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小泉里子の挑戦。日本を離れて見つけた新しいスタイル

2021年よりドバイに移り住み、新たな環境のなかで子育てをしている小泉里子さん。前回のインタビューvol.1に続きvol.2ではドバイでの暮らしで発見したこと、変化した想いについて伺います。

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「初めての子育てがドバイでよかった」

結婚したパートナーの仕事に合わせて、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイへ。しかも生後3ヵ月の息子さんを連れての移住です。突然のお知らせとなった「ドバイに引っ越しました!!」というInstagramでの報告に、たくさんの驚きの声が上がりました。その一方で親しい方たちは、その思い切った移住の決断を「里子らしいな」と見守っていたといいます。

― 移住の決断に迷いはありましたか?

「実は、話が持ち上がった当初は、ドバイへは夫だけで行ってもらう予定でした。ずっと一緒に暮らしていた犬の体調が悪くて、置いてはいけないなと。でもまるで『行ってきていいよ』というように、息を引き取ったんです。母からも『行ったらいいじゃない』と。旅行みたいに言われて(笑)、決断することができました。

ドバイに移るまでも、東京から離れて神奈川に住んでいました。15歳からそれまでずっと仕事をし続けてきて、そこで得られなかったものを『集中してここ何年かで取り戻そう』という気持ちになっていたんです。だから一度行くと決めてしまえば、もう迷いはなかったです。

仕事から離れる不安もありましたが、それ以上に今は家族との時間が自分にとって大事なもの。40代は自分だけではなくて、家族で何を得られるかを考えていきたい。もちろん、この決断は30歳ではできませんでした。今だからこそ、できたんですよね」

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―ドバイという土地で、しかも初めての子育て。どんな日々なのでしょうか?

「ドバイは経済的に余裕のある住人が多いこともあり、治安がいいので住みやすい場所といわれています。基本、皆さんとてもフレンドリーで。息子を連れて歩いていると、すぐにいろんな方に話しかけられて、たくさん遊んでもらっています。今は日本に一時帰国しているのですが、子供連れで歩いていても誰も話しかけてこないことが不思議に感じるくらいです(笑)。

それからドバイではナニーさんに子供を預かったもらう文化が根付いていて、公園でも子供と一緒に遊びながらケアしているのは、ほとんどナニーさんなんですよ。まだまだ日本では『自分で全部やらないといけない』『預けて遊んでいると思われたくない』という考えが強いかもしれませんが、皆さん当たり前のようにサポートを頼んで、自分自身に使う時間を確保して楽しんでいます。『こうしないといけない』という考えがなくて、みんなで協力し合って子供を育てている。その感覚もとても軽やかですよね。だから最初の子育てがドバイでよかったなと思っています」

― さまざまな人種がいる街で暮らす現在。肌で感じる多様性はどんなものですか?

「ドバイは移住者が多い街なので、いろんな文化が入り混じっています。一夫多妻制の文化もありますから、王様のように4人の妻たちを連れて歩いている男性を見ることもあり最初は驚きました。

実際に現地の方と話をするようになってみると、優しくて接しやすい方ばかりだとわかりました。基本的に英語はどこでも通じます。多くの方にとって英語は第二言語なので、多少間違っていても全然気にしない(笑)。そういう寛容さも楽ちんでいいですよね。私もできるだけたくさんの方と会話する機会をつくって、英語の練習をしています」

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「旅行ではなく、住んでこそリアルに知れることが面白い」

― ファッション面では、ドバイではどのような楽しみがありますか?

