朝の支度、子どものお弁当、仕事の準備──忙しさに追われる日々のなかで、ふと立ち止まって思うことはありませんか?
「ちゃんと正直に生きるって、報われるんだろうか?」
目の前の選択が自分の得にならないとき、やさしさや誠実さを貫くのはけっこう難しいもの。
けれど──
誰かのために選んだ「正直」が、人生に思いがけないミラクルを連れてくることもあるんです。今日は、そんな「まっすぐな心が起こした、ちょっと信じられないような素敵な出来事」を、アメリカ・アリゾナ州からお届けします。
2025年5月2日、アリゾナ州チャンドラーの町を、自転車で走っていた14歳の少年、コーディ君。
ふと路上に目をやると、そこに落ちていたのはお財布。中には300ドル(約4万4千円)もの現金とクレジットカード、身分証が入っていました。
ちょうどコーディ君は「電動バイク」を買うためにお金をコツコツ貯めていた最中。それでも彼は、財布の中身に心を動かされることなく、迷うこともなく、すぐにある行動をとりました。
財布に入っていた身分証をスマートフォンで撮影し、それを母親に送ったのです。
「誰かきっと、すごく困ってると思う。だから、すぐに返したほうがいいと思った」
そう語るコーディ君。数年前に父親が財布をなくしたときのことが頭に浮かび、「あのとき、どんなに大変だったか覚えてる。財布って、その人の生活そのものだよね」と振り返ります。
その言葉には、彼のまっすぐな心と想像力がにじみ出ています。
母親のキャリーさんは、息子の行動に心を動かされ、地元のFacebookグループにその出来事を投稿。「うちの息子、ついに「グッドサマリタン(親切な市民)」デビューよ」と。
その投稿が多くの人の目にとまり、感動と称賛の声が集まる中、ある一人の「見知らぬ誰か」が動き出します。
彼は「こんなにも正直で優しい少年がいたなんて」と深く感銘を受け、自分の3,500ドル(約51万円)を使って、コーディ君が欲しかった電動バイクをプレゼントしようと決めたのです。彼はキャリーさんに連絡をとり、「そのバイク、どこで売ってるいのかリンクを教えて」とひとこと。
そして、まもなくコーディ君の元にやってきたのは、つややかな黒いボディがまぶしい、ピカピカの電動バイク。
しかも、そのブランド名がまた奇跡のようで……「インテグリティ・Eバイク」。
そう、「インテグリティ(誠実さ)」を名に持つ会社が作った自転車だったのです。
コーディ君は、今、毎日のように大好きな自転車にまたがって、暑いアリゾナの通りを風のように走っています。
何も見返りを期待せず、ただ「誰かのために」と思ってとった正直な行動。それがめぐりめぐって、彼に最高のプレゼントとなって返ってきたのでした。
世の中にはまだ、ちゃんと「やさしさ」や「誠実さ」が通じる場所がある。そんなことを、コーディ君の小さな勇気が私たちに教えてくれます。
親としても、こんなふうに育ってくれたら…と、少し胸が熱くなりますよね。
目の前にある「ちょっとした選択」に、私たちは毎日、たくさん出会っています。
見て見ぬふりをすることもできるし、少し遠回りでも誰かのためを思って行動することもできます。
その選択の積み重ねが、人生の景色を変えていくのかもしれません。
今日も、自分らしく。ほんの少し、誰かにやさしくできたら、それはもう十分に素敵なこと。
そう思わせてくれる物語でした。
Arizona Teen Returns Lost Wallet Containing $300, Receives Electric Bike He Had Been Saving for

ライター:プロフィール

著者:堀江知子(ほりえともこ)|香港在住ライター
民放キー局にて、15年以上にわたりアメリカ文化や社会問題についての取材を行ってきた。
2025年からは香港に移住しフリーランスとして活動している。noteやTwitterのSNSや日本メディアを通じて、アフリカの情報や見解を独自の視点から発信中。
出版書籍:『40代からの人生が楽しくなる タンザニアのすごい思考法 Kindle版』。
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