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タンザニアの生理事情から考えた生理の過ごし方

月1でくる生理に悩まされる女性は多いですよね。

 

アフリカでのある体験をした著者は、生理が来るのが待ちどおしくなり、生理中は普段よりも感謝の気持ちでいっぱいになれる特別な期間へと変わりました。

 

そのヒミツをお伝えします。

 

生理への向き合い方を変えた、アフリカでのショッキングな体験

 

毎月、女性に訪れる生理。みなさんは、どういう気持ちで生理を受け入れてますか?

 

生理は、痛くてゆううつなもの?日々の生活に支障をきたすもの?

 

または、女性であることを実感できる特別なもの?

 

そして、この生理をやさしく受け止めてくれるナプキン、このナプキンが、もし手に入らなかったら、そんなことを考えたことはありますか?

 

タンザニアで目にした光景は、日本の女性がいかに清潔な環境で恵まれているかを改めて感じ、生理と向き合うきっかけとなりました。

 

タンザニアのナプキン事情を知らずにいた私に、衝撃的な出来事が起こりました。

 

ある日、自宅の床に血がぽとぽとと滴っているのを発見した私は驚いて、お手伝いさんとしてきてもらっているタンザニア人女性に何があったのか、たずねました。

 

彼女は、「あら、ごめんなさい。今わたし、生理中なの。」と、苦笑しながら、床をふき始めました。

 

タンザニアでは、市販の生理用ナプキンは高価なため、(月給平均25,000円、ナプキン30枚入りは約500円 (2022年12月現在))一般のタンザニア人女性は、使い古した布を使ったり、村では木の葉で対応することもあるのが現状です。

 

適切なナプキンが入手しづらく、トイレ事情も整っていないタンザニアで、このナプキン問題は衛生面だけではなく、教育面でも女性に試練となっています。

 

生理がきても、ナプキンがない女子学生たちは学校を休むことになり、彼女たちの勉強の遅れが懸念されているのです。

 

タンザニア水衛生ネットワークのデータによれば、ほとんどのタンザニア人女学生は、生理が理由で月に1~3日は学校を休んでいます。

 

女性による女性のための布ナプキン支援の活発な取り組み

 

こうした驚きの事実を目の当たりにした外国人たちは、アフリカで様々な支援活動を行っています。

 

私も、タンザニア在住の外国人女性たちに交じって、あるボランティアに参加しました。

 

ミシンで布ナプキンをつくり、タンザニアの女性たちに無料で配る活動です。

 

また、「アフリクラフト」というタンザニアのNGO団体は、タンザニア人女性たちに布ナプキンを提供したり、自身でナプキンを手作りできるスキルを教えるなど幅広くこの問題に取り組んでいます。

 

こういった取り組みを支援したい場合、日本からでも寄付の形で応援することができます。

 

★アフリクラフトの活動を応援してみる

 

日本では浸透していない布ナプキンを見直してみる

 

筆者は、清潔なナプキンへのアクセスが当たり前ではないタンザニアで、女性たちの救世主ともなっている、この布ナプキンについて考えてみました。

 

日本では、市販の紙ナプキンを使用する女性が圧倒的に多く、布ナプキンの使用率はわずか2%というデータもあります。

 

布ナプキンの使用には「洗濯が手間」「多い日は漏れが心配」などのデメリットがあり、忙しい日本人女性の間では普及しないのもうなずけます。

 

市販の紙ナプキンと布ナプキンを3か月使った後の比較実験も行われています。

 

参加者からのアンケートでは、布の感触とナプキン洗濯時の月経血の観察をすることで、生理が「やっかい」なものから「自然」なものへと変化した、生理時の不快感の改善につながったとの結果も出ています。

 

また、昨今のSDGsの流れで、からだにも環境にもやさしく、「生理痛が軽くなった」「経血量が減った」「肌さわりが気持ちいい」「かぶれにくい」などのメリットがある布ナプキンが注目されはじめています。

 

筆者自身は、10年ほど前から、布ナプキンを常用しています。

 

手洗いの手間はありますが、経血量を自分で把握することで無意識に自分の体に向き合うことになり、自分のからだに対して、がんばってくれてありがとう、という感謝の気持ちがうまれます。

 

タンザニアでの体験から、毎月活躍してくれる布ナプキンに対しても感謝するようになりました。

 

生理時期を「自分にやさしくする特別ウィーク」に指定してみる

 

生理の週は、家族や周りの人に甘えさせてもらい「じぶんにおもいっきりやさしくして、いつもより少しだけ手間をかけてあげる月に1回の特別な期間」と位置づけてみるのはいかがでしょう。

 

そうしたら、からだにもやさしい布ナプキンを使ってみようかなという心の余裕が生まれるかもしれません。

 

生理に限らず、日々の生活の中で、ゆううつと感じることでも、見方を少し変えることで、生き方が楽になったり、普段あたりまえに思っていることへの感謝の気持ちに気づいたり、知らない間にがんばっていた自分に優しくなれるのではないでしょうか。

 

次にくる生理とは、「自分にやさしくなれる絶好のチャンス」として、今までとは違う気持ちで向き合ってみるのはいかがでしょうか。

 

著者:堀江知子(ほりえともこ)

 

タンザニア在住ライター。民放キー局のアメリカ支局にてインタビューや番組制作のプロデューサー業に15年間携わる。

現在は、日本に知られていないアフリカの魅力や生活の様子について日本メディアへの発信や執筆活動をしている。

 

参考文献

タンザニアの給与データ:https://ilostat.ilo.org/data/country-profiles/

日本の生理用品データ: https://femtech.tv/news65/ 

紙ナプキンと布ナプキン比較調査:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspehss/67/0/67_127_1/_article/-char/ja/

ウェルビーイングに生きるために不可欠な要素とは?【島田恭子の自分学 vol.04】

最近よく耳にする「ウェルビーイング」という言葉。「よりよく生きる」ために、私たちは自分のために何ができるでしょうか。他の誰でもない、自分のために、自分らしく生きて、自分自身が幸せを実感できる毎日へ。この連載では、精神保健学者の島田恭子さんに、自分軸でモノゴトを進めていく人生を送るために学びたい「自分学」について教えていただきます。


「よかったこと日記」始めました

効果のほども知っているのに、これまでやれていなかったこと・・・。私にとってその1つが「よかったこと日記」を書くことでした。
いろいろなやり方がありますが私の方法は、その日に
・よかった行動を1つ
・感謝すること1つ
を書くという、至ってシンプルなもの。
エクセル表で日付ごとに2つのセルをつくり、プリントアウトして手書きで記入しています。こんな感じです。

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この日記のポイントは、とにかく簡単にできること、そして1日の終わりにその日のポジティブ行動や感謝を思い返せることにあります。

3つのいいことを書く、あえてネガティブなことも出してみる。などいろいろなやり方があり、その効果を検証した論文も複数あります。私は何事も「続ける」ことが苦手(=性格特性のマジメ度が低め)なので、まずは小さなステップから、毎日続けられることを優先にしました。口語体でいいし、誰にも見せない前提だから、どんなことでも書けます。自信たっぷりにステキと感謝を書き連ねたものを眺めてみると、にんまりしたりして・・・。「よかったこと日記」で、いつもは気付きづらい、何気ない毎日の感謝や良い行動に、目を向ける習慣がつくといいですよね。


自分にとって居心地のいい生き方

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さて今回は、自分にとって居心地の良い生き方を模索する大切さについて考えてみます。

居心地の良い生き方。それは価値観とかウェルビーイングに置き換えられるかもしれませんが、それらは目に見えるものでもなく、きれいにタイプ別に分けられるものでもありません。100人いたら100通りで、時と共に変化もします。常に修正しバランスを取りながら、試行錯誤し自分で探していくものです。

でもよく「自分の価値観がわからない。何が好きで何がしたいのかわからない」とか「自分の価値観や好きなことがわかって、それを活かせている人なんてほんの一握り」なんて言いますよね。そうでしょうとも。それでいいんです。だからこそ私たちは試行錯誤しながら、自分がどうしたいのか、どうするのが心地よいのかを模索していく。時間をかけて少しずつ自分の価値観を探し当てていくものだと思います。

例えば私たちは「ジブン診断」をすることで、自分の特性や強み、改善点を知ることができました。

日常のささいな出来事や選択のタイミングごとに、社会やまわりの基準ではなく、自分がどうしたいかを優先することの大切さを認識できました。価値観やウェルビーイングは、このプロセスの繰り返しを通して徐々に見つけていけます。幸い私たちの毎日には、数限りない選択のタイミングがありますから、そのたびに自分軸を意識する訓練ができる、というわけです。
だからあきらめるのはもったいない。「自分にとって居心地の良い生き方は?」と常に意識し、それに近づくためにあきらめることなく動き続けることが大事なのです。

その際にヒントとなる、いくつかの心理学的な知見をご紹介しましょう。


「なんとかなる」と希望を持ち続けること

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ナチス政権下でのユダヤ人大虐殺。長く過酷な抑留生活に耐えられた人とそうでない人の差は「希望」であったことを、精神科医ヴィクトール・E・フランクルは名著『夜と霧』にまとめています。ホロコーストとまでいかなくとも、私たちは誰しも、生きていれば本当につらく悲しい出来事があるもの。そんなとき、周りの力を借り、時間をかけて、現実を受け止め、「なんとかやっていける。このことにも意味があるのだ」と思えること。それが前に進む原動力となることを、心理学者Dr. アントノフスキーは長年の研究から明らかにしました。

どんなことがあってもあきらめずに「なんとかなる」と希望を持ち続けることが大切なのだと、この2つの研究は私たちに教えてくれます。


成長し続けたいという気持ち

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私たちの居心地を考えるうえで大切な“心理的ウェルビーイング”という考え方は、実はその下に6つの要素を持っています。そのうちの1つが「人格的成長」というものです。例えばこんな感じです。

・これからも私はいろいろな面で成長し続けたいと思う
・新しいことに挑戦して、新たな自分を発見するのは楽しい
・自分らしさや個性を伸ばすために、新たな事に挑戦することは重要だと思う
・私は新しい経験を積み重ねるのが、楽しみである

どうでしょう。いくつになっても新たなことに挑戦し、経験を積み重ね、成長したい!と思い進むことが、ウェルビーイングと直結していることがよく分かります。


やってみよう&なんとかなる

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また日本の研究者により検証された「幸せの4因子」というものがあります。慶応大学の前野隆司教授らは、ウェルビーイングの高い人の特徴を、以下4つの簡単な言葉で表しました。