「ショッピングモールはハイブランドばかりなので、もう行くのはやめました(笑)。どんな場所なんだろうと一度訪れた際に、たまたまお会計している方の近くを通ったら・・・数千万のお買い物をしているのを目撃して! もう次元が違いますからね~。

その一方で、気に入った生地を見つけて町の仕立て屋さんにデザインを渡してオーダーすると、とても安く仕立ててくれるという情報も耳に入ってきたり。まだ私はお願いしたことはないのですが、近いうちに挑戦してみたいなと思っています。
ドバイは宝石もたくさんあって、比較的安く売られています。石のままで購入して、自分の好きなデザインのジュエリーを作ってもらうという話もよく聞きますね。これもいつか叶えたいことの一つ、憧れますよね。

先日、友人がサウジアラビアの結婚パーティーに招待されて、参加したときの話を聞きました。男女別で行われて、新郎新婦が集合することはないそうです。新婦側は当然女性だけのパーティーになるので、アバヤ(体のラインを隠すアラブ諸国の伝統的衣装)を脱いで妖艶な衣装ととっておきのジュエリーで着飾っているんですって。メリハリをつけてファッションを楽しんでいるんですね。

ドバイの女性たちはとても美意識が高くて、街中のいたるところにサロンがあります。私は新しい生活に慣れることにいっぱいいっぱいで、まだまだ以前のようにおしゃれする感覚に戻れていません(笑)。そんなふうに、旅行では触れることができないような、住んでこそリアルに知れることがたくさんあって、面白いですよ」

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「人生は一度きり。不安を感じるより、今この時を楽しみたい」

― 慣れない海外生活、不安を感じることはありますか? そんなときの対処法は?

「やはり異国で病院に行くときは不安になりますね。言葉の問題も医療の分野となるとさらに難しいですし。でも本当にホスピタリティにあふれた方が多くて、移住者を気持ちよく受け入れてくれる雰囲気が伝わってきます。わからないときはちゃんと聞けば皆さん丁寧に教えてくれて有難いです。幸い息子も健康で、成長するにつれて病院に行く機会も少なくなりました。

息が詰まってリラックスしたいと思ったら公園に行きます。日本にいたときもなるべく自然に囲まれた生活を送りたいと、東京から神奈川に引っ越したぐらいで、あまり自然の緑がないドバイに慣れるまでは少し苦しかったですね。なんたって、砂漠の国ですから! 初めてラクダを見たときは驚きましたが、もうすっかり慣れました。そこらじゅうにいますから(笑)。公園に行けば、人工的につくった森や、芝生は広がっているんですよ。ちょっと疲れたな・・・というときは、そういう場所に行ってひと息ついています。

今、人生で初めて“専業主婦”を経験していて、何だか不思議な感覚なんです。東京でモデルをやっていたことがまるで前世のできごとのような気さえします。もう自分には戻れる場所はないのかもしれない、そんなふうに思ってしまうこともありますが、今はそれ以上にこの生活と家族との時間を楽しもうという気持ち。人生は一度きりですからね」


大きな変化のなかにあっても、前向きに日々の暮らしを楽しむこと。明るくしなやかな小泉さんの姿、そしてドバイでの暮らしを語るその表情は、これまで雑誌のカバーで見せていたどの顔よりも穏やかで、幸福感に満ちたものでした。


インタビューvol.3では、社会と地球、心と体の健康のために取り入れていることなどをお伺いします。


Profile
小泉里子(こいずみさとこ)
15 歳でモデルデビュー。数々のファッション誌で表紙モデルを務め、絶大な人気を誇り、広告やテレビ番組でも活躍。着こなすファッションはもちろん、ナチュラルでポジティブな生き方が同世代の熱い支持を得ている。2021年2月には第1子となる男児を出産し、同5月より生活の拠点をドバイに移す。ドバイでの生活や子育てにもさらに注目が集まっている。Hummingでの連載「未来に続くBOOKリスト」も好評。最新刊『トップモデルと呼ばれたその後に 個性を売りにしなければ、人生が回り出す』(小学館)は、自身の今までとこれから、ドバイでの暮らしをリアルに綴った自伝的エッセイ。
http://tencarat-plume.jp/
Instagram @satokokoizum1


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PHOTO = 嘉茂雅之
STYLING = 安西こずえ
HAIR & MAKE-UP = 森ユキオ
TEXT = 安井桃子

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