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LiLyの視点「他人に対して正直でなくてもいいから、自分に対しては素直でいるべし!」

私たちを惹きつける特別な魅力を持つひとは、誰にも負けない“個性”という輝きを放っています。各界で活躍し続けている彼女や彼に、“自分らしく”を大切にする生き方についてインタビュー。そのオリジナルなスタイルの秘密を探ります。LiLyさんの生き方、自分らしさを探るインタビューの最終回。今、興味があること、行きたい場所、さらに人生という冒険について、語っていただきました。

自分と向き合うことは、宇宙旅行に匹敵する

― さて、今LiLyさんが注目していること、興味をもっていることを教えてください。

「少し唐突かもしれませんが、『神様が書く脚本って、なんて面白いんだろう!』と、年々そこへの興味が増していくばかりで。“神様の脚本”とは、一人ひとりの人生のこと。たとえばたった今、私たちはこの取材現場に集まって同じ時間を共有しているけれど、今朝の私たちがどんなシーンを経てここに来たか、は誰も知らないし、同じように今夜の私たちがどんな気持ちで眠りにつくか、は今の時点では自分を含めて誰にもわからない。

パラレルワールド(並行宇宙)という言葉がありますが、現実には何層もの時間や空間のレイヤーが存在しているのですよね。何だか話が壮大になってしまいましたが、人間よりもっと大きな存在が創造する、理系と文系のはざまにあるようなストーリー(真実)に心惹かれている自分がいます。客観視についてお話ししてきましたが、その頂点ですからね、地球を、もっと言えば宇宙を俯瞰している“神”視点」

― 人生を、“神様が書く脚本”と捉える視点は、すごく面白いですね。LiLyさんの今後の執筆にも影響を及ぼすのではないでしょうか。

「小説を書く作業って、実は神の視点をもつことができる時間でもあるんです。頭のなかでいろんな人物を、さまざまな時間軸、空間軸で動かし、その心模様を疑似体験するーー。そして主人公たちのそれぞれの人生は、自分の筆にかかっている。そんな作業(小説執筆)が大好きな私は、我ながら貪欲だなぁ、なんて思います」

― ちなみに今、LiLyさんが気になっている場所、行きたいエリアはどこなのでしょうか。

「えーと、ベッドの上、かな(笑)。どういうことかというと、去年、子供たちの塾代が想像以上に高かったことに焦って事務所を手放して、かつ成長しつつある息子と娘のプライベート空間を確保するべく、自宅をリフォームしたんですよ。結果、子供たちが使わなくなった2段ベッドの上が私のプライベートスペースになりました。いや、切ない話ではないんです(笑)。

そこで奮起した私はカーテンレールを取り付けて、少女のころからの夢だった天蓋ベッドへと変身させることに成功。それまでは娘と一緒に寝ていたので、産後初めての自分だけの寝床に大興奮(笑)。まぁ、今もベッドの下の段には娘がいて、上の段は私で、それはそれで超楽しいのですが、自宅の中に、自分のプライベートスペースが確保されたことが嬉しくてたまらないんです。ちなみに、執筆は、冷蔵庫の隣に小さなデスクを置いていて、家族の誰かが冷蔵庫を開けにくるたびに“チッ!”と思いながらキッチンで書いています(笑)」

― 子育てがほんの少し落ち着いて、久しぶりに手に入れたマイスペースなんですね。

「では、なぜ私がこのベッドスペースをここまで愛おしく思うのか。それは自分の頭のなかを、思う存分、自由にトリップできる場所だからなんです。よく『自分探しの旅に出る』なんて言うけれど、しっかり自分と向き合う時間をもつことは、ものすごくお手軽な宇宙旅行のようなものだと思うんですよね」

― 私たちはベッドの上に居ながらにして、宇宙を旅できる!

「一つの場所で落ち着いて、自分についてじっくり考えることは、壮大なアドベンチャーだと思っています。いいことがあったときはもちろん、辛いこと、悲しいこと、理不尽すぎて泣きたくなるときこそ、自分を冒険の主人公に仕立ててみる。誰しもが抱えている“認めたくないこと”にフタをせず、宝箱のように仕立てて、なぜ“隠しておきたい”のかを探る旅に出る、そんな冒険だと捉えてみるのです」

人生は、神から与えられた究極のミステリーだとしたら?