1. やってみよう因子:ワクワクしながら主体的に自己実現に向けて成長すること
2. ありがとう因子 :人とのつながり、絆を実感し、感謝すること
3. なんとかなる因子:楽観的に失敗を恐れずチャレンジ精神をもつこと
4. ありのままに因子:周りの人の評価ではなく、自分の軸で自分らしく生きること
(※説明は、著者が平易に改変)

また同じようなキーワードが出てきましたね。「なんとかなるさ、やってみよう」と、力むことなく前進するイメージでしょうか。

これら4つの心理学知見を考え合わせると、「なんとかなる、と希望を持ち、いろんなことに挑戦、成長しながら、気負わず楽しんで前に進んでいく・・・」というマインドが、ウェルビーイングに生きるために不可欠な要素であることがわかります。ニワトリが先か卵が先か、という話にもなりますが、幸せになるのを待つのではなく、「私のウェルビーイングってどんな形?」と模索しながら、あきらめずに歩き続けることこそが、私たちをウェルビーイングにしてくれる、ということでしょう。


4回にわたりお伝えしてきた「自分を知る」ことの重要性、そしてウェルビーイングに生きるために必要なこと・・・。いかがでしたでしょうか。少しでも気付きがあったならば嬉しいです。
皆さんのこれからが、ますますウェルビーイングなものになりますよう願いを込めて。


shimada


Profile
島田恭子(しまだきょうこ)
精神保健学者。コンサル会社での人材育成を通して、心の健康の重要性を感じ、東京大学大学院にて予防医学とメンタルヘルスを学ぶ(保健学博士)。「人が、心豊かでその人らしく、健やかな人生を送れるように後押しすること」がライフワーク。一般社団法人ココロバランス研究所代表。
https://linktr.ee/kokorobalance
Instagram @kokorobalance

私を変えられる?「じぶん診断」のトリセツ【島田恭子の自分学 vol.03】

最近よく耳にする「ウェルビーイング」という言葉。「よりよく生きる」ために、私たちは自分のために何ができるでしょうか。他の誰でもない、自分のために、自分らしく生きて、自分自身が幸せを実感できる毎日へ。この連載では、精神保健学者の島田恭子さんに、自分軸でモノゴトを進めていく人生を送るために学びたい「自分学」について教えていただきます。


体と心はつながっている

shimada

散歩、始めました。

「歳のせいか、暑さのせいか、最近5時前に目が覚める~」とぼやいていたら、“朝ラン”を勧めてくれた友達。朝起きたらとりあえず、すっぴんにマスクで家を出て走り始めるのだと。

私と違い、ハマるときちんと続ける彼女。曰く、走るととにかく調子がいい。いろいろ良いけど一番は、気持ちがスッキリするのだと。

無心で走る。頭を巡らせながら走る。今日のTo Doを整理しながら走る。20~30分もすると、頭と心がめちゃくちゃスッキリ。1日の快適度も生産性も爆上がりとか。
確かに“運動”は予防医学とメンタルへルスにとって大事なキーワード。「運動している人にうつはいない」という人もいるくらい、体を動かすことと心の健康には関連があるとわかっています。

・・・とはいえ、キツい運動が嫌いな私は、走るのは無理。だから散歩で効果を検証。しかも朝が無理なときは昼でも夕でも夜でもいいことに。しかも本来散歩目的じゃない、用事の間の移動も、散歩と見なすことに。

これならちょっと続けられるかも。

仕事での行きづまり、プライベートのお悩み・・・頭を悩ますことは次から次に事欠きません。散歩はそんな私たちの頭と心を、お手軽にすっきりさせてくれそう。自分のペースで無理なく続けられたら、きっと調子づいてきそう。まずはシンプルに朝散歩。皆さんも試してみませんか?


「じぶん診断」をどうとらえるか

shimada

前回の記事では皆さんに、簡単な「じぶん診断」をやっていただきましたが、いかがでしたか?
大学の授業でもたまにやるのですが、学生さんの関心度ナンバーワンは、「人生で成功するのはどんな特性?」です。

成功の定義にもよりますが、5つのなかでは、「マジメ度」が高め、しかも頑張らなくとも、無理なく高水準を維持していることが、人生の良い結果につながる(例えば成績や地位が高い、など)傾向があることがわかっています。
無理なく、と言ったのは、頑張って「マジメ度」を上げているのではなく、そうしたいからそうしている、ということです。

例えば夏休みの宿題。ついつい先延ばしで一夜漬け、が王道パターンですが(笑)、そんななか「やらなきゃ後が大変になるし、そうなったらやっつけ仕事で質が下がるから、今のうちから少しずつやろう」と計画的に進められるのが、無理のないマジメさん。

「やらなきゃ! やらなきゃ!(焦)」と強迫的な“ねば”思考でマジメさを維持しているのとちょっと違いますね。日々の生活のなかで、小さいことでもできることを、少しずつ、少しずつ。後が大変になることを考えに入れ、不必要な羽目の外し方は極力避ける。・・・締め切りが過ぎてからこの原稿を書き、月に1、2回は二日酔いで悩まされている私からは、眩しすぎる特性です。

実はマジメさは長生きとも関連しているんです。「陽キャ度」が高いことや新しいもの好き、などは、陽気で元気なお年寄りを連想し、長生きしそうですよね。

でも実は、“若いころからのマジメさ”も、長寿と関連しています。確かに若いころからある程度のマジメさがあると、健康に気を遣うし、お酒やタバコもほどほどに、危険な行為(薬物、暴力、危険な運転や性行為など)からも距離を置けますね(セルフコントロール力と言います)。

こんなふうに、いいポイントがいっぱいのマジメさですが、高すぎるとそれはそれで、柔軟性を欠いてしまいます。例えば、「マジメ度」が高い×「おだやか度」が低いという組み合わせが極端になりすぎると、強迫的な完全主義につながる恐れがあります。

完全主義というのは、達成できないような高すぎる目標を完璧にこなそうと思い、できなかったらすべて失敗だ、と思ってしまうこと。

周りから見ると無理すぎる難題、本人だけではどうにもできない要素があるにもかかわらず、本人は自分を責め、落ち込んだり、病気になることすらあるんです。


私たちの性格はたくさんの面を持っている

shimada

「じぶん診断」の結果を「ふーん、ま、こんなもんだよね」と済ませてしまうのはもったいない。日々の生活や人との関わりのなかで、自分の性質を意識して、活用したいものです。

だからこれからこの連載でお伝えする、よりよく生きるヒントも、ご自分の性格を踏まえたうえで、取り入れていただくのがおすすめです。

とはいえ、「自分の性格、直視するの、結構キツいです」というコメントもよくいただきます。・・・わかります、わかります。

皆さんはご自分の録音した声にびっくりしたこと、あります? 自分の耳骨を通して聞こえる自分の声が、実は周りが聴いている本来の自分の声と違うことからくる現象だそうですが、最初に自分の声がこんな?と思って、私も驚愕しました。

写真や映像に映る自分が嫌い、というのもよくありますね。これも、自分が思っている自分像(往々にしてちょっと美化されている)と相手目線の画像が違うことからくる違和感です。

「じぶん診断」もこれと同じです。標準化された設問で自らの性格をとらえると、改めて「ここ直したいんだよなー」ってところが強調されたり、周りや他の誰かに比べて劣っている(と思われる)ところに目が向きやすい。写真と一緒ですね。

「いやいや私、この性格めっちゃ気に入ってるから!」という幸運な人はさておき、できれば直視したくない!という私のような方がほとんどなのでは・・・? そんな気持ちを乗り越え、「じぶん診断」をしてくださったあなたに、「じぶん診断」に関するとっておきの3つのことをお伝えしておきましょう。


心に留めておきたい3つのこと

shimada

その1. なるようになっていく

前にお話ししたように、私たちの性格は半分くらいが生まれ持ったもので、残りは置かれた環境や年齢を経て少しずつ変わっていくことがわかっています。

ではどんな変わり方をしていくのかを全体の傾向で見ると、“いい感じに、なるようになっていく”ということです。極端に尖っているポイントがあってそれが悩みでも、それが少しずつ中庸に落ち着いて“いい感じ”になっていきます。

人生は選択の繰り返し。私たちは1日に数えきれないほど選択をして生きています。その選択の元になるのは、私たちの特性や価値基準です。だから知らず知らずのうちに、“居心地の良い選択”をしているんです。

その選択によって環境も周りの状況も変化し、またそれが自分の特性や選択の仕方を少しずつ変えていくーー。そんな有機的な関わりと年齢が重ねられ、いつしか心地よいポイントに収まり安定していく、というわけです。

確かに私の「マジメ度」も、20代に比べれば少しは上がってきたかも。「陽キャ度」も少し落ち着いてきたかも。
人間は成長する生き物です。生活するなかでの痛い思いや楽しい出来事を通して、“なるようになっていく”。
実は無理に変えようと、焦らなくてもいいのです。


その2. 人と比べてもあんまり意味はない

かけっこ、受験、年次評価・・・。幼いころから今まで、人と比べられる“相対評価”にさらされてきた私たち。ついつい誰かと比べることに、慣れてしまっています。

だから“性格は優劣じゃない”とわかっていてもつい、「〇〇ちゃんは、明るくていいわよね~、私なんか・・・」とか、「私、何でも小さいことを気にしてくよくよ悩む性格なんだけど、△△さんはあっけらかんとして、本当に羨ましいわ」「周りはみんな、仕事もお家もきちっとしてるのに、私のこのいい加減なとこ・・・ホント嫌になっちゃう!」といった感じで、何となく、周りの誰かと自分を比べてしまいがち。

でもそれにはあんまり意味がないんです。たかだか10の質問からなる「じぶん診断」でしたが、選択肢の数を考えると、なんと、なんと、2億8,247万5,249通りあることになります。・・・すごい数ですよね。

性格は多面体。誰かのほんの一部と自分を比べても意味がない。
意味があるとしたら、星の数ほどある他者との比較ではなく、昔の自分、昨日の自分との比較です。もしくはどうしても誰かが気になる場合、“比べるのではなく、なりたい自分の理想イメージのヒントにさせてもらうこと”。ーーそれならとってもGoodです。


その3. 環境と性格を味方につける

その1.で「人はなるようになっていく」とお伝えしましたが、そうはいっても「ここ、ちょっと変えたい」というときがあります。ここがこうなったらもう少し楽になるのに、とか・・・。

