時に、出産直後のお母さんが私に、「赤ちゃんを抱っこしていてほしい」とおっしゃいました。「プールで泳ぎたい」と言うんです。「産後にプールだなんて体が冷えてしまうからダメ」なんて専門家的な目線で言いたくなる人もいますが、その方はずっと泳いできた方で出産で泳ぎを中断し、またすぐに泳ぎたいという方だったんですね。産後の女性が必要としているのが、泳ぐことなら、安心してプールに行ける環境を整えるのがドゥーラの役割です。

 

産後の女性は普段と異なる環境で多くのプレッシャーを感じながら育児を頑張っているので、見えないストレスをどうほどいていけるのか提案をすることで、ドゥーラがいるといないとではずいぶん違うのではと思います。ドゥーラがいることで、自分が本来の自分に戻る心の余裕が生まれます。

 

ーードゥーラをお願いしようかと悩んでいる方に伝えるとしたら何になります?

 

私たちは母親である前に、一人の女性として生きています。そして私たちは、周りとのつながりの中で生かされています。自分が生きているというよりも、周囲との調和の中で生きることが大切です。ドゥーラがいることで、自分を俯瞰して見ることができるようになります。「一人で全部頑張ろう」と思っていた自分が、実は助けが必要だと気づき、自分の弱さを受け入れて回りに頼ってもいいのだということがわかるでしょう。ですから、ドゥーラという信頼できる人がいることで、心に余裕が生まれると思います。

 

ーー ドゥーラはどうやって探せますか?

 

私が理事をさせていただいている「ドゥーラーシップジャパン」では、日本各地のドゥーラを登録制にしてご紹介していますので、まずはぜひご連絡ください。

 

 

ーードューラを見つける時に注意すべきことは?

 

ご自身の直感を信じることですね。この人は良さそうだとピンとくる人が数人いたら、皆さんに会って相談をしてみてください。共振共鳴して「この人にお産の場にいてほしい」と体がイエスの信号を出す人をいかに選べるかですね。いかに、自分の直感を尊重できるかが大切な点でしょう。

 

ーードゥーラさんが見つかったら、産後どのくらいの期間サポートをお願いするものですか?

 

これも個人によりますね。産後も、毎週必要とする方もいれば、母乳育児が波に乗ったから、産後は数回で卒業される方もいらっしゃいます。一歳、二歳なるまでお願いする方もいらっしゃいました。

 

ーー木村さんが主催されているドゥーラ養成コースとは?

 

私からドゥーラ養成クラスを受けたいというリクエストをいただいたことがきっかけで、四年前に始めました。ヨーロッパやアメリカなど各地域から日本人の方が参加しています。半年間のプログラムですが、講師として私も学ばせてもらうことが多いです。

 

受講者には、産婦人科医の先生や助産師さんなど、医療従事者の方もいて、医療が立ち行かなくなってきている心の領域、数値では表しにくい心のケアをどういうふうに補っていけるかというところで、ドゥーラに興味を持ってくださる方が増えてきています。

 

今期は2025年3月に終わり、2025年の秋に新しい受講生さんを募集する予定です。

 

ーーこれから出産を考えている、または控えている女性に木村さんが伝えたいメッセージは?

 

「お産は誰のものですか?」ということですね。お産体験はどんどん一元化しているのが今の社会の流れです。この流れに抗って、自分の感覚を大切にし、これでいいのか?と考えた時にこれでいいんだって思ったらそれでいいし、ちょっと違うのなら、立ち止まって問いかける姿勢がますます重要な時代ですよね。

 

健康で自然な出産文化を日本に残したいと思っています。戦後、自宅出産が90%だった時代から、施設出産が推進され、今では99%が病院で出産されています。医師たちのケアは主に外科的手法に特化していますが、助産師たちは月経と同じ女性の生理的なプロセスであるお産をサポートする役割を今も果たしています。

 

だから、目先の手軽さだけでなくて、10年後、20年後の自分と赤ちゃんの健康を見据えて、誰とどこで産むのかという選択をしてほしいなと思います。

 

自分の力で子供を産むことで、女性は自尊心を感じることができます。私は、そうした自立した女性が社会にますます増えていくことを願っています。

 

 

 

ーー 木村章鼓さんプロフィール

バースドゥーラ/ドゥーラシップ ジャパン理事/日本語による初のバースドゥーラ養成スクール主宰

 

8都市20年の海外生活で産みゆく女性に寄り添いつつ健康的な衣食住の大切さを伝える。周産期医療に携わる医療従事者向け専門誌『周産期医学』(東京医学社)寄稿、『ペリネイタルケア』(メディカ出版)連載実績、お話会(慶應義塾大学、上智大学、筑波大学等)、雑誌『岩戸開き』(ナチュラルスピリット社)、『Veggy』(Kirasienne)インタビュー等、海外4ヶ国講演ツアー、日本全国の自治体等での講演活動、1dayワークショップ、レボゾ(布を使った施術)トレーニングや、ウーマンズリトリートなど合宿型体験学習をリード。二児の母でありバースアクティビストでもある。 

 

共訳書籍 『自己変容をもたらすホールネスの実践 〜マインドフルネスと思いやりに満ちた統合療法〜』原題: The Practice of Wholeness ~Spiritual Transformation in Everyday Life~

インスタグラム:https://www.instagram.com/lovedoulakiko


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