― その冒険はなかなか簡単ではなさそうです。その壮大なアドベンチャーを楽しむための秘策や武器はあるのでしょうか。

「まず一つは『自分を神の目線に置いてみる』ということ。先ほど小説を書くことは神の目線をもつことと伝えましたが、そんな視点で人生を見てみると、この世に生を受けたこと自体が、神様から与えられた究極のミステリーのように思えるんです。『なぜ私は、私として、この地に生まれたんだろう』なんて考えると、ただじっと悩んでいるなんて意味がなくて、その謎を解くべく能動的に動かないともったいない、なんて思えてきませんか。

さらに、もう一つ大切にしたいことは、『せめて自分にだけは素直でいる』こと。なぜってひとはいとも簡単に自分を洗脳できるから。たとえば結婚したいのにできないことを、まるで結婚願望がないように見せているひとや、仕事での挫折をすべて周りのせいにして可哀想な自分ストーリーに仕立ててしまうひとなど、人はサバイバルのためにはいろんな物語を作り出して、それを自分でも信じはじめてしまいます。時にはそれも心を救うために有効ではありますが、ずっとそれだと、『真実』と自分で後付けした『自己演出』とが、不協和音をかなで始める。その違和感はバイブスとなって、周りにも“なんだか不穏なオーラ”として伝わるものなんですよね。こうなってしまうと、どんどん生きづらくなってしまう。

マインドセットは大切だけど、それは自分を高みにもっていくときに使って欲しい。例えば、『恋人が欲しいのにできない』のが本音だとして、そのことをわざわざ誰かに打ち明けて傷つく必要はないと思う。でもせめて自分にだけは本当のことを打ち明けて欲しい。そうでないと冒険の謎は解けないし、宝箱の鍵は見つからないから。自分の本心にだけは素直でいて欲しいなと思います。自分自身に嘘をつき始めると、本当のことがどんどん見えなくなっちゃうから。一番面白いのは、真実なのに!」

― そう聞くと、本当の自分を探す冒険に出たくなってきました!

「自分を冒険小説の主人公だと思えば、失敗なんて失敗じゃなくて、次の布石になる重要な要素になる。だから解決したいことがあれば、手段を選ばずトライすればいいと思うんです。

たとえば極端な話、40歳目前の年齢でずっと処女でいることに悩んでいたとしたら、39歳最後の日に女性用風俗サイトに飛んで、タイプの男性をクリックして、実際に会って恋してしまった、とか。そんなふうにヒロインが躍進する物語があったら、私、夢中になって読むと思うんです。で、70歳になった彼女は、バーで隣に座ったイケおじにこう語るんです。『アタシの39歳の冒険話、少し恥ずかしくって今まで誰にも話してこなかったんだけど、他人の貴方になら言えるかも。ご迷惑でなければ、打ち明けてもいいかしら?』って。グッと引き込まれるシーンじゃないですか?

そうやって自分が紡いできた物語って、あとから読み返せばそう悪くないどころか、けっこう面白いものだと思うんです。自分の冒険小説をつくる感覚で日々を生きる。人生、そうやって楽しんだもの勝ちだと思いますよ。最新小説『BADSEX』の帯にも書いたんです。“いつまでいい子でいるつもり? どうせいつかは死ぬだけなのに”って。自分として生きられるのは今世のみ。なら、自分基準で楽しまなくちゃ大損です!」

「誰しもが自分の人生という冒険小説を生きている」。ーーそんなふうに考えれば、明日を迎えるのがいつもよりワクワクしてきませんか。さまざまな新発想で、目からウロコの生きるヒントを授けてくれたLiLyさん。何だか息が詰まりそうなとき、現実に風穴を開けたいとき、ことあるごとに彼女の言葉を思い出すことになりそうです。そしてLiLyさんの紡ぐ小説も読み続けたいし、いつかまたLiLyさん自身の冒険物語の続きを聞いて奮い立ちたい。私たち自身が、自分に与えられた究極のミステリーを楽しみながら解いていくために。


Profile
LiLy(りりぃ)
作家。1981年神奈川県生まれ。NY、フロリダでの海外生活後、上智大学卒業。音楽ライターを経て、2006年デビュー。恋愛エッセイ『おとこのつうしんぼ』でデビュー。小説『別ればなし』(幻冬舎)、エッセイ『オトナの保健室』(宝島社)など著書多数。現在は、雑誌『オトナミューズ』『VERY』『美的GRAND』にて連載。「フリースタイルティーチャー」(テレビ朝日)に出演中。最新小説は『BAD SEX』(幻冬舎)、エッセイは『オトナ白書』(宝島社)。
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