今後の連載で具体的な方法をお伝えしていきますが、まずは、そんなときに意識したいのが、“環境と性格を味方につける”ということ。性格は多面的だから、ほかの特性を活用するんです。

例えば私は、新しもの好きで、マジメさが極めて低い。理想からほど遠く足りていません(だから〆切過ぎてこの原稿を書いています)。
でもそんな私が無理にマジメさを上げようとすると大変です。四方八方に興味があり、いろんなことに手を出しつつ、それぞれをこつこつやりとげるなんて、なかなかハードルが高い。

でも私には“みんなとワイワイするのが好き”、という特性があります。だから仲間(環境)と自分の性格を味方につけて、チームで物事を進めると、とてもうまくいきます。どうしても必要な一人での仕事は、信頼できるビジネスパートナーに叱咤激励してもらいます。

一方このパートナーは、自律性が高く、一人で仕事に没頭できる環境を好みます。人間として成熟した彼女は、自分の特性や優先順位を熟知しているから、自分がより心地よい環境を味方につけています。都会的でも静かな場所で、好きな音楽やガジェット(と小鳥)に囲まれ、緑と風を感じて暮らす。
一人で没頭できるよう、直接よりもオンラインのほうが効率の良い種類の仕事を選んでいくことで、彼女の可能性はどんどん広がっているようです。

彼女のように、自分の特性を意識できると、それに応じた環境を味方につけられる。より心地良い生き方が選択できる。

「自分学」の目的は、自分にとって心地良い居場所や生き方を作っていくこと。そのために使えるヒントを与えてくれるのが、「じぶん診断」なのです。


次回からは、いよいよ自分学の真髄、“私たちの価値観”について、考えていきます。

次回をお届けするときは、第7波、少しおさまっていますように・・・。落ち着かない日々ですが、皆さんどうか、ご安心、ご安全に、お過ごしくださいね。


shimada


Profile
島田恭子(しまだきょうこ)
精神保健学者。コンサル会社での人材育成を通して、心の健康の重要性を感じ、東京大学大学院にて予防医学とメンタルヘルスを学ぶ(保健学博士)。「人が、心豊かでその人らしく、健やかな人生を送れるように後押しすること」がライフワーク。一般社団法人ココロバランス研究所代表。
https://linktr.ee/kokorobalance
Instagram @kokorobalance

思い描く道へ。自分のチカラで切り拓く人生を【女優 中西悠綺のIt’s My Story】

世界で活躍する女優を夢見て、中国に渡った中西悠綺さん。現地の演劇大学に入学するも、何のつてもなく、映画の制作会社を一人でまわってチャンスを探す日々ーー。そんな中西さんの情熱が伝わったのか、中国での初仕事が映画の主演! しかも日本人女優が中国映画で主演を務めるのは前例のない快挙です。女優を目指すきっかけや、なぜ世界のなかで中国を選んだのか。これまでのキャリアと今後の展望を聞きました。

3分で診断できる「私ってどんな人?」【島田恭子の自分学 vol.02】

最近よく耳にする「ウェルビーイング」という言葉。「よりよく生きる」ために、私たちは自分のために何ができるでしょうか。他の誰でもない、自分のために、自分らしく生きて、自分自身が幸せを実感できる毎日へ。この連載では、予防精神医学者の島田恭子さんに、自分軸でモノゴトを進めていく人生を送るために学びたい「自分学」について教えていただきます。

今あるものをありがたいと思えたら

shimada

皆さんこんにちは。
日々“健やかで、心豊かな人生を送るために必要なこと”について研究している島田恭子です。

毎日毎日、本当に暑いですね。私が以前に住んでいた鹿児島の真夏よりも、最近の東京のほうが数段ホットな気がします。温暖化のせい? それとも歳とともに、自分の限界点が低くなってきたせいでしょうか?

でも実は私、暑いの嫌いじゃないんです。ギラギラ太陽の下、水をがぶがぶと飲みながら「いやー暑いね、アツい!!」と言いながら、汗だくになっているの、結構好きです。

なぜ好きなのか?

その理由はただ一つ。
暑ければ暑いほど、そのあとの快感が爆増するからです。
冷たいシャワーで汗を流す喜び。エアコンの効いた空間に入ったときのありがたさ。冷たいスイカの美味しさ。
「気持ちいぃ~」「涼しい~~」「最高~」と感じられるのは、その前に「うぅー、暑い・・・」があるゆえの喜びですよね。

このメカニズム、私の研究領域でも同じことがあると気付きました。

たとえば「漸近的筋弛緩法」というもの。
これは心がストレスで凝り固まっているときに、ほぐしやすい“体”のほうにアプローチする療法なのですが、これがまさに同じ原理です。
筋肉をいったん “ぎゅーっ”と縮こませることで、そのあとの弛緩状態を効果的につくり出す。まさに「炎天下からの冷たいシャワー」と同じですね。


shimada

考えてみればいろんなことが当たり前すぎて、今あるもの、持っているものになかなか気付けない私たち。戦争が起きたことで平和の尊さに気付く。病気になって健康のありがたさが身に染みる。激アツだからこそ、エアコンもシャワーもめちゃくちゃありがたい存在になる・・・。この日差しに眉をしかめたくなるけれど、私たちには、スイカもエアコンもうちわもシャワーもかき氷も冷たいビールもあるじゃないか!

今あるものをありがたい、と思えたらいいんだ・・・と、暑さで朦朧としながら、考えた午後でした。

さてさて、前置きが長くなりました。

先月から始まった“自分学”。
ついつい「わりといい子ちゃん」を目指してしまいがちな私たち女性の思考を解き明かし、「ねば」から「したい」の人生にシフトチェンジするのを応援するシリーズ連載です。

前回の記事は、「自分を知ることはなぜ大事なの?」というお話でした。
私たちはそれぞれの立場でいろんな人に関わって生きているから、どうしても“しがらみ”が四方八方から、つたのようにのびてきて、がんじがらめになっています。

長らくそれに慣れてしまい「ホントに自分のしたいこと」を言えないどころか、自分でもわからなくなってさえいる今日この頃。だから自分を知り、自分について考え、「これでいいんだ」と今の自分に価値をおいたり、自分を少しだけアップデートしたり。そんなことを考えるきっかけになるといいな、と思っています。


占いより当たる!? 3分でできるじぶん診断

まずは気軽に自分を知る方法から見ていきましょう。

突然ですが、あなたは占い、お好きですか? 占い師さんに、自分の性格をズバリ言い当てられて、ドキッとしたことありますか?
今回はちまたの占いより信憑性のある、じぶん診断をご紹介します。心理学研究の結果、私たちの性格はこれからご紹介する5つの言葉で表わされることがわかっています。

shimada

とりあえずやってみましょう!

これからとてもかんたんな10の質問をします。
考えこまずに、あなたにとって一番しっくりくる答えを、直感で選んでみてください。携帯のメモ機能や手帳など、何かにメモしてあとで見返せるものをご用意くださいね。

これから2問ひと区切りで、5つのボックスが出てきます。ボックスごとにあなたの点数を合計したものをメモっておきましょう。それではスタート!


質問1:しっかりしていて自分に厳しいと思う。

まったく違う(1点)
おおよそ違う(2点)
少し違う(3点)
どちらでもない(4点)
少しそう思う(5点)
まあまあそう思う(6点)
強くそう思う(7点)


質問2:だらしなく、うっかりしていると思う。

まったく違う(7点)
おおよそ違う(6点)
少し違う(5点)
どちらでもない(4点)
少しそう思う(3点)
まあまあそう思う(2点)
強くそう思う(1点)

※質問1と質問2の合計点数 = あなたのマジメ度得点


質問3:新しいことが好きで、変わった考えをもつと思う。

まったく違う(1点)
おおよそ違う(2点)
少し違う(3点)
どちらでもない(4点)
少しそう思う(5点)
まあまあそう思う(6点)
強くそう思う(7点)


質問4:発想力に欠けた、平凡な人間だと思う。

まったく違う(7点)
おおよそ違う(6点)
少し違う(5点)
どちらでもない(4点)
少しそう思う(3点)
まあまあそう思う(2点)
強くそう思う(1点)

※質問3と質問4の合計点数 = あなたの新しもの好き度得点


質問5:活発で、社交的だと思う。

まったく違う(1点)
おおよそ違う(2点)
少し違う(3点)
どちらでもない(4点)
少しそう思う(5点)
まあまあそう思う(6点)
強くそう思う(7点)


質問6:ひかえめで、おとなしいと思う。

まったく違う(7点)
おおよそ違う(6点)
少し違う(5点)
どちらでもない(4点)
少しそう思う(3点)
まあまあそう思う(2点)
強くそう思う(1点)

※質問5と質問6の合計点数 = あなたの陽キャ度得点


質問7:人に気をつかう、やさしい人間だと思う。

まったく違う(1点)
おおよそ違う(2点)
少し違う(3点)
どちらでもない(4点)
少しそう思う(5点)
まあまあそう思う(6点)
強くそう思う(7点)


質問8:他人に不満をもち、もめごとを起こしやすいと思う。

まったく違う(7点)
おおよそ違う(6点)
少し違う(5点)
どちらでもない(4点)
少しそう思う(3点)
まあまあそう思う(2点)
強くそう思う(1点)

※質問7と質問8の合計点数 = あなたの優しさ度得点


質問9:冷静で、気分が安定していると思う。

まったく違う(1点)
おおよそ違う(2点)
少し違う(3点)
どちらでもない(4点)
少しそう思う(5点)
まあまあそう思う(6点)
強くそう思う(7点)


質問10:心配性でうろたえやすいと思う。

まったく違う(7点)
おおよそ違う(6点)
少し違う(5点)
どちらでもない(4点)
少しそう思う(3点)
まあまあそう思う(2点)
強くそう思う(1点)

※質問9と質問10の合計点数 = あなたのおだやか度得点


いかがでしたか? どれが高くて、どれが低いでしょうか?
今あなたの手元には、下の表のような5つの得点が並んでいるでしょう。

shimada

手帳などに下のような簡単なレーダーチャートを作って、自分の5つの点数を入れてみてもいいですね。

shimada

Illustration = Mizue Someya @kokorobalance.lab

最近本屋さんやセミナーなどで、“性格特性”とか“ビッグファイブ”という言葉を目にすることがあるかもしれません。
私たちの性格を科学的に見える化するものは他にもありますが、今回はこの5つの言葉で見ていくことにしましょう。
(研究では質問や評価のしかたが厳しく決まっているのですが、ここでは分かりやすさ優先です)

shimada

Illustration = Mizue Someya @kokorobalance.lab

私たちの性格は
・マジメ度
・新しもの好き度
・陽キャ度
・優しさ度
・おだやか度
がどれくらいかによって形づくられると言われています。

どれも何となく、点数が高い方がいい性格のように思いませんか?
でも実は、どれも“高いから良い、低いから悪い”ということはなく、いい面あり、悪い面あり、なのです。

shimada

Illustration = Mizue Someya @kokorobalance.lab

例えば、「マジメ度」が高いことは、勤勉で物事を誠実に対応できるから、仕事や学業で成功するし、健康にも気遣うから長生きする人が多い、というデータがあります。その一方で、度が過ぎると融通が利かず完全主義で自分を苦しめてしまうことにもつながりかねません。

「陽キャ度」だって、活発でポジティブなのはいいのですが、あまりに外向性が高過ぎると、常に強い刺激を求め、いろんな方向に手を広げ過ぎて、窮地に陥いることだってあります。陰キャな方が、一人でコツコツ集中する仕事には向いている、ということもありますよね。

そして「おだやか度」の点数が高い方。きっと気分の浮き沈みが少なく情緒が安定していているから、おおらかで通常のストレスは少な目でしょう。これだけ聞くと良さそうですが、あまりに低すぎると、不安や怖れといった“ネガティブ感情”を持ちづらいので、危機感が少なく、トラブルや有事の際には乗り遅れてしまう危険性が出てきます(それは大変ですね)。


自分の望む人生のために、「じぶん診断」を活用する

このように、「どの得点がどのくらいであれば良い/悪い」ということはないし、「まわりと比べて、私はどのくらい・・・」と比較するのもあまり意味がありません。そもそも私たちの性格は、だいたい半分くらいが生まれもったものであり、残りの半分は、環境や歳を取るにつれて、少しずつ変わっていくと言われています。

今日の結果も、数年後には変わっている可能性だって十分あるでしょう。しかも朗報なのは、無理に変えようとしなくても、歳を経て(だいたい50歳をすぎる頃に)、より自分の望む方向に収束してくる、つまり、“なるようになっていく”、ことを示す研究もあるんですよ。

じゃあこの「じぶん診断」、どのように使っていくのが良いでしょうか。

それは、「人生のさまざまな段階や人との関係で、自分の特性がどんなふうに影響するのか、特性に合った環境はどんなものかを検討する“ものさし”にしていく」ことです。

shimada

例えば自分の特性をきちんと知って、それに合った仕事選びやパートナー選択、人生設計をしていくことは、自分がより心地よく、望む人生を送ることにつながります。また、自分の特性を尊重するべく、たまのお休みなら友達に誘われても一人で静かに過ごす選択肢をとることもできます。さらには自分の望む人生を叶えるために、現在の特性を把握したうえで少し軌道修正する必要がある場合に、有効な指標として活用できるでしょう。

本来であれば、皆さん一人ひとりの特性や組み合わせ状況に応じた対処法や具体的な活用法を一緒に分析していきたいところです。が、膨大なスペースが必要なため、残念ながらここではご紹介しきれません(今後、私共の研究所にて、活用できるコンテンツをご案内しますので、どうぞご期待ください)。

この連載では、「ふーん、わたしはこんな性格なのね」で終わりにするのではなく、この結果をうまく活用し、より良く生きるヒントを得ていただきたいと思っています。

そこで次回は、ちょっと軌道修正したい場合のヒントについて、一緒に考えることにしましょう。

暑い日が続きますが、みなさまどうぞご自愛くださいね。


※次回予告
「わたしの性格を知る」←今回はココ
「変えたいところがあるときのヒント」←次回(連載3回目)
「わたしの価値観」←次々回(連載4回目)
と続きます。

マイナスをプラスに転じさせる。車いすアイドルのポジティブ思考【ゲスト 猪狩ともかさん / 編集長インタビュー】

Humming 編集長永野 舞麻(ながの まあさ)

が、知りたいこと、気になること、会いたいひとにフォーカス。今回は、アイドルグループ「仮面女子」で活躍する猪狩ともかさん。不慮の事故により車いす生活を送るなかで、現在に至るまでの葛藤、日々をポジティブに生きるための心の持ち方などについて伺いました。


Special Interview ———

猪狩ともかさん

igari

アイドルグループのリーダーとして活躍していた猪狩さんは2018年の春、26歳のときに、強風で倒れてきた数百キロの看板の下敷きになるという惨事に見舞われました。脊髄損傷を負って両下肢完全麻痺と診断されるも、壮絶なリハビリを経て、車いすに乗りこなしてステージにカムバック。その奇跡は多くのメディアで取り上げられました。

復帰後は、東京都から「パラ応援大使」「東京2020パラリンピックの成功とバリアフリー推進に向けた懇談会」のメンバーを務めたほか、Eテレの「ハートネットTV」にも出演。さらにYouTube配信、作詞などにも精力的に取り組んでいます。その強く前向きな姿は、たくさんの人に勇気と元気をもたらしています。


思い出を振り返ることはあっても、後ろは振り向かない

igari

車で移動中の猪狩さんを、荻原編集長がカリフォルニアの自宅からオンラインでインタビュー!


– 猪狩さんが苦難を乗り越える支えとなったのは、ご家族の力も大きかったことと思います。幼少期はどのような子供でしたか? 

「子供のころは毎年必ず、家族で海水浴に行ったり、母が大ファンだった埼玉西武ライオンズの試合を球場で観戦したりと、一緒に過ごすことの多い仲の良い家庭環境で育ちました。私自身はモーニング娘。に夢中になり、歌やダンスが大好きで、すでに小学生のときにはアイドルになりたくて、オーディションにも挑戦しました。でも、残念ながら落ちてしまって、アイドルになるという夢は封印したんです」

ー それでも結果、アイドルになる夢を叶えたわけですね! そこからデビューまでの経緯は?

「高校卒業後は4年制の管理栄養士の専門学校に進学して、就職活動も励まないと・・・と思っていたんです。でもこの時期に、かつて憧れていたモーニング娘。の存在、そして、自分のなかにあった“アイドルになりたい”という思いが再び沸々と湧き上がってきて。もう自分の気持ちに嘘をつけず、勇気を出して現在の事務所のオーディションを受けることにしました。

igari

プライベートでは積極的に街に出て、カフェを巡ったりも。

結果的に合格し、その後は研修生としての長い下積みなどを経て、『仮面女子』のメンバーになることができました。本格的にアイドルを目指したのが22歳と、他の人より遅いスタートだったからこそ、とにかく頑張らねばと無我夢中の毎日でしたね。アイドルという仕事は歌やダンスが楽しいのはもちろん、観てくれる誰かの活力になれるのが最高にうれしいし、やりがいも大きいです」

ー そんな充実した日々が、不慮の事故に遭われて一変してしまいました。多くの苦難があったと思いますが、どのように新たな一歩を踏み出したのでしょうか?

「4年前の事故で、車いすの生活を余儀なくされたわけですが、直後は現実と悲しみが押し寄せてきて『あぁ、もう以前のようには踊れないんだなぁ』と。リハビリ中も『想像以上に体が動かなかったら、どうしよう』と、つい悲観的な方向に気持ちが行きがちで・・・。それでも、自ら『アイドルをやめる』という選択肢はありませんでした。

ただ、自分は続けたいと思っているけれど、メンバーや事務所のスタッフに対して『私はみんなのお荷物になっているかもしれない』と負い目を感じていました。でも、みんなが『ともかが帰ってくるまで、あなたの居場所をつくって待っているからね!』と言ってくれた。うれしくて胸がいっぱいになりました」

igari

ー ご家族だけでなく、お仕事仲間の存在も支えですね。

「はい、そうなんです。でもー-実際に復帰してみたら、両手を使って車いすを動している私には仮面女子の売りである仮面を持ってダンスを踊ることができない。だから、必然的に私に合わせたフォーメーション、車いすありきの構成になるわけです。もともとポジティブな性格な私も、みんなを巻き込んでしまっているという紛れもない現実に落ち込みました。

事故で入院しているとき、私が『車いすのアイドルなんて、ニーズはないよね』とついネガティブな言葉を発してしまったことがあって。そしたら、それを聞いていた兄から『車いすに乗っていても、誰かを元気づけたり、希望になれるはずだよ!』と言われ、ハッとしたんです。それを思い出して、車いすを理由にいろいろなことを諦めるのだけはやめよう!と覚悟を決めました。そして、思い出を振り返ることはあっても、後ろは振り向かない。私が今いる場所は、今ここしかないと強く思うようになったんです。

igari

その後は気持ちの浮き沈みが多少あっても、元来のポジティブな自分に戻っていきました。おかげで『事故に遭って良かったとは一生思えないけれど、新しい道が、明るい場所で良かった』と感じられるようになりました。

今考えれば、私の家族はみんな前向き! 例えば、作ったおかずの味が濃すぎたときも失敗と捉えず、白米が進んでいいね~!と褒めてくれるんです(笑)。そんな家族と過ごしてきたから、私は自然とマイナスをプラスに転換するクセが身についていたみたいです。家族には心から感謝しています」


困っている人が素直にSOSを発せる世の中にしたい

– 車いすを利用する生活だからこそわかったこと、見える現状と問題点があると思います。それを踏まえて、今後、積極的に取り組んでいきたいことはありますか?

「日本もバリアフリー化は進んでいるけれど、まだまだ不便な点が多いです。例えば、ホテルなども使いにくいポイントが意外とあります。障がいの種類はさまざまで、それぞれの人にとって使いやすさの基準は異なりますが、誰にとっても“ちょうどいい基準”が整備されて、ホテルだけでなくいろいろな場所やシーンで実際に採用されていくといいなと思います。

igari

ファッションについても、車いすであることでの制約ー-ロングコートは着こなしづらかったり、白い服はタイヤの跡がついてしまうので選ばなくなってしまったりー-はありますが、生活に支障があるほど大きな問題ではありません。でも、もっとおしゃれを楽しんだり、選択肢を広げるために何かいい方法があるはずですよね。

こんなふうに、日頃感じている率直な意見や思いをSNSで発信すると、フォロワーさんたちから『気づかせてくれて、ありがとう!』という声をいただくことも多くて。人は“知らないものに対して対応できない”というのは当たり前です。私自身も事故に遭う前は、車いすに乗っている人を見かけても何もできませんでした。それはやっぱり、車いすや車いす利用者のことを知らなかったし、想像できなかったから。だからこそ、今は当事者という立場だからわかることを積極的に発信して、多くの人たちに情報を届けていけたらと思っています」

– 実際に街で車いすで移動している人に出会ったとき、私たちに何かできることはあるのでしょうか? アドバイスがあれば、教えてください。

igari

野球ファン、特に埼玉西武ライオンズが好きな猪狩さん。子供のころから、球場に赴いて応援も。

「車いすで移動している自分が常に困っていてSOSを出しているかというと、そういうわけではありません。それに、車いす利用者でも全員が同じ助けを必要としているのではなく、必要なことは人それぞれ違うもの。なかには、そもそも助けを借りずに自力で頑張ることがリハビリになるケースもあります。だから、一概に手を貸すことがいいというわけではないのですが、当事者がSOSを気軽に発せられる世の中であってほしいなと思います。

私自身は声をかけてもらえたら素直にうれしい! 坂道では誰かに車いすを押してもらえたらな~と思うけれど、周りの見知らぬ方にお願いするのは気が引けるので、『何かお手伝いしましょうか?』と声をかけてもらえると本当に助かります」


前向きに生きていれば、きっと新しい道が開ける

igari

『100%の前向き思考—生きていたら何だってできる! 一歩ずつ前に進むための55の言葉』猪狩ともか 著/東洋経済新報社


– 2020年に刊行された著書『100%の前向き思考—生きていたら何だってできる! 一歩ずつ前に進むための55の言葉』で、一番伝えたかったことを教えてください。

「この本に込めたメッセージは『前を向いていれば、良いことがある』ということ。事実、私は新しい道を開くことができました。どん底まで落ちたときに、心身ともに無理をしてまで前向きを演じる必要はないけれど、やっぱり後ろ向きでいるより、前向きでいたほうが幸運なことや出会いを引き寄せることができると思います。

私自身、事故に遭って手術をしてから4ヵ月後にはもうステージに復帰できました。紆余曲折があったものの、事実を受け入れて以降は、早めに気持ちを切り替えて前を向き、リハビリに懸命に励んだことが良かったのだと思います。

この本のなかで、入院中に作成した“不幸中の幸いリスト”を紹介しました。最悪の事態でも、“良かったこと”を探し出して書き留め、リスト化していくんです。私の場合は『生きていた!』『手が自由』『通行人がすぐに救助してくれた』ーーといった具合に。不幸中の幸いリストを作っておくと、落ち込んだときに見返すごとに『私って案外、ラッキーだったかもしれない』『十分幸せだよね!』と、元気を取り戻せるんですよ」

igari

東京パラリンピック聖火フェスティバルに参加した際の一枚。

– 人前に出る活動で顔と名前を知られる立場となると、余計な雑音や心無い言葉などが向けられ、それが耳に入ってきてしまう時代です。基本的にポジティブな性格の猪狩さんですが、他者の言動に傷つきそうになったときはどのように対処していますか?

「ズバリ、感情を吐き出すこと! 私はもともとブログを書いていましたが、それはあくまでも表向きなもので、本音をつづるときは、断然ノートに書く派です。特に事故に遭ってからは、記録しなきゃ、自分のリアルな言葉で思いを残さなきゃ・・・という一心で、可能な限りノートに書くようになりました。後になって見返すと『随分と、荒れていたな(笑)』と感じるくらい、感情的な言葉をバーッと連ねていたこともありました。

それでも自分のなかで消化できないことは、人に話すに限りますね。家族や友人と会話のキャッチボールをするなかで、相手から共感してもらえたり、『気にするなよ!』と励ましてもらえると心が軽くなっていきます。
でも、頻繁に、一方的に愚痴を話すだけだと、相手に負担をかけてしまいますよね。だから、毎回同じ相手には話さない、ストレスになるような話し方をしないなどの配慮は欠かせません(笑)。どうしても、人の批判に傷ついたときは『1のアンチの人より、9の応援してくれる人を思い出す』ようにして、自分を鼓舞しています」

igari

Eテレの福祉情報番組「ハートネットTV」の2019~2021年度に放送されシリーズ〈パラマニア〉にも出演。

– さまざまなことにチャレンジしている猪狩さんが、これから叶えたい夢を教えてください。

「まずはもっともっと精力的に活動をして、『仮面女子』というグループを大きくしていきたいですね。そして、私自身のパフォーマンスも高めていき、『車いすに乗っていても、それを感じさせない、パワーがすごい!』と思ってもらえたらうれしいです。ソロ活動のほうではドラマで演技も見せたいですし、バラエティ番組にも出演したい。車いすに関することだけでなく、マルチに活躍したいと思っています。

そして、今後も世の中に向けて、微力ながら何か伝えていけたらと。例えば、アイドルグループのなかに障がいを持つ私が存在していること、そして活動する姿をお見せしていくことで、多くの人たちが『私たちの社会には障がいを持つ人が存在し、それは当たり前のこと』と思ってくれたらいいなと思います。

私はいつも『どんなときも、どこかで誰かが自分を見ている!』と信じています。そして、人生には良いことも悪いことも起こり得るし、みんな平等にそんな経験すると思っていて。だから、人が見ていないからとズルをしたり、自分だけが悲しい目に遭っていると卑屈になることだけは絶対に避けたいです。

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車いすの生活になってからすごく感じていることなのですが、世の中は巡り巡っているなと。だから、自分が誰かに助けてもらったら、私自身も誰かを助けたい。そうやって、思いはつながっていくんだと信じています。そんな自分ができることの一つとして、アイドルとしての活動を継続していきたいと思っています。私がたくさんの人に支えられているように、歌やパフォーマンスで私が皆さんをを元気づけることができ、誰かの心の支えになれたら本望です」

ー 猪狩さんのポジティブ思考は、ファンだけでなく、多くの方々にパワーをもたらしていると思います。今後のご活躍も楽しみにしています! 貴重なお話をありがとうございました。


インタビューを終えて

猪狩さんのお話を聞いて、目に見える体の違いを持っていても、目に見えない気持ちのハードルを抱えていても、両方とも「その人が乗り越えて生きていく課題」という観点から見れば「障がい」が存在することことに気がつきました。

それが車いすに乗っている人にとっては段差であったり、内向き思考な人にとっては行く気になれないカレンダーの予定だったりする。一人ひとりが「これは自分自身にとって障がいだ」と思うものが目の前に現れたら、乗り越えるための努力が必要なのだと思いました。
どのような状況においても、お互いにお互いを思いやる気持ちで相手と接することが大切なのだと再確認しました。

そして、それぞれが自分の経験していることについて声をあげること。

人は自分の経験したことの無いことは、うまく想像できないし、気が付けないことも多々あります。経験者自身が言葉にしてくれたことで周りが気が付けることもたくさんあるので、自分の声なんて、と思わずに思いを声に出していくことの大切さを感じました。

また、お話の端々で、猪狩さんは、家族や周りの方たちからとても愛され、大切にされて育ってきたのだということが感じられました。お母様の、小さいころからの前向きな声がけこそが彼女のなかに深く強く根付いていて、今のご自身の前向き思考を作り出しているのだということがわかりました。
これからも、ますます幅広くご活躍されることを心から応援しています。

編集長 荻原正子


Profile
猪狩ともか(いがりともか)
アイドルグループ「仮面女子」のメンバー。1991年生まれ。埼玉県出身。2018年4月、強風で倒れてきた看板の下敷きになり、緊急手術を受けるも脊髄損傷を負い、下半身不随に。事故は数多くのニュースで取り上げられた。絶対安静の状態からリハビリを経て、2018年8月、車椅子に乗りながらアイドルとして復帰を果たす。東京オリンピック・パラリンピックでは東京都の「東京2020パラリンピックの成功とバリアフリー推進に向けた懇談会」メンバーとして活動し、「パラ応援大使」に任命も。著書『100%の前向き思考—生きていたら何だってできる! 一歩ずつ前に進むための55の言葉』(東洋経済新報社)は、老若男女の間で「生きる勇気をもらえる」と話題に。
ブログ https://profile.ameba.jp/ameba/igari-tomoka/
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Instagram @igari_tomoka
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自分の「したい」を叶える人生のために、どう生きる?【島田恭子の自分学 vol.01】

最近よく耳にする「ウェルビーイング」という言葉。「よりよく生きる」ために、私たちは自分のために何ができるでしょうか。他の誰でもない、自分のために、自分らしく生きて、自分自身が幸せを実感できる毎日へ。この連載では、予防精神医学者の島田恭子さんに、自分軸でモノゴトを進めていく人生を送るために学びたい「自分学」について教えていただきます。


「自分を知る」ことはなぜ必要?

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皆さん、こんにちは。予防精神医学を研究している島田恭子です。

生きづらい現代。楽しいこともあるけれど、何かと辛いことや悩みも尽きない日々・・・。そんななかでも「自分の人生を実りある、後悔のないものにしたい」と思っておられる方は多いはず。

私もその一人です。これまでの人生、紆余曲折してメンタルへルス(心の健康)を学び、今は「ウェルビーイングに生きる」をテーマに、仲間と絶賛活動中です。

ウェルビーイング、私のイメージは「自分らしく、いい感じに生きる」。死ぬときに「私の人生、悪くなかったな。うんうん満足♪」と思えたらいいなと。

・・・とはいえ、“実りある人生を送りたい!”と思っていても
「一体どうやったらいいのかわからない」
「目の前の雑多なことに追われてあっという間の毎日。そんなこと考える余裕もない」
「そんな先の小難しいこと考えるの、面倒だ」
「自分のことや人生について考えるの、なんだか怖い」
ーーそんな感じで何となく、日々が過ぎている方も多いのでは?

だって私の20代~40代がまさに、そうでしたから。
でも、いま振り返って思うこと。それは「早いうちに(若いうちに)、自分について、これからについて、人生について、考えたらよかったな」ということ。もしかすると、“何よりも優先して考えると、いいことあるかもしれない”ということです!


この連載では、日々の忙しすぎる時間から少しだけ離れ、自分を見つめ、自分を大切にし、自分をアップデートするために、役に立つことをお伝えします。

精神保健学や予防医学、心理学や行動科学の知見から、私自身の失敗談から、ヒントになりそうなものをご紹介していきます。皆さんのより良いウェルビーイングライフのために、お役に立てればうれしいです。


自分を大切に、ウェルビーイングに生きている女性は意外と少ない?

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今でこそ、「自分を大切にしたいよね」と言ったら、うなずいてくれる人がたくさんいますが、昭和かつ田舎生まれの私の青春時代は、そうはいきませんでした。

学校では、周りと同じように黙って座って授業を受けるのが正解。突飛な意見はNG、教科書通りの回答が大正解。そんな社会で優先されるのは、“自分の価値観より社会的正しさ”です。
小さいころから私たちは何度、「周りに迷惑をかけない生き方をしなさい」と言われたでしょう。子供は迷惑をかけるのが当たり前なのに。

自分がどう思うかとか、どうしたいかより、気にすべきは親や先生、それに世間がどう思うか、など“他人の評価軸”。世間の常識や価値基準に囚われ、「自分の思いは後回し」にすることに、慣れていきます。


「自分らしさ」がわからない私たち

こうして少しずつ周りに沿い、自分より世間や親(女性は特に母親に対して気を遣うことが多い)、先生の意向を尊重するうち、“自分が本当に大事にしたいもの” とか“自分はどうしたいか” 、”自分らしさ“みたいなものが、だんだん自分でもわからなくなってしまいます。

これを「コントロール感がなくなる」といいます。

小さいころから、良い子、おとなしい子、と言われた方ほどその傾向があります。周りの大人の価値基準に影響されてしまうんですね。

生まれたころの赤ちゃんは、自分の欲望のままに泣き、食べ、思いどおりにならないと駄々をこねます。それが少しずつ、周りに配慮した行動を取り、空気を読んだり、忖度するようになる。それを社会性がつく、といったりしますよね。

でもそれが行き過ぎると、自分の欲望や思い、「〇〇したい」をいつも我慢し、やがて自分は何が大事だったのか、どんなことに価値を置いていたのか、自分でもわからなくなってしまうのです。
真面目な人ほど、自分の価値感と違っても、世間の基準に「合わせなきゃ」「認められなきゃ」と頑張り、無理をすることになってしまいます。


自分を知って、“ねば must”から“したい want”へ

shimada

子供時代は、学校生活の規律のために、社会性をつけるために、ある程度そんな訓練も必要だったかもしれません。
でももう大人になった私たち。ほかの誰かの価値観で、「〇〇しなきゃ」と頑張る必要はありませんよね。

自分の価値観ではなく、他者の評価軸で生きるとき、私たちはどこかで無理をしています。目には見えないかもしれませんが、ストレスを感じています。「〇〇しなきゃ」と頑張ったところでいつか限界がきます。イライラして人に当たったりメンタル不調になったり、イキイキと生きられなくなります。

一方、自分の価値観でやりたいことを自由にやっているとき、私たちはハッピーです。「〇〇したい」と思ってやることは、楽しい。これは私たちのウェルビーイングにとって、とっても大事なことです。

だからここらへんで、自分の価値観に目を向けて、自分らしさや自分軸、「〇〇したい」に意識を向けてみませんか。
“ねば(must)”から”したい(want)”への、パラダイムシフトです。


そのための大きな一歩は「自分を知る」こと。自分を知る作業を重ねることで、自分の本当の価値観、自分の“したい(want)”がみえてくるのです。


人生は、自分が主役の一度きりの長い旅。だからWantで生きませんか?

shimada

私たち一人ひとりに平等に与えられた“人生”という旅。どこに向かうか、誰と行くか、目的、テーマ、どんな旅にするか・・・。企画をするのは全部、自分自身です。

誰かに縛られているように見えても、実はほかの誰も、指図できないんです。途中の変更も大いに結構。行き先も、一人旅か誰と行くか、テーマの変更もまったく自由です。

でも、一つだけ自分で決められないこと。それは“いつ終わるか”だけ。

1年後かもしれないし、10年後かもしれない。でも100年以内にはほとんどの方が旅を終えるでしょう。
考えてみれば、ほんの一瞬ですね。
だからこそ、少しでもはやく、自分が望む旅の形にしませんか。行きたい人と行きたい場所に、テーマも目的も自分次第。これからいくらでも、変更することも可能です。

自分を知り、自分を整え、自分をアップデートすることが、自分旅を形づくります。さぁこれからご一緒に、自分がいいと思える、自分だけの旅程を企画していきましょう。


※次回から「自分を知る」ための具体的なアプローチ法や、自分軸で考える方法についてのレクチャーがスタートします。どうぞお楽しみに!

「過去を憂うことなく、未来を不安がらず、今にフォーカスして」予防精神医学者 島田恭子さんに聞く、ウェルビーイングに生きるコツ〈後編〉

仕事や家庭での大変さ、友人、親との関係悪化、さらにはコロナ禍に戦争・・・自分も大変なのに、世の中もネガティブなニュースがあふれ、心が疲れている人が増えています。こんな息苦しい時代に、心と体のバランスを取りながらウェルビーイングに生きていくには? 予防精神医学者 島田恭子さんに、私たちのココロを取り巻く問題、その対処法について取材。前編の「人間関係の軋轢を減らすためにできること」に続き、後編は「自分で心を楽にするセルフケア」についてお届けします。


お金も時間もかけない。セルフケアでメンタル未病のうちに自分メンテナンスを!

interview

予防精神医学者として、「ココロバランス研究所」を立ち上げ、講演研修やワークショップ、カウンセリングなどを精力的に行う島田さん。物質的に豊かかどうかに関係なく、何だかココロが満たされず、モヤモヤしている・・・。そんな方々に「ココロが楽に軽くなる、晴れやかになる」ヒントを伝え続けています。

島田さん曰く、心の病はいったん発症すると、回復に膨大な時間とお金、労力がかかる場合が多いとのこと。だからこそ「なんだかちょっと元気がないなー」くらいの、症状が軽い(=未病)うちにケアする。そのために自分の状態を気にかけ、自分を知り、自分を整える、“自分メンテナンス”が何より大切なのだそう。


ー 日本では、自分の悩みを人に話したり、周りにヘルプを求めるなど、弱さを他人に見せることを良しとしない風潮がありますよね。

「昨今は学校や企業でも心の専門家がいて、以前より気軽に悩みを相談できる環境が整いつつあります。でも実際には、よっぽどでないと、専門家に話してみよう・・・、とならないのではないでしょうか?

だからこそ、自分の力である程度、ココロを楽にするコツを知っていれば、モヤモヤ、違和感を感じた段階で、ある程度自分でメンテナンスできます。ぜひ、自分に合った“ココロを楽にする考え方やコツ”を知っておくといいかもしれませんよ」


島田さんがHumming読者に教えてくださった具体的なセルフケアに役立つ考え方やコツをまとめました。「これは私に役立つかも!と思うものがあれば、頭のすみっこに置いておいて、折に触れて思い出していただければ」と島田さん。手帳やスマホにメモしておくのもいいかもしれませんね。


ココロを楽に、軽くする・・・。5つの考え方

interview

Photo by Bekir Dönmez on Unsplash

1:「こうあるべき」から、自分を解き放つ

科学的なデータでも示されていますが、日本人は遺伝子的に真面目で完璧思考の方が多いようです。しかも文化的にも同調圧力があって、“自分がどうしたいか”ではなく、“こうあるべき”とか“こうするべき”といった、“べき思考”に縛られている方が多いですよね。

もちろん、真面目や完璧主義は、大きな利点でもあります。人との信頼関係や繊細な仕事、リスクへの備え、といった意味では、大変重要な特性です。ただ完璧主義からくる“べき思考”に縛られすぎると、自分が苦しいのです・・・。自身で自分の首を絞めすぎると、メンタルを壊すことにつながりかねません。

「私はわりとマジメな性格だわ」と思う方で“べき思考”が強めだと感じる場合は、少しだけ“こうあるべき”から自分を解き放ってみましょう。おすすめは、“〇〇すべき”を“〇〇したい”に変えることです。べき思考で過ごしていると、自分の“〇〇したい”をスルーしてしまいがち。少しずつ、自分の“〇〇したい”を探して、“べき”より“したい”を優先してあげると、ココロはぐっと楽に、軽くなるでしょう。


2:自分を知る

「え? 自分を知る、なんて・・・! 自分のことは自分がよく知っているわ」と思われるでしょうか。実はそうでもないのです。私が受け持っている大学の授業は、キャリアやメンタルへルス、心理学、行動科学などさまざまなのですが、どんな講義でもどこかで必ず、自分の性格特性を見える化する時間を取ります。

そうすると学生さんの多くが、知らなかった自分の一面や新たな気付きを得るようです。相田みつをさんの「一番わかっているようで一番わからぬこの自分」という有名な言葉もありますよね。産まれてから死ぬまで行動を共にする“自分”というものを知る、いわば“自分学”。実はとても大事だけれど、これまであまり注目されていないのではないでしょうか。先ほどの“〇〇したい”もそうですが、“自分を大切にする”ことが、ココロを軽くします。自分を大切にするためにはまず、 “自分を知る”ことが大事です。ただ漠然とではなく、客観的な指標や方法を使って自分の性格や行動特性を知ることで、予期せぬハプニングや悩みに直面したときも客観的かつ冷静に物事を捉えることができます。自分の特性を知ったうえで“〇〇したい”に気付き、自分を大切にすることができます。

これまでの自己分析研究の積み重ねによると、おおむね人の性格特性は、次の5つの要素で表すことができるそうです。
「誠実性・勤勉性」「節度・協調性」「情緒安定性」「知的好奇心・解放性」「外交性」がその5つ。「Big5」という有名な概念で、私も授業や相談業務で使っているものの1つです。まずこのようなツールで自分を知ることが、第一歩かなと思います。


Interview

Illustration by Mizue Someya @kokorobalance.lab


最近は書籍やインターネットで、この診断テストを受けて、自分を分析してもらえるものがあるようですので、機会があれば一度トライしてみるといいかもしれません。


3: 体にアプローチする

頭痛や生活習慣病から脳血管疾患まで。さまざまな病気は実はストレスと密接な関係があることをご存じでしたか? ストレスによって多くの身体疾患のリスクが高まります。つまり、ココロと体は密接につながっているということ。ということは、ココロを楽にするために、 “体”のほうからアプローチするのも非常に有効なのです。確かに、「ネガティブな気持ちをポジティブに変えよう!」といわれるとなかなか難しいけれど、凝り固まった体を運動でほぐして楽にする方が、「できるかも!」と思いませんか?

例えばヨガやストレッチ、ピラティス、水泳、散歩・・・。何でも構いません。自分の心地よいやり方で、凝り固まった体をほぐすと、少しずつココロもほぐれ楽になってきます。マインドフルネス(瞑想)や簡単なマッサージもおすすめです。ぜひ、ご無理のない範囲でトライしてみてください。


4:人の役に立つこと

大金を手にしたり、美味しいものを食べ、高級なホテルに泊まる・・・。とても幸せそうなことですが、この物質的な豊かさや、「地位材」といわれる、“他人と比べて満足が得られる”幸せは、短期的で持続しづらいことが知られています。

一方で、“自分の価値観に沿っている”ことや、“人の役に立っている”と感じられることなどは、幸せ感が続く要因となることが科学的に示されています。
例えば、地域の子供の安全を守るべく、歩道の旗振りをしているシニアの方々。寒い日も暑い日も朝夕大変だな~と思いきや、とても楽しそうで、素敵な笑顔の方が多いです。子供や親御さんから「ありがとうございます!」と感謝されることで、生き生きとし、ご本人も「幸せだ」とおっしゃるもの。

同じように私たちにもできることが必ずあります。席を譲る、エレベーターの開閉ボタンを押しておく、困っている方に声をかけるなど、小さなことでいいのです。何か人の役に立つことを重ねることで、相手から感謝や笑顔を向けられ、それが自分のココロを温かくする。そんな好循環が少しずつ広がっていくのです。まさに「情けは人のためならず」、情けは自分のため、ですね。


5:“今”にフォーカスする

往々にして私たちは、過ぎたことを悔やむかと思えば、まだ起こらない未来のことばかり心配しがちです。「あーあ、今思うと、元カレのほうが良かったかも」とか、「明日大地震が起こったらどうしよう」とか。もちろん、未来に備えて行動する(避難用具をそろえるとか)ことは大切ですが、心配だけして心重くふさぎ込んでしまったら、あまり意味がありません。ココロを楽にするのに重要なのは、“今”にフォーカスすること。過去や未来のことを思い煩うより、とりあえず何か行動すること。仕事や趣味に没頭し、充実した時間を送っている方は、うつ病になりづらいこともわかっています。

蛇足ですが、私たちは脳科学的に、現在より失った過去のほうを美化する傾向があることも覚えておいていただきたいです。今の彼より元カレが素敵に思えるのは、脳に騙されているかもしれないということです(笑)。とにかく”今にフォーカスして、小さくても何か行動すること”。ぜひ行ってみてください。


必要なときは専門家の力を借りて。もっと気軽にカウンセリングを活用

Interview

Photo by Priscilla Du Preez on Unsplash

ココロが軽くなる考え方を実践しても、モヤモヤが解消されない、もっと楽に生きるコツを知りたい、自己分析したい!というときは専門家に頼るのも手。とはいえ、日本ではそんな機会が少ないのも事実です。

ー カウンセリングをどのように解釈すれば、利用する気持ちになれるでしょうか?

「先日海外ドラマで、企業の中枢にいるセラピストが、経営陣のメンタルや重要な決定に関わっているのを観ました。確かに欧米では、かかりつけのカウンセラーに、心のメンテナンスや夫婦関係をサポートしてもらっている方も少なくありません。誰かに相談することはとても大切です。それがメンタルへルスの知識を持っているプロであれば、より役立つアドバイスをもらえる可能性があります。病気だから、弱い自分だから、ではなく、“より楽に、よりよい人生を送る=ウェルビーイングに生きる”ために、アドバイスをもらうと考えていただけたらうれしいです。

最近はオンラインのカウンセリングも増えています。オンラインならば、ドキドキしながら初めての病院の扉を叩く労力も不要なので、対面よりもずっと敷居は低くなると思います」


島田さんが提案するセルフケア+カウンセリングを普段の生活に上手に取り入れることができたら、今悩みを抱えている方も、きっとウェルビーイングな生活に近づけるはず。新年度を迎えて一ヵ月、疲れが出ている方も多いでしょう。皆さんが過去を憂うことなく、未来を不安がらず、“今”を生きられるよう、心から願っています。


Profile
島田恭子(しまだきょうこ)
予防精神医学者、精神保健福祉士(PSW)、一般社団法人ココロバランス研究所代表理事。大学卒業後、外資系コンサルティング2社で人材育成業務に従事。その後大学院にて公衆衛生学、精神保健学を学ぶ。専門は予防医学とメンタルヘルス。現在は大学での研究教育に携わりながら、メンタルヘルス支援を通して豊かな生活と健康増進に寄与する様々な取り組みを行っている。近年は対人サービス業のハラスメント対策として組織活性化に力を入れ「日本カスタマーハラスメント対応協会」を組織化。プライベートでは3児の母親という顔も持つ。

「自分軸で生きれば、ココロは疲れにくい」予防精神医学者 島田恭子さんに聞く、ウェルビーイングに生きるコツ〈前編〉

仕事が大変、家庭との両立、友人や親との関係悪化、さらにはコロナ禍に戦争・・・プライベートも大変なのに、世の中にネガティブな出来事やニュースも多く、心が疲れている人が増えています。こんな大変な時代に、心と体のバランスを取りながらウェルビーイングに生きていくには? 予防精神医学者 島田恭子さんに、私たちのココロを取り巻く問題、その対処法について取材。前編の今回は「人間関係の軋轢を減らすためにできること」を伺いました。


“周りがどう思うか”よりも“自分はどうしたいか”を意識する。ココロの声を聞いて

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大学院で予防医学とメンタルヘルスを学び、現在は学術研究に社会実装活動、カウンセリングなどを行う島田恭子さん。一般社団法人「ココロバランス研究所」を立ち上げ、講演研修やワークショップなどの活動にも精力的に取り組んでいます。

現代を生きる私たちにはさまざまなプレッシャーがあり、悩みがゼロという状態で暮らすのはなかなか難しい環境です。特に働く女性たちは、職場や家庭、それ以外にもいくつもの役割を演じ分ける必要があり、ストレスを溜め込みがち。

そんなココロが疲れる大きな要因に「対人関係」があります。特に一日の大半を過ごす職場での人間関係で“軋轢”がある場合、ストレス度合いはとても大きくなるもの・・・。

— 人間関係を円滑にするには、どんなことに留意すればいいのでしょうか?

「まず、仕事とプライベート関係なく、人間関係でむやみに悩まないためには『自分軸』を持つことが大事です。矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、SNSで『いいね!』をもらうことや、“他者評価”を気にするよりも、自分は何をしたいのか、どんな人生を送りたいのか、どんな人と付き合いたいのかー-自分のココロの声を聞くことに意識を向ける方が、結果的に相手との関係性に心を煩わされず、円滑な対人関係が紡げます。

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Illustration by Mizue Someya @kokorobalance.lab

そもそも、日本人は波風を立てたくない、同調しておいたほうが安全という意識が働きがちなため、親(特に母親)、学校、恋人、パートナー、友達、さらにはメディアの価値観に流されてしまい、無難な方向に自分を抑え込んでしまったり、周りより自分を後回しにしがち。長い間そうして過ごしていくと、いつしか自分の価値観を見失ってしまうことすらあります。

でも、自分の本当の思いは、必ず心の奥底に残っているから、それに従うことができず苦しいのです。私たちは自分の価値観に従って生きたほうが断然ハッピーなんですから。人生は一度きり。 自分が主役の人生を送らないなんてもったいない。自分の価値観に従ってウェルビーイングに生きていれば、心も安定し、人生の満足度も上がる。おのずと周りとの関係性もよくなってくるはずです」

ー とはいえ、会社という組織のなかに身を置いていると、ついつい職場の人間関係を優先してしまい、“自分”の気持ちを抑えてしまいますよね・・・。

「そうですよね、そんなときは『人間関係のマッピング』を意識するのがおすすめです。私のカウンセリングでも活用している人間関係の位置付け図です。

理想は中心に自分がいて、その周り=1層には家族や恋人、親友。2層には友達、一番外の3層には職場の人やママ友、近所の人など。基本的には、利害関係が生じる職場の方々は、3層目です(職場で出会った人が親友や家族になる場合は例外)。職場にいる時間は長く、関わりも深いため、つい近い存在のように思えてしまいますが、どんなに長時間一緒にいても、良好な関係を築いていても、どこかに見えない線をひく=ある程度の心理的距離を意識するとよいでしょう。

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Illustration by Mizue Someya @kokorobalance.lab

ココロが疲弊しがちな人はまじめで親切な方が多く、職場の人に対しても親身になりすぎたり、周囲の言動を深刻に受け取りすぎているかもしれません。『人間関係のマッピング』を意識しておけば、たとえ職場で理不尽な言動をとられても『この人は私にとってそこまで重要な人ではない』と、いい意味で割り切ることができ、傷つきすぎない。結果、自分を守ることができるわけです」


自分の思いを伝えるときは「Iメッセージ」と「3つのき」

オンオフを問わず、どんなシーンでも相手に自分の思いを伝えたいとき。何とか主張を通そうと、つい感情的になったり、喧嘩腰になってしまいがち・・・という人は多いかもしれません。でもそれでは、なかなか主張は通らないことが多いでしょう。

ー 相手の気分を害さず、自分の思いをきちんと伝えるコツはありますか?

「人間関係の軋轢が生まれる原因に『役割期待のずれ』があります。科学的効果が示された精神療法である対人関係療法の考え方からきているのですが、『役割期待のずれ』とは、『自分が相手に望む期待値と、相手が妥当だと思っている期待値のずれ』のことです。

例えば、私が長男に思う『高校生ならこのくらい勉強するだろう』という期待値と、彼が『僕はこのくらい勉強すれば十分だろう』と思うレベルにずれがある場合ですね。これはお互いが少しずつ歩み寄らない限り、その差は埋まらない。『どうして勉強しないの~~(怒)』『はぁ、ちゃんとしてるし。知らないくせに言うなよ(怒)』みたいな。対人関係のギスギスは、大体この役割期待のずれが、うまくすり合わせられなかったときに起こります。

どんな関係性であっても、期待値のずれは起こり得ることで、それをいかに“落ち着いて、平和的に”すり合わせていくかが重要になってきます。

つまり、役割期待のずれが問題なのではなく、その違いを丁寧に埋めていく方法を知ればいいだけ。やり方がまずいとすぐに、人格の問題や性格の不一致、となってしまいます。先ほどの例でいうと、息子が『ほんとママって、うざい(=人格の問題)』といった感じです。でも実は単なるコミュニケーション不足や、伝え方の問題なのです。

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Illustration by Mizue Someya @kokorobalance.lab

ポイントは自分の意思を落ち着いて、丁寧に伝えること。

その際に有効なのが、私(I=アイ)を主語にする『Iメッセージ』です。さらにイラストにあるように、気持ち(きもち)、期待(きたい)、協調(きょうちょう)の頭文字『3つのき』を意識することで、相手から反感を買わずに自分の意思を伝えやすくなります。

例えば、職場の後輩に対して、『〇〇さんはどうしていつも期限を過ぎてから、“できません”と言うわけ!』と怒るのではなく、『私はいつも気にしているの(気持ち)。締め切りより前に〇〇さんが相談してくれたら(期待)、私は何か対処できたかもしれないと思うんだよね。〇〇さんは充分一人で頑張っていると思うよ(協調)。私もそれは感じている』と前置きをしたうえで、要望を伝えます。こうすることで、相手は一方的に責められ、命令されている印象を持たないため、冷静に受け取り、理解してくれるようになるのです。

これは職場だけでなく、家庭や恋人との間でも同じこと。例えば何かお願いごとをするときは、『これぐらいやってよ』ではなく、『これをしてもらえると、私はとてもうれしい。難しければこちらをやってくれるだけでも、ものすごく助かるよ』という言い方に。不毛な衝突を避けることができるはずです」


相手に“選択”させる隙を与えると、自分の意思も通しやすくなる

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さらに難易度が高いのが、立場的に意見しづらい上司や取引先に自分の意思や主張をどう伝えるか。相手に遠慮して、言いたいことが伝えられないということは避けたいものです。

ー 軋轢を生まず、目上の方へ意思を伝えるポイントはあるのでしょうか? 

「そんな場合は『客主提選』という進め方がおすすめです。これは心理学のアサーションというコミュニケーション技法の1つで、客観的事実 → 主観的事実 → 提案 → 選択の順番で物事を伝える方法(頭文字を取って客・主・提・選、英語でDESC法)です。

例えば、『確かに部長がおっしゃるとおりです(客観的事実)。でも、私は女性にはもう少し華やかな色合いが良いなと思いました(主観的事実)。そのため、この色のトーンを上げたら良いかと感じます(提案)。もし、これが難しい場合は、あちらの色みはいかがですか?(選択)』といった具合。

相手のことを受け入れつつ、自分の意思を伝え、さらには代替案を用意して、相手に選択させる隙を与える。一方的に自分の意思を押し付けないことで、相手は自分が非難されたと考えることもなく、冷静に耳を傾けることができ、結果的にあなたの主張を受け入れやすくなるのです。実は先ほど挙げた『3つのき』も、根本的には類似の考え方からきています。


こんなふうに人間関係をスムーズにするカードを複数枚持っていれば、このシーンではこのカード!と対応できるから便利です。華道や茶道を習うように、自分のクセを知って、人間関係の心理学やコミュニケーションのお作法を学ぶ=カードを持つことは、ウェルビーイング(自分らしくよりよく生きる)に大いに役立ちます。経済状況や職種などに関係なく、一人でも多くの方がそんなカードをたくさん持てるよう、そして、自分軸で人生を生きられるよう、お手伝いができたら本望です」


私たちはお互い支え合って生きている“社会的動物”だから、人との関わりは避けて通れないもの。でも、島田さんが教えてくださった“テクニック”を知っていれば、今までよりも随分とココロが軽くなりそうです。後編では、自分を守る、労わるセルフケアについての話を伺います。


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自分軸で主体的に前向きに、人生や職業生活を送るうえで参考にしてほしい書籍。〈左〉『わかる社会人基礎力 人生100年時代を生き抜く方法』島田恭子 編著/誠信書房、〈右〉『新版 ワーク・エンゲイジメント ポジティブ・メンタルヘルスで活力のある毎日を』島津明人 著/労働調査会


Profile
島田恭子(しまだきょうこ)
予防精神医学者、精神保健福祉士(PSW)、一般社団法人ココロバランス研究所代表理事。大学卒業後、外資系コンサルティング2社で人材育成業務に従事。その後大学院にて公衆衛生学、精神保健学を学ぶ。専門は予防医学とメンタルヘルス。現在は大学での研究教育に携わりながら、メンタルヘルス支援を通して豊かな生活と健康増進に寄与する様々な取り組みを行っている。近年は対人サービス業のハラスメント対策として組織活性化に力を入れ「日本カスタマーハラスメント対応協会」を組織化。プライベートでは3児の母親という顔も持つ。

女性も自信を持って輝くために。ベア ジャパンが見据える未来とは?【ゲスト 山本未奈子さん / 編集長インタビュー】

Humming 編集長 荻原正子が、知りたいこと、気になること、会いたいひとにフォーカス。今回は、美容家であり、「ベア ジャパン(Be-A Japan)」の代表取締役CEOでもある山本未奈子さんをインタビューしました。


Special Interview ———

ベア ジャパン 代表取締役CEO 山本未奈子さん

ベア

生理や妊娠、出産、更年期など女性が抱える身体の悩みはさまざま。超吸収型サニタリーショーツ「ベア シグネチャー ショーツ」など、女性特有の悩みを解消する商品の開発に日々努めている山本さん。その原動力は「女性が権利をもち、自信をもって輝くことのできる世界」への強い想いにありました。

お行儀が良いこと、勉強ができることより
大切なこと【Editor’s Letter vol.01】

Hummingの編集長 永野舞麻がカリフォルニアから配信する「Editor’s Letter 」。日々の暮らしで見つけたこと、感じたこと、考えたことをシェアします。

何のために生きているのか?立ち止まることの大切さ【ディレクター田上陽子のIt’s My Story】

仕事もプライベートも、自分らしく充実させるための方法は?

 

各フィールドで活躍する注目のひとにフォーカス。

 

vol.01は、ナチュラルビューティブランド「エッフェオーガニック」「セルヴォーク」を立ち上げ、ディレクターとして活躍する田上陽子さん。

 

昨年末からフリーランスとして活動の場を広げ、さらにこの春には結婚。

 

東京と北海道を行き来するデュアルライフを送るなど、公私ともに大きな転機を迎えた田上さんに、自分らしい未来への進み方を伺いました。

 

田上陽子

 

自分を大切にできていないという葛藤

「これまで仕事一本で突っ走ってきたのですが、もっと“ライフ”を充実させたいという気持ちが強くなりました。

 

コロナ禍でリモートワークが浸透し、時代の変わり目というのもあり、思い切ってフリーランスになる決断に踏み切りました」と語る田上さん。

 

体調を崩すなど、ウェルネス・ビューティ業界にいながら自分を大切にできてないという葛藤もあったのだとか。フリーランスとなり仕事のバランスを模索するなか、出会ったのが今の旦那さま。

 

「昨年出かけた北海道旅行で、友人が連れてきたのが彼。山口から一人で移住し北海道で一からワイン作りをしているその覚悟やパワーに惹かれました」

 

すぐに意気投合して結婚、今は東京と北海道を行き来する、デュアルライフを送っているそう。

 

>>自分を認める方法|認める難しさや自己肯定感との関係性を解説

 

田上陽子

 

紆余曲折を経てたどり着いた“原点回帰”

「実は昨日まで2週間ほど北海道にいたのですが、人生初のブドウの収穫を体験して、全身筋肉痛です」と笑う田上さん。

 

朝日とともに起き、土を触り、日暮れとともに寝るという北海道のシンプルな生活は何をもたらしたのでしょうか?

 

「これまでずっと仕事優先で生きてきて、ふと何のために生きているのだろう?って立ち止まったときに、ひょんなことで手に入れたこの生活。

 

これまでずっとウェルネス・ビューティ分野の仕事を手掛けてきたわけですが、自分の生活でもそれをきちんと体現できたらいいなと思っていたので、まさに“原点回帰”ですね。自分のなかではブレていないです」

 

>>”自分らしく生きる”とは?|仕事や恋愛で自然体で過ごせる方法を紹介

 

ims

 

田上さん

パートナー所有の広大なワイン畑。

今年は収穫を初めて経験、大切に育てられたブドウからエナジーをもらえたそう。

 

挫折続きの20代、無我夢中で突き進んだ30代

これまでのキャリアを振り返ると、20代は自分に何ができるのかともがき、PR会社に勤務するなかで出合って夢中になったのがオーガニックビューティの世界。

 

そして30代はその魅力を多くの人に届けることをミッションにブランドを立ち上げ、無我夢中だったそう。

 

「はじめのうちは開発、営業、プレス、店舗戦略などすべてこなして、困難を困難とも思わず本当に突っ走ってましたね」と振り返ります。

 

ブランドの進化とともに、田上さん自身もアップデートしていき、その先にたどり着いたのが、自分らしい仕事の仕方と本能が求めていた自然と共存する北海道での暮らしだったわけです。

 

「自然は過酷ですが、土を触って一から育てる経験ってなかなかできないこと。仕事も大事ですが、今はどう生きるか、のほうが関心が高いですね。バランスは模索中ですが、北海道発信のプロジェクトも検討中で、徐々に軸足を移しながら、自分らしい生き方を探っていきたいです」

 

>>【変わりたいあなたへ】自分を変えることは難しい?変われる方法や習慣

 

田上さん

 

休みなく働き続けている自分に、少し立ち止って、未来を見渡す時間をつくることの大切さ。

 

本気で打ち込んできたからこそ、次に進むべきステージが見えてくるはずです。

 

“今まで”を肯定しながらも、そこから大きくハンドルを切って、新しい地図を手に入れ歩み始めている田上さん。

 

「自分のなかではブレていない」というその言葉が、迷いのない選択であることを表していました。

 

>>自己肯定感とは?|意味や似ている言葉との違いをわかりやすく解説

 

田上さん

 

Profile

田上陽子(たがみようこ)

 

PR会社に勤務後、2013年に「エッフェオーガニック」を、2016年にはトータルビューティブランド「セルヴォーク」をスタート。

 

ファッション感度の高い女性たちの支持を得る。

 

現在では両ブランドのディレクターのほか、ラボグロウンダイヤモンドのジュエリーブランド「エネイ」のディレクションなどフリーランスとして活躍